(平22.2.17、裁決事例集No.79)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、投資事業有限責任組合の組合員である審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該組合の有している株式の価額が著しく低下したとして、有価証券に係る評価損を計上し損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、原処分庁が、請求人のように投資事業有限責任組合の組合事業に係る帰属損益額の計算を、法人税基本通達14−1−2《任意組合等の組合事業から分配を受ける利益等の額の計算》で定める純額方式によって計算している場合には、当該有価証券に係る評価損の計上による損金算入は認められないなどとして法人税の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、同通達は、組合員が組合事業から分配を受ける利益等の額の計算方法を定めているものであり、組合員における組合の資産に係る評価損の計上の可否までも定めているものではないから損金算入は認められるとして、同処分等の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成19年4月1日から平成20年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に別表の「確定申告」欄のとおり記載して提出期限(法人税法第75条の2《確定申告書の提出期限の延長の特例》第1項の規定により1月間延長されたもの。)までにD税務署長に提出した。
ロ D税務署長は、これに対し、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成20年12月26日付で、別表の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として平成21年2月26日に審査請求をした。

(3) 関係法令等

イ 法人税法(平成21年法律第13号による改正前のもの。以下同じ。)第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、1当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、2当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額、及び3当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものの額とする旨規定している。また、同条第4項では、同条第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び同条第3項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨規定している。
ロ 法人税法第33条《資産の評価損の損金不算入等》第1項は、内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない旨規定している。
 また、同条第2項は、内国法人の有する資産(預金、貯金、貸付金、売掛金その他の債権を除く。)につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったこと、会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生計画認可の決定があったことによりこれらの法律の規定に従ってその評価換えをする必要が生じたことその他の政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額(これらの法律の規定に従って行う評価換えの場合にあっては、その減額した部分の金額)は、第1項の規定にかかわらず、これらの評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する旨規定している。
ハ 法人税基本通達(以下「法基通」という。)14−1−1《任意組合等の組合事業から生ずる利益等の帰属》は、任意組合等において営まれる事業(以下「組合事業」という。)から生ずる利益金額又は損失金額については、各組合員に直接帰属することに留意する旨定めており、注書において、任意組合等とは、民法第667条《組合契約》第1項に規定する組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条《投資事業有限責任組合契約》第1項に規定する投資事業有限責任組合契約及び有限責任事業組合契約に関する法律第3条《有限責任事業組合契約》第1項に規定する有限責任事業組合契約により成立する組合並びに外国におけるこれらに類するものをいう旨定めている。
ニ 法基通14−1−2は、法人が組合員となっている組合事業に係る利益金額又は損失金額のうち分配割合に応じて利益の分配を受けるべき金額又は損失の負担をすべき金額(以下「帰属損益額」という。)を各事業年度の益金の額又は損金の額に算入する場合には、次の(イ)の方法により計算する旨定めており、ただし書で、法人が次の(ロ)又は(ハ)の方法により継続して各事業年度の益金の額又は損金の額に算入する金額を計算しているときは、多額の減価償却費の前倒し計上などの課税上弊害がない限り、これを認める旨定めている。
(イ) 当該組合事業の収入金額、支出金額、資産、負債等をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法(以下、この方法を「総額方式」という。)
(ロ) 当該組合事業の収入金額、その収入金額に係る原価の額及び費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法(以下、この方法を「中間方式」という。)
 この方法による場合には、各組合員は、当該組合事業の取引等について、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除等の規定の適用はあるが、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない。
(ハ) 当該組合事業について計算される利益の額又は損失の額をその分配割合に応じて各組合員に分配又は負担させることとする方法(以下、この方法を「純額方式」という。)
 この方法による場合には、各組合員は、当該組合事業の取引等について、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いはなく、当審判所の調査の結果によっても、その事実が認められる。
イ 請求人と各投資事業有限責任組合との出資関係等
(イ) 請求人は、E社の企業再生を行うために、F投資事業有限責任組合及びG投資事業有限責任組合という2つの投資事業有限責任組合を組成し(いずれも、投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項に規定する投資事業有限責任組合契約に基づき成立した組合である。以下、それぞれ「F組合」及び「G組合」といい、これら2つの組合を併せて「本件各組合」という。)、後記(ロ)及び(ハ)のとおり出資することによりE社に資本供給した。
(ロ) 請求人は、平成18年○月○日付でG組合に係る投資事業有限責任組合契約を締結し、G組合に対し○○○○円(55,000口)を出資した。請求人のG組合に対する出資割合は○○○分の55,000である。
 また、G組合は、F組合に対し○○○○円(261,250口)を出資した。G組合のF組合に対する出資割合は○○○分の261,250である。
(ハ) F組合は、E社の普通株式15,000株(帳簿価額は○○○○円。以下「本件株式」という。)を取得、所有していた。
ロ F組合及び請求人の経理処理等
(イ) 請求人は、本件株式に係る出資割合(分配割合)に相当する金額○○○○円(○○○○円にG組合のF組合に対する出資割合(○○○分の261,250)とG組合に対する請求人の出資割合(○○○分の55,000)を乗じて算出された金額)から備忘価額の1円を控除した○○○○円を本件株式に係る評価損として次のとおり仕訳して帳簿上計上した。
(借方)投資収益(株式評価損) ○○○○円 
(貸方)営業投資有価証券(G組合) ○○○○円
 なお、上記仕訳のG組合勘定は、営業投資有価証券勘定中の科目であり、G組合に対する出資金、G組合の組合事業に係る帰属損益額及びG組合からの利益分配金の合計額から成る勘定科目である。
(ロ) 請求人は、上記(イ)の帳簿上計上した本件株式に係る評価損○○○○円のうち、○○○○円を本件事業年度の確定申告において所得金額に加算していることから、本件事業年度において本件株式に係る評価損として損金の額に算入された金額は○○○○円(以下「本件評価損」という。)である。
(ハ) F組合は、同組合の平成19年1月1日から平成19年12月31日までの計算期間において、同組合が有する本件株式(○○○○円)について、○○○○円を投資損失引当金として繰入れ、当該金額(以下「本件投資損失引当金繰入額」という。)を費用として計上した。
ハ 請求人の組合事業から分配を受ける利益等の額の計算方式
 請求人は、G組合の組合事業に係る帰属損益額を各事業年度の益金の額又は損金の額に算入する場合の計算(以下「帰属損益額の計算」という。)について、上記(3)のニの(ハ)の純額方式により計算していた。

