(平成25年12月10日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、審査請求人H、F及びJ(以下、これら3名を併せて「請求人ら」、また、FとJを併せて「請求人夫婦」という。)及びその親族名義の預貯金等は相続財産であり、これを相続財産として申告しなかったことは事実の隠ぺい又は仮装行為に当たるとして相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人らが、これらの処分は違法であるとしてその全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人らは、平成21年12月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したK(以下「本件被相続人」という。)の共同相続人であり、この相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について別表1の「当初申告」欄のとおり記載した申告書を法定申告期限内に共同で提出した(以下、この申告書を「本件申告書」という。)。

ロ 請求人らは、本件相続について原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査(以下「本件調査」という。)を受けた。

ハ 請求人らは、平成24年7月2日に別表1の「修正申告」欄記載のとおり修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を提出した。

ニ これに対し、原処分庁は、平成24年7月25日付で別表1の「更正処分等」欄記載のとおり相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分をした。

ホ 請求人らは、これらの処分を不服として、平成24年8月28日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年11月28日付で別表1の「異議決定」欄記載のとおり、相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分の一部を取り消す異議決定をした(以下、異議決定後の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分をそれぞれ「本件各更正処分」及び「本件各賦課決定処分」という。)。

ヘ 請求人らは、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成24年12月25日に審査請求をした。

 なお、請求人らは、Fを総代として選任し、その旨を平成24年12月25日に届け出た。

(3) 関係法令の要旨

 別紙2のとおりである。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人らと原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても、その事実が認められる。

イ 本件相続の相続人は、本件被相続人の配偶者であるH、本件被相続人の子であるF及びFの妻で本件被相続人の養子であるJの3名である。

ロ 本件申告書の作成を担当したL税理士は、平成24年2月10日の本件調査において請求人夫婦並びに請求人夫婦の子のM、N及びP(以下、これら3名を併せて「孫ら」という。)が名義人となっている預貯金等について、平成10年末から本件相続開始日までの間の金額の移動状況等を記載した表形式の資料を本件調査担当職員に提出した(以下、提出した資料を「本件提出資料」という。)。なお、本件提出資料には、「内K分」及び「外資金融通分」と題する欄が設けられており、それぞれの合計欄には、45,057,670及び57,940,042と記載されている。

ハ 本件各更正処分によって加算された財産の明細は、別表2及び別表3記載のとおりである(以下、別表2記載の預貯金及び保険金の権利を「本件預貯金等」といい、そのうち、同表順号56ないし順号72のH名義の預貯金を「本件H名義預貯金」、同表順号40のM名義の貯金を「本件M名義貯金」、それ以外の本件預貯金等を「本件家族名義預貯金等」という。また、別表3記載の農業用シュレッダーを「本件農業用シュレッダー」という。)。

ニ 本件申告書の第11表「相続税がかかる財産の明細書」には、「種類」欄に事業用財産、「細目」欄に機械、器具、「利用区分、銘柄等」欄にトラクター、「価額」欄に300,000円との記載がある。

ホ 本件農業用シュレッダーの本件相続開始日の評価額は別表3「評価額」欄記載のとおり49,648円であった。

ヘ 平成18年に、請求人夫婦及び孫らがQ社の株式をそれぞれ本件被相続人から贈与を受け、いずれも法定申告期限内に贈与税の申告をした。

ト Fは、平成24年7月2日に本件修正申告書を提出すると同時に別表4記載のとおり贈与税の期限後申告及び修正申告をした。

チ 請求人夫婦及び孫らは、平成7年に本件被相続人の自宅と同一敷地内に家を建て、本件被相続人及びHと別居をし、生計を別にしていた。

リ 本件被相続人は、平成17年2月に○○で入院、Hは、同年5月に○○で入院し、両名はその後○○に入所した。

ヌ R税理士は、平成24年2月24日に原処分庁に対し税務代理権限証書を提出し、以後、請求人らの代理人となった。

(5) 争点

イ 本件調査に係る手続は違法又は不当であったか否か。

ロ 本件預貯金等は、相続財産に該当するか否か。

ハ 本件農業用シュレッダーの評価額を、本件各更正処分において相続財産に加算すべきか否か。

ニ 請求人らに、通則法第68条第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装した」事実があったか否か。

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2 争点イ(本件調査に係る手続は違法又は不当であったか否か。)について

