(平成23年9月5日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、贈与により取得した土地は財産評価基本通達24−4《広大地の評価》に定める広大地に該当するとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、当該土地について同通達24−4に定める広大地に該当しないとして更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったのに対し、請求人が違法を理由にその全部の取消しを求めた事案であり、争点は、当該土地が同通達24−4に定める広大地に該当するか否かである。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成22年10月29日請求)に至る経緯は、別表1のとおりである。

(3) 関係法令等

 別紙1のとおりである。

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 広大地該当性が問題となっている土地等
(イ) 請求人、C、D及びEは、昭和29年7月○日に死亡したF(以下「被相続人」という。)の相続人であり、a市h町○−○及び○−○の地積合計749.98平方メートルの土地(以下「甲土地」という。)並びにa市h町○−○の地積449.58平方メートルの土地(以下「乙土地」という。)を相続し、平成4年5月25日付で各々の持分は4分の1であるとする所有権移転登記を経由した。
(ロ) 請求人は、平成4年3月18日頃、被相続人の妻であるG、C、D及びEの4名と共に、甲土地及び乙土地の一部である地積198.69平方メートルの土地(以下、この土地と甲土地を併せた地積合計948.67平方メートルの土地を「本件土地」という。)上に、共同住宅(家屋番号○−○、鉄筋コンクリート造アルミニューム板葺3階建の床面積合計766.34平方メートルの建物(以下「本件建物」という。))を建築し、平成4年7月1日付で、Gの持分が13分の5、その他の共有者の持分がそれぞれ13分の2であるとする所有権保存登記を経由した。そして、本件建物は、賃貸マンションとしての用途に供されてきた。
(ハ) 請求人、C、D及びEは、平成8年9月○日にGが死亡したことから、Gの本件建物に係る持分(13分の5)を相続により取得し(各52分の5)、平成20年9月11日付で原因を相続とする所有権移転登記を経由した。なお、その結果、本件建物に係る各々の持分は4分の1となった。
(ニ) 請求人は、平成16年12月○日に死亡したDの甲土地、乙土地及び本件建物に係る各持分を相続し、平成20年9月11日付で原因を相続とする所有権移転登記を経由した。
(ホ) 請求人は、平成20年8月27日にCから、甲土地の持分(4分の1)の贈与を受け(以下、この贈与を「本件贈与」という。)、平成20年9月11日付及び同年10月21日付で原因を贈与とする所有権移転登記を経由した。
ロ 本件土地の形状等
(イ) 本件土地は、別紙2の本件土地と表示した位置に所在しており、H電鉄J駅から北東へ徒歩約12分、同電鉄K駅から北西へ徒歩約14分という位置関係にある。
 なお、本件土地の形状は別紙3のとおりであり、本件建物の敷地及び本件建物入居者専用の駐車場として利用されている。
(ロ) 本件土地は、都市計画法第8条第1項第1号に規定する第一種低層住居専用地域に指定されており、建ぺい率は60%、容積率は150%である。
 なお、本件土地の西側には、歩道幅員1.70メートル、車道幅員4.40メートルの合計幅員6.10メートルの市道L線(以下「市道L線」という。)が通っている。そして、市道L線は、都市計画道路に指定され、西側へ拡張して幅員8メートルにする予定となっている。
ハ 本件贈与に係る納税申告
 請求人は、本件贈与に係る平成20年分の贈与税の申告書(以下「本件申告書」という。)を、別表1の「申告」欄のとおり記載して、法定申告期限内の平成21年3月16日に原処分庁に対して提出した。
 なお、本件申告書における本件土地の評価額は、広大地通達を適用せずに算定されていた。
ニ 本件土地に係る更正の請求
 請求人は、平成22年3月15日付で、本件土地が広大地通達の定める広大地に該当するとして、平成20年分の贈与税の更正の請求書(以下「本件更正の請求」という。)を別表1の「更正の請求」欄のとおり記載して原処分庁に提出した。
ホ 上記ニの更正の請求に係る通知処分
 原処分庁は、平成22年6月11日付で、本件更正の請求に対して別表1の「原処分」欄のとおり更正をすべき理由がない旨の通知処分を行った。