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2 争点

 本件の争点は、次の2点である。
(1) F組合の有する本件株式について、請求人が本件評価損を損金の額に算入することができるか否か。(争点1)
(2) F組合の本件投資損失引当金繰入額について、請求人が、その出資割合に応じた金額を損金の額に算入することができるか否か(予備的主張)。(争点2)

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3 主張

(1) 原処分庁

イ 争点1について
 次の理由により、請求人が本件株式を本件各組合を介して保有している状態であるとしても、本件評価損を損金の額に算入することはできない。
(イ) 法基通14−1−2において、投資事業有限責任組合等の組合事業に係る帰属損益額の計算の方法が定められている。同通達に定める総額方式、中間方式及び純額方式の各方式が勘定科目の認識の差を示していると考えられることから、その計算方式に応じ、税法上の計算は異なることとなる。
 そして、純額方式による場合は、各組合員は組合事業の損益の結果だけをその法人の組合事業から受ける損益として認識しているものと考えられることから、組合員たる法人においてはその組合事業の取引等について、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はないことになる。
(ロ) 請求人は、G組合の組合事業に係る帰属損益額の計算を純額方式により計算していることから、請求人はG組合の組合事業の損益の結果だけを当該組合事業から受ける損益として認識し、当該組合事業に係る資産、負債を自己の資産、負債と認識していない(請求人の貸借対照表に資産、負債として計上されない。)といえる。
ロ 争点2について
 次の理由により、本件投資損失引当金繰入額が「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」に従い計上した費用であり、公正妥当な会計処理の基準に合致するものであったとしても、当該費用は、請求人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができない。
(イ) 法人税法第22条第3項は、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがある場合を除き、同項各号に掲げる金額とする旨規定し、同項第2号は、当該金額として当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用を掲げている。ただし、そのかっこ書において、償却費以外の費用で当該事業年度の終了の日までに債務の確定していないものを除くこととしている。
(ロ) 「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」による本件投資損失引当金繰入額は、確定した債務ではない。
(ハ) 本件投資損失引当金繰入額については、法人税法その他の法人税に関する法令に損金の額に算入する旨の規定がない。

