(平成24年8月28日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人D(以下「請求人D」という。)、同F(以下「請求人F」という。)及び同G(以下「請求人G」といい、請求人D及び請求人Fと併せて「請求人ら」という。)が行った相続税の申告について、原処分庁が、請求人Dが相続により取得した土地の評価に誤りがあるなどとして相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人らが、当該土地は財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。ただし、平成21年5月13日付課評2−6による改正前のものをいい、以下「評価基本通達」という。)24−4《広大地の評価》に定める広大地として評価すべきであるとして、各処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人らは、平成20年12月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したH(以下「本件被相続人」という。)の相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、別表1の「申告」欄のとおりとする相続税の申告書を法定申告期限までに原処分庁に提出した。
ロ 請求人らは、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、別表1の「修正申告」欄のとおりとする相続税の修正申告書を平成22年12月7日に原処分庁に提出した。
ハ 原処分庁は、これに対し、平成23年6月30日付で別表1の「更正処分等」欄のとおり各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ニ 請求人らは、上記ハの各処分等を不服として平成23年7月26日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年9月26日付でいずれも棄却の異議決定をした。
ホ 請求人らは、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成23年10月20日に審査請求をした。
 なお、請求人らは、請求人Dを総代として選任し、その旨を同日に届け出た。

(3) 関係法令等の要旨

イ 相続税法第22条《評価の原則》は、特別の定めのあるものを除き、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による旨規定している。
ロ 評価基本通達24−4(以下「本件通達」という。)は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地で都市計画法第4条《定義》第12項に規定する開発行為(以下「開発行為」という。)を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(以下「広大地」という。)の価額は、その広大地が路線価(評価基本通達14《路線価》に定める路線価をいう。以下同じ。)地域に所在する場合、その広大地の面する路線の路線価に同通達15《奥行価格補正》から同通達20−5《容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価》までの定めに代わるものとして次の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した価額にその広大地の地積を乗じて計算した金額によって評価する旨定めている。
 なお、本件通達は、まる1評価基本通達22−2《大規模工場用地》に定める大規模工場用地に該当するもの及びまる2中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるものをいう。)は、広大地に該当しない旨定めている。

(算式)

広大補正率の算式

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人らと原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 相続関係
(イ) 本件被相続人は、a市b町○−○の宅地(面積1,038.78平方メートル。以下、この土地を「本件土地」という。)を所有していた。
(ロ) 本件相続に係る共同相続人は、本件被相続人の子である請求人ら3名である。
(ハ) 平成21年8月2日、上記(ロ)の共同相続人間で本件相続に係る遺産分割協議が成立し、請求人Dが本件土地を単独で取得した。
ロ 本件土地について
(イ) 本件土地は、評価基本通達に基づきJ国税局長が定めた平成20年分の財産評価基準によれば、同通達11《評価の方式》に定める路線価方式により評価する土地で、その所在する地区(同通達14−2《地区》に定める地区をいう。以下同じ。)は普通住宅地区であり、西側と東側の二方の路線に接面している。
 西側の路線に付された平成20年分の路線価は39,000円、東側の路線に付された同年分の路線価は37,000円である。
(ロ) 本件土地が所在する、都市計画法第8条《地域地区》第1項第1号に規定する用途地域(以下「用途地域」という。)は、第一種低層住居専用地域であり、建築基準法上の建ぺい率は50%、容積率は80%である。

