(平成26年5月22日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、インターネットのウェブサイト上で、当該サイトの男性会員に映像を見せながら会話を行う等のいわゆるライブチャットサービス業務を行って報酬を得ていた審査請求人(以下「請求人」という。)が、平成19年分、平成20年分、平成21年分、平成22年分及び平成23年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税についていずれも確定申告をしていなかったところ、原処分庁が請求人に当該業務に係る雑所得があるとして所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、まる1当該業務の遂行上支出したとする衣服費及び化粧品購入費用等の金額を当該雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべきであるとし、また、A国外に居住する親族17名について扶養控除を認めるべきであるとして、各決定処分等の全部又は一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、本件各年分の所得税について、いずれも確定申告書を提出していなかったところ、原処分庁は、平成25年3月8日付で、別表1の「決定処分等」欄のとおり、本件各年分の所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分をした。
ロ 請求人は、これらの処分を不服として、平成25年5月1日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年8月1日付で、別表1の「異議決定」欄のとおり、上記イの所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分の一部を取り消す異議決定をした。
 なお、以下、異議決定によりその一部を取り消された後の本件各年分の所得税の各決定処分を「本件各決定処分」といい、同取り消された後の無申告加算税の各賦課決定処分を「本件各賦課決定処分」という。
ハ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成25年8月6日に審査請求をした。

(3) 関係法令の要旨

 関係法令の要旨は、別紙4のとおりである。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても認められる事実及び証拠によって容易に認められる事実である。
イ 請求人は、x2国の国籍を有し、平成12年に来日したが、平成19年4月に現在の肩書地に転居し、引き続き居住している。
 なお、請求人は上記肩書地において夫及び長女と同居していたが、上記転居の時点で職業を有していなかった。
ロ 請求人の従事した業務とその報酬について
(イ) 請求人は、本件各年分において、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)の法人M社(以下「本件運営会社」という。)がインターネット上に開設したウェブサイト「N」(以下「本件サイト」という。)上で、パソコンとウェブカメラを使用して映像を見せながら本件サイトの男性会員(以下「本件会員」という。)と会話を行う等の、いわゆるライブチャットサービス業務に従事し(以下、請求人の行った当該業務を「本件業務」という。)、その報酬を得た。
 なお、本件サイトには、ライブチャットサービスに付随して、「P」と呼称する掲載された写真及び日記の閲覧、メッセージ交換及びビデオ閲覧等のコミュニケーションサービスや「Q」と呼称するライブチャットとは別の動画を視聴するサービスがいずれも有料で備えられていた。
(ロ) 本件業務に係る請求人の報酬は、本件会員が請求人とライブチャットを行う等のために、本件サイト上で請求人に対しアクセスをした時間等に応じて増加する仕組みになっており、請求人は、本件各年分において、決済代行業者であるx5(以下「本件決済代行業者」という。)から請求人名義の複数の預金口座に外為送金を受ける方法により、当該報酬を受領していた。
ハ 請求人は、本件業務を行うに当たり、本件運営会社との間で同社のビデオチャットサービスやその他のプログラムの使用許諾契約(以下「本件契約」という。)を締結したが、本件契約に係る利用規約には請求人が負担する費用について要旨以下のとおり定められており、当該定めによれば、請求人は本件業務に必要な備品を全て自己負担することとされていた。
(イ) 請求人は、本件運営会社のビデオチャットサービスを利用する上で、請求人自身の利益を目的に自身の費用で同社のビデオチャットサービスのアクセス及び利用に必要な全ての備品を提供しなければならない。備品は、パソコン、コンピューターに内蔵の又は接続可能なカメラ及びブロードバンドインターネットへの接続を含むが、これに限るものではない(同規約2.2.1)。
(ロ) 請求人は、自身のライブコンテンツを制作する上で放送場所の装飾に伴う全ての附属品、小道具をその他の必要品に加えて供給するものとする(同規約2.2.3)。
ニ 原処分に係る調査(以下「原処分調査」という。)について
(イ) 原処分庁は、平成24年7月31日付で、請求人に対し、請求人が平成23年9月21日に本件決済代行業者から受領した17,571米国ドルについて、その取引内容を確認する旨の「国外送金等に関するお尋ね」と題する書面を送付した。
 これに対し、請求人は、平成24年8月6日、原処分庁に対し、「国外からの送金受領の内容について(回答)」と題する書面に、当該金員は、本件サイトで本件業務に従事したことより得た報酬である旨記載して提出した。
(ロ) 上記回答の受領後、原処分庁所属の調査担当者(以下「原処分調査担当者」という。)は、請求人に対し原処分調査を実施したが、平成25年1月29日及び同年2月6日に行われた同調査において、請求人は、上記(イ)の回答内容を覆して、自分は本件業務に従事したことはなく、本件サイト及び本件運営会社のいずれも知らない旨申述し、その後も必要経費に係る領収証等の書類を一切提示せず、また、扶養控除の適用に係る申立てもしなかった。
(ハ) これに対し、原処分庁は、原処分調査の結果に基づき、請求人が本件各年分において雑所得を生ずべき本件業務に従事したことにより報酬を得たと認定した上で、総収入金額については別表2の「総収入金額」欄のとおりとし、また、必要経費については請求人の申述に基づき、平成22年分としてウェブカメラ購入費用3,500円、平成23年分としてカーテン及びソファーの購入費用計10,050円をそれぞれ本件業務に係る備品費として必要経費を認容し、本件各年分の雑所得の金額を算定し、別表1の「決定処分等」欄のとおりの各決定処分を行った。
