(平成23年8月23日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、損金の額に算入した業務委託料について、原処分庁が実体のない架空の業務委託であり、当該業務委託料は請求人の会長が実質支配する法人への貸付金等であることから損金の額には算入できないなどとして法人税の更正処分等を行ったのに対し、請求人が当該業務委託には実体があり、原処分庁の事実誤認であるとして同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成22年4月30日)に至る経緯は、別表1及び別表2のとおりである。
 なお、原処分庁所属の調査担当者を以下「本件調査担当職員」といい、w国税局調査査察部所属の収税官吏を以下「本件査察担当職員」という。
 また、平成14年7月1日から平成20年6月30日までの各事業年度を、以下これらを併せて「本件各事業年度」、各事業年度を、以下「平成15年6月期」などといい、本件各事業年度の法人税の各更正処分を以下「本件各法人税更正処分」、法人税の重加算税の各賦課決定処分を以下「本件各法人税賦課決定処分」という。
 そして、平成14年7月1日から平成20年6月30日までの各課税期間を、以下これらを併せて「本件各課税期間」、各課税期間を、以下「平成15年6月期課税期間」などといい、本件各課税期間の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各更正処分を以下「本件各消費税等更正処分」、消費税等の重加算税の各賦課決定処分を以下「本件各消費税等賦課決定処分」という。

(3) 関係法令

 関係法令の要旨は、別紙1のとおりである。

(4) 基礎事実

イ 請求人及び関連企業について
(イ) 請求人は、建設コンサルタントを業として平成4年3月○日に設立された、e市に本店を置く法人である。代表取締役はG(以下「G社長」という。)、取締役はHほか3名、監査役はJであり、H及びJは設立と同時に就任している。また、Kは、従業員である。
 なお、請求人は、g市にh支店を有している。
(ロ) L社は、平成10年6月1日にM社(本店はi市j町、平成17年11月7日市町村合併によりk市)に商号変更し(平成10年5月31日までのL社を以下「旧L社」という。)、平成11年9月○日に解散した。旧L社の代表取締役はH、監査役はNであり、Jは従業員、Pはアルバイトである。
(ハ) Q社は、平成10年6月1日に、L社(本店はg市)(以下「新L社」という。)に商号変更し、新L社の代表取締役はHであり、J及びNは従業員(Jは、平成13年12月28日までは取締役であった。)、Pはアルバイトである。
(ニ) R社は、黒酢と黒酢にんにくの製造販売を業として平成12年4月○日に設立された法人であり、設立当初はg市に本店を置き、平成13年3月1日からe市に本店を移転している。代表取締役はH、監査役はJであり、Sは従業員である。 
(ホ) 請求人の会長は、T(以下「T会長」という。)である。 
ロ 業務委託契約について
(イ) 請求人と旧L社との間で取り交わされた平成8年3月31日付の「業務委託契約書」と題する書面(以下、当該書面に係る契約を「本件旧営業等委託契約」という。)には、要旨次の内容が記載されている。 
A 委託内容は、営業に関する一切の業務とする。
B 業務委託に関する報酬は、月額○○○○円とする。

内訳(単位:円)
  名称 単位 単価 直接経費 小計 消費税 合計
まる1 業務 人・月 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○
まる2 業務 人・月 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○
まる3 業務 人・月 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○
○○○○ ○○○○

C 車両等、日当及びその他の経費についても全額請求人の負担とする。
D 契約期間は平成8年4月1日より平成11年3月31日の3年間とする。ただし、契約期間満了前1か月までにいずれかにより意思表示がないときは、同一条件で契約が更新されたものとする。
(ロ) 請求人と旧L社との間で取り交わされた平成9年4月30日付の「変更書」と題する書面には、要旨次の内容が記載されている。 
 平成8年3月31日付契約書の業務報酬を減額する。
 元契約  毎月○○○○円
 変更契約 毎月○○○○円(税込み○○○○円)
(ハ) 請求人と旧L社との間で取り交わされた平成10年4月30日付の「変更書」と題する書面には、要旨次の内容が記載されている。
 平成8年3月31日付契約書の契約期間を変更する。
 元契約  平成8年4月1日から平成11年3月31日まで
 変更契約 平成8年4月1日から平成10年5月31日まで
(ニ) 請求人と旧L社との間で取り交わされた平成10年5月31日付の「業務委託契約書」と題する書面(以下、「本件営業等委託契約書」といい、本件営業等委託契約書に係る契約を「本件営業等委託契約」という。)には、要旨次の内容が記載されている。 
A 委託内容は、営業に関する一切の業務とする。
B 業務委託に関する報酬は、月額○○○○円とする。

内訳(単位:円)
  名称 単位 単価 直接経費 小計 消費税 合計
まる1 業務 人・月 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○
まる2 業務 人・月 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○
まる3 業務 人・月 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○
○○○○ ○○○○

C 車両等、日当及びその他の経費についても全額請求人の負担とする。
D 契約期間は平成10年6月1日より平成12年5月31日の2年間とする。ただし、契約期間満了前1か月までにいずれかにより意思表示がないときは、同一条件で契約が更新されたものとする。
(ホ) 請求人と新L社との間で取り交わされた平成15年6月30日付の「変更書」と題する書面(以下「平成15年6月30日付変更書」という。)には、要旨次の内容が記載されている。
A 平成10年5月31日付契約書の業務報酬を減額する。