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2 主張

請求人 原処分庁
 広大地通達は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、経済的に最も合理的な開発行為が戸建分譲開発であり、当該開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められる宅地については、標準的な宅地より減価が生じることから、相当の減価を行うものである。
 また、路線価方式による土地の評価は、そもそも土地と建物を別個に評価し、土地上に建物が建っている場合の建付減価などは考慮せず、更地として評価することを前提としており、さらに、公共公益的施設用地の負担の要否は、現状で当該負担を生ずるか否かではなく、開発行為を行うとした場合に潰れ地が生じるか否かで判断すべきである。
 したがって、現状が賃貸マンションの敷地の用に供されていることのみをもって、広大地通達の定めの適用を排除すべきではない。
 そうすると、本件土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、本件土地における経済的に最も合理的な開発行為は戸建分譲開発であり、その開発行為を行うとした場合には、公共公益的施設用地の負担が必要であることから、広大地に該当する。
 広大地通達における広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地で、開発行為を行うとした場合に道路や公園等の公共公益的施設用地の負担が必要と認められる宅地をいう旨定められている。
 したがって、既に開発行為を了しているマンション等の敷地用地については、新たに公共公益的施設用地の負担が生じることはないため、標準的な地積に比して著しく広大であっても、広大地には該当しない。
 ここでいうマンション等とは、中高層の集合住宅等であり、国土交通省における統計資料等において中高層(3階建以上)の鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート又は鉄骨造の住宅とされ、集合住宅には、分譲マンション及び賃貸マンションも含まれるものと解される。
 これを甲土地を含む本件土地についてみると、本件土地上の本件建物は、鉄筋コンクリート造アルミニューム板葺3階建の共同住宅であることから、本件建物は上記のマンション等であることが認められる。
 そうすると、本件土地は、本件建物及び本件建物入居者専用の駐車場の敷地であると認められるから、既に開発を了しているマンション等の敷地用地であるので、新たに公共公益的施設用地の負担が生じることはないため、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地かどうかを検討するまでもなく、本件土地は広大地には該当しない。

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3 判断

(1) 法令等の解釈

イ 財産の評価について
 相続税法第22条は、贈与により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価によるべき旨規定しているが、ここでいう時価とは、贈与時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
 もっとも、客観的な交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではないから、課税実務上は、贈与により取得した財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方式によって贈与により取得した財産を評価することとされている。
 これは、贈与により取得した財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることが避け難く、また、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあること等から、あらかじめ定められた評価方式によりこれを画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であるという理由に基づくものと解される。
 そうすると、贈与により取得した財産の評価は、評価通達に定められた評価方式によらないことが正当として是認されるような特別な事情がある場合を除き、課税の公平の観点から、評価通達の評価方式に基づいて行うことが相当と解される。
ロ 広大地通達について
(イ) 広大地通達の趣旨等
 広大地通達は、広大地について減額補正をして評価すべきものとしているが、それは、次のような趣旨に基づくものと解される。すなわち、その属する地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大である宅地につき、それが評価時点において経済的に最も合理的に使用(以下、宅地を経済的に最も合理的に使用することを「最有効使用」という。)されておらず、例えば、戸建住宅地として開発行為を行う場合には、開発許可を受けるために道路、公園等の公共公益的施設の設置用地の負担が必要となり、かなりの潰れ地が生じることがあるところ、このような潰れ地の発生という減価要因を評価通達15から20−5により減額補正するだけでは十分といえない場合があることから、これを当該宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的な個別事情として、別途価値が減少していると認められる範囲で減額補正することとしたものと解される。
 このような広大地通達の趣旨に照らすと、評価対象宅地につき、評価時点において、最有効使用がされていない場合であっても、その時点における当該宅地の属する地域の標準的使用の状況等に照らして、当該宅地を分割することなく一体として使用することが最有効使用であると認められる場合には、公共公益的施設用地の負担の必要がないものと考えられるから、このような宅地は、広大地に該当しないものと解するのが相当である。
 また、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地用地や評価時点において宅地として有効利用されている建築物の敷地用地については、標準的な地積に比して著しく広大であっても、特段の事情がない限り、広大地には該当しないと解される。
(ロ) 広大地通達における「その地域」
 広大地通達では、「その地域における標準的な宅地の地積に比して地積が広大な宅地で開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が認められるもの」の価額の算定について、所定の減額計算を行う旨定められており、ここにいう「その地域」とは、まる1河川や山などの自然的状況、まる2行政区域、まる3都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、まる4道路、まる5鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。