(1) 主張

イ 請求人ら

 本件調査に係る手続は、次の理由により違法又は不当であった。

(イ) 本件調査担当職員は、平成24年2月10日の本件調査の際に、L税理士が提出した本件提出資料を見た後、「こんなに相続財産があるのに隠していたのか。」との発言を何回も繰り返し、Fがそのようなことはないと回答したところ、「うそつき」との発言を行った。
 このような発言は、質問検査権で許容される社会通念上相当な限度を逸脱したものである。

(ロ) また、本件調査担当職員は、本件調査の結果の説明及び修正申告の勧奨をした際に、申告書に加算すべきと説明した財産について、その加算の根拠を示さず、請求人らに反論する時間、機会も与えることなく一方的に調査を打ち切った。

(ハ) 請求人らは、異議申立てに係る調査(以下「本件異議調査」という。)において、本件異議調査を担当した職員(以下「本件異議担当職員」という。)に対して、資料を示しながら本件預貯金等が相続財産に該当しないことを説明したにもかかわらず、異議審理庁は、原処分の根拠や理由を開示することなく一方的に異議決定を行った。

ロ 原処分庁

 本件調査に係る手続は、次のとおり違法又は不当ではなかった。

(イ) 本件調査は、相続税法第60条の規定に基づき適法に行われた。
 なお、本件調査担当職員が、本件調査の際、請求人夫婦に対し、「うそつき」との発言をした事実はなかった。

(ロ) 異議申立てに係る手続の違法を理由に原処分の取消しを求めることはできない。なお、本件異議調査は、適切に実施された。

(2) 判断

イ 請求人らは、本件調査に際し、本件調査担当職員に質問検査権で許容される限度を逸脱した発言があった旨主張するが、これに関する証拠はなく、当審判所の調査の結果によっても請求人らの主張を裏付ける証拠は認められないから、請求人らの主張には理由がない。

ロ また、請求人らは、本件調査担当職員が課税の理由について何ら説明しなかったこと及び異議審理庁が原処分の根拠や理由を開示しなかったことは違法又は不当である旨主張する。
 しかしながら、本件調査時においては、調査担当職員が調査結果を説明しなければならない旨 を定めた法令上の規定はないから、本件調査担当職員の課税根拠の説明の有無によって、原処分の適法性が左右されることにはならない。
 また、審査請求において、異議審理手続の違法を理由として原処分の取消しを求めることはできない。

ハ したがって、請求人らの主張にはいずれも理由がなく、本件調査に係る手続には課税処分の取消事由となるような違法又は不当はなかった。

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3 争点ロ(本件預貯金等は、相続財産に該当するか否か。)について

(1) 主張

イ 原処分庁

 本件預貯金等は、以下のとおり、管理・運用状況、原資となった金員の出捐者及び贈与の事実等を総合的に勘案すると本件被相続人の相続財産に該当する。

(イ) 請求人夫婦及び孫ら名義の預貯金は、Fの給与が振り込まれるS銀行の口座(以下「本件給与振込口座」という。)を除き、平成17年に○○で入院するまでは全てHが管理・運用していた。

(ロ) 本件相続開始日現在の本件被相続人名義の預貯金残高は、約X,XXX万円であるのに対し、請求人ら及び孫ら名義の預貯金残高は約XX,XXX万円に上る。一方、本件被相続人は平成18年から平成21年まで、毎年X,XXX万円以上の収入とXXX万円以上の所得を確定申告しており、生前に相当額の収入があったのに対し、請求人ら及び孫らはそれほどの収入はないから、請求人ら及び孫ら名義の預貯金の額は不相当に多額である。
 そのため、請求人ら及び孫ら名義の預貯金の中に、本件被相続人が出捐したものが含まれていると推認できることから、請求人らに検討を依頼したところ、請求人らは、本件提出資料を提出し、「内K分」欄及び「外資金融通分」欄に記載されている請求人夫婦及び孫ら名義の預貯金については本件被相続人のものであることを認めた。
 また、本件預貯金等が本件給与振込口座から出捐されている事実は認められない。
 そして、請求人らはHが名義人である預貯金のうち本件H名義預貯金についても、資金の出捐者が本件被相続人であると認めた。
 さらに、本件M名義貯金は、口座開設時の登録印鑑が本件被相続人の印鑑と同一であること、口座開設時にMは4歳で収入がなかったことから、本件被相続人が出捐者と認められる。

