(平成24年3月27日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、役員の分掌変更に伴い退職慰労金として役員給与を支給することを決定し、その一部を当該分掌変更のあった事業年度及びその翌事業年度に支給したとして、これを当該支給をした各事業年度の損金の額にそれぞれ算入して法人税の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該分掌変更の翌事業年度に支給された金員は退職給与ではなく損金の額に算入されない役員給与に当たるとして法人税の更正処分等及び源泉徴収に係る所得税の納税告知処分等を行ったことから、請求人が、当該金員は退職給与として取り扱われるべきであるなどとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成19年9月1日から平成20年8月31日までの事業年度(以下「平成20年8月期」といい、他の事業年度についても同様に略称する。)の法人税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、平成23年5月27日付で、平成20年8月期の法人税について、別表1の「更正処分等」欄記載のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件過少申告加算税賦課決定処分」という。)をするとともに、平成20年8月分の源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)について、別表2の「納税告知処分等」欄記載のとおりの納税告知処分(以下「本件納税告知処分」という。)及び不納付加算税の賦課決定処分(以下「本件不納付加算税賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として国税通則法(以下「通則法」という。)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号及び第3号の規定により、平成23年6月23日に審査請求をした。

(3) 関係法令等

 別紙1のとおりである。

(4) 基礎事実

 以下の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の代表取締役であったD(以下「本件役員」という。)は、平成19年8月31日に代表取締役を辞任し、非常勤取締役となった(以下、本件役員が非常勤取締役となったことを「本件分掌変更」という。)。本件分掌変更に伴い、本件役員の役員報酬は月額870,000円から400,000円に減額となった。
ロ 請求人の取締役会は、平成19年8月10日付で、「退職慰労金の計算」と題する書面(以下「本件計算書」という。)を作成した。本件計算書には、本件役員に退職慰労金として支給する役員給与について「250,000,000円を退職慰労金の額とし、支払は、平成19年8月末日75,000,000円、平成20年8月以降残額とする(3年以内)」旨記載されている(以下、この250,000,000円の役員給与を「本件退職慰労金」という。)。
 なお、本件計算書のほかに、本件退職慰労金の支給決定等に関する取締役会議事録及び株主総会議事録等の書面はない。
ハ 請求人は、本件退職慰労金として、平成19年8月31日に75,000,000円を、平成20年8月29日に125,000,000円をそれぞれ本件役員に支払った(以下、平成19年8月31日に支払われた75,000,000円を「本件第一金員」といい、平成20年8月29日に支払われた125,000,000円を「本件第二金員」という。)。
 なお、本件退職慰労金のうち残額の50,000,000円は支払われていない。
ニ 請求人は、本件役員が実質的に退職したと同様の事情にあり、本件第一金員及び本件第二金員が退職給与に当たるものとして、それぞれ平成19年8月期及び平成20年8月期の損金の額に算入して法人税の確定申告をするとともに、本件第一金員に対する源泉所得税○○○○円を平成19年9月6日に、本件第二金員に対する源泉所得税○○○○円を平成20年9月8日にそれぞれ納付した。
ホ 請求人は、原処分に係る調査において、原処分庁に対し、要旨次のとおり記載された平成22年10月20日付の書面(以下「本件書面」という。)を提出した。
(イ) 平成19年8月10日〜 正式に臨時株主総会及び臨時取締役会を開催し、退職金の支給等について決定。新代表の選任を行った。当社の業態では常に資金需要があり、今後の取引を考えると金融機関に対し欠損の決算書は出したくない。そこで分割払とし支給時に経費計上することとした。当期の支給金額は75,000,000円とした。新代表にはBが選任された。いずれについても異議なく承認、可決された。これらの議事録の控えについては、司法書士事務所にも確認したが現在見つかっていない。
(ロ) 平成19年8月末 退職金として75,000,000円を支給。
(ハ) 平成20年8月 退職金として125,000,000円を支給。その後は金融機関に対して欠損の申告書は出せないとの理由から残金の支払を一時中断している。
ヘ 原処分庁は、本件第二金員は退職給与ではなく損金の額に算入されない役員給与に当たるとして、更正通知書に要旨別紙2のとおり更正の理由を付記して本件更正処分及び本件過少申告加算税賦課決定処分を行うとともに、本件第二金員が役員賞与に該当するものとして本件納税告知処分及び本件不納付加算税賦課決定処分を行った(以下、本件更正処分に係る更正通知書を「本件更正通知書」という。)。

