別紙7

主張

(1) 争点1 本件各工場工事に起因する修繕費用について資本的支出とした上で当該資産に係る減価償却費を損金の額に算入できるか。

原処分庁 請求人
 本件各工場工事の修繕費用については、次のことから、本件各事業年度において工事が完成しておらず、減価償却資産として計上して減価償却費を損金の額に算入することができない。  本件各工場工事の修繕費用については、次のことから、本件各事業年度において工事が完成しており、資本的支出に該当し減価償却資産として計上して減価償却費を損金の額に算入することができる。
(イ) 平成22年3月期
 本件製缶工場工事の施工業者であるJ社の見積書には、屋根工事のほかに、塗装工事、雨樋工事、足場工事についても記載されており、平成22年3月20日付の本件製缶工場請求書に記載された金額は、上記見積書に記載された全ての工事代金を含めた金額であると認められることから、本件製缶工場工事は、雨樋工事及び足場工事を含めた全ての工事が完成したときに、資産の引渡しがあったものと判断される。
 本件製缶工場工事の完成時期について検討すると、J社の下請業者であるS社は、同社の日報に因れば、少なくとも平成22年4月3日から同月5日までは工事を行っており、S社の下請業者であるT社についても、同社の日報に因れば、同月10日に足場の解体を行っていると認められる。そうすると、本件製缶工場工事は、完成された物を引き渡すことを内容とする請負契約により減価償却資産を取得する場合は、注文者が請負人から完成した資産の引渡しを受けることによって取得があったとすることが相当であり、平成22年3月期末において工事が完成し減価償却資産を取得したとは認められない。
(イ) 平成22年3月期
 J社に発注した本件製缶工場工事は、屋根の雨漏り対策として長尺カラー鉄板を旧屋根に上葺きをする方法で行われ、補修屋根材が屋根に設置され雨漏り対策が完了した時に、工事が完成したと認識している。
 また、本件製缶工場工事は、工場として現に使用している屋根の補修工事にすぎないのであるから、引渡しの有無は無関係である。
(ロ) 平成23年3月期
 本件加工工場工事の施工業者であるJ社の見積書には、屋根工事のほかに、塗装工事、雨樋工事、足場工事等についても記載されており、平成23年3月20日付の本件加工工場請求書に記載された金額は、見積書に記載された全ての工事代金に追加工事代金を含めた金額であることから、本件加工工場工事は、これら全ての工事を終えたときに完成し、資産の引渡しがあったものと判断される。
 本件加工工場工事の完成時期について検討すると、J社の下請業者である板金業を営むR社が工事を完了したのは、平成23年4月7日であると認められ、同様に、J社の下請業者であるS社は、同社の日報に因れば少なくとも同月4日から同月9日までは工事を行っており、S社の下請業者であるT社についても、同社の日報に因れば同月10日に足場の解体を行っていると認められる。そうすると、本件加工工場工事は、完成された物を引き渡すことを内容とする請負契約により減価償却資産を取得する場合は、注文者が請負人から完成した資産の引渡しを受けることによって取得があったとすることが相当であり、平成23年3月期末において工事が完成し減価償却資産を取得したとは認めることはできない。
(ロ) 平成23年3月期
 J社に発注した本件加工工場工事は、本件製缶工場工事と同様の工事方法で行っており、屋根の雨漏り対策として補修屋根材が屋根に設置され雨漏り対策が完了した時に工事が完成したと認識している。
 また、本件加工工場工事は、工場として現に使用している屋根の補修工事にすぎないのであるから、引渡しの有無は無関係である。

(2) 争点2 本件製缶工場工事の修繕費用に係る消費税額(平成22年3月課税期間)及び本件加工工場工事の修繕費用に係る消費税額(平成23年3月課税期間)を、それぞれ仕入税額控除することができるか。