(ハ) 請求人夫婦は、Q社の株式の贈与について贈与税の申告を行っており、贈与税の申告の必要性について十分認識していながら、本件預貯金等については、贈与税の申告を行っていないことからすると、本件被相続人から請求人ら及び孫らへ申告されている以外の贈与があったと認めることはできない。

ロ 請求人ら

 本件預貯金等は、以下のとおり、その名義、管理・運用状況、原資となった金員の出捐者及び贈与の事実等を総合的に勘案すると、請求人ら及び孫らの各名義人固有の財産であり、本件相続に係る相続財産には該当しない。

(イ) 預貯金の管理・運用は基本的に請求人夫婦及び孫ら名義のものは請求人夫婦が行っていた。また、本件被相続人とHのものは平成17年4月まではHが行っていた。

(ロ) 本件被相続人の預貯金可能額は、昭和60年から平成21年までの確定申告書及び不動産収支内訳書を基に算出したところ、約X,XXX万円であった。
 これに対し、請求人夫婦の本件相続開始日までの給与・退職金及び資産の運用益の合計はXX,XXX万円からXX,XXX万円あると思われ、昭和56年年頭には、Fに約613万円、Jに316万円の預貯金残高があり、昭和の終わりから平成にかけての預貯金の利率が高い期間にはかなりの運用益があった。また、孫らの預貯金の原資は、本件被相続人及び請求人夫婦からの贈与である。そして、Hには昭和56年1月現在で約743万円の預貯金があり、以後本件相続開始日までの約30年間に預貯金等の運用益と年金収入があった。
 以上のとおり、本件預貯金等の出捐者は、本件被相続人ではない。
 なお、請求人夫婦及びL税理士は、本件調査担当職員に対し、本件提出資料の内容が相続財産に該当するとの説明や発言はしていない。
 また、平成24年2月10日の本件調査の際に、L税理士が、H名義の預貯金について、T銀行以外の金融機関の預貯金が本件被相続人のものであることについては、請求人夫婦も同意見である旨申述したとされているが、請求人夫婦からL税理士にこのようなことを言った事実はない。
 さらに、本件M名義貯金の出捐者はJであり、口座印鑑も平成13年1月にMのものに変更している。

(ハ) 本件被相続人から請求人ら及び孫らの各名義人への現金などの贈与があった。
 なお、請求人夫婦は平成23年10月13日の本件調査の際に、本件調査担当職員に対し、「贈与税の申告をしたのはQ社及びU社の株式です。」と答えたが、それは、それ以外に贈与があったかは不明であったことから明確に答えられなかっただけである。
 また、後日、現金贈与があったことを思い出して説明し、必要な申告も行っている。

(2) 判断

イ 認定事実

 請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 原処分庁及び請求人らから提出された本件被相続人、請求人ら及び孫ら名義の預貯金の印鑑届から、次の事実が認められる。

A 本件被相続人、請求人ら及び孫ら名義の預貯金等で使用している印鑑として確認できるものは全部で10種類であった(以下、これらの印鑑をまとめて「本件各印鑑」という。)。

B 本件各印鑑のうち、1本は、本件被相続人名義の預貯金に使用されている印鑑であった(以下、この印鑑を「被相続人印」という。)。

C 本件各印鑑のうち、2本は、H名義の預貯金に使用されている印鑑である(以下、この2本の印鑑をまとめて「H印」という。)。

D 本件各印鑑のうち、被相続人印及びH印以外の印鑑は、請求人夫婦及び孫ら名義の預貯金にそれぞれ使用されている印鑑である。

E 本件預貯金等の一部は、設定時に被相続人印を届出印として登録していたが、被相続人名義を除き、基本的に平成13年までに被相続人印以外の印鑑に改印された。なお、本件M名義貯金が設定された当時、当該貯金の届出印には被相続人印が使われていたが、平成13年1月4日に、被相続人印からMが使用している印鑑に改印された。

(ロ) 請求人らが証券会社に提出した相続に係る依頼書(委任状)兼念書及び遺産分割協議書の筆跡をみると、請求人らの筆跡にはそれぞれ特徴があり、これらの書類の筆跡と、印鑑届の筆跡とを比較すると次の事実が認められる。