ホ 異議決定について
(イ) 請求人は、上記各決定処分が行われた後、原処分庁所属の職員と面接して、本件業務に従事したことを認めた上で、必要経費の存在などを主張した。そして、平成25年5月1日、上記ニの(ハ)の各決定処分による認定額を上回る必要経費の算入及び後記トの親族に係る扶養控除の適用を求めて異議申立てを行い、その後、以下のAないしFの関係書類の写しを異議審理庁に対し提出した。
 なお、下記Aの必要経費に関する書類の一部には、請求人がそれぞれの商品等の内容や本件業務との関連について記載したメモ書きが付されている。
A 平成25年5月29日提出の必要経費に関する書類
(A) インターネットショッピングサイト(R等)の購入履歴
(B) 領収証、納品書、お買い上げ明細書及びご注文内容明細書等の伝票
(C) 商品購入店からのメール文書
(D) 商品名及び金額が記載された商品リスト
(E) インターネットショッピングサイト(S等)の商品ページを出力した書類
(F) 金額が記載された商品画像の印刷物
(G) 商品の取扱説明書や保証書の写しに手書きで金額が記載されたもの
B 同日提出の請求人との親族関係等を証明する旨記載されたx2国語の各書面及びそれらの翻訳文
C 同日提出の姉が請求人から金銭を受け取った旨記載されたx2国語の各書面及びそれらの翻訳文
D 同日提出の甥のY名義のx1銀行の預金通帳の写し
E 平成25年6月19日提出の叔父、叔母等が請求人から金銭を受け取った旨記載されたx2国語の各書面及びそれらの翻訳文
F 平成25年7月8日提出の父母が請求人から金銭を受け取った旨記載されたx2国語の各書面及びそれらの翻訳文
(ロ) これに対し、異議審理庁は、本件各年分の総収入金額については別表3−1の「総収入金額」欄のとおり認定し、また、請求人の主張する必要経費(平成19年分は1,010,328円、平成20年分は570,818円、平成21年分は1,645,186円、平成22年分は1,331,653円及び平成23年分は2,260,755円)については、上記ニの(ハ)の備品費に加え、請求人の購入した各パソコンは全て本件業務のために使用され、一部の衣装代とパソコン関連商品の購入費用も本件業務について生じた費用であるとして、別表3−1の「減価償却費」欄及び「消耗品費」欄のとおり必要経費を認容したものの、これらの費用以外の費用については、本件業務との関連性の有無及び本件業務の遂行上必要なものであるか否かが明らかでない等として認容せず、さらに、扶養控除については、請求人と後記トの親族とが生計が同一であることを確認できず、その適用は認められないとして、別表1の「異議決定」欄のとおりの異議決定を行った。
 なお、請求人が、本件各年分において取得した各パソコンは、別表3−2のとおりであり、異議審理庁は、異議決定において、これらのパソコンのうち取得価額100,000円未満の各パソコンについては、請求人がそれらを取得した各年分において本件業務の用に供したものとして必要経費(消耗品費)に算入することを認容し、また、取得価額100,000円以上の各パソコンについては、それらを取得した各年月から平成23年12月まで継続して本件業務の用に供したものとして、当該各パソコンの取得価額を基にそれぞれ本件各年分の減価償却費の額を算出し、必要経費として認容した。
ヘ 審査請求について
(イ) 請求人は、審査請求において、当初、上記ホの(イ)のAないしFの書類と同じ書類の写しを提出し、必要経費の算入及び扶養控除の適用を主張したが、その後、本件業務に関係がない費用が含まれており、また、一部は既に異議決定において認容されているなどとして、必要経費に係る主張の一部を取り下げた。
 以下、請求人が最終的に審査請求において必要経費であると主張する費用を「本件各費用」といい、上記ホの(イ)のAの必要経費に関する書類のうち本件各費用に係る書類を「本件必要経費書類」という。
 なお、本件各費用を、商品等の内容及び上記ホの(イ)の請求人が記載した本件必要経費書類のメモ書きに従って費途ごとの項目に区分し、当該項目別の金額を示すと別表4のとおりであり、その内訳(パソコン購入費を除く。)は別表5−1ないし別表5−9のとおりである(当該メモ書きは、同各別表の「請求人メモ書き」欄のとおりである。)。
(ロ) 請求人は、審査請求において、異議決定における雑所得の総収入金額については争っていない。
ト 請求人の親族について
 平成19年ないし平成23年の各年末時点において、請求人には、x2国x3に別表6のNo.1ないしNo.13の親族(以下「本件x3居住親族」という。)が、x2国x1(以下「x1」という。)に別表6のNo.14ないしNo.17の親族(以下「本件x1居住親族」といい、本件x3居住親族と併せて「本件親族」という。)がいた。
チ 本件親族名の各書面について
 上記ホの(イ)のC、E及びFの本件親族が請求人から金銭を受け取った旨記載された各書面(以下「本件親族受領書」という。)には、作成した日付の記載はなく、別表7のとおりの金銭の受領日及び受領金額の記載がある。
リ 請求人の渡航履歴について
 請求人は、平成19年12月27日から平成20年1月2日まで、平成21年8月6日から同月13日まで、平成22年12月20日から同月23日まで及び平成23年8月8日から同月17日までの各期間、x2国に渡航した。 

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2 争点

(1) 争点1 本件各費用は、本件業務に係る雑所得の金額の計算上、必要経費に算入することができるか否か。
(2) 争点2 本件親族は、請求人と生計を一にする親族に該当するか否か。

3 主張及び判断

(1) 争点1(本件各費用は、本件業務に係る雑所得の金額の計算上、必要経費に算入することができるか否か。)について

イ 主張
原処分庁 請求人
 本件各費用は、まる1支払先又は支払日が不明であるか、A本件業務との関連性及び本件業務の遂行上必要なものであることが明らかでないかのいずれかであるから、本件各年分の必要経費に算入することは認められない。  請求人は、○○ライブチャットサイトである本件サイトで本件業務をしていたが、本件会員とのライブチャット態様やPへ投稿する写真、動画に○○的な内容は少なく、むしろ日常生活の様子を紹介しアピールしていたので、本件各費用のうちライブチャット中に使用するこれら日用品の購入費用やPコーナーの写真や動画を撮影するために支出した費用は、全て必要経費になる。