(5) 争点

イ 本件更正通知書の理由付記に不備があるか否か。
ロ 本件第二金員を退職給与として取り扱うことができるか否か。

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2 主張

(1) 争点イについて

イ 請求人
 本件更正通知書に付記された理由には、本件更正処分の根拠となる法令や通達が何ら示されておらず、このことは更正の理由付記の不備に当たる。
ロ 原処分庁
 本件更正通知書に付記された理由には、法人税基本通達9−2−32(以下「本件通達」という。)に定められている内容を記載した上で、本件第二金員が役員退職給与とは認められず定期同額給与等以外の給与に該当することからこれを請求人の所得金額に加算した旨記載されている。そうすると、本件更正通知書に付記された理由は、理由付記制度の目的を充足しているというべきであり、理由付記に不備は認められない。

(2) 争点ロについて

イ 原処分庁
 下記の理由から、本件第二金員を退職給与として取り扱うことはできない。
(イ) 本件通達は、役員の分掌変更等により、実質的に退職したと同様の事情にある役員に対して支給した臨時的な給与を退職給与と認める旨定めている。本件通達は、引き続き在職する場合の一種の特例として打切り支給を認めているものであり、本件通達が適用されるのは、その趣旨及び弊害防止の必要性から、原則として、債務の確定だけではなく、実際に金銭等の支給があった場合に限られるところ、資金繰り等の理由による一時的な未払金等への計上までも本件通達の適用が排除されるものではないが、未払の期間が長期にわたったり、長期間の分割払となっていたりするような場合には適用されない。
(ロ) 本件退職慰労金は、平成22年8月期においていまだ残金が支払われておらず、未払の期間が長期である場合に該当する。また、本件第二金員の分割支給の理由につき、一括で支給できる資金力がなかったことのほか、これまでに続けてきた黒字決算が途切れること及び赤字決算を銀行に提出できないことなどを理由としていることからすると、利益調整の目的があったと認められ、本件通達の射程外であるといわざるを得ない。
ロ 請求人
 下記の理由から、本件第二金員を退職給与として取り扱うことができる。
(イ) 本件通達は、役員が現実に退職しなくとも、常勤役員が非常勤役員になったことなど、その職務内容、役員としての地位が激変したことによる場合で、実質的に退職と同様の事情にあるものについては「退職した」場合に該当するものとして取り扱う旨定めている。そして、本件通達の定めにより「退職した」として取り扱われる以上、退職給与の損金算入時期について定めた法人税基本通達9−2−28が適用されるというべきであり、同通達のただし書の定めにより、法人がその退職給与の額を支払った日の属する事業年度の損金の額に算入できる。
(ロ) 請求人は、本件役員が本件分掌変更により退職したと同様の事情にあることから、本件退職慰労金を支払うことを決定したものの、資金繰りの都合により一括で支払うことができなかったため分割で支払い、その支払った事業年度の損金の額に算入したものであり、このことは、上記各通達の定めに従っている。
 なお、原処分庁は、分割支給に利益調整の目的があった旨主張するが、赤字決算を回避し黒字決算を組む目的は、翌事業年度における銀行借入れを円滑に実行することにあり、このことは、正に資金繰りの事情に該当するものである。

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3 判断

(1) 争点イについて

イ 法令解釈
 法人税法第130条第2項が、青色申告に係る法人税の更正をする場合に、更正通知書に更正の理由を付記しなければならない旨規定しているのは、青色申告制度の趣旨に鑑み、原処分庁の判断の慎重、合理性を担保して、その恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨によるものと解される。
 そして、青色申告に係る更正処分の態様は、帳簿の記載自体を認めないで更正処分をする場合や事実に対する法的評価につき納税者と見解を異にして更正処分をする場合など様々であるが、個々の更正処分につき要求される理由付記の程度は、上記法人税法第130条第2項の規定の趣旨と当該更正処分の具体的態様に照らし決せられるべきものであり、帳簿の記載自体を認めないで更正処分をする場合はともかく、法的評価の相違による更正処分の場合には、それがいかなる事実に対する法的評価であるかを明確に判別することができる程度に理由が表示されていれば足り、それ以上に当該法的評価の根拠を示すことや資料を摘示することは要しないと解するのが相当である。
ロ 判断
 これを本件についてみると、上記1(4)ヘによれば、本件更正処分は、本件第二金員について請求人と異なる法的評価をしたものであるから、法的評価につき請求人と見解を異にして更正処分をする場合に当たるといえる。そうすると、本件更正通知書に付記された理由には、更正処分の対象となった事実として本件第二金員を支給したこと、及びこれに対する法的評価として、本件第二金員は資金繰り等の理由による一時的な未払であるとはいえないことから退職給与とは認められず、法人税法第34条に規定する定期同額給与等以外の給与に当たる旨が記載されており、退職給与に関する法令や通達の記載はないものの、いかなる事実に対する法的評価であるかを明確に判別することができる程度に理由が表示されていると認めることができるから、本件更正通知書に付記された理由に違法となる不備があるとはいえない。