A 平成17年5月にHが○○で入院する前まで専らHが使用していたと認められる印鑑は被相続人印とH印であった。なお、平成17年にHが○○で入院した後は、被相続人印及びH印も請求人夫婦が使用している。

B 被相続人印及びH印以外の本件各印鑑は、請求人夫婦が使用していた。なお、一部で各名義人の筆跡と思われるものもあった。

(ハ) Hについては、収入は基礎年金であったが、昭和56年時点において約7,400,000円の資金があった。

ロ 当てはめ

(イ) 一般的に外観と実質は一致するのが通常であるから、財産の名義人がその所有者であり、その理は預貯金等についても妥当する。
 しかしながら、預貯金等は、現金化や別の名義の預貯金等への預け替えが容易にでき、また、家族名義を使用することはよく見られることであるから、その名義と実際の帰属とがそごする場合も少なくない。そうすると、預貯金等については、単に名義のみならず、その管理・運用状況や、その原資となった金員の出捐者、贈与の事実の有無等を総合的に勘案してその帰属を判断するのが相当である。

(ロ) 原処分庁の主張について
 原処分庁は、本件提出資料は、請求人らが家族名義の預貯金等について検討した結果に基づき、「内K分」及び「外資金融通分」として記載した金額の合計額が本件相続に係る相続財産であることを原処分庁に示したものであるとして、本件提出資料に基づき、本件家族名義預貯金等の出捐者は本件被相続人である旨、また、請求人夫婦がL税理士に本件H名義預貯金の出捐者が本件被相続人であると伝えたことから、本件預貯金等は本件被相続人の財産である旨主張する。
 しかしながら原処分庁は、本件預貯金等の管理状況については、単にHが平成17年まで管理していたと主張するのみで、使用印鑑の状況や保管場所など管理状況について何ら具体的に主張も立証も行わず、また、その出捐者については、本件相続開始日前3年間の本件被相続人の収入が多額であること、及び本件預貯金等の出捐が本件給与振込口座と直接的な関係がないことを挙げるのみで、求釈明に対しても、新たな主張はないとして具体的な出捐の状況については何ら主張立証をしていない。さらに、本件被相続人から請求人ら及び孫らに対する贈与の有無についても、請求人夫婦が平成18年に贈与を受けた際には贈与税の申告を行っており、その他に贈与税の申告がなかったのは贈与がなかったからにほかならない旨主張するのみであり、到底承伏できるような主張ではない。そして、請求人らは、本件提出資料が本件相続に係る相続財産を示したものであること及び本件H名義預貯金が本件被相続人の財産であることを認めた事実はない旨主張し、L税理士も当審判所に対し、当該主張に沿う答述をしており、特段、その答述の信用性を疑わせるような事情もないことからすると、請求人夫婦が当該各事実を認めたことを前提とした原処分庁の主張には理由がなく、このことから本件預貯金等が相続財産であったと認めることはできない。
 なお、原処分庁は、本件M名義貯金については、設定時の印鑑が被相続人印で、設定当時Mは4歳であることから、出捐者は本件被相続人となる旨、個別に主張するが、請求人らは、出捐者はJであると主張しているところ、当審判所の調査によってもその出捐者が被相続人であるとは認めることができない上、上記イ(イ)Eのとおり届出印も平成13年にMが使用している印鑑に改印され、以後の管理は請求人夫婦が行っていると認められることから、これらのことを総合的に判断すれば、本件M名義貯金についても相続財産に該当すると認めることはできない。

(ハ) 審判所による検討
 当審判所の調査の結果によっても、次のとおり、本件預貯金等が相続財産に該当すると認めることはできない。

A 管理・運用状況について

 まず、本件預貯金等の管理・運用の状況についてみると、平成17年にHが○○で入院した後は、請求人夫婦がその管理・運用を行っていたと認められるところ、それ以前の状況については、上記イ(イ)及び(ロ)のことからすると、本件被相続人名義の預貯金及びH印を届出印とするH名義の預貯金は、Hが管理・運用し、一方本件家族名義預貯金等は被相続人印及びH印以外の印鑑を使って請求人夫婦及び孫らが管理・運用していたものと認められる。