内訳(単位:円 消費税含む。)
  名称 変更前 減額 変更後
まる1 業務1名 ○○○○ ○○○○ ○○○○
まる2 事務1名 ○○○○ ○○○○ ○○○○
まる3 業務1名 ○○○○ ○○○○ ○○○○
○○○○ ○○○○ ○○○○

B 平成15年7月以降の業務委託について変更する。
ハ 事務委託契約について
(イ) 請求人と新L社との間で取り交わされた平成10年12月31日付の「業務委託契約書」と題する書面(以下、当該書面に係る契約を「本件事務等委託契約」という。)には、要旨次の内容が記載されている。
A 委託内容は、経理処理(伝票処理及びその他一般事務)及び営業に関する一切の業務とする。
B 業務委託に関する報酬は、月額○○○○円とする。

内訳(単位:円)
  名称 単位 単価 消費税 合計
まる1 業務 人・月 ○○○○ ○○○○ ○○○○
まる2 事務 人・月 ○○○○ ○○○○ ○○○○
○○○○

C 車両等、日当及びその他の経費についても全額請求人の負担とする。
D 契約期間は平成11年1月1日より平成12年12月31日の2年間とする。ただし、契約期間満了前1か月までにいずれかにより意思表示がないときは、同一条件で契約が更新されたものとする。
(ロ) 請求人と新L社との間で取り交わされた平成13年5月31日付の「解約書」と題する書面には、要旨次の内容が記載されている。 
A 平成10年12月31日付契約書の業務契約を解約する。

内訳(単位:円)
  名称 単位 単価 消費税 合計
まる1 業務 人・月 ○○○○ ○○○○ ○○○○

B 業務委託契約解約日 平成13年6月30日
ニ R社の営業委託契約について
 請求人とR社との間で取り交わされた平成14年4月10日付の「業務委託契約書」と題する書面(以下、当該書面に係る契約を「本件R社営業委託契約」という。)には、要旨次の内容が記載されている。
(イ) 委託内容は、営業に関する一切の業務とする。
(ロ) 業務委託に関する報酬は、月額○○○○円とする。

内訳(単位:円)
名称 単位 単価 直接経費 消費税 合計
業務 人・月 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○

(ハ) 車両等、日当及びその他の経費についても全額請求人の負担とする。
(ニ) 契約期間は平成14年4月11日より平成16年4月10日の2年間とする。ただし、契約期間満了前1か月までにいずれかにより意思表示がないときは、同一条件で契約が更新されたものとする。
ホ 委託料の支払について
(イ) 請求人は、本件営業等委託契約に係る報酬及び本件事務等委託契約に係る報酬(以下それぞれ「本件営業等委託料」、「本件事務等委託料」という。)を業務委託料及び事務委託料の各勘定科目に計上し、また、本件R社営業委託契約に係る報酬(以下「本件R社営業委託料」という。)を業務委託料の勘定科目に計上するとともに、次表のとおりの額を本件各事業年度の法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入した。

(単位:円)
事業年度 本件営業等委託料 本件事務等委託料 本件R社営業委託料 合計
平成15年6月期 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○
平成16年6月期 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○
平成17年6月期 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○
平成18年6月期 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○
平成19年6月期 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○
平成20年6月期 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○

(ロ) 請求人は、新L社及びR社に対して、新L社及びR社の経費等の支払に要する資金をそれぞれに毎月貸し付けており、本件営業等委託料、本件事務等委託料及び本件R社営業委託料の支払は、新L社及びR社に対する請求人のそれぞれの貸付債権と相殺する方法により行われている。
ヘ 新L社及びR社の経理処理について
(イ) 新L社は、請求人から受領した本件営業等委託料及び本件事務等委託料の金額を売上高勘定に計上している。
(ロ) R社は、請求人から受領した本件R社営業委託料の金額を雑収入勘定に計上している。
ト その他
 本件営業等委託契約、本件事務等委託契約及び本件R社営業委託契約には、委託業務の内容に係る報告方法、報告期限等を定めた条項はない。

(5) 争点

  1. 争点1 本件営業等委託料、本件事務等委託料及び本件R社営業委託料の金額は、法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入されるか否か。
  2. 争点2 本件営業等委託料、本件事務等委託料及び本件R社営業委託料の金額を法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入したことについて、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為に当たるか否か。

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2 主張

 当事者の主張は、別紙8のとおりである。

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3 判断

(1) 争点1 本件営業等委託料、本件事務等委託料及び本件R社営業委託料の金額は、法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入されるか否か。