(2) 争点ロについて

イ 法令解釈等
 法人税法第34条は、内国法人がその役員に対して支給する退職給与は、不相当に高額な部分等を除き、損金の額に算入する旨規定しているところ、役員退職給与とは、その支出の名義いかんにかかわらず、役員が会社又はその他の法人を退職したことにより支給される一切の給与をいうと解するのが相当である。
 ところで、本件通達は、法人が役員の分掌変更等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与について、その支給が、例えば常勤役員が非常勤役員になったことなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる旨定めている。この定めは、役員の分掌変更により実質的に退職したと同様の事情にあると認められるときは、多くの企業で実質的に退職とみて退職給与を支給する慣行があることから、このような企業実態に配慮して、一定の要件の下に退職給与として損金算入することを認める旨の特例を定めたものであり、当審判所においても相当と認められる。
 そして、退職によらない役員退職給与の損金算入を例外的に認める本件通達は、恣意的な損金算入などの弊害を防止する必要性に鑑み、いたずらにその適用範囲を広げるべきではなく、原則として、法人が実際に支払ったものに限り適用されるというべきであって、その法人の資金繰り等の都合による場合など当該分掌変更等の時に当該支給がされなかったことが真に合理的な理由によるものである場合に限り、例外的に適用されるというべきである。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件役員は、過去の代表取締役としての経験から助言などが必要となる場合があることから、非常勤取締役として請求人の役員に留まった。本件役員は、本件分掌変更前はほぼ毎日出社し9時から17時まで勤務していたが、本件分掌変更後は週に1、2度、時間も不定期で出社するのみで、本件分掌変更後の代表取締役としての業務は、現在の代表取締役が行うこととなった。
(ロ) 本件役員は、本件分掌変更前において請求人の株式33,250株(保有割合35%)を保有していたが、本件分掌変更後における保有株式数は10,000株(保有割合約10.5%)である。
(ハ) 請求人の貸借対照表上の現金及び預金の残高は、平成19年8月期末○○○○円、平成20年8月期末○○○○円である。
(ニ) 請求人は、役員退職慰労金規程において、まる1退職した役員に支給すべき退職慰労金の額は、取締役会が決定し株主総会で承認された額又は株主総会の決議に従い取締役会の協議で決定した額のいずれかの額の範囲内とする旨、まる2退職慰労金の支給時期は、原則として、株主総会で承認又は株主総会直後の取締役会での決定後2か月以内とする旨定めている。
(ホ) 当審判所は、請求人に対し、請求人が主張する資金需要に関する資料の提出を求めたところ、請求人は、資金に関する資料はなく、あるとすれば、支払関係の請求書、売上げ、普通預金通帳となる旨回答した。
ハ 請求人の代表取締役の回答内容
 請求人の代表取締役は、当審判所に対し、本件退職慰労金の支給に係る経緯等に関し、要旨次のとおり回答した。
(イ) 本件役員の退職に関しては、平成19年8月初旬頃に、本件役員から、会社の業績もよく安定していたので退職したいとの申出があり、これを受け、平成19年8月5日頃、退職及び退職給与の支給が決定した。書類はないが、同時期に本社社長室にて臨時株主総会を開催し、総額を決定した。支給方法については、最初に本件第一金員を支給すること及び残額を3年以内に支給することが決定した。本件第一金員の支給については、資金繰りの状況をみて決めたものである。退職金の支給原資は売上げなどの金員であり、退職金の支払のための借入れは行っていない。当座貸越額に余裕はあるが、枠を保持することが必要であり、使うことができなかった。先行して資金需要があることも考慮しての判断である。
(ロ) 本件第二金員の支給については、平成20年8月初旬に、その支払と支給額を決定した。支給額については、会社の経営に問題のない範囲を判断して決定したものであり、本件第一金員と同様に、その支払のための借入れは行っていない。なお、これらに関する取締役会議事録等は存在しない。
(ハ) 平成20年11月頃、リーマンショックが発生し、経営状況が悪化して雇用調整を行う事態となり、とても退職金を支給する状況になかった。リーマンショックは、業界の業務にダメージを与え、需要が減少したことにより、受注が激減した。このため、平成21年8月初旬に、本件退職慰労金のうち残額の50,000,000円を支給できる状況にないことを本件役員に告げ、支給しなかった。
ニ 判断
(イ) 上記1(4)イ並びに上記ロ(イ)及び(ロ)によれば、本件役員は、本件分掌変更により請求人の代表権を有しなくなるとともに、非常勤取締役として実質的にも請求人の経営に直接関与しなくなったことが認められ、その報酬額もおおむね50%以上減額されていることが認められることからすると、本件分掌変更は、本件通達に定める実質的に退職したと同様の事情がある場合に当たると認めることができる。
 しかしながら、上記1(4)ハのとおり、本件第二金員は、本件分掌変更から1年近くを経て支給されたものであり、本件分掌変更の時に支給された金員とはいえない。そこで、本件分掌変更の時に当該支給がされなかったことが合理的な理由によるものであるかどうかについてみると、上記ロ(ハ)によれば、平成19年8月末における現金及び預金の残高のみでは本件退職慰労金の全額を支給できる状況にはなかったことがうかがえるものの、上記ハによれば、請求人の代表取締役は、本件第二金員の支給時期に関する事情について、当座貸越額に余裕はあるものの、先行して資金需要があるなどの資金繰りの事情によるものである旨説明するにとどまり、上記1(4)ロ及びホによれば、本件退職慰労金に関する株主総会議事録や取締役会議事録が存在せず、上記ロ(ホ)のとおり、請求人が主張する資金需要を認めるに足りる具体的な資料もない。以上の事実及び証拠からすると、本件分掌変更から、上記ロ(ニ)の請求人の役員退職慰労金規程で定められた支給期限である2か月を大幅に経過する1年後に本件第二金員が支払われることとなった事情やその支払額の決定に関する経緯が明らかでないというほかはない。かえって、上記ハ並びに上記1(4)ロ及びホによれば、本件退職慰労金の総額に関する株主総会議事録又は取締役会議事録は存在せず、上記1(4)ロのとおり、本件計算書においては、「平成19年8月末日 75,000,000円 平成20年8月以降 残額とする(3年以内)」と、本件第一金員を除く本件退職慰労金について支払時期やその支払額を具体的に定めずに漠然と3年以内とされており、上記1(4)ホによれば、本件退職慰労金の支払に関しては、請求人の決算の状況を踏まえて支払がされていることがうかがえることからすると、本件第二金員をその支払日の属する事業年度において損金算入を認めた場合には、請求人による恣意的な損金算入を認める結果となり、課税上の弊害があるといわざるを得ない。
 以上によれば、本件分掌変更の時に本件第二金員が支払われなかったことが合理的な理由によるものであると認めるに足りる証拠はなく、本件第二金員を本件通達の定めに基づき退職給与として取り扱うことはできないというべきである。
(ロ) この点に関し、請求人は、赤字決算を回避する目的は、翌事業年度における銀行借入れを円滑に実行することにあり、これが資金繰りの事情に該当する旨主張するが、請求人の主張する事情は翌事業年度以降における銀行融資を円滑に実施するにとどまるものであって、分掌変更等に際して支給をすることができなかった合理的な理由に当たるとはいえないから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
 また、請求人は、本件第二金員について法人税基本通達9−2−28の定めが適用されるべきである旨主張するが、同通達は実際に退職した役員に対する退職給与の損金算入時期について定めたものであって、本件役員に退職の事実はないのであるから、本件第二金員について同通達の定めは適用されず、また、役員の分掌変更等に際し退職給与として支給した役員給与の取扱いについて定めた本件通達の取扱いからしても、本件第二金員を退職給与として取り扱うことはできないことは上記(イ)のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