原処分庁 請求人
 次のことから、本件各工場工事の修繕費用に係る消費税額は、本件各課税期間の消費税等の計算上控除対象仕入税額に算入できない。  次のことから、本件各工場工事の修繕費用に係る消費税額は、本件各課税期間の消費税等の計算上控除対象仕入税額に算入できる。
(イ) 本件製缶工場工事は、平成22年3月課税期間に引き渡しを受けたとは認められない。
 なお、本件製缶工場工事の修繕費用は、平成23年3月課税期間の課税仕入れと認められる。
(イ) 本件製缶工場工事は、平成22年3月末で役務の提供を終えている。
(ロ) 本件加工工場工事は、平成23年3月課税期間に引き渡しを受けたとは認められない。 (ロ) 本件加工工場工事は、平成23年3月末で役務の提供を終えている。

(3) 争点3 次の各費用の計上に当たり、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装があるか。

イ 本件各工場工事の修繕費用

原処分庁 請求人
 本件各工場工事の修繕費用を計上したことについては、次のことから、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為があった。  本件各工場工事の修繕費用を計上したことについては、次のことから、事実の隠ぺい又は仮装の行為はない。
(イ) 平成22年3月期
 本件製缶工場工事は、平成22年3月期末において完成したとは認められないところ、J社から請求人に同年3月20日付で交付された本件製缶工場請求書には、見積書に記載された金額の全額である○○○○円が記載されている。この点について、J社の工事担当者は、信用取引で工期末の平成22年3月末で請求を行うという条件で契約し、工事が完成していなくても同年3月には請求する前提であった旨申述しているが、見積書及び工事申込書においてその旨が記載されている事実はなく、見積書には、塗装工事、雨樋工事、足場工事が明記されていることから、これら全ての工事が完成することが条件であると認められる。そうすると、当該工事が未完成の状態であることを認識していると認められる請求人において、J社から本件製缶工場請求書の交付を受けたとしても、平成22年3月期の法人税の損金の額に算入する合理的理由はなく、工事完成時期に損金の額に算入すべきものであることから、請求人は、J社から本来3月中に交付されるべきでない本件製缶工場請求書の交付を受けた状況を利用し、積極的に工場の屋根工事代金を未払金として経理処理して総勘定元帳に記載し、確定申告に当たり修繕費として損金の額に算入していたものと認められる。
 また、請求人は、請求書ごとに作番別請求明細書を作成し、「P1」と押印があることから、代表者も本件製缶工場請求書を承認していたと認められる。
(イ) 平成22年3月期
 J社との間で、本件製缶工場工事について、平成22年3月1日に見積書を取り交わし、J社は、同年3月末までに当該工事が完成する証として、同月20日付で○○○○円の本件製缶工場請求書を発行したもので、代表者が当該請求書の事前発行を了承した事実はなく、当該請求書に基づいて記載した事項は何ら虚偽記載には該当しない。
 また、J社と通謀し平成22年3月中に発行されるべきでない本件製缶工場請求書を発行させてはいない。
 なお、代表者が、取引先からの請求書を確認し押印しているのは、不正な支出を防止するためである。
(ロ) 平成23年3月期
 本件加工工場工事は、平成23年3月期末において完成したとは認められないところ、J社から請求人に平成23年3月20日付で提出された本件加工工場請求書には、見積書に記載された金額に追加工事分を含めた○○○○円という金額が記載されている。この点について、J社の工事担当者は、信用取引で工期末の平成23年3月末で請求を行うという条件で契約し、工事が完成していなくても同年3月には請求する前提であった旨を申述しているが、見積書及び工事申込書においてその旨が記載されている事実はなく、見積書に屋根工事、塗装工事、雨樋工事、足場工事、軒天工事が明記されていることから、これら全ての工事が完成することが条件であると認められる。