 また、本件必要経費書類に記載されているものは、本件会員からのアクセスを増やすため、本件業務に使用する衣服、水着、ソファー、カーテン等を購入した費用及び美容費であり、全て本件業務の遂行上必要なものであるから、必要経費に算入される。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 所得税法第37条《必要経費》第1項に規定する「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」とは、当該業務の遂行上生じた費用、すなわち業務と関連のある費用をいうが、ある費用が必要経費に当たるといえるためには、単に業務と関連があるというだけでなく、客観的にみてその費用が業務と直接の関係を有し、かつ、業務の遂行上必要なものに限られ、また、業務の遂行上必要なものというためには、その者の主観的な判断のみによるべきではなく、通常必要なものとして客観的に認識できるものでなければならないと解するのが相当である。
(ロ) 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 本件業務の開始時期について
(A) 請求人は、平成19年6月6日、初めて本件決済代行業者から本件業務に係る報酬2,314.61米国ドルの外為送金を受け、x4銀行○○支店の請求人名義普通預金口座(口座番号○○○○)に276,456円が入金された。
(B) 本件契約に係る規約には、本件運営会社がライブチャット業務に従事する者に対し支払う報酬について、要旨以下の記載がある(同規約3.1.2及び3.2)。
a 毎月15日までに発生した売上で、16日から20日までの間に支払の請求があった場合、当該請求分は翌月の5日頃に支払われる。
b 上記売上の支払は、各人の指定した口座に電信送金されることにより行われる。
(C) 請求人は、平成25年12月13日、当審判所に対し、平成19年4月に現在の自宅に引っ越してから少し経った後の同年5月から本件業務を始め、当該報酬はその翌月くらいから請求人名義の預金口座に入金されているはずである旨答述した。
(D) 以上のとおり、請求人の上記(C)の答述は、上記(A)の決済状況及び上記(B)の契約内容と整合して信用できるものであり、これらの各事実からすれば、請求人は上記答述のとおり、平成19年5月に本件業務を開始したものと認められる。
B 原処分調査時におけるパソコンの設置状況について
 原処分調査担当者は、平成24年10月15日、請求人の自宅へ赴き原処分調査を行ったが、その際に請求人の自宅に設置されていることを確認したパソコンは、リビングにあるデスクトップパソコン1台だけであった。
C 本件各費用以外の費用について
 請求人の主張する本件各費用には含まれていないものの、本件業務に必須のインターネット接続料について、当審判所が請求人が利用していた通信回線の業者であるT社に対し調査をした結果によれば、請求人の自宅のインターネット月額接続料は、同社のサービスの利用を開始した平成19年4月4日以後、まる1○○○○基本料○○○○円、A○○○○利用料○○○○円、Bルーターレンタル料○○○○円及びCまる1及びAに係る消費税及び地方消費税相当額○○○○円の合計○○○○円であった。
D 本件必要経費書類について
 本件各費用のうち別表5−2ないし5−8の網掛けをした各費用について、請求人が提出した本件必要経費書類の内容は、以下のとおりである。
(A) 別表5−3及び別表5−8で網掛けをした各費用のうち「証拠種類」欄にCと記載されているものは、商品名及び金額が記載された商品リストの内容であり、これは、請求人又は商品購入先が作成したもので購入日又は購入先が記載されておらず不明のものである。
(B) 別表5−2、別表5−5及び別表5−6で網掛けをした各費用の全て並びに別表5−4、別表5−7及び別表5−8で網掛けをした各費用のうち「証拠種類」欄にDと記載されているものは、インターネットショッピングサイトの商品ページを出力した書類の内容であり、これは、購入日は表示されているものの、その出力時現在の販売金額しか表示されておらず、実際の購入金額が不明であるもの、又は金額表示の代わりに請求人の手書きによる金額が記入されているもの、あるいは購入履歴の表示が全くないものである。
(C) 別表5−3及び別表5−8で網掛けをした各費用のうち「証拠種類」欄にEと記載されているものは、金額が記載されている商品画像の印刷物であり、これは、主に化粧品、日用品又は下着等の商品画像に請求人がこれらの商品名及び金額を記載して印刷したもので、実際の購入先、購入日又は購入金額が不明なものである。
(D) 別表5−4及び別表5−7で網掛けをした各費用のうち「証拠種類」欄にFと記載されているものは、商品の取扱説明書又は保証書の写しに手書きで金額が記載されたもので、購入金額が不明なものである。
E 本件業務の態様に係る客観的な資料の提出の有無について
 請求人は、当審判所に対し、ライブチャット中の動画や静止画等の本件業務がどのように行われたかを客観的に明らかにする資料を提出していない。
(ハ) 請求人の本件業務の態様に係る答述等について
A 請求人は、平成25年10月15日、本件業務の態様及びパソコンの使用状況等について、要旨以下の(A)ないし(D)及び(F)ないし(I)の答述をし、同年12月13日、同(D)の答述内容を同(E)のとおり変更した。
(A) 請求人は、平成19年から平成24年まで、自宅でパソコンとウェブカメラを使って、ライブチャットを行っていた。ライブチャットとは、インターネットでアクセスしてくる本件会員に対し、着飾った自分の姿をウェブカメラに映して見てもらい、チャット、つまり会話を楽しんでもらうサービスである。
 またPで、本件会員が請求人が掲載した写真や日記を閲覧したりコメントしたりすることでも報酬が入り、また、メインのライブチャットに誘導することもできるため、請求人は、そこに家族旅行先のスキー場やキャンプ場で家族に撮ってもらった写真を掲載していた。
 なお、請求人は、Pに写真を載せるときは、パソコンで顔を煙でぼかすなど加工して、見えにくくする処理をしていた。
(B) 請求人は、もともと夫や娘に対して内緒でライブチャットを行っていたので、平日のライブチャットに従事した時間は、夫や娘が寝た後の午前2時又は3時頃から朝起きてくる前の午前7時前くらいまでであった。また、休日や祝日には、夫は趣味の車のオフ会で外出し、娘も大抵外出したので、請求人は、深夜の時間に加え、昼間からライブチャットを行った。
(C) 請求人は、通常自宅のリビングダイニングにあるデスクトップパソコンを使用してライブチャットを行ったが、持ち運びできるノートパソコンを用いて寝室や風呂場で行うこともあった。また、請求人は、x2国に帰国した際に、ノートパソコンを使って、本件会員のために日記を書き込むこともあった。