イ 認定事実
 請求人提出資料、原処分庁提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人、旧L社、新L社及びR社について
A T会長は当審判所に対して要旨次のとおり答述した。
 自分は、請求人、旧L社、新L社、R社などの法人を設立し、これらの法人の会長という形で経営に関わっている。資本金は、自分が拠出しており、いわゆる「オーナー」であるが、商業登記上の取締役には就任していない。
B Hは当審判所に対して要旨次のとおり答述した。
 旧L社、新L社及びR社の資本金については、T会長が全額拠出している。自分は、旧L社、新L社及びR社の株主にはなっているが、名目上の株主である。
C 上記A及びBの両者の答述は各法人の資本金を拠出したのはT会長という点で一致し、特に不自然な点は認められないことからすれば、上記各答述は信用でき、このことからすると、Hは、旧L社、新L社及びR社の株主及び代表取締役となっているものの、資本金を拠出したのはT会長であり、T会長は会長としてこれらの各法人の経営に関与していると認められる。
 そうすると、請求人、旧L社、新L社及びR社は、T会長が実質的なオーナーとして支配する一つの企業グループに属しており、Hは、T会長の支配下にあり、実質的にはその使用人と認めるのが相当である。
(ロ) 本件営業等委託契約の締結及び本件営業等委託契約書について
A G社長は本件営業等委託契約の当事者に関し、当審判所に対して要旨次のとおり答述した。
(A) 平成8年当時、請求人の業績が拡大しており、この業績拡大に対応していくために営業担当や経理担当を増やすよりも、業績に結びつく技術者を採用することが優先されていた。
 このような状況の中、旧L社のHから、別荘分譲が厳しい状況にある旧L社の経営状況を聞き、自分が過去にHの下で働いていたことから人柄やその営業力について知っていたこと、信頼できる人物であること、請求人において営業担当及び経理担当の人材が不足していたことから、請求人の営業及び経理その他の業務の一部を旧L社に平成8年4月から業務委託することとした。
(B) 平成10年6月1日に、旧L社はM社に、Q社は新L社にそれぞれ商号変更を行ったことから、新L社と営業及び経理についての業務委託契約を締結し直した。
(C) 本件営業等委託契約書においては、従事者等に係る記載がないものの、営業業務はH及びN、経理業務はJが行っている。
B Hは本件営業等委託契約の当事者に関し、当審判所に対して要旨次のとおり答述した。
(A) 本件旧営業等委託契約は、G社長が契約文書を作成し、自分は、請求人事務所に呼ばれてT会長が管理している旧L社の実印を同契約書に押印しただけなので、積算根拠等の契約内容についてはよく分からない。本件旧営業等委託契約の締結については、旧L社の売上増加になることなので、T会長及びG社長の決定に従っただけである。
(B) 平成10年6月1日に、旧L社はM社に、Q社は新L社にそれぞれ商号変更を行ったことから、新L社と請求人の間で営業及び経理について新たな業務委託契約を締結した。
(C) 本件営業等委託契約書においては、従事者等に係る記載がないものの、営業業務は自分とN、経理業務はJが行っている。
C 本件旧営業等委託契約は、上記Aの(A)及びBの(A)のとおり、請求人が旧L社を支援するために締結されたと認められる。また、本件営業等委託契約は、上記Aの(B)及びBの(B)のとおり、契約当事者双方が請求人と新L社との間で契約をし直したと認識していたと認められ、このことは、上記1の(4)のロの(ホ)の請求人と新L社が取り交わした平成15年6月30日付変更書が本件営業等委託契約の業務報酬の金額を変更する内容であること、上記1の(4)のヘの(イ)のとおり、新L社が本件営業等委託料を収益の額と認識していることからもうかがい知ることができるから、本件営業等委託契約は、請求人と新L社との間で締結されたと認めるのが相当である。
 ただし、本件営業等委託契約書については、その日付が平成10年5月31日付であることから、一方の契約当事者は新L社ではなく、同日において「L社」の商号であった旧L社であるべきであり、これと、上記(イ)のとおり、新L社が請求人のT会長の支配下にあることを併せ考えると、その内容については請求人が任意に記載することができたものと認めるのが相当である。
(ハ) 本件営業等委託契約の業務従事者について
 上記(ロ)のAの(C)及びBの(C)のとおり、新L社では、本件営業等委託契約書において従事者等に係る記載がないものの、営業業務についてはH及びNを、経理業務についてはJを従事者としていたと認められる。
(ニ) Hの業務について
A 関係者の答述
(A) G社長は当審判所に対し要旨次のとおり答述した。
 委託業務における営業を担当しているH及びNからは、営業実績表を、毎月ファックスか直接手渡しにより提出させている。
(B) Hは当審判所に対して要旨次のとおり答述した。
a 営業業務は、m地区の国土交通省の工事事務所、国土交通省所管の公益法人であるU社の各支所、旧V社の工事事務所を回り、名刺を置いてくる名刺営業であり、最初の4〜5年はg市内が週2〜3回、n県は月2〜3回、p県、q県は月1〜2回行っていた。
b 平成12年にR社の代表取締役に就任してからは委託業務を行う時間があまりなくなり、r県内でR社の営業を行うようになった平成15年頃から、名刺営業は、g県が多くても週1〜2回、g県外は2〜3週間に1〜2回程度となった。
c 自分やNの委託業務の従事状況等について、請求人に報告はしたことはなく、両名の営業実績表を作成したこともない。
d 本件調査担当職員に提出した平成14年7月から平成19年6月までの間の営業実績表は、本件調査担当職員に要求されて、平成20年6月に作成し提出したものである。
B 営業実績表及び出張報告書について
(A) Hは、上記Aの(B)のcのとおり、委託業務の従事状況等を請求人に報告はしたことはなく営業実績表も作成していない旨答述しているところ、平成20年6月に作成し、本件調査担当職員に提出した営業実績表は、請求人が当審判所に提出した営業実績表とも記載内容が相違することから、提出された営業実績表は当時作成されたものとは認められず、上記Hの答述には信ぴょう性があり、H及びNの営業実績表は、作成されていなかったと認められる。