(2) 認定事実

 請求人の提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件土地及び本件建物の利用状況
(イ) 本件土地は、上記1の(4)のロの(イ)のとおり、本件建物の敷地及び本件建物入居者専用の駐車場として利用されており、また、請求人が開発行為を行う予定はない。
(ロ) 本件建物は、総戸数14戸のうち、管理人室及び物置を除く12戸の賃貸が可能であるところ、平成19年分及び平成20年分の所得税の確定申告書に添付の不動産所得の収入の内訳書には、別表2及び別表3のとおり、11戸又は12戸から賃貸料収入がある旨記載されていた。
(ハ) 本件建物及び本件建物入居者専用の駐車場の賃貸料収入の合計額は、平成19年分は、別表2の年間賃貸料及び敷引計の合計欄のとおり、13,412,000円であり、当該金額のうち、別表2の(注)2のとおり、請求人は4,470,666円の収入を得ており、平成20年分は、別表3の年間賃貸料及び敷引計の合計欄のとおり、13,887,000円であり、当該金額のうち、別表3の(注)3のとおり、請求人は7,644,999円の収入を得ていた。
(ニ) 本件建物は、上記1の(4)のイの(ロ)のとおり、平成4年に建築された鉄筋コンクリート造アルミニューム板葺3階建建物であり、本件建物の耐用年数は、別紙1の3の耐用年数省令によれば47年であるところ、外観上、建築後の経年によることを超える損傷は存しない。
ロ 本件土地周辺地域の利用状況
(イ) 本件土地の所在するa市h町○−○(以下「本件○丁目地区」という。)は、上記1の(4)のロの(ロ)のとおり、第一種低層住居専用地域であるところ、別紙2のとおり、本件○丁目地区の西側には市道L線が、本件○丁目地区の南側には平均幅員4.00メートルの市道d号線(以下「市道d号線」という。)が、本件○丁目地区の北側には、幅員4.00メートルから幅員5.60メートルの市道e号線(以下「市道e号線」という。)が、本件○丁目地区の東側には平均幅員6.70メートルの市道f号線(以下「市道f号線」という。)がそれぞれ敷設されており、また、本件○丁目地区内には、同地区を東西に分断するように、南北に道路(以下「本件○丁目道路」という。)が敷設されている。
 そして、別紙2のとおり、市道L線を境に西側は、a市h町5丁目及び6丁目、市道d号線を境に南側は、同市h町1丁目、市道e号線を境に北側は、同市h町3丁目、また、市道f号線を境に東側は、同市g町1丁目及び2丁目となっている。
(ロ) 本件○丁目地区の土地建物の登記事項証明書について、当審判所が調査したところ、その表題部の記載によれば、本件○丁目道路の東側の地域(以下「本件東側地域」という。)に所在する建物は135戸、本件○丁目道路の西側の地域(以下「本件西側地域」という。)に所在する建物は32戸であった。
 そして、本件東側地域の135戸の建物のうち、戸建住宅が133戸、共同住宅が2棟であり、戸建住宅の建築年次別の内訳は、昭和30年代以前が11戸、昭和40年代が13戸、昭和50年代が27戸、昭和60年代が9戸、平成元年から平成9年まで(以下「平成元年代」という。)が43戸、平成10年以降が30戸であり、共同住宅の建築年次別の内訳は、昭和40年代が1棟、平成元年代が1棟であった。なお、本件贈与の日以降においては、新築された戸建住宅及び共同住宅はなかった。
 一方、本件西側地域の32戸の建物のうち、戸建住宅が24戸、共同住宅が8棟であり、戸建住宅の建築年次別の内訳は、昭和30年代以前が5戸、昭和40年代が6戸、昭和50年代が8戸、昭和60年代が2戸、平成元年代が3戸であり、共同住宅の建築年次別の内訳は、昭和40年代が2棟、昭和60年代が1棟、平成元年代が2棟、本件贈与の日以降が3棟(3階建以下)であった。
(ハ) また、別表4のとおり、本件西側地域において当審判所による登記事項証明書及び住宅地図の調査により確認した利用単位ごとの区画は48画地であり、当該地域(地積合計14,320.16平方メートル)における、戸建住宅としての1画地当たりの地積は234.39平方メートル(地積合計7,265.97平方メートル、区画は31画地)、共同住宅(3階建以下)としての1画地当たりの地積は386.65平方メートル(地積合計2,706.59平方メートル、区画は7画地)、共同住宅(4階建以上)としての1画地当たりの地積は878.50平方メートル、また、駐車場及びその他の雑種地としての1画地当たりの地積は385.46平方メートル(地積合計3,469.10平方メートル、区画は9画地)である。
 なお、本件西側地域に所在する土地について、駐車場及びその他の雑種地を除いてみると、宅地として利用されている土地の地積の総合計は、別表4のまる5の面積欄のとおり、10,851.06平方メートルであり、これらの宅地の用途別の面積の割合についてみると別表4の宅地合計面積に対する割合のまる1ないしまる3欄のとおり、戸建住宅用地が66.96%、共同住宅(3階建以下)用地が24.94%、共同住宅(4階建以上)用地が8.10%である。
ハ 近傍の公示地
 別紙2のとおり、本件土地の北90メートルに位置するa市h町3丁目○の土地は、地価公示法の規定に基づく地価公示地であるが(以下、この公示された土地を「本件公示地」という。)、本件公示地は、地積約426平方メートル、利用現況が住宅であり、また、周辺地利用現況は、一般住宅、アパート、店舗等が混在する住宅地域である。
ニ a市開発基準
 a市は、a市内の土地について開発行為を行う場合には、a市が定めたa市開発指導要綱、a市開発基準(以下「開発基準」という。)に基づく指導を行っており、本件土地について開発行為を行う場合、開発基準に基づく制限を受けるところ、開発基準第2条《適用対象事業》第3項において、「都市計画法第29条第1項本文の規定に基づく許可が必要な開発行為」として記載されており、別紙1の6及び7のとおり、都市計画法第29条第1項等によると、a市における都市計画法上の開発行為を要する面積基準は、500平方メートルとなる。