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(2) 請求人

イ 争点1について
 次の理由により、本件評価損は損金の額に算入することが認められる。
(イ) 投資事業有限責任組合は法人格がなく、構成員課税(パス・スルー課税)となっていることからすれば、F組合及びG組合が有する資産、負債については、出資の割合に応じて組合員である請求人に直接帰属することになる。
 そうすると、F組合が有する本件株式(○○○○円)のうち請求人の出資割合に応じた部分(○○○○円)については、請求人が当該株式を直接有していることと等しくなる。
 したがって、請求人が、当該株式について法人税法の規定に従い行った本件評価損の計上は適正であり損金の額に算入される。
(ロ) 原処分庁の主張について
 法基通14−1−2は飽くまでも投資事業有限責任組合等の組合事業に係る帰属損益額の計算の方法(取込方法)を定めているのであって、請求人が期末に有する資産の評価損の計上の可否までも定めているものではないし、請求人が、貸借対照表上、G組合への出資金等を営業投資有価証券勘定で表示しているとしても、本件株式を請求人の資産として認識していないとの判断にはならない。
 請求人が行った処理は、組合事業に係る帰属損益額の計算の方法(取込方法)とは別の次元で本件事業年度末における請求人が有する資産について評価損を計上したものであり、この処理が法基通14−1−2の定めの範囲にあるとは考えられない。なお、請求人が純額方式により計算したのは以下の理由からである。
A 金融商品会計に関する実務指針によれば、投資事業有限責任組合に対する出資についてはいわゆる純額方式により経理することとされている。
B 請求人の事業の内容が、企業再生コンサルティングであるため、複数の投資案件に投資している実態をかんがみると、投資事業有限責任組合からの収益は会計上、売上高にまとめて計上する方法(純額方式)が、請求人の業績を正確に表すことができる。一方、総額方式により投資事業有限責任組合の勘定科目をそのまま取り込むことは、組合の販売費及び一般管理費が請求人の販売費及び一般管理費に含まれてしまうことになり、投資家に対して請求人の業績を適切に表示することができないことになる。
ロ 争点2について
 仮に、原処分庁の主張のとおり、本件株式について評価損の計上ができないのであれば、以下の理由から、F組合が費用の額に計上した本件投資損失引当金繰入額のうち請求人の出資割合に応じた部分の金額は、請求人の損金の額に算入することが認められるべきである。
(イ) F組合が費用として計上した本件投資損失引当金繰入額は、日本公認会計士協会により公表された「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」に従い計上した費用であるから、当該引当金の繰入れ後の損益の額は公正妥当なものである。したがって、当該引当金の繰入れ後の損益の額は出資割合に応じて請求人の益金の額又は損金の額に算入されるべきである。
(ロ) 法基通14−1−2は、純額方式による場合には組合の損益を分配割合に応じて組合員の損益とすることとし、注書で組合事業の支出金額のうちに寄附金又は交際費の額がある場合に限って組合員は組合から取り込んだ損益について一定の計算が必要としているだけで、これら以外に組合から取り込んだ損益について、法人税法の規定に基づいて計算しなければならないとの規定は存在しない。

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4 判断

(1) 争点1について

イ 法令解釈
(イ) 本件各組合は、上記1の(4)のイの(イ)のとおり、投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項に規定する投資事業有限責任組合契約に基づき成立した組合であり、法基通14−1−1で定める任意組合等に該当するところ、任意組合等は組合員同士の一種の契約関係であって、いずれも法人格を有せず、また、法人税法上も任意組合等を法人とみなす規定はないから、それ自体納税義務の主体となることはない。したがって、法人税法上、任意組合等の組合事業に係る利益等は、各組合員に直接帰属するものと解され、法基通14−1−1の取扱いは、当審判所においても相当であると認められる。
(ロ) 法人が組合員となっている場合の組合事業に係る帰属損益額の計算の方法については、上記1の(3)のニのとおり、法基通14−1−2において総額方式、中間方式及び純額方式の3つの方法が定められているところ、組合員が純額方式により組合事業に係る帰属損益額の計算をしている場合には、実際に組合事業において受取配当金が生じていたり、組合が引当金の繰入れの対象となる資産を有していたとしても、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はないものとされている。
 これは、純額方式により組合事業に係る帰属損益額の計算をしている場合においては、総額方式と異なり、組合員が組合事業における配当金に係る収入や引当金に係る対象資産等を帳簿等で個別に計上しない等、組合事業における収入、原価、費用等及び資産、負債等の具体的な内容について、組合員が個別に認識することなく、その損益の計算結果だけを当該組合事業から受ける損益として認識しているものと考えられるからであり、この取扱いは当審判所においても相当であると認められる。
(ハ) また、上記1の(3)のロのとおり、法人税法第33条は、同条第1項において、資産の評価損について、原則として各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入しない旨規定し、同条第2項において、金銭債権を除く資産につき災害による著しい損傷その他の政令で定める事実が生じたことにより、当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなった場合に、当該法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、同条第1項の規定にかかわらず損金の額に算入する旨規定しているところ、同条第2項が資産の評価損の対象となる資産につき、損金経理による帳簿価額の減額を損金算入の要件としていることからすれば、対象資産等を帳簿等で個別に計上することのない純額方式においては、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定と同様、資産の評価損の損金算入についても、その適用は認められないと解するのが相当である。
ロ 本件への当てはめ
 これを本件についてみると、請求人は、純額方式により組合事業に係る帰属損益額の計算をしており、本件評価損の対象資産である本件株式について、その出資に応じた金額を帳簿等において資産として個別に計上しておらず、評価損の経理処理に当たっても、上記1の(4)のロの(イ)のとおり、本件株式の請求人の出資割合に相当する金額を営業投資有価証券勘定中の科目であるG組合勘定から減額しているだけである。
 したがって、本件評価損を損金の額に算入することは認められない。
ハ 請求人の主張について
 請求人は、上記3の(2)のイのとおり、1法基通14−1−2は組合事業に係る帰属損益額の計算の方法を定めているのであって、期末に有する資産の評価損の計上の可否までも定めているものではない、また、2G組合への出資金等を貸借対照表上、営業投資有価証券勘定で表示しているからといって請求人が本件株式を請求人の資産として認識していないとはいえない旨主張する。
 しかしながら、法基通14−1−2に定める純額方式により組合事業に係る帰属損益額の計算をしている場合には、受取配当等の益金不算入及び引当金の繰入れ等と同様、資産の評価損の損金算入の適用がないと解されることは、上記イの(ロ)及び(ハ)のとおりであり、また、本件株式について、請求人が請求人の資産として認識していたとしても、その出資に応じた金額を帳簿等に個別に計上していない以上、資産の評価損の損金算入に係る上記イの(ハ)の要件を満たすものではないから請求人の主張には理由がない。