(D) 複数の本件会員がライブチャット中に請求人にアクセスしてパソコンのメモリが足りなくなると、画面が黒くなって入力を受け付けなくなることがたまにあり、その都度請求人は、新しく性能の良いパソコンに買い換えていた。請求人は、パソコンを買い換えた後、従前使用していたデスクトップパソコンについては自宅に届いたチラシを見て知った廃品回収業者に引き取ってもらい、ノートパソコンについては、x2国に帰国した際に友人にプレゼントしたので、ライブチャットを行うために同時に使用していたのは各タイプ1台ずつであった。
(E) 請求人は、平成25年12月13日、当審判所に対し、パソコンをプレゼントした友人や処分を依頼した廃品回収業者の名前は覚えていないものの、平成21年9月にノートパソコン及びデスクトップパソコンを買い換えた際には、買換え前の両パソコンを処分し、その後買い換えたパソコンは全て買換え後に友人又は親族にプレゼントした旨答述し、上記(D)の答述内容を変更したが、当該変更の理由について、デスクトップパソコンを買い換えた時に全て捨てたと言えば必要経費に認められると思ったからである旨答述した。
(F) ライブチャットの際に着る衣服や下着については、同じ服を何回か着ていると飽きられてしまうので、バリエーションを増やし、大量に購入して、毎日着替えていた。本件会員からのリクエストによってライブチャットの途中で着替えることもあり、セーラー服や水着等、コスプレのような服を着ることもあった。
(G) 請求人は、日本語の話し方でイントネーションが違うことが分かってしまうので、音声で会話するのではなくキーボードで文字を打つ文字チャットを行った。
(H) 請求人は、ライブチャットを行う際に、基本的に首から下だけしかウェブカメラに映さなかったが、○○後は、話してみて気に入った相手であれば、顔の目の下まで見せることもあった。
(I) 請求人は、本件サイト上で同じ登録名でライブチャットを続けていると、だんだん飽きられて本件会員からのアクセス数が減ってくるので、不定期に退会し、名前を変えて再登録をし、新人の振りをして本件業務を継続していた。請求人は、同じ登録名で1年間続けたことはなく、再登録した後やアクセス数が減ってきたりすると、ウェブカメラに映ってしまう部屋のカーテン、ソファー、家具、装飾品もその都度買い換えたり、カメラの向きを変えて別の部屋の方角が映るようにしたりした。
B 請求人が、上記Aの各答述((E)を除く。)以外に、平成25年10月15日、同年11月14日、同月22日、同年12月5日、同月13日及び同月18日、当審判所に対してした本件各費用の業務関連性についての主な答述内容は、別表8のとおりである。
(ニ) 当てはめ
A パソコン及びウェブカメラ購入費等について
(A) 本件業務は、請求人が本件会員とインターネットを通じてウェブカメラで映した映像を見せながらライブチャットを行い、あるいは本件会員が閲覧等するために本件サイト上のP及びQに請求人の写真・日記や動画等をアップロードするというものであるから、請求人がいかなる態様で本件業務を行っていたとしても、少なくともパソコン及びウェブカメラを使用し、インターネットへ接続することは、本件業務の遂行上必要不可欠と認められる。
 そうすると、請求人が本件業務の用に供したパソコンの購入費については、その取得価額の金額に応じて、当該業務の用に供した各年分の必要経費又は当該業務の用に供した期間に対応した減価償却費の額を各年分の必要経費にそれぞれ算入し、また、請求人が本件業務の用に供したウェブカメラの購入費については、当該業務の用に供した年分の必要経費、インターネット接続料金については、請求人が本件業務を行っていた期間に対応した金額を本件各年分の必要経費にそれぞれ算入するのが相当である。
(B) そこで、まず、パソコンの購入費について検討すると、異議審理庁は、上記1の(4)のホの(ロ)のとおり異議決定において、取得価額100,000円以上の各パソコンについて、いずれも請求人が取得した各年月から平成23年12月までの期間継続して本件業務の用に供していたものとして、それぞれ本件各年分における減価償却費の額を算出しており、原処分庁は当該減価償却費の額を主張している。
 しかしながら、請求人は、上記(ハ)のAの(C)ないし(E)並びに別表8の「パソコン購入費」欄の各答述のとおり、パソコンの使用状況に関して、本件業務においてノートパソコンとデスクトップパソコンを併用し、これらの各パソコンを新しいパソコンに買い換えるたびに処分等していたので同時に使用していたのは各タイプ1台ずつである旨答述するところ、一般的にノートパソコンはデスクトップパソコンに比べて携帯性に優れるなど両者の利便性は異なるものであるから、これらのパソコンが同時に併用されていたとしても不合理ではない上に、請求人は単独で本件業務を行っており、他に複数のデスクトップパソコン又は複数のノートパソコンが同時に業務の用に供されていたことを窺わせる事情は認められず、上記(ロ)のBのとおり、実際に原処分調査担当者が平成24年10月15日に請求人の自宅に臨場した際にも、原処分調査担当者が確認したデスクトップパソコンは1台のみであったことからすれば、上記の請求人のパソコンの使用状況に関する答述は信用することができる。そうすると、請求人が本件各年分において取得したパソコンは別表3−2のとおりであったところ(上記1の(4)のホの(ロ))、請求人は、本件業務のために初めてノートパソコンを購入した平成19年9月以後はノートパソコン1台を、また、初めて本件業務のためにデスクトップパソコンを購入した平成20年2月以後は、ノートパソコン及びデスクトップパソコンそれぞれ1台ずつを業務の用に供しており、それらを業務の用に供していた期間は、いずれのパソコンについても、それらの取得時から、その後新たなノートパソコン又はデスクトップパソコンに買い換えられるまでの期間であったと認めるのが相当である。
 以上の結果、取得価額100,000円以上の各パソコンの減価償却費の額を算定すると別表9−1の各表の「本年分の必要経費算入額」欄のとおりとなる。なお、異議決定においては、別表3−2の(1)の平成19年9月2日取得のパソコンの取得価額を 188,800円として減価償却費の額を算定しているが、当審判所の調査の結果によれば、当該パソコンの取得価額は、上記の金額に消費税及び地方消費税相当額を加えた198,240円と認められるから、当該パソコンに係る減価償却費の額については、同取得価額を基に算定するのが相当である。また、取得価額100,000円未満の各パソコンについては、上記のとおり、請求人が本件業務の用に供したと認めるのが相当であるから、異議決定において、当該各パソコンの購入費を取得した各年分の必要経費(消耗品費)に算入したのは相当と認められる。