また、請求人従業員であるP5製造部長は、工事が完成していないことを認識しながら、J社の求めに応じ、本件加工工場請求書の事前発行を了承した旨申述し、代表者もJ社は契約金を出してくれないのであれば請求書を出させて欲しいといってきた旨答述していることからすると、当該工事が未完成の状態であることを認識していると認められる請求人において、J社から本件加工工場請求書の交付を受けたとしても、平成23年3月期の法人税の損金の額に算入する合理的理由はなく、工事完成時期に損金の額に算入すべきものであることから、請求人は、J社から本来3月中に交付されるべきでない本件加工工場請求書の交付を受けた状況を利用し、工場の屋根工事代金を未払金として経理処理して総勘定元帳に記載し、確定申告に当たり修繕費として損金の額に算入していたものと認められる。
 また、請求人は、作番別請求明細書を作成し、「P1」と押印があることから、代表者も本件加工工場請求書を承認していたと認められる。
(ロ) 平成23年3月期
 J社から本件加工工場工事について、平成23年1月着工、同年3月15日に完成予定という条件で、平成22年ll月20日に工事申込書等の発行があり、さらに平成23年3月10日に同年3月末終了の追加工事(雪止めの取付15万円)の契約を交わした。
 なお、雨樋取替、外壁の塗装、雪止めの取付け等の雑工事の一部は積雪のために遅れたが、J社は、平成23年3月末までに当該工事が完成する証として、同年3月20日付で○○○○円の本件加工工場請求書を発行したもので、代表者が当該請求書の事前発行を了承した事実はなく、当該請求書に基づいて記載した事項は何ら虚偽記載には該当しない。
 また、J社と通謀し平成23年3月中に発行されるべきでない本件加工工場請求書を発行させていない。
 なお、代表者が、取引先からの請求書を確認し押印しているのは、不正な支出を防止するためである。
(ハ) これらのことは、法人税事務運営指針の第1の1の本文及び同(2)のまる2の「帳簿書類への虚偽記載」及び「相手方との通謀による虚偽の証ひょう類の作成」のいずれにも該当する。
 仮に、通謀の事実が認められないにしても請求人の行為は、意図的に経費の繰上計上を行っていることが内部資料により明らかであり、不正事実があったと判断されるから、法人税事務運営指針の第1の3の本文及び同(2)の帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合には該当しない。
(ハ) 本件各工場請求書の発行は請求人とJ社の通謀によるものではないから、法人税事務運営指針の第1の1の本文及び同(2)のまる2の「帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう類の作成」に該当する事実はなく、本件各工場工事の修繕費用の繰上計上は、J社が発行した正規の本件各工場請求書に基づくものであり、その経費を翌事業年度に支出しているから、法人税事務運営指針の第1の3の本文及び同(2)の帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合に該当する。
(ニ) 請求人は、次の事実に照らせば、本件各工場工事の修繕費用に関し、最高裁平成7年4月28日判決のいう「当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動」をなしたと認めることができる。
 なお、請求人の反論は、最高裁判決に関する誤った解釈に基づく主張である。
A 請求人は、本件各工場工事が未完成であるにもかかわらず、工事代金全額が記載された、本来3月中に発行されるべきではない虚偽の本件各工場請求書をJ社から受け取っている。
B 代表者は、本件各工場請求書を受領した本件各事業年度の3月中に、本件各工場工事が未完成でありながら、請求書ごとに作成される作番別請求明細書に押印を行い、工事代金の支払を了承している。
C 請求人は、本件各工場工事の修繕費用を本件各事業年度の修繕費として総勘定元帳に記載し、本来であれば、工事が完成した事業年度において損金の額に算入すべきである費用を、本件各事業年度の損金の額に算入した。
(ニ) 原処分庁は、最高裁の判例をあげているが、当該判例は、「特段の行動」の有無の前提として、「当初から所得を過少に申告をする意図」することが前提であるところ、請求人に当該意図はない。