(3) 本件更正処分及び本件過少申告加算税賦課決定処分について

 上記(2)ニのとおり、本件第二金員を本件役員に対する退職給与として取り扱うことはできないところ、本件第二金員は法人税法第34条第1項第1号から第3号までのいずれにも該当しない役員給与であるから、平成20年8月期の損金の額に算入されない。そうすると、平成20年8月期の所得金額及び納付すべき税額は原処分の額と同額となるから、本件更正処分を取り消すべき理由はない。
 また、本件更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてされた本件過少申告加算税賦課決定処分は適法である。

(4) 本件納税告知処分及び本件不納付加算税賦課決定処分について

 上記(2)ニによれば、本件第二金員は本件役員に対する退職給与とは認められないところ、その支給は一時的なものであり、毎月定額のものではないことから、請求人から本件役員に対して支給された臨時的な給与すなわち賞与であると認められる。したがって、請求人は本件第二金員の支払の際に、所得税法第183条《源泉徴収義務》に規定する源泉徴収義務を負うこととなり、同法第186条《賞与に係る徴収税額》の規定に基づき請求人が徴収すべき所得税の額は原処分の額と同額となるから、本件納税告知処分を取り消すべき理由はない。
 また、本件納税告知処分により納付すべき源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったことについて、通則法第67条《不納付加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、同項の規定に基づいてされた本件不納付加算税賦課決定処分は適法である。

(5) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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