(C) 請求人は、取得価額が100,000円以上の各パソコンについて、それらの取得価額を業務の用に供した各年分で一括して必要経費に算入すべきである旨主張するが、所得税法第49条《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》及び所得税法施行令第138条《少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入》の各規定によれば、取得価額100,000円以上の減価償却資産のうち使用可能期間が1年以上であるものについては、所定の償却方法により減価償却することとされ、任意に減価償却費を計算することはできないところ、請求人が取得した上記各パソコンはいずれも使用可能期間が1年以上であると認められるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 なお、請求人は、上記(ハ)のAの(D)及び(E)並びに別表8の「パソコン購入費」欄の各答述のとおり、それぞれパソコンの処分等に関する答述をするが、当該各答述は処分等をしたとする相手先や時期などが合理的な理由なく変遷している上に、そもそも請求人は、処分を依頼したとする廃品回収業者やプレゼントしたとする友人の名前を覚えていない旨答述し、その答述内容は不自然で具体性がないことからすれば、請求人のパソコンの処分等に係る答述を信用することはできない。
 したがって、上記(B)の減価償却費の額を算定すべき各パソコンについて、廃棄に伴う損失額(未償却残高)を必要経費に算入することはできない。
(D) 次に、ウェブカメラの購入費について検討すると、本件必要経費書類のうち別表5−1記載の各ウェブカメラに係る各書類はインターネットショッピングサイト(U)の購入履歴を出力したものであり、これには、購入日及び購入金額が記載されており、購入した事実を客観的に裏付けるものであるから、これらの購入金額の合計額14,436円を平成21年分の必要経費(備品費)に算入するのが相当である。
(E) さらに、インターネットの接続料金について検討すると、上記(ロ)のCのとおり、請求人のインターネット接続料金は本件業務を開始した平成19年5月以後月額○○○○円であったと認められるから、平成19年分については○○○○円(8か月分)、平成20年分ないし平成23年分についてはいずれも○○○○円(12か月分)を必要経費(通信費)に算入するのが相当である。
B その他の費用について
(A) ライブチャットサービス業務に従事する者が、当該業務を行う場所の装飾に伴う附属品、小道具又はその他の必要品をどのように用意して使用したかは、当該業務の性格上、当該従事する者の具体的な個々の活動内容により異なると考えられるところ、上記(ロ)のEのとおり、請求人からは、本件業務をどのように行っていたのかを明らかにするライブチャット中の動画や静止画等の客観的な証拠の提出はなく、当審判所の調査の結果によってもこれを確認することはできない。したがって、請求人の本件各年分における本件業務の活動状況については、本件必要経費書類の内容のほか、請求人が当該書類に簡記した本件業務との関連性に関するメモ書きの各内容(別表5−2ないし別表5−9の「請求人メモ書き」欄の各記載内容)や各答述内容(上記(ハ)のA及び別表8)から合理的に判断していくほかない。
(B) そこで、上記請求人の各答述内容をみると、請求人は、上記(ハ)のA及び別表8のとおり、本件業務の態様を説明するときには、まる1夫が寝た後の時間にライブチャットを行った、A自宅でライブチャットを行った、B音声チャットではなく文字チャットを行った、C基本的に首から下だけしかウェブカメラに映さなかったが、○○後は気に入った相手であれば顔の目の下まで見せることもあった、DPには家族旅行先の写真を掲載していた、EPに写真を載せる際にはパソコンで加工して顔を見えにくくしていた旨それぞれ答述する一方で、本件各費用の業務関連性を個別に説明するときには、まる1夫がテレビを見るときにリビングを使うのでライブチャットを行うために2段ベッドを購入した(別表8の「部屋の装飾費用」の平成25年11月14日答述の7)、Aスキー場の宿泊先やf公園でライブチャットを行った(別表8・食品関係の費用・同年11月22日の3及び4)、B歌を聴かせたり、料理をしたりする際などに音声チャットをした(別表8・パソコン関連費用・同年12月13日の3及び食品関係の費用・同年11月22日の10)、C化粧をして顔全部をウェブカメラに映すことがあった(別表8・美容に関する費用・同年11月22日の2)、D○○だけ写真に撮ってPに載せることもあった(別表8・衣服等の購入費用・同年12月13日の3)、EPにおいてきれいに写った写真を選んで顔を載せることもあった(別表8・美容に関する費用・同年11月22日の2)などと答述して、本件各費用の内容に応じて、本件業務の態様に係る請求人の前記各答述と相反する内容の答述を数多くしていることに加え、請求人は、例えば、本件必要経費書類のうち、まる1食品に係る書類の一部には当該食品は夜勤のおやつである旨のメモ書き(別表5−9の「請求人メモ書き」欄の各記載内容)をし、また、Aソケットレンチに係る書類にはソファーの脚にキャスターを取り付けるための工具である旨のメモ書き(別表5−6の平成21年9月9日の「請求人メモ書き」欄の記載内容)をしながら、当審判所に対しては、まる1当該食品は全てウェブカメラの前で料理したり食べたりしたものであって、おやつである旨の記載は間違いである(別表8・食品関係の費用・平成25年11月22日の5)、A当該ソケットレンチは自作家具用の組立用工具であり、キャスターを取り付けるための工具ではない(別表8・部屋の装飾費用・同年11月22日の3)ともそれぞれ答述しており、請求人の本件業務及び本件各費用に係る各答述は、終始場当たり的で一貫していない。 
 しかも、請求人は、まる1トラック用品店から購入したエンブレム、自動車補修用の両面テープ及びバイク用の耐熱塗料などを用いて家具を自作した(別表8・部屋の装飾費用・平成25年11月14日の8)、A健康のために乳児用粉ミルクを飲んだ(別表8・食品関係の費用・同年11月22日の13)、Bチャットがうまくできるようにx2国語通訳になるための教本や中学3年生の英文法の書籍等を購入した(別表8・仕事場環境に関する費用・同年12月18日の11)、C犬を散歩させている姿を自分でビデオカメラを置いて自動録画していた(別表8・写真関係の費用・同年11月22日の6)等の不自然かつ不合理な答述を繰り返した。さらに、請求人は、衣服のサイズがまちまちなのはどうしても欲しい下着や衣服でサイズが無い時に購入した後にパッドで調整したりミシンでサイズ直しをしたりして着ることができるから多少のサイズ違いでも購入した旨答述するが(別表8・衣服等の購入費用・同年12月13日の6)、衣服のサイズがSからLなどの違いは多少のサイズ違いとは言い難く、請求人の当該答述もまた不合理なものである。