ロ 本件OA機器等の設置費用

原処分庁 請求人
 本件OA機器等の設置費用を計上したことについては、次のことから、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為があった。  本件OA機器等の設置費用を計上したことについては、次のことから、事実の隠ぺい又は仮装の行為はない。
(イ) 請求人は、K社に対し、平成23年3月22日付の商品手配依頼書及び同月25日付の本件OA機器等注文書を提出しており、いずれも代表者の氏名印及び代表取締役社長印が押印されている。
 これに対し、K社は、同月25日付で、K社の営業本部長の氏名印及び営業本部長印を押印した注文請書を請求人に対し提出している。これらのことからすると、請求人とK社の間において、K社が請求人に対し、本件OA機器等注文書に記載された物品の販売及び役務の提供を行うことについて合意し、契約が成立していたものと認められる。そして、追加条項(特約条項)に記載されているとおり、K社は、本件OA機器等を納入場所へ納入後、現地据付サービスを実施し、請求人が本件終了確認証をK社へ交付することによって役務の提供が完了するものであると認められる。
(イ) 本件OA機器等は、CADデータの消失に備えて早期の導入を目指し、平成22年12月時点で、平成23年2月の納入、セットアップを予定していたが、最終的に、K社が平成23年3月30日に納品するということで同月25日付で注文請書が発行された。
(ロ) 本件OA機器等に係るセットアップ作業は、K社のe営業所で行ったと認められるものの、セットアップ作業に用いるソフトの納入業者であるU社からのK社のe営業所へのソフト納入は、平成23年3月31日であることから、同年3月中にソフトウェア商品を納入場所へ納入後、現地据付サービスまでは完了していないと認められる。そして、K社の社員は、最終的に請求人に納入したのは同年5月17日である旨申述していることからすれば、実際に本件OA機器等が納品されたのは、請求人への設置が完了した同月17日であると認められる。とすれば、同年3月25日付の本件OA機器請求書、同月31日付本件納品確認書及び本件終了確認証は、請求人とK社との間で通謀の上作成された書類であると認められる。このことは、本件OA機器請求書の事前発行を依頼する際のK社の内部文書である事前請求書発行依頼書を提出する際に添付が義務付けられている取引条件申請・承認書(商談単位)に「顧客の年度末が3月であり、年度内請求の依頼がありましたので併せて申請いたします。承認を宜しくお願いします。」と記載されているとおり、本件OA機器等の納品がされていないにもかかわらず、本件OA機器等の設置費用を平成23年3月期の費用とするために請求人から本件OA機器請求書の事前発行の依頼があったこと、また、K社の社員による「この件ではK社の社内ルールに沿っていない事務処理を行った事が判明したので営業担当と所長は処分の対象となった」旨の申述内容からもうかがえる。その上で、請求人は、本来3月中に交付されるべきでない本件OA機器請求書に基づき、ソフトウェア1,114,000円、消耗品費3,438,910円及び仮払消費税227,645円と事実と反する経理処理をして総勘定元帳に記載し、平成23年3月期の確定申告書を提出していることは、積極的に租税を免れようとする意思が認められる。 (ロ) 発注した物件は、平成23年3月30日にK社のe営業所に納品されたが、請求人の業務が多忙なため、セットアップの作業は請求人所在地で行わず、K社のe営業所で行ったので、請求人の担当者は、これをもって、K社に発注した物件等の購入、作業が完了したと考えていた。