(B) 請求人は、Hが作成した平成14年7月から平成20年6月分までの間の出張報告書を提出したところ、当該出張報告書には、「出張者」「出張先」「出張目的」「期間」「報告事項」「旅費精算書」等についての記載がある。
 しかしながら、当該出張報告書には、まる1「出張先」にその出張した地域のみ、「出張目的」には営業、会議としか記載されていないものが大部分であること、まる2上記1の(4)のイのとおり、複数の法人の役員を兼務しているHがどの法人の何のための出張をしたのかが明らかではない。また、上記(A)のとおり、営業実績表は当時は作成されておらず、出張内容を証する資料等がないことなどからすれば、当該出張報告書はHが名刺営業を行ったことを証する書類と認めることはできない。
(C) 上記Aの(A)のとおり、G社長はH及びNに営業実績表を毎月ファックスか直接手渡しにより提出させている旨答述をしているところ、上記(A)のとおり、営業実績表の作成はなかったと認められることから、G社長の答述は信用できない。
(D) また、他にHが本件営業等委託契約に基づく役務の提供を行っていたことをうかがい知る証拠も認められない。
C まとめ
 以上のことからすれば、上記Aの(B)のa及びbのHの名刺営業していた旨の答述は信用できず、したがって、Hが本件営業等委託契約に基づく役務の提供を行っていたと認めることはできない。
(ホ) Nの業務について
A 関係者の答述等
(A) Hは当審判所に対し要旨次のとおり答述した。
 Nは体が弱かったので営業業務は行っておらず、自分がNの分をカバーしていた。
(B) Jは当審判所に対し要旨次のとおり答述した。
 Nは体が弱かったので営業活動を行っておらず、HがNの分をカバーしていた。
(C) Nの息子であるWは本件査察担当職員に対し要旨次のとおり申述した。
 Nは、平成15年頃までは新L社に毎日出勤していたのではないかと思う。平成16年か17年頃に○○○で入院し、その際に○○○の疑いがあると医師から話しがあった。平成18年の夏頃に○○○するようになり、○○○と診断された。この頃から、○○○の症状がひどくなり、平成19年12月で新L社を退職した。
B 証拠資料
(A) 請求人は、出張に係る金員を支払う際、総勘定元帳の旅費交通費勘定若しくは仮払金勘定に計上し、その相手科目欄に相手科目とともに出張者の名前を記載しているところ、平成14年7月から平成20年6月までの間の旅費交通費勘定及び仮払金勘定の相手科目欄にNの記載はない。
(B) 当審判所は請求人に対しNの平成14年7月から平成20年6月までの間の出張報告書及び営業実績表の提出を求めたが、請求人から提出はなかった。
C まとめ
 上記Aの各答述は、Nは健康状態が好ましくなく営業活動は行わず、HがNの分をカバーしていたという点で一致しているところ、Nの健康状態について、請求人とは利害関係のないNの息子であるWの具体的な申述とも一致することからすれば、Nの健康状態が好ましくなかったと認められる。そして、上記Bのとおり、請求人の総勘定元帳にNが出張をした形跡が見受けられないこと、請求人からNの平成14年7月から平成20年6月までの間の出張報告書及び営業実績表の提出がなかったことと併せ考えれば、Nは本件営業等委託契約に基づく役務提供を行うことができる健康状態ではなく、本件営業等委託契約に基づく役務提供を行っていなかったと認められる。
(ヘ) Jの業務について
A 関係者の答述
(A) G社長は本件査察担当職員に対し要旨次のとおり申述した。
 Jは、平成4年から請求人の経理業務を行っており、その業務内容は旧L社と契約を結ぶことによって何ら変わることはなかった。
(B) Jは当審判所に対して要旨次のとおり答述した。
 平成4年3月の請求人の設立と同時に監査役に就任し、経理業務を行っていた。請求人における業務内容は、経理担当者が入力した伝票のチェック、中間申告書及び確定申告書の作成、資金繰り表の作成、月次の試算表の作成である。平成8年に本件旧営業等委託契約が締結されてからも、担当している経理業務の内容は変わっていない。
(C) 請求人の経理担当者であるK及び新L社のアルバイトのPは、当審判所に対し、Jは約20年前から毎月2週間程度g県の事務所を不在にし、e市の請求人事務所に赴き請求人の経理業務を行っていた旨申し述べた。
B Jに係る出張報告書等
 請求人が当審判所に提出したJに係る平成10年12月から平成16年12月までの期間における、g県、e市間の移動に要する航空券の購入記録を記載したノートと、Jが作成し請求人に提出した平成14年7月から平成19年6月までの間の出張報告書とを照合すると、当該ノートに記載された購入記録と出張報告書に記載された出張年月日とは整合性があり、当該ノートとJに係る出張報告書は信ぴょう性の高いものと認められるところ、これらには、Jが毎月2週間程度e市に出張している旨記載されている。
C 出張旅費の支払
 Jのg県、e市間の移動に係る航空券については、請求人が購入しJに交付している。また、航空券以外の旅費交通費及び日当(以下「その他の旅費」という。)については、Jから請求人に対して直接請求し、請求人からJに直接支給されている。この請求に当たっては、請求人の社内で旅費交通費等の請求に通常使用されている請求人名が印字された出張報告書の様式が使用されている。
 そして、Jへの航空券及びその他の旅費の支給に際し、請求人は旅費交通費勘定により経理処理を行っている。
D その他
 Jは、平成7年から、e市に出張している間は、請求人が契約し、賃貸料を支払っているワンルームマンションに滞在している。
 また、請求人において、Jの委託業務に係る勤務状況が確認できる出勤簿やその他の書類はない。
 そして、本件旧営業等委託契約締結前後の請求人において、J以外に経理担当者が増員されたという事実は認められない。
E まとめ
 上記AないしDからすれば、Jは、少なくとも平成4年以降、毎月2週間程度g県からe市に出張し、請求人の経理業務を行っていたと認められるが、Jの請求人における経理業務の内容は、平成4年に監査役に就任して以来、本件旧営業等委託契約の締結の前後においても変更がないと認められる。
 そうすると、Jは本件旧営業等委託契約若しくは本件営業等委託契約に基づいて経理業務を行っていたのではなく、請求人の役員として経理業務を行っていたと認めるのが相当である。