 これらに加えて、請求人は、学習椅子用のカバーを購入したことにつき、セーラー服を購入してコスプレをし、雰囲気を出すために学習椅子を購入したからである旨答述するが(別表8・部屋の装飾費用・平成25年11月14日の15)、これは、本件必要経費書類のメモ書き(別表5−6の平成23年1月15日の「請求人メモ書き」欄の記載内容)には「PC椅子カバー」と記入していたものを、当審判所の指摘に応じて上記のとおり答述をしたものであり、この答述の前提となる学習椅子を購入したことを示す書類も提出していない。
 以上のことからすれば、請求人の本件各費用の業務関連性に関する各答述は総じて終始場当たり的であって一貫せず、不自然かつ不合理な内容や本件必要経費書類によって確認できない内容を無理に関連付けて述べるものと認められるから、全体として到底信用することはできない。
C 以上の点を踏まえ、さらに別表5−2ないし別表5−9の費用項目ごとに請求人の主張する本件各費用が必要経費に該当するか否かを検討すると、以下のとおりである。
(A) パソコン関連費用について
 別表5−2のパソコン関連費用については、上記Bのとおり、請求人の各答述が全体として信用できないことに加え、同表の「請求人メモ書き」欄の各記載内容及び別表8の「パソコン関連費用」欄の各答述内容を個別にみても、請求人が説明する本件業務との関連性はいずれも曖昧で具体性に欠け、又は不合理なものと認められるから、これらの各費用が、本件業務と直接の関係を有し、かつ、本件業務の遂行上必要なものと客観的に認識することはできない。
 なお、本件必要経費書類のうち別表5−2の網掛けをした費用に係る各書類は、上記(ロ)のDの(B)のとおり、いずれもインターネットショッピングサイトの商品ページを出力した書類であり、これらは、その出力時現在の販売金額しか表示されておらず実際の購入金額が不明であるもの、又は金額表示の代わりに請求人の手書きによる金額が記入されているものであって、そもそも商品を購入した事実を証するものとは認められない。
 したがって、パソコン関連費用は、必要経費に算入することはできない。
(B) 衣服等の購入費用について
a 別表5−3の衣服やバッグ、時計等の購入費用については、上記Bのとおり、請求人の各答述が全体として信用できないことに加え、これらの商品は何ら特殊な衣装や小道具等ではなく、日常使用するものとして一般に販売されているものと認められ、これらの商品を購入しただけでは本件業務において身に着けたのか、あるいは私的に身に着けたのかを合理的に区分することはできず、また、同表の「請求人メモ書き」欄の各記載内容は大部分が「仕事用」とされ、別表8の「衣服等の購入費用」欄の各答述内容を個別にみても、本件業務のために使用していた旨を述べるにすぎず具体性に欠けると認められるから、これらの衣服等の各購入費用が、客観的にみて本件業務と直接の関係を有し、かつ、本件業務の遂行上必要なものとして明らかにされたとはいえない。
 なお、本件必要経費書類のうち別表5−3の網掛けをした費用に係る各書類は、上記(ロ)のDの(A)及び(C)のとおり、商品名及び金額が記載された商品リスト又は金額が記載された商品画像の印刷物であり、これらは、実際の購入日、購入先又は購入金額が不明なものであるから、そもそも商品を購入した事実を証するものとは認められない。
 したがって、衣服等の購入費用は、必要経費に算入することはできない。
b 請求人は、衣服等の購入に関して、まる1別表8の「衣服等の購入費用」欄の平成25年12月13日答述の7のとおり、購入したブランドの衣服は若い女性が着る服で、自分は普段はおしゃれをしないことを挙げて、これらの衣服は本件業務のみに使用する目的で購入し、使用した旨答述する。
 しかしながら、請求人の挙げる上記事情があったとしても、それが直ちに上記ブランドの衣服が本件業務の遂行上必要であったことを裏付ける根拠とはならない上に、A上記まる1の答述をした日より前の平成25年11月5日には、請求人は、請求人や近所に居住する妹とそれぞれの家族の不要になった衣類及びブランドショップで購入した上記ブランドの新品の衣服をx1の姉に送っていた旨、並びにx1で日本の服は人気がありそれなりに高く売れる旨答述していたにもかかわらず、上記まる1の答述時には、当該答述のほか、本件業務で使用した後使わなくなった服は、姪にあげたり、売却して生活費にするよう箱に詰めて姉に送ったこともゼロではないがほとんどは捨てた、姉に送った同じ衣料ブランドの服はインターネットで購入していたから本件必要経費書類には含まれていないなどと答述し、上記Aの衣服等の購入及び処分に係る答述と整合しない答述をしたことからすれば、アクセスしてくる本件会員に飽きられないように色々な衣服を購入する必要があったとしても、本件業務のみで使用する目的で上記衣服等を購入する合理的な理由があったとは認められない。
(C) 衣装関連費用について
 別表5−4のスーツケース、チェスト、ハンガー、ミシン、アイロン及び手芸裁縫用品等の購入費用は、上記(B)のaと同様に、これらの商品を購入しただけでは、直ちに本件業務に使用したことを認定することができないものであり、同表の「請求人メモ書き」欄の各記載内容及び別表8の「衣装関連費用」欄の各答述内容をみても、請求人が説明する本件業務との関連性は不自然なものと認められるから、これらの商品等の購入費用が、客観的にみて本件業務と直接の関係を有し、かつ、本件業務の遂行上必要なものとして明らかにされたとはいえない。
 なお、本件必要経費書類のうち別表5−4の網掛けをした費用に係る各書類は、上記(ロ)のDの(B)及び(D)のとおり、インターネットショッピングサイトの商品ページを出力した書類で請求人の購入履歴の表示が全くないもの及び商品の保証書の写しに金額が手書きで記載された書類で購入金額が不明なものであるから、そもそも商品を購入した事実を証するものとは認められない。
 したがって、衣装関連費用は、必要経費に算入することはできない。
(D) 写真関係の費用について
 別表5−5のデジタルカメラ、メモリーカード、各種レジャー用品、入浴剤、マスク、海外旅行用変圧器等の購入費用は、これらの費用の内容からすれば、客観的にみて本件業務との関連性が認められないものであり、このことは、別表8の「写真関係の費用」欄の各答述内容によっても覆るものではない。