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2 争点

 本件土地は、本件通達に定める広大地として評価すべきか否か。

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3 主張

原処分庁 請求人ら
 本件土地は、次のとおり、本件通達に定める広大地として評価することはできない。  本件土地は、次のとおり、本件通達に定める広大地として評価すべきである。
(1) 本件通達に定める「その地域」は本件土地が存するb町○丁目、同○丁目、同○丁目、同○丁目及び同○丁目並びにc町○丁目、同○丁目及び同○丁目の本件土地と用途地域・建ぺい率・容積率をいずれも同じくする地域である(別紙5図面の太線に囲まれた地域であり、以下「本件甲地域」という。)。
 本件甲地域は、道路及び河川によって、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性が分断され、行政区域及び都市計画法による土地利用の規制の面からも利用状況、環境等がおおむね同一のひとまとまりの地域であると認められる。
(1) 本件通達に定める「その地域」は、市街化区域内の国道d号線eバイパスの東側(準工業地域を除く地域)、f川の南側及び西側並びにf市の北側である(別紙6図面の太線に囲まれた地域であり、以下「本件乙地域」という。)。
 本件乙地域には、地価公示標準地及び地価調査基準地が8地点ある(以下「本件地価公示地等」という。)。
(2) 本件甲地域における標準的使用は、戸建住宅の敷地であると認められる。
 また、本件甲地域における標準的な宅地の地積は、a市都市整備局の担当者の申述及び本件土地付近の国土交通省が定める平成20年の地価公示地2地点の面積から200平方メートル程度であり、本件土地はこれに比し著しく地積が広大な土地に当たる。
(2) 本件乙地域における標準的使用は、戸建住宅の敷地であると認められる。
 また、本件乙地域における標準的な宅地の地積は、都市計画法第29条第1項に規定する開発許可がされた本件乙地域内の数例の地積(165平方メートル程度)及び本件地価公示地等の平均地積(183.75平方メートル)から、165平方メートルないし185平方メートルであり、本件土地はこれに比し著しく地積が広大な土地に当たる。
(3) 本件土地を上記(2)の標準的な宅地の地積に開発する場合、別紙4のとおり、路地状部分を有する宅地を組み合わせた開発(以下「路地状開発」という。)を行うことが、次の理由から経済的に最も合理性のある開発であり、本件土地について、公共公益的施設用地の負担の必要はない。
イ 建築基準法第43条《敷地等と道路との関係》は、建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない旨規定しているところ、別紙4のとおり路地状開発を行った場合、全ての各画地が建築基準法第42条《道路の定義》第1項第1号に規定する道路法による道路に2メートル以上接することから、道路の開設の必要はない。
ロ 路地状開発は、都市計画法第4条《定義》第12項に規定する開発行為に当たらず、都市計画法第29条《開発行為の許可》第1項に規定する開発許可は必要ない。
ハ 建築基準法に規定する建ぺい率・容積率の計算上、路地状部分も敷地用地に含まれること及び道路設置に伴う敷地面積の減少がないことから、土地の有効利用が図られる。
ニ 本件甲地域においては、路地状開発事例が数多く存在し、一般的に行われている。このことは、道路開発事例との比較においても裏付けられているものと認められる。
(3) 本件土地を上記(2)の標準的な宅地の地積(165平方メートルないし185平方メートル)で開発し、戸建住宅分譲用地とすれば5画地程度となり、建築基準法第43条の制限から、道路等公共公益的施設の開設が必要となる。

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4 判断

(1) 法令解釈等

イ 相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めがあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定しているが、全ての財産の客観的交換価値は、必ずしも容易に把握できるものではないから、課税の実務上は、財産評価の一般的基準が評価基本通達によって定められ、原則として、これに定められた画一的な評価方法によって、当該財産の評価をすることとされている。
 当審判所も、かかる取扱いは、税負担の公平、効率的な租税行政の実現等の観点から合理的であると解する。
ロ 本件通達は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものについて、減額の補正を行う旨定めている。
 これは、評価の対象となる宅地の地積が、当該宅地の存する地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、評価時点において、当該宅地を当該地域において経済的に最も合理的な用途に供するためには、道路、公園等の公共公益的施設用地の負担が必要な開発行為を行わなければならない土地である場合にあっては、当該開発行為により土地の区画形質の変更をした際に公共公益的施設用地として潰れ地が生じ、評価基本通達15ないし同通達20−5による減額の補正では十分といえない場合があることから、このような土地の評価に当たっては、潰れ地が生じることを当該宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的事情として、価値が減少していると認められる範囲で減額の補正を行うとしたものである。
ハ このような本件通達の趣旨に鑑みれば、同通達でいう「その地域」とは、まる1河川や山などの自然的状況、まる2行政区域、まる3都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、まる4道路、鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況等を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。
ニ また、本件通達に定める「公共公益的施設用地」とは、都市計画法第4条第14項に規定する道路、公園等の公共施設の用に供される土地及び都市計画法施行令第27条に掲げる教育施設、医療施設等の公益的施設の用に供される土地をいい、その負担の必要性は、経済的に最も合理的に戸建住宅用地の開発を行った場合の、その開発区域内での道路等の開設の必要性により判断するのが相当である。