(ト) 本件事務等委託契約について
A 関係者の答述
(A) G社長は当審判所に対し要旨次のとおり答述した。
 本件事務等委託契約については、自分は分からない。
 また、平成13年5月31日に契約の一部を解約したことも分からない。
(B) Hは当審判所に対し要旨次のとおり答述した。
 Pは、本件事務等委託契約における業務として、請求人のh支店の電話応対と郵便物の差出し及び受取を行っており、当該契約における同支店の経理業務は、請求人の本社に勤務しているKが行っている。
(C) Pは当審判所に対し要旨次のとおり申し述べた。
a 自分は新L社のアルバイトであり、新L社における担当業務は、顧客台帳の管理及びX社の別荘管理料の管理等である。
b 自分は、請求人と新L社との間の業務委託契約において、請求人のh支店における「伝票処理及びその他一般事務」の従事者になっていることについては全く知らなかった。
c 請求人のh支店に営業担当社員が配置されていないときは、電話の応対や、同支店宛の郵便物を開封し必要と思われるものについては請求人へ送付していた。同支店に営業担当社員が配置されているときは、営業担当社員の不在時に電話の応対を行っていた。郵便物は、大部分が講習会の案内やセール等のダイレクトメールであった。電話や郵便物については件数的にめったになかった。
B その他
(A) Pの委託業務の実施状況について、報告書等、書面で作成されているものはなく、また、請求人への報告等もされていない。
(B) 請求人のh支店は新L社の事務所内にあり、一人分の机と電話一台が設置されている。
C まとめ
 新L社の事務室内にある請求人のh支店における業務は、上記Aの(B)、Aの(C)のc及びBの(B)からすれば、請求人の営業担当社員が営業業務を行うほかは、電話応対及び郵便物の開封発送等であり、しかも件数的にはまれにしかない程度のものにすぎず、そのため、経理業務(伝票処理及びその他一般事務)もまたほとんど生じないと認められるところ、当該経理業務は、請求人の本社従業員であるKが行っていたと認められる。
 また、上記Aの(C)及びBの(A)からすれば、新L社のアルバイトであるPは、自身が当該業務の従事者となっていることも承知しておらず、新L社における業務を行う傍らに行える極めて補助的な請求人の業務を行ったにすぎないと認められ、これらのことは、上記Aの(A)のとおり、G社長が本件事務等委託契約については分からない旨答述していることとも符合する。
 以上のことからすれば、本件事務等委託契約は、極めて軽微な業務について締結されたものと認められ、また、その存在そのものが関係者にも認知されていなかったと認めるのが相当であり、新L社は、これに係る業務を行っていなかったというべきである。
(チ) 本件R社営業委託契約について
A G社長は当審判所に対し要旨次のとおり答述した。
 平成14年頃に、SがR社に入社し、y及びt地区の百貨店等で黒酢の試飲会を行うようになったことから、Sが試飲会を行う際にその地域で名刺営業をしてもらうために、本件R社営業委託契約を締結した。
B Hは当審判所に対し要旨次のとおり答述した。
 本件R社営業委託契約における従事者に係る記載がないものの、営業業務はSが行っている。
C Sは当審判所に対し要旨次のとおり答述した。
(A) 自分は、平成14年4月にR社に入社し、営業を担当しており、顧客の新規開拓や百貨店での試飲会などを行っている。平成14年4月からu県下、平成14年末くらいからu県を含むy地区を担当していた。平成16年くらいからy地区の他にt地区にある百貨店を中心に営業を行っていた。
(B) 名刺営業を行うに当たって辞令等はもらっていないが、請求人から渡された名刺を使用して請求人の名刺営業も行った。名刺営業は、出張する地域の高速道路のインター付近のV社事務所に名刺を置くことである。
(C) 名刺営業した結果については、資料は作成しておらず報告もしていない。自分の名前が記載された営業実績表は、平成20年頃にJから、過去5年間分くらいの営業実績表を作成するように言われて作成したものである。請求人から渡された営業実績表の様式に、自分が毎月の日程を管理するために作成している「試飲販売予定表」を基に、出張した際の初日か最終日にV社事務所に行くことができたであろうと思われる日付と場所に丸印を付けたので、実際に名刺営業を行った日より多く印を付けたと思う。
(D) r地区では名刺営業は行っておらず、r地区の営業を本格的に行うようになった平成16年頃からは、従来行っていたy地区での名刺営業も行っていない。
D 営業実績表及び出張報告書
(A) R社は、本件調査担当職員の調査の際、平成14年4月から平成19年6月までの間にy地区の旧V社事務所に対して名刺営業を行った日に丸印をつけた営業実績表を月単位に作成し請求人に提出した。
(B) Sの出張報告書によれば、SのR社でのr地区の営業が本格的に行われるようになったのは平成15年5月以降であった。
E まとめ
 上記A、B並びにCの(A)及び(B)によれば、R社が行った本件R社営業委託契約に係る業務は、Sがu県下若しくはu県を含むy地区においてR社の営業活動を行う際に、その出張する地域の高速道路のインター付近のV社事務所に請求人の名刺を置いてくる業務とのことであるが、上記Cの(C)及びDの(A)のとおり、まる1その業務について請求人に報告していないこと、まる2営業実績表は、Sが遡ってその業務を行うことが可能だったと思える日をまとめたものにすぎないこと、また、まる3上記Cの(D)及びDの(B)のとおり、SがR社でのr地区の営業を本格的に行うようになってからは、その業務自体を行う者もいない状態になっていたことなどからすれば、本件R社営業委託契約の業務は、R社において少なくとも平成15年5月以降は全く行われていなかったと認めるのが相当であり、それ以前についても、行われていたことを示す証拠はない。
 したがって、R社は、本件R社営業委託契約に係る業務を行っていなかったというべきである。
ロ 法令解釈