(3) 判断

 本件審査請求においては、上記2のとおり、本件土地が広大地通達で定める「広大地」に該当するか否かに関して争いがあるが、この点を除き、本件贈与に係る財産の評価につき、評価通達の定めによることについては請求人と原処分庁との間に争いはなく、当審判所の調査の結果によっても、評価通達に定められた方式によらないことが正当として是認されるような特別の事情は認められない。
 また、甲土地は、上記1の(4)のイの(イ)及び(ロ)のとおり、本件土地の一部であるが、土地の評価単位としては、その宅地を取得した者が、その土地を使用収益、処分することができる利用単位ないし処分単位とするのが相当であると解されるところ、本件土地は、上記(2)のイの(イ)のとおり、本件建物の敷地及び本件建物入居者専用の駐車場として一体的に使用されていると認められることから、本件土地を1画地の宅地として評価することが相当であると認められる。
 そこで以下、評価通達の定めに従って、本件土地が広大地に該当するか否かについて判断する。
イ 本件土地の所在する「その地域」
 広大地通達における「その地域」については、上記(1)のロの(ロ)のとおり、まる1河川や山などの自然的状況、まる2行政区域、まる3都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、まる4道路、まる5鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解される。
 これを本件についてみると、本件○丁目地区内には一級河川等の大きな河川、山、鉄道及び大きな公園等は存在せず、全て同一の行政区域及び都市計画法による同一の建築物の用途制限の下にあることが認められる。
 しかしながら、本件○丁目地区の土地、建物の開発状況及び利用状況についてみると、上記(2)のロの(ロ)のとおり、登記事項証明書の記載によれば、本件東側地域においては、135戸の建物のうち、戸建住宅が133戸、共同住宅が2棟であり、戸建住宅の建築年次別の内訳は、昭和30年代以前が11戸、昭和40年代が13戸、昭和50年代が27戸、昭和60年代が9戸、平成元年代が43戸、平成10年以降が30戸であり、共同住宅の建築年次別の内訳は、昭和40年代が1棟、平成元年代が1棟であり、本件贈与の日以降においては、新築された戸建住宅及び共同住宅は認められないのに対し、本件西側地域においては、32戸の建物のうち、戸建住宅が24戸、共同住宅が8棟であり、戸建住宅の建築年次別の内訳は、昭和30年代以前が5戸、昭和40年代が6戸、昭和50年代が8戸、昭和60年代が2戸、平成元年代が3戸であり、共同住宅の建築年次別の内訳は、昭和40年代が2棟、昭和60年代が1棟、平成元年代が2棟、本件贈与の日以降が3棟(3階建以下)であることからすると、本件東側地域と本件西側地域では、開発状況や土地の利用状況は大きく異なっているといえる。さらに、本件西側地域の西側、南側及び北側は、上記(2)のロの(イ)のとおり、それぞれ、市道L線、市道d号線及び市道e号線を境として町名を異にしている。
 以上によれば、本件土地の属する「その地域」は、本件西側地域と認めるのが相当である。
ロ 本件土地の地積
 広大地通達の適用される土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地に該当する必要があるところ、本件土地の地積は948.67平方メートルであり、上記(2)のハの本件公示地の地積である約426平方メートル及び上記(2)のニのa市における都市計画法上の開発許可を要する面積基準である500平方メートルを上回っている。
ハ 本件土地の利用状況
 本件土地は、上記1の(4)のイの(ロ)及び上記(2)のイの(イ)のとおり、平成4年3月18日ころに新築された鉄筋コンクリート造アルミニューム板葺3階建の本件建物及び本件建物入居者専用の駐車場の敷地用地として一体として利用されており、本件建物は、上記(2)のイの(ロ)のとおり、賃貸可能な12戸中11戸又は12戸という高い入居率を実現している。そして、本件建物の耐用年数は、上記(2)のイの(ニ)のとおり、耐用年数省令で規定する法定耐用年数47年であり、その外観上、著しく老朽化又は損傷しているといった事実も認められないことからすると、今後相当の期間利用することができるものと見込まれる。