(2) 認定事実

 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件土地の状況等
(イ) 本件土地は、本件相続開始日において、請求人D所有の家屋の敷地の用に供されていた。
(ロ) 本件土地は、別紙3のとおり、西側は幅員約6メートルの道路に25メートル接面し、東側は幅員約6メートルの道路に18.5メートル接面しており、奥行きは北側が53.5メートル、南側が38.5メートルの台形に近い不整形な形状の土地である。
ロ 本件土地の周辺の状況等
(イ) 本件土地の都市計画法等の規制は、上記1の(4)のロの(ロ)のとおりであり、本件土地と用途地域・建ぺい率・容積率を同じくする地域は、本件甲地域である。また、本件甲地域は、f川の南側及び西側に位置し、行政区域はa市b町に属するところ、本件甲地域内において、本件土地と利用状況、環境等が同一である地域は、北側は市道g線及び市道h線、東側は市道i線、南側は市道j線、西側は市道k線で囲まれた地域(近隣商業地域は除く。以下「本件丙地域」という。別紙7図面参照。)で、標準的使用は戸建住宅地と認められるものの、その状況は、農地等の開発されていない土地も多く見受けられる。
 一方、本件丙地域を除く本件甲地域は、戸建住宅が整然と建ち並び、農地等の開発されていない土地はほとんど見受けられない。
(ロ) 本件乙地域は本件甲地域を含むところ、その用途地域については、第一種低層住居専用地域のほか、第二種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)、第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)及び近隣商業地域(建ぺい率80%、容積率300%)が含まれている。
(ハ) 本件丙地域において、当審判所が調査した平成9年ないし平成20年の宅地開発状況は以下のとおりである。
A 開発許可を受けた開発事例5件のうち、道路を開設した戸建住宅用地の開発事例は3件(開発許可番号:○○○○、○○○○、○○○○。以下、これらを併せて「開発事例甲」という。)であり、残りの2件(開発許可番号:○○○○、○○○○)は戸建住宅用地以外の開発事例である。開発事例甲の開発面積はいずれも2,000平方メートルを超えており、区画数はそれぞれ5区画、8区画及び11区画である。また、1区画当たりの面積は約180平方メートルないし約240平方メートルである。
 なお、当該開発事例5件のうち、平成16年以降に行われたものは3件である。
B 路地状開発による戸建住宅用地の開発事例は平成16年に行われた1件(以下「開発事例乙」という。)である。開発面積は約980平方メートルであり、区画数は6区画、1区画当たりの面積は約145平方メートルないし約180平方メートルである。
 当該事例の開発された土地は、西側の公道に32メートル、北側の公道に38.5メートル接面している角地であり、奥行距離は東側が25.5メートル、南側が28メートルであるほぼ正方形に近い形状であることから、4区画は公道に接する間口を約11メートルないし約15メートルと広くし、残りの2区画は約3メートルの間口で公道に接する路地状開発を行っている。
C 上記A及びBのとおり、開発事例甲及び開発事例乙における戸建住宅用地の全区画数は30区画、これらの区画の1区画当たりの平均宅地面積は200.88平方メートルであり、また、180平方メートル以上210平方メートル未満の面積の宅地の区画数は17区画と全区画数の56.7%を占めている。
(ニ) 本件丙地域を除く本件甲地域において、当審判所が調査した平成9年ないし平成20年の宅地開発状況は、開発許可を受けた開発事例は18件、路地状開発による戸建住宅用地の開発事例は5件である。
 なお、当該各開発事例計23件のうち、平成16年以降に行われたものは5件である。
ハ 法令の規制等
(イ) 本件土地の所在する地域において地積が1,000平方メートル以上の土地の開発行為をする場合には、開発行為についてa市長の許可を受けなければならない。
(ロ) 上記(イ)の開発行為をする場合は、a市開発指導要綱に関する技術基準には、戸建住宅の1画地は165平方メートルから230平方メートルを標準とする旨定められている。