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(2) 争点2について

イ 法令解釈
 上記(1)のイの(イ)のとおり、任意組合等の組合事業に係る利益等については、法人税法上、各組合員に帰属するものと解されている。
 そうすると、法人が組合員となっている場合には、任意組合等が行った組合事業から生じた利益等について、その出資割合に応じて組合員である法人自身が行ったことにより生じた利益等として法人税の課税の対象とするということになるから、当該組合の組合事業に係る利益等の計算の基となる収入や費用の額等のうちに法人税法やこれに関する法令等の規定上、益金又は損金の額に算入されない金額が含まれている場合には、組合員である法人の組合事業に係る帰属損益額の計算においても、当該金額を益金又は損金の額に算入することはできないと解するのが相当であり、総額方式、中間方式及び純額方式のいずれの計算方式を採用した場合も同様である。
ロ 本件への当てはめ
 本件投資損失引当金繰入額○○○○円は、上記1の(4)のロの(ハ)のとおり、F組合が平成19年1月1日から平成19年12月31日までの計算期間において費用として計上したものである。
 しかしながら、法人税法第22条第3項は、損金の額に算入すべき費用について、別段の定めがあるものを除き、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定していないものを除く。)の額とする旨規定しているところ、本件投資損失引当金繰入額については、同組合の上記計算期間の終了の日までにおいて債務が確定したと認めるに足る事実はない。また、本件投資損失引当金繰入額は、法人税法やこれに関する法令等において損金の額に算入することが認められる別段の定めにも該当するものではない。
 したがって、本件投資損失引当金繰入額がF組合において費用に計上されていたとしても、請求人は、本件事業年度の所得の金額の計算上、その出資割合に応じた金額を損金の額に算入することはできない。
ハ 請求人の主張について
 請求人は、純額方式により組合事業に係る帰属損益額の計算をする場合において、調整が必要なのは組合事業の支出金額のうちに寄附金又は交際費の額がある場合に限られており、これら以外に組合から取り込んだ損益については法人税法の規定に基づいて計算しなければならないとの規定は存在しない旨主張する。
 しかしながら、任意組合等の組合事業に係る帰属損益額の計算については、上記イのとおり、総額方式、中間方式及び純額方式のいずれの計算方式を採用する場合であっても、組合における利益等の額のうちに法人税法やこれに関する法令等の規定上、益金又は損金の額に算入できない金額が含まれている場合には、当該金額は益金又は損金の額に算入することはできないと解される。
 したがって、純額方式で計算する場合であっても、法人税法やこれに関する法令等の規定を適用することが必要であり、これが寄附金又は交際費等の損金不算入額の計算に限定される理由はなく、また、本件投資損失引当金繰入額については、上記ロのとおり、債務が確定したと認めるに足る事実はなく、損金の額に算入することが認められる引当金の繰入れにも該当しない。したがって、請求人の主張には理由がない。

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(3) 本件更正処分について

 本件評価損及び本件投資損失引当金繰入額については、上記(1)及び(2)のとおり、いずれも請求人の損金の額に算入されないから、本件更正処分は適法である。

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(4) 本件賦課決定処分について

 本件更正処分は上記(3)のとおり適法であり、また、本件更正処分により納付すべき税額の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてされた本件賦課決定処分は適法である。

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(5) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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