(イ) 法人税法は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、売上原価等の原価の額、販売費、一般管理費その他の費用の額、損失の額で資本等取引以外の取引に係るものとし(同法第22条第3項)、これらの額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとしている(同法同条第4項)。そして、特定の支出が経費として認められるためには、その支出が事業の遂行に通常必要な費用であることが要求されるから、その認定のためには個別具体的な支出ごとに業務関連性、必要性が検討されるべきである。
(ロ) 法人税法第37条第7項は、「寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人」の行う「金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」と規定しており、このことに照らすならば、法人税法上の寄附金の概念は、民法上の贈与のそれと実質的には同一であり、ただ移転の対象となるものが財産に限定されず、財産以外の経済的利益を含むところに違いがあるだけであると解するのが相当である。そして、民法上の贈与については、財産上の給付が「無償にて」なされることを要し、ここにいう無償とは、何らの対価を伴わないことを意味し、贈与者が贈与をする動機には種々のものがあるにしても、給付自体に対して反対給付が伴っていなければ、無償というのを妨げないものと解されている。もっとも、同項かっこ書きは、「広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきもの」を寄附金から除外しているので、これらは当然に寄附金から除外されることになる。
ハ 本件への当てはめ
(イ) 本件営業等委託料について
 上記イの(ニ)のC及びイの(ホ)のCのとおり、本件各事業年度においては、本件営業等委託契約に基づくH及びNの役務の提供を行っていたと認めることはできず、また、上記イの(ヘ)のEのとおり、Jは、本件営業等委託契約において、請求人の役員として経理業務を行っていたと認められることから、新L社は本件営業等委託契約に基づく役務の提供を行っていたと認めることはできず、本件営業等委託料は、委託業務の役務提供の有無にかかわらずに支払われている対価性のないものであるというべきである。
 そして、上記1の(4)のホの(ロ)のとおり、本件営業等委託料は、請求人が新L社に対して経費等に充てるため毎月貸し付けた資金に係る貸付債権と相殺されていることからすると、その支払額は、請求人がグループ法人である新L社に対して債務消滅という経済的利益を無償で供与したこととなり、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当すると認めるのが相当である。
(ロ) 本件事務等委託料について
 上記イの(ト)のCのとおり、本件事務等委託契約に示された業務は請求人の従業員であるKが行っており、新L社の従業員が行っている事実は認められず、委託業務の履行状況等の確認もない状態での本件事務等委託料の支払は、委託業務の役務提供の有無にかかわらずに支払われている対価性のないものであるというべきである。
 そして、上記1の(4)のホの(ロ)のとおり、本件事務等委託料は、請求人が新L社に対して経費等に充てるため毎月貸し付けた資金に係る貸付債権と相殺されていることからすると、その支払額は、請求人がグループ法人である新L社に対して債務消滅という経済的利益を無償で供与したこととなり、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当すると認めるのが相当である。
(ハ) 本件R社営業委託料について
 上記イの(チ)のEのとおり、本件各事業年度においては、本件R社営業委託契約に基づく業務がR社において行っていたと認めることはできず、委託業務の履行状況等の確認もない状態での本件R社営業委託料の支払は、委託業務の役務提供の有無にかかわらずに支払われている対価性のないものであるというべきである。
 そして、上記1の(4)のホの(ロ)のとおり、本件R社営業委託料は、請求人がR社に対して経費等に充てるため毎月貸し付けた資金に係る貸付債権と相殺されていることからすると、その支払額は、請求人がグループ法人であるR社に対して債務消滅という経済的利益を無償で供与したこととなり、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当すると認めるのが相当である。
 なお、原処分庁は、本件R社営業委託料のうち、平成14年7月から平成17年12月までは、役務提供の実体があると認定し本件R社営業委託料を損金の額として認めているが、上記のとおり、平成14年7月から平成17年12月までの委託料についても寄附金の額に当たることから、原処分庁の認定には誤りがある。
(ニ) 請求人の主張について
A 請求人は、本件営業等委託料及び本件事務等委託料について、当該各業務委託契約に基づく各委託業務を行っていることから、費用計上した各業務委託料は損金の額に算入される旨主張しているが、上記(イ)及び(ロ)のとおり、当該各業務委託料は、対価性がある支払とは認められず、法人税法第37条第7項の寄附金の額に該当することとなる。
 したがって、請求人の主張には理由がない。
B 請求人は、本件各事業年度において、Sは、本件R社営業委託契約に基づく委託業務を行っていることから、原処分庁が行った平成18年以降の当該業務委託料についての寄附金認定は誤っている旨主張しているが、上記(ハ)のとおり、本件各事業年度において、Sが当該契約に基づく役務提供を行っていたと認めることはできないから、請求人の主張は認められない。
(ホ) T会長及び新L社に対する貸付利息について
 原処分庁は、本件営業等委託料及び本件事務等委託料の計上によって生じた簿外資金のうち、新L社を経由してT会長に流用された部分については、請求人からT会長に対する貸付金、新L社に留保された部分については、請求人から新L社に対する貸付金であるとし、当該貸付けに係る利息相当額が益金の額に算入されていない旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)及び(ロ)のとおり、本件営業等委託料及び本件事務等委託料は、請求人からグループ法人である新L社に対する寄附金の額に当たると認めるのが相当であるから、原処分庁の主張には理由がない。