 以上のとおり、本件土地は、開発行為を了した上、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められない。
ニ 本件西側地域における宅地の利用状況
 上記イのとおり、本件西側が広大地通達における「その地域」と認められるところ、本件西側地域内に存する宅地の用途別の面積の割合は、上記(2)のロの(ハ)のとおり、登記事項証明書及び住宅地図による限り、戸建住宅用地が66.96%、共同住宅(3階建以下)用地が24.94%、共同住宅(4階建以上)用地が8.10%であり、また、上記(2)のロの(ロ)のとおり、本件贈与の日を含む平成10年以降に本件西側地域内で新築された建物は共同住宅のみであることからすると、本件西側地域は、戸建住宅と共同住宅が混在する地域であると認められ、これらの用途のいずれもが本件西側地域における宅地の標準的な利用形態であると認めるのが相当である。そうすると、本件土地は、標準的な利用形態である共同住宅用地として既に利用されていることになり、周囲の状況に比して特殊な形態として利用されているものとはいえない。すなわち、本件土地は、その周辺地域の標準的な利用状況に照らしても、共同住宅用地として有効に利用されているということができる。
ホ 小括
 上記のイないしニによれば、本件土地は、その地積が、本件公示地の地積である約426平方メートル及びa市における都市計画法上の開発許可を要する面積基準である500平方メートルを上回っているものの、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺地域の標準的な使用状況に照らしても有効に利用されていると認められるから、上記(1)のロの(イ)の広大地通達の趣旨に鑑みても、広大地通達にいう広大地には該当しないものと認めるのが相当である。
ヘ 請求人の主張について
 上記(1)のロの(イ)のとおり、広大地通達の趣旨によれば、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であっても、公共公益的施設用地の負担が生じないと認められる土地については、広大地に該当しないと解されるところ、請求人は、路線価方式による土地の評価は、そもそも土地と建物を別個に評価し、土地上に建物が建っている場合の建付減価などは考慮せず、更地として評価することを前提としており、公共公益的施設用地の負担の要否は、現状で当該負担を生ずるか否かではなく、開発行為を行うとした場合に潰れ地が生じるか否かで判断すべきであり、本件土地の現状が、賃貸マンションである本件建物の敷地の用に供されていることのみをもって、広大地通達の定めの適用を排除すべきではない旨、及び本件土地における経済的に最も合理的な開発行為は戸建分譲開発であり、その開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要になるから、本件土地は広大地に該当する旨主張する。
 確かに、本件土地上に本件建物が建築されていることは、地積が著しく広大であるか否かの判定に直接影響を及ぼすものではないが、上記ホのとおり、本件土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されていると認められるから、広大地通達の趣旨に鑑みても、本件土地について開発行為を行うとした場合における公共公益的施設用地の負担の要否について検討するまでもなく、本件土地は同通達にいう広大地に該当しないものと認められるのであって、請求人の主張は、採用することができない。
ト まとめ
 以上のとおり、請求人の主張には理由がなく、上記1の(4)のニの更正の請求に対し、更正すべき理由がないとした原処分に違法はない。

(4) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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