 なお、本件必要経費書類のうち別表5−5の網掛けをした費用に係る各書類は、上記(ロ)のDの(B)のとおり、いずれもインターネットショッピングサイトの商品ページを出力した書類であり、これらは、その出力時現在の販売金額しか表示されておらず、実際の購入金額が不明であるから、そもそも商品を購入した事実を証するものとは認められない。
 したがって、写真関係の費用は、必要経費に算入することはできない。
(E) 部屋の装飾費用について
 別表5−6の自作家具用の材料や工具、観賞用水槽用品及び観賞魚の餌類、メタルラック、食器棚、ソファー及びテーブル等の家具類、ベッド、布団等の寝具並びにカーテン等の購入費用については、請求人は、上記Bの(B)のとおり、2段ベッドやソケットレンチについて本件必要経費書類のメモ書きの記載内容とは異なる場当たり的な答述をし、また、自作家具用の材料について不自然かつ不合理な答述をしたことに加え、別表8の「部屋の装飾費用」欄の各答述内容をみても、請求人が自作したとする家具に関して、FRP素材15点キットの使途に関する説明が曖昧であるし(平成25年11月14日答述の8)、ポンリュームについては、請求人が購入したとしながら商品内容すら定かではなかった(同年11月22日答述の2)ほか、キャンパスポスターを外装用両面粘着テープで壁に直接貼ったなどと不合理な答述をしたり(同年11月14日答述の2)、一人掛けソファーの具体的な使用方法について一貫性に欠ける答述をしたりする(同年10月15日答述及び11月14日答述の5)など、全く信用できないものである。
 また、別表5−6の「請求人メモ書き」欄の各記載内容をみても、具体性に欠けると認められるから、当該各記載内容をもって上記の商品等を本件業務に使用していたことを認定することはできない。
 そして、請求人は本件業務を自宅において行っていたのであるから、本件業務の性格上、ライブチャットに映る場所に何らかの装飾等をする必要があったと考えられるものの、上記各費用の内容からみても、本件業務に通常必要なものとして客観的に認識することはできないことに加え、当該自宅は請求人及び請求人の家族が家庭生活を営む場所であることをも併せ考えれば、たとえ本件業務の際にこれらの装飾品等が映像画面に背景として映ることがあったとしても、そのことのみによって、上記の各費用が本件業務と直接の関係を有し、かつ、本件業務の遂行上必要なものということはできない。
 なお、本件必要経費書類のうち別表5−6の網掛けをした費用に係る書類は、上記(ロ)のDの(B)のとおり、インターネットショッピングサイトの商品ページを出力した書類であり、請求人の購入履歴の表示が全くないから、そもそも商品を購入した事実を証するものとは認められない。
 したがって、部屋の装飾費用は、必要経費に算入することはできない。
(F) 仕事場環境に関する費用について
 別表5−7の掃除機、空気清浄機等の家電製品、音楽又はテレビ録画再生機器、書籍、電球、照明器具、バスタオル、プリンターインク等の購入費用は、請求人が本件業務を行った場所が請求人の自宅であったことからすれば、これらの商品等が客観的にみて本件業務に通常必要なものとは認められず、また、上記Bのとおり、請求人の各答述が全体として信用できないことに加え、別表8の「仕事場環境に関する費用」欄の各答述内容を個別にみても、本件業務と無理に関連付けて述べるものと認められるから、上記の各費用は、客観的にみて本件業務と直接の関係を有し、かつ、業務の遂行上必要なものとは認められない。
 なお、本件必要経費書類のうち別表5−7の網掛けをした費用に係る各書類は、上記(ロ)のDの(B)及び(D)のとおり、インターネットショッピングサイトの商品ページを出力した書類でその出力時現在の販売金額しか表示されておらず実際の購入金額が不明であるもの、及び商品の取扱説明書の写しに手書きで金額が記載されたもので購入金額が不明であるものであるから、そもそも商品を購入した事実を証するものとは認められない。
 したがって、仕事場環境に関する費用は、必要経費に算入することはできない。
(G) 美容に関する費用について
a 別表5−8の○○、化粧品、健康用品、ダイエット用品等の美容に関する費用は、請求人自身の身体に関して支出したものであり、これらの各費用の内容からすれば、家事費とされる私的な費用というべきであるから、客観的にみて本件業務と直接の関係を有し、本件業務の遂行上必要なものとは認められない。このことは、同表の「請求人メモ書き」欄の各記載内容が、単に本件業務に使用した旨記載したものであるし、別表8の「美容に関する費用」欄の各答述内容も、本件業務との関連を述べるにすぎないものであるから、これらの各答述等によって覆るものではない。
 なお、本件必要経費書類のうち別表5−8の網掛けをした費用に係る各書類は、上記(ロ)のDの(A)、(B)及び(C)のとおり、商品名及び金額が記載された商品リスト、インターネットショッピングサイトの商品ページを出力した書類又は金額が記載されている商品画像の印刷物であり、これらは、購入日、購入先又は購入金額が不明であるから、そもそも商品を購入した事実を証するものとは認められない。
 したがって、美容に関する費用は、必要経費に算入することはできない。
b なお、請求人は、本件サイト上でウェブカメラに映る自分を男性会員に対してきれいに見せる等のために上記の各費用を支払った旨その理由を答述するが、当該答述は請求人の主観的事情を述べるにすぎない。
(H) 食品関係の費用について
 別表5−9の各種食品、フライパンや電気魔法瓶の調理器具等の購入費用は、請求人が本件業務を行った場所が請求人の自宅であったことや、本件業務の内容に照らしてみれば、およそ本件業務と直接の関係を有し、かつ、本件業務の遂行上必要なものとは認められない。
 また、請求人は、上記Bの(B)のとおり、これらの購入の理由や使途について、本件必要経費書類に記載したメモ書きの各内容とは異なる答述をしたことに加え、別表8の「食品関係の費用」欄の各答述内容をみても、本件業務の待機中の行動について、同表の「部屋の装飾費用」欄の答述(平成25年11月14日答述の6)のとおり、体を横にし仮眠をとるためベッドを使用していた旨答述していたのを、本件会員の興味を引くため待機中には料理などをしていたと答述したり、別表5−9の平成20年1月22日の「請求人メモ書き」欄のとおり、「飲み物、茶する用」と記載した電気魔法瓶の使途について、お茶を入れるところを見せるために購入したと上記メモ書きの内容とは異なる答述をするなど、終始場当たり的であって一貫しておらず、不自然・不合理であって信用できないから、これらの各費用は、いずれも必要経費とは認められない。
 したがって、食品関係の費用は、必要経費に算入することはできない。
(I) まとめ