(2) 争点2 本件営業等委託料、本件事務等委託料及び本件R社営業委託料の金額を法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入したことについて、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為に当たるか否か。

イ 法令解釈
 通則法第68条第1項の規定による重加算税を課し得るためには、納税者が故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に対し、納税者において過少申告の認識を有していることまでを必要とするものではないと解するのが相当である。
 また、ここでいう「事実を隠ぺいする」とは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠ぺいしあるいは故意に脱漏することをいい、「事実を仮装する」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかもそれが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲することをいうものと解される。
ロ 本件への当てはめ
(イ) 本件営業等委託契約について
 上記(1)のイの(ニ)のC及び(1)のイの(ホ)のCのとおり、本件各事業年度においては、H及びNが本件営業等委託契約に基づく役務の提供を行っていたと認めることはできず、また、上記(1)のイの(ヘ)のEのとおり、Jは、本件営業等委託契約において、請求人の役員として経理業務を行っていたと認められるところ、請求人は、Hが、上記(1)のイの(ニ)のAの(B)のbのとおり、R社の代表取締役に就任してからは、名刺営業を行うことは難しい状況にあったこと、Nが、上記(1)のイの(ホ)のCのとおりの健康状態であったことなどから、本件各事業年度前には、両名ともに、委託業務を行える状況にないことを認識しており、また、Jは、上記(1)のイの(ヘ)のEのとおり、役員として経理業務を行っている状況であったにもかかわらず、形骸化した業務委託契約を解除することもなく当該業務委託料を支払い続け、さらに、上記1の(4)のロの(ホ)のとおり、平成15年6月には、形骸化した業務委託契約について、業務委託料の金額変更まで行い、長年にわたり著しく高額な業務委託料の支払を続けていた。
 そして、上記1の(4)のホの(ロ)のとおり、その決済については、新L社に対する貸付債権と相殺していること、上記(1)のイの(イ)のCのとおり、業務委託契約の一方の当事者である新L社の代表取締役であるHは、T会長の支配下にあり、上記(1)のイの(ロ)のBの(A)のとおり、本件旧営業等委託契約の締結についてT会長及びG社長の決定に従っただけであると認められること、上記(1)のイの(ロ)のCのとおり、本件旧営業等委託契約は、請求人が旧L社を支援するために締結され、本契約の変更の内容は請求人が任意に記載できたと認められることからすると、本件営業等委託契約は、請求人がグループ法人である新L社に対する資金援助に係る支出を業務委託料の名目で支出するために作成した業務委託契約であると認められる。
(ロ) 本件事務等委託契約について
 上記(1)のイの(ト)のCのとおり、本件事務等委託契約に示された業務は請求人の従業員であるKが行っており、新L社の従業員が行っている事実は認められず、請求人は、そもそも業務といえる内容のものではない委託業務について本件事務等委託契約を締結し、また、委託業務実施の有無にかかわらずに長年にわたり事務委託料の支払を続けていた。
 そして、上記1の(4)のホの(ロ)のとおり、その決済については、新L社に対する貸付債権と相殺していること、上記(1)のイの(イ)のCのとおり、業務委託契約の一方の当事者である新L社の代表取締役であるHは、T会長の支配下にあると認められることからすると、本件事務等委託契約は、請求人がグループ法人である新L社に対する資金援助に係る支出を事務委託料の名目で支出するために作成した業務委託契約であると認めるのが相当である。
(ハ) 本件R社営業委託契約について
 上記(1)のイの(チ)のEのとおり、本件各事業年度においては、本件R社営業委託契約に基づく業務がR社において行っていたと認めることはできないところ、請求人は、本件R社営業委託契約を解除することはせず、委託業務実施の有無にかかわらず、長年にわたり業務委託料の支払を続けていた。
 そして、上記1の(4)のホの(ロ)のとおり、その決済については、R社に対する貸付債権と相殺していること、上記(1)のイの(イ)のCのとおり、営業委託契約の一方の当事者であるR社の代表取締役であるHは、T会長の支配下にあると認められることからすると、本件R社営業委託契約は、請求人がグループ法人であるR社に対する資金援助に係る支出を業務委託料の名目で支出するために作成した業務委託契約であると認めるのが相当である。
(ニ) 判断
 上記(イ)ないし(ハ)のことからすると、請求人は、グループ法人に対する資金援助を各業務委託料に仮装して行い、この仮装した事実に基づいて納税申告書を提出したと認められ、このことは、通則法第68条第1項の規定に該当するから、原処分のうち、この部分についてされた重加算税の賦課決定は適法である。
(ホ) 請求人の主張について
 請求人は、本件営業等委託料、本件事務等委託料及び本件R社営業委託料は実体のある業務委託契約に基づいて支払われたものであり、架空経費であると認定した判断は誤りである旨主張する。
 しかしながら、上記(ニ)のとおり、重加算税の賦課決定は適法であることから、請求人の主張には理由がない。