B 出捐者及び贈与の事実の有無について

 次に、本件預貯金等の出捐者についてみると、原処分庁は平成16年まで遡って金融機関を調査し、当審判所もそれに基づいて調査を行ったが、当審判所は、個々の預貯金等の出捐者が誰であるのかを認定することはできなかった。また、贈与の事実の有無についてみても、請求人らは、上記(1)ロ(ハ)のとおり、資料を提出して贈与の事実があった旨を主張し、他方で、原処分庁は、請求人夫婦が贈与税の申告をしていないことをもって、贈与がなかった旨を主張するが、請求人らが提出した資料や原処分関係資料を調査しても、当審判所は、被相続人から請求人らに対して贈与がなかったと認めるには至らなかった。また、本件H名義預貯金については、上記イ(ハ)のことから、本件被相続人が出捐者とまでは認められない。

(ニ) まとめ
 以上のとおり、本件預貯金等の管理・運用の状況、原資となった金員の出捐者及び贈与の事実の有無等を総合的に勘案しても、本件預貯金等がいずれに帰属するのかが明らかではなく、ひいては、本件預貯金等が被相続人に帰属する、すなわち、相続財産に該当すると認めることはできない。

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4 争点ハ(本件農業用シュレッダーの評価額を、本件各更正処分において相続財産に加算すべきか否か。)について

(1) 主張

イ 原処分庁

 本件農業用シュレッダーの評価額49,648円は、次の理由から本件各更正処分において相続財産に加算すべきである。

(イ) 本件被相続人名義のV銀行b支所の普通貯金口座(口座番号○○○○、以下「本件貯金口座」という。)の通帳には、平成20年2月20日の出金額310,000円の横に、「シュレッダー」と記載されている。

(ロ) R税理士は、本件異議調査の際に、本件農業用シュレッダーは、平成20年2月20日に購入したもので、本件貯金口座から310,000円を下ろして購入した旨申述している。

ロ 請求人ら

 本件農業用シュレッダーの評価額49,648円は、次のとおり、既に本件申告書の相続財産に計上されているから、加算すべきではない。

 本件相続の開始前10年間に本件被相続人が取得した農業用資産は、トラクターと本件農業用シュレッダーの2点であるところ、この2点の評価額を本件申告書の第11表「相続税がかかる財産の明細書」に、事業用財産の「細目」欄に機械、器具、「利用区分、銘柄等」欄にトラクターと記載して、一括して300,000円で計上した。

(2) 判断

イ 認定事実

 当審判所の調査の結果によれば、本件被相続人が所有していた本件相続開始日現在の事業用財産の機械、器具は、トラクター(以下「本件トラクター」という。)及び本件農業用シュレッダーであり、本件トラクターの本件相続開始日現在の評価額は229,868円であった。

ロ 当てはめ

(イ) 本件被相続人の事業用財産の機械、器具の状況及び本件トラクターの評価額は上記イのとおりであり、同トラクターの評価額と本件農業用シュレッダーの評価額49,648円との合計額は279,516円となる。
 そうすると、本件申告書の第11表の事業用財産の機械、器具の価額300,000円は、上記合計額を上回るから、同表の「利用区分、銘柄等」欄に「トラクター」との記載しかないとしても、本件農業用シュレッダーの評価額を本件各更正処分において相続財産に加算すべきではない。

(ロ) 原処分庁は、本件農業用シュレッダーの評価額を相続財産に加算して更正したのは、まる1本件貯金口座の通帳には、平成20年2月20日の出金額310,000円の横に「シュレッダー」と記載されていたこと、まる2R税理士が、本件異議調査の際に、本件異議担当職員に対し、本件農業用シュレッダーは平成20年2月20日に購入したものであると申述したためである旨主張する。しかしながら、本件農業用シュレッダーの評価額相当額が本件申告書において計上されていることは上記(イ)のとおりであり、原処分庁の主張は、本件農業用シュレッダーの評価額が本件申告書の相続財産に含まれていなかったことを示す理由にはならないから、原処分庁の主張には、理由がない。

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5 結論

(1) 本件各更正処分について

 以上からすれば、平成24年7月25日付で原処分庁が請求人らに対してした、本件各更正処分は違法であるから、その全部を取り消すべきである。

(2) 上記(1)のとおり、本件各更正処分は、その全部を取り消すべきであるから、争点ニについては、検討するまでもなく、本件各賦課決定処分についても、その全部を取り消すべきである。

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