(3) 当てはめ

イ 本件通達に定める「その地域」について
 本件丙地域は、上記(2)のロの(イ)のとおり、農地等の開発されていない土地も多く見受けられるが、本件丙地域を除く本件甲地域は、本件丙地域と用途地域等は同一であるものの農地等の開発されていない土地はほとんど見受けられず、戸建住宅が整然と建ち並ぶ地域であり、本件丙地域の四方を囲む市道を境にして、明らかに土地の使用状況の連続性及び地域の一体性が分断されているなど、本件丙地域と利用状況が異なると認められる。
 また、本件乙地域は、上記(2)のロの(ロ)のとおり、本件丙地域と用途地域等が異なる地域が複数含まれていることから、本件丙地域とは利用状況が異なると認められる。
 したがって、本件土地の本件通達に定める「その地域」は、本件土地と使用状況の連続性、地域の一体性が認められる本件丙地域と認めるのが相当であり、本件甲地域及び本件乙地域は、土地の利用状況が本件土地と異なるから、いずれも採用できない。
ロ 「標準的な宅地の地積」について
 本件丙地域は、上記(2)のロの(ハ)のCのとおり、本件丙地域において確認できた戸建住宅用地として開発された30区画の宅地の平均面積は200.88平方メートルであること及びその面積が180平方メートル以上210平方メートル未満のものが17区画と全区画数の56.7%を占めていること、並びに上記(2)のハの(ロ)のとおり、a市開発指導要綱に関する技術基準に定める戸建住宅の1画地の標準とする面積が165平方メートルから230平方メートルであるなど総合的に判断すると、本件丙地域において本件通達に定める「標準的な宅地の地積」は180平方メートル以上210平方メートル未満であると認めるのが相当である。
ハ 上記ロのとおり、本件通達の「その地域」における標準的な宅地の地積は180平方メートル以上210平方メートル未満であるから、本件土地は、これに比し著しく地積が広大な土地に当たる。
ニ 本件通達に定める「公共公益的施設用地」の負担の要否について
(イ) 本件丙地域における本件通達に定める「標準的な宅地の地積」は、上記ロのとおり、180平方メートル以上210平方メートル未満であると認められ、当該地積に基づいて本件土地を開発した場合、宅地の区画として5区画の開発が想定される。
(ロ) また、本件丙地域における平成9年ないし平成20年の宅地開発状況等をみると、上記(2)のロの(ハ)のA及びBのとおり、道路を開設した戸建住宅用地の開発事例甲は3件あるが、路地状開発による戸建住宅用地の開発事例乙は1件のみである。
(ハ) 開発事例甲は、上記(2)のロの(ハ)のAのとおり、開発面積がいずれも2,000平方メートルを超える土地の事例であり、上記ロのとおり、本件丙地域の標準的な宅地の地積である180平方メートル以上210平方メートル未満の面積でおおむね区画割りされていることから、道路開設による開発によらざるを得ない土地の事例である。また、開発事例乙は、上記(2)のロの(ハ)のBのとおり、角地で面積が約980平方メートルのほぼ正方形に近い形状の土地を、比較的小規模の面積で区画割りしていることから、土地の形状や公道との接続状況及び面積からみて、道路の開設による開発がもとより困難で、路地状開発によらざるを得ない土地の事例である。
 他方、本件土地の面積は1,038.78平方メートルであり、規模的に開発事例甲と、また、上記(2)のイの(ロ)のとおり、形状、接面道路及び奥行距離との関係で、開発事例乙と、それぞれ条件を異にする。
(ニ) ところで、上記(2)のロの(イ)のとおり、本件丙地域を除く本件甲地域の現況は、戸建住宅が整然と立ち並ぶ地域であるのに対し、本件丙地域は、宅地開発されていない土地も多く見受けられる地域である。また、平成16年以降に行われた本件甲地域内の宅地開発状況をみると、上記(2)のロの(ハ)のA及びBのとおり、本件丙地域内では4件あるのに対し、本件丙地域の優に5倍を超える面積を有すると推測される本件丙地域を除く本件甲地域においては、上記(2)のロの(ニ)のとおり5件しかない状況である。
 これらの状況を踏まえると、本件丙地域は、宅地開発が進みつつあり、将来、本件丙地域を除く本件甲地域と同様な街並みになることが予想される。
(ホ) そこで、上記(2)のロの(ニ)の本件丙地域を除く本件甲地域の平成9年ないし平成20年の路地状開発の事例5件について見てみると、本件土地と地積が同規模又はそれ以上の土地で、本件土地と同様に接面道路から奥行距離の長い土地の形状や公道との接続状況が本件土地と類似する土地での路地状開発の事例は見受けられない。加えて、上記(イ)の本件丙地域における「標準的な宅地の地積」及び上記(2)のイの(ロ)の本件土地の形状、地積及び西側と東側にある公道との接続状況から、仮に本件土地について路地状開発を行うとすれば、別紙4の原処分庁が主張する開発想定図にある開発を行うことが想定されるところ、この場合の路地の長さは20メートル程度必要となるが、そのような長さの路地がある路地状開発の事例も、上記(ロ)及び上記(2)のロの(ニ)の本件甲地域内の路地状開発の事例6件の中に1件もない。そうすると、原処分庁の主張する開発想定図は、本件甲地域においても一般的な開発想定図であるとはいえないから、本件土地については、別紙8のとおり、道路開設による開発をするのが経済的に最も合理的な開発であると認められる。
 したがって、本件土地は開発行為をするとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要な土地であると認められる。
ホ 以上のことから、本件土地は、本件通達の「その地域」における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地に当たり、公共公益的施設用地の負担が必要と認められることから、本件土地は本件通達に定める広大地として評価するのが相当である。