 K社は、受注した物件等の売上げを平成23年3月の売上にするために、事前請求書発行依頼書を、同月24日に○○社○○事務センター(以下「事務センター」という。)に発送した。一方、請求人は、平成23年3月31日にK社から提示のあった本件納品確認書に押印した。この事前請求書発行依頼書により事務センターから、平成23年3月25日付で、請求額4,780,555円(税込)の本件OA機器請求書が発行された。
 なお、K社は、本件納品確認書により同月中の売上とした。
(ハ) 商品が納品されていないにも関わらず、本件納品確認書及び本件終了確認証に押印することによって、実際に商品が納品されたかのような状況を作り出し、その状況を利用して当該費用を総勘定元帳に記載したのであり、当該押印がK社からの依頼によるものかどうかは無関係である。 (ハ) 原処分庁は、物品の受領、請負業務が、平成23年3月期中に完了しているかのように書類を一方的に仮装したとしているが、取引先のK社からの依頼により書類等に押印したものであり、請求人がK社と通謀して平成23年3月末までに本件OA機器請求書の発行を依頼した事実はない。
(ニ) これらのことは、法人税事務運営指針の第1の1の本文及び同(2)のまる2の「帳簿書類への虚偽記載」及び「相手方との通謀による虚偽の証ひょう類の作成」のいずれにも該当する。 (ニ) 請求人はK社に対して平成23年3月末までに本件OA器機請求書の発行を依頼したことはないから通謀はなく、法人税事務運営指針の第1の1の本文及び同(2)のまる2の「帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう類の作成」に該当する事実はない。
(ホ) 請求人は、次の事実に照らせば、本件OA機器等の設置費用に関し、最高裁平成7年4月28日判決のいう「当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動」をなしたと認めることができる。
 なお、請求人の反論は、最高裁判決に関する誤った解釈に基づく主張である。
A 実際に、本件OA機器等が請求人に納品された日は、平成23年5月17日であり、平成23年3月事業年度末においては、「追加条項(特約条項)」に記載されている現地据付サービスが実施されていない。また、請求人の氏名印が押印されている商品手配依頼書には、納入場所として、請求人所在地が明記されているところ、本件OA機器等が請求人に納品された事実がないにもかかわらず、本件納品確認書及び本件終了確認証が作成され、いずれの書類においても、請求人の氏名印を押印され、K社に提出されている。
B 通常人であれば、相手方と事前の申し合わせがない限り、物品の納入及び役務の提供が完了していない状況において、請求書の送付があっても、これを了承することはあり得ないところ、請求人は、K社から、本件OA機器等の納品がされていないにもかかわらず、請求額4,780,555円、支払約束日を平成23年4月20日とする同年3月25日付の請求書を受領し、請求書の記載どおり、同年4月20日に手形で請求金額を支払っている。
C 本件OA機器等の設置費用については、本来、納品があった事業年度において損金の額に算入すべきであるにもかかわらず、請求人は、平成23年3月期のソフトウェア及び消耗品費として総勘定元帳に記載し、同事業年度の損金の額に算入した。
(ホ) 原処分庁は、最高裁の判例をあげているが、当該判例は、「特段の行動」の有無の前提として、「当初から所得を過少に申告をする意図」することが前提であるところ、請求人に当該意図はない。