 以上のとおりであるから、請求人が必要経費であると主張する上記(A)ないし(H)の本件各費用は、いずれも本件業務に係る雑所得の必要経費に算入することはできない。
(ホ) 本件各年分の雑所得の金額について
 以上の結果、請求人の本件各年分の雑所得の必要経費及びその内訳は、別表9−2の各「必要経費」欄のとおりとなり、これを前提に雑所得の金額を算定すると、同表の「雑所得の金額」欄の各金額のとおりとなる。

(2) 争点2(本件親族は、請求人と生計を一にする親族に該当するか否か。)について

イ 主張
請求人 原処分庁
(イ) 請求人は、本件x3居住親族に対し、請求人がx2国に帰国した時に生活費として直接現金を渡していた。
 また、本件x1居住親族に対しては、平成18年頃に義兄(姉の夫)が○○を患って、生活が苦しくなり、平成19年に請求人に援助を求めて来日したことから、それ以降、本件x1居住親族を来日させるか同時期にx2国に呼ぶなどして、生活費を渡したり送金したりした。
 これらのことは、請求人が異議審理庁に提出した本件親族受領書等のとおりである。
(ロ) 上記のとおり、決まった時期に生活費を渡したわけではないが、本件親族が生活することに足る金額をまとめて前払したことは事実であるから、本件各年分において、本件親族は請求人と生計を一にする親族である。
 請求人が同居していない本件親族と「生計を一にする」というためには、請求人と本件親族との間で常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われていることが必要になる。
 しかしながら、請求人が提出した本件親族受領書等をもって、請求人が本件親族に対し生活費を渡していた、あるいは送金していたとは認められないから、本件親族は請求人と生計を一にする親族とは認められない。

ロ 法令解釈
 所得税法第2条《定義》第1項第34号は、扶養控除の対象となる扶養親族とは、居住者の親族など一定の者で、その居住者と生計を一にし、合計所得金額が38万円以下である者をいう旨規定している。
 ここでいう「生計を一にする」とは、必ずしも同居していることを要するものではなく、日常生活の資を共通にしていることをいうものと解される。
ハ 請求人の答述について
 請求人は、平成25年10月8日、同年11月5日及び同月14日、当審判所に対し、要旨以下の内容の各答述をした。
(イ) 本件x3居住親族の生活状況及び同親族に対する生活費の支援について
A 請求人は、本件x3居住親族に対しては、x2国に帰国した時に現地で日本円をx2国通貨に両替して生活費を渡した。
B 本件x3居住親族に渡す生活費の金額や渡す時期は、請求人が自由に決めており、誰からもいくら欲しいと言われたことはない。
C 請求人は、本件x3居住親族に渡した金額がいくらであったかを覚えていないし、特に記録もしていなかった。当時は、本件x3居住親族が生活できるだけの金額を一人当たりいくらと決めて多めに渡していた。
D 請求人は、年金を含め、本件x3居住親族にどのくらいの収入があって、医療費などその他の支払がいくらあり、請求人の渡した生活費を何にいくら使っているのかを聞いていないし分からないが、生活に必要だと思う金額を渡していた。
E 請求人は、両親や姉とは連絡を取り合っているが、その他のx2国に居住する親族とは普段から連絡をしていない。父親に頼んで当該親族に生活費を渡してもらう場合、その後特に礼を言われることもなかった。
(ロ) 本件x1居住親族の生活状況及び同親族に対する生活費の支援について
A 請求人は、本件x1居住親族に対しては、当該親族が日本に来た時、又は、請求人がx2国に帰国する際に時期を合わせて姉にも帰国してもらい、手渡しで日本円を渡していた。
 また、請求人は、大学に入学した甥から生活費が足りないと言われ、600,000円を2回程度甥の銀行口座に振り込んだことがある。請求人が提出した甥名義の預金通帳の写し(上記1の(4)のホの(イ)のD)にある600,000円弱の金額で入金されているものが、金額からみて請求人が送金したものだと思うが、請求人がいつ送金したかは覚えていない。
B 請求人は、本件x1居住親族に対しては、手もとにある金額を渡していた。本件x1居住親族に渡す生活費の金額や渡す時期は、請求人が自由に決めており、姉の方からいくらの金額が欲しいという要望はなかったが、姉の家族の生活が苦しいことは分かっていたから、姉に会うたびに必ず応援するようにしていた。
C 本件親族受領書以外にも、平成21年に姉に会って生活費を渡したはずだが、その金額は覚えていない。
D 姉の夫は、○○になってからは全くの無職であるが、x1政府から金銭を、毎月10,000円から15,000円程度受け取っていると聞いたことがある。また、姉も仕事をしていないが、請求人が送った服を祭りで売り、その収入がある。ただし、その金額は分からない。
E 姉からは本件x1居住親族が毎月どのくらいの生活費がかかるかを聞いておらず、詳しいことは分からない。姉の夫の医療費も、姉から聞いたと思うが覚えていない。
(ハ) 本件親族受領書の作成経緯について
A 本件親族受領書は、請求人が原処分調査を受けた後、本件親族に生活費を援助していたことを証明するために、本件x3居住親族の分は父に、本件x1居住親族の分は姉にそれぞれ依頼して、作成してもらったものである。
B 両親以外のx2国x3に住む親族は字が書けないので、請求人は、誰かに領収書を作ってもらい、そこに日付、金額及び署名だけは本人が書くように伝えたが、請求人はこの本件親族受領書の様式を考えていないし作成もしていない。また、請求人はこれらの親族の筆跡を知らず、実際にこれらの親族が記入したかどうかも確認していない。
C 請求人の父親は、パソコンの文字入力のやり方を知らないはずなので、請求人は、父親の友人が父親の本件親族受領書を作成したのだと思う。また、x2国には字が読み書きできない人のために有償で書類を作成する業者がいるので、本件x3居住親族は、そのような業者を使って本件親族受領書を作成したのかもしれない。
D 本件x1居住親族に係る本件親族受領書については、請求人の姉が手書きしたものだと思う。
E 本件親族受領書の日付や金額は、全て本件親族がそれぞれ自分の記憶に従い記入したものである。
ニ 当てはめ
(イ) 請求人は、請求人と同一の家屋に起居していない本件親族が請求人の扶養親族に該当する旨主張し、当審判所に対し、請求人と本件親族が生計を一にしていたことを証明する書類として、本件親族受領書を提出した。そして、本件親族受領書のうち、本件x3居住親族に係る各受領書記載の受領日の各日付及び本件x1居住親族に係る平成23年8月11日付の受領書記載の当該日付(いずれも別表7参照)は、上記1の(4)のリのとおり、いずれも請求人がx2国