(4) 本件土地の相続税評価額について

 以上の結果、本件土地の相続税評価額を算定すると、別表2の「評価額まる12」欄の「審判所認定額」欄のとおりとなる。

(5) 本件各更正処分について

 上記(4)に基づき、請求人らの本件相続に係る相続税の課税価格及び納付すべき税額を算出すると、それぞれ別表3の「審判所認定額」欄の額となる。
 そうすると、請求人Dの納付すべき税額は、同人に対する更正処分の額を下回るから、当該処分は、その一部を別紙2の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
 また、請求人F及び請求人Gの納付すべき税額は、各人の修正申告の額を下回るから、各人に対する各更正処分は、その全部を取り消すべきである。

(6) 本件各賦課決定処分について

 上記(5)のとおり、請求人Dに対する更正処分はその一部を取り消すべきであるから、同人の過少申告加算税の賦課決定処分の基礎となる税額は○○○○円となるところ、国税通則法第118条《国税の課税標準の端数計算等》第3項の規定により附帯税の額を計算する場合において、その計算の基礎となる税額の全額が10,000円未満であるときは、その全額を切り捨てることから加算税の計算の基礎となる税額は零円となり、当該賦課決定処分はその全部を取り消すべきである。
 また、請求人F及び請求人Gに対する各更正処分はその全部を取り消すべきであるから、両人に対する過少申告加算税の各賦課決定処分についても、その全部を取り消すべきである。

(7) その他

 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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