ハ 本件各旅行費用

原処分庁 請求人
 本件各旅行費用を計上したことについては、次のことから、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺいし又は仮装の行為があった。  本件各旅行費用を計上したことについては、次のことから、事実の隠ぺい又は仮装の行為はない。
(イ) P2は、M社旅行センター宛に送信した平成23年3月30日付のファクシミリレターにおいて、「いずれも出発日を入れず」に本件各旅費請求書を作成するよう依頼しており、これに対して、M社旅行センターは、通常使用している請求書とは異なる様式で、本件各旅費請求書を作成して請求人宛に交付している。
 なお、L社において、P2が担当した請求人宛の請求書の控えには全て出発日が記載されており、M社旅行センターが請求人に対し本来交付すべきであった請求書においても、全て出発日が記載されている。
(イ) 平成23年6月開催の○○見本市の渡航チケットをL社のP2に依頼したところ、同人より、請求人に対し、同年3月末までにチケットを買わないと燃料サーチャージが上がるのでチケット料金が高くなる旨の連絡があったので、代表者は、P2に対し、同年3月末までに○○見本市向けのチケットを購入する旨を伝え、P2は同年3月末に本件各旅費請求書を請求人に届けたものである。
 なお、本件各旅費請求書の項目の記載から、それぞれの出発日は確認できる。
(ロ) M社旅行センターにおいては、原則、請求書はチケットとともに顧客に交付しているところ、本件各旅費請求書は、平成23年3月30日付でその当日に請求人に交付された一方、ドイツの○○見本市用出張向けのチケットは、同年5月2日に出力されていると認められ、これらのことは、いずれも通常のチケット販売における処理手順から逸脱した不自然な行為である。また、旅行会社担当者及びM社旅行センターには、出発日を入れない特別な様式で、本件各旅費請求書を作成しなければならない合理的理由は存在しないことから、本件各旅費請求書は、P2と旧知であったとみられる代表者からの依頼を受けて、代表者、P2が通謀の上、当該費用を平成23年3月期の損金の額として算入するために作成された請求書であると認められる。その上で、請求人において、本件各旅費請求書を受け取った翌日に、請求金額の全額を支払うという行為は、本件各旅費請求書に信ぴょう性を生じさせるための行為であると認められるのであり、また、本件各旅費請求書に「P1」と押印されていることからしても、当該行為は、代表者の了解のもと行われたものと認められる。 (ロ) M社旅行センターでは、通常の請求書の様式を使った場合には、宛先欄に「G社」と入力すると字数オーバーになってしまうため、会社名を全て印字することができる特別規格の請求書を作成し発行しており、また、本件各旅費請求書以降においても、請求人、M社旅行センター間の取引においては、当該特別規格の請求書の様式により請求書を発行しているのであるから、請求人が、P2と通謀して、M社旅行センターに虚偽の請求書を発行させた事実はない。
 なお、代表者が、取引先からの請求書を確認し押印しているのは、不正な支出を防止するためである。
(ハ) そして、請求人は、平成23年3月中に旅行が行われていないことを認識しているにもかかわらず、本来3月中に交付されるべきでない本件各旅費請求書に基づき、積極的に同月31日付で、平成23年3月期の総勘定元帳の旅費交通費勘定に「M社旅行センター海外航空券代」として3,077,240円計上し、平成23年3月期の確定申告書を提出していると認められる。 (ハ) 請求人は、P2と通謀して、出発日を入れない請求書や平成23年3月中に発行されるべきでない虚偽の請求書を発行させた事実はない。
(ニ) これらのことは、法人税事務運営指針の第1の1の本文及び同(2)のまる2の「帳簿書類への虚偽記載」及び「相手方との通謀による虚偽の証ひょう類の作成」のいずれにも該当する。 (ニ) 以上のことから、請求人は、P2と通謀して虚偽の本件各旅費請求書を発行させた事実はないから、法人税事務運営指針の第1の1の本文及び同(2)のまる2の「帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう類の作成」に該当する事実はない。
(ホ) 請求人は、次の事実に照らせば、本件各旅行費用に関し、最高裁平成7年4月28日判決のいう「当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動」をなしたと認めることができる。
 なお、請求人の反論は、最高裁判決に関する誤った解釈に基づく主張である。
A 通常人であれば、相手方と事前の申し合わせがない限り、旅行チケットの交付を受けていない状況で、請求書の交付があったとしても、これを了承し、代金の支払を行うことはあり得ない。タイ旅行の出発日は平成23年4月、ドイツ○○見本市用出張の出発日は平成23年6月であることが明らかであったにもかかわらず、チケットとともに請求書の交付を行っているM社旅行センターの原則的な処理に反し、請求人は、M社旅行センターから、チケットの交付を受けることなく、旅行日が記載されていない平成23年3月30日付の本件各旅費請求書を受け取り、同請求書を受け取った翌日の平成23年3月31日に、請求金額の全額を支払っている。
B 代表者は、本件各旅費請求書に、「P1」と押印し、請求書を確認している。
C 請求人は、本来であれば、実際に旅行が行われた事業年度において損金の額に算入すべきである本件各旅行費用を、旅行代金を支払った同日の平成23年3月31日付で、平成23年3月期の旅費交通費として、総勘定元帳に記載し、同事業年度の損金の額に算入した。
(ホ) 原処分庁は、最高裁の判例を挙げているが、当該判例は、「特段の行動」の有無の前提として、「当初から所得を過少に申告をする意図」することが前提であるところ、請求人に当該意図はない。

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