(3) 更正の期間制限

イ 法人税について
 請求人は、別表1の「修正申告等」欄のとおり、売上除外等を内容とする法人税の修正申告書を提出し、これに対して原処分庁は、重加算税を賦課決定している。この売上を除外して申告した請求人の行為は、通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当し、当該行為により税額を免れた場合、法定申告期限から7年を経過する日までその国税について更正することができることから、原処分庁が、平成15年6月期について更正処分を行ったことは適法と認められる。
ロ 消費税等について
 請求人は、別表2の「修正申告等」欄のとおり、売上除外等を内容とする消費税等の修正申告書を提出し、これに対して原処分庁は、重加算税を賦課決定している。この売上を除外して申告した請求人の行為は、通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当し、当該行為により税額を免れた場合、法定申告期限から7年を経過する日までその国税について更正することができることから、原処分庁が、平成15年6月期課税期間について更正処分を行ったことは適法と認められる。

(4) 本件各法人税更正処分

 本件営業等委託料、本件事務等委託料及び本件R社営業委託料の金額については、上記(1)のハの(イ)ないし(ハ)のとおり、寄附金の額と認められ、本件各事業年度の寄附金の額は、別表3の「合計」欄の額となる。当該金額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当し、同条第1項の規定により、本件各事業年度の寄附金の損金不算入額を計算すると、別表4の「まる14差引損金不算入額」欄のとおりとなり、当該金額は本件各事業年度の損金の額に算入することはできない。
 また、本件営業等委託料及び本件事務等委託料は、上記(1)のハの(ホ)のとおり、貸付金ではなく、寄附金の額に当たることから、原処分庁が当該貸付金に係る利息相当額として益金の額に算入した受取利息は、別表5の「受取利息」欄の「審判所認定額」欄のとおり零円となる。
 そうすると、本件各事業年度の所得金額は、別表5の「所得金額」欄の「審判所認定額」欄のとおりであり、本件各事業年度の課税標準等及び税額等を計算すると、別紙2ないし別紙7の「取消額等計算書」の4課税標準等及び税額等の計算の「裁決後の額B」欄のとおりとなり、本件各事業年度の税額は、いずれも原処分の額を下回ることから、本件各法人税更正処分は、いずれもその一部を取り消すべきである。

(5) 本件各法人税賦課決定処分

 上記(2)のロの(ニ)のとおり、本件営業等委託料、本件事務等委託料及び本件R社営業委託料の金額を、法人税の所得金額の計算上損金の額に算入した請求人の行為には、隠ぺい又は仮装の事実が認められることから、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていることとなるが、上記(4)のとおり、本件各法人税更正処分の一部を取り消すべきであることから、重加算税の額は、別紙2ないし別紙7の「取消額等計算書」の4課税標準等及び税額等の計算の「重加算税」欄の「裁決後の額B」欄のとおりとなり、いずれも原処分の額を下回ることから、本件各法人税賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。

(6) 本件各消費税等更正処分

 本件営業等委託料、本件事務等委託料及び本件R社営業委託料の金額については、上記(1)のハの(イ)ないし(ハ)のとおり、寄附金の額と認められ、本件各事業年度の寄附金の額は、別表3の「合計」欄の額となる。そうすると、当該金額は、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないこととなる。
 したがって、本件各課税期間の消費税等の課税標準等及び税額等を計算すると、別表6の消費税等の額の「審判所認定額」欄のとおりとなり、平成15年6月期課税期間ないし平成18年6月期課税期間については、いずれも原処分の額を上回り、平成19年6月期課税期間及び平成20年6月期課税期間については、いずれも原処分の額と同額となることから、本件各消費税等更正処分は適法である。

(7) 本件各消費税等賦課決定処分

 上記(2)のロの(ニ)のとおり、本件営業等委託料、本件事務等委託料及び本件R社営業委託料の金額を法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入した請求人の行為には、隠ぺい又は仮装の事実が認められることから、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしており、本件各消費税等更正処分については、上記(6)のとおりとなることから、重加算税の額は、別表6の重加算税の額の「審判所認定額」欄のとおりとなり、平成15年6月期課税期間ないし平成18年6月期課税期間については、いずれも原処分の額を上回り、平成19年6月期課税期間及び平成20年6月期課税期間については、いずれも原処分の額と同額となることから、本件各消費税等賦課決定処分は適法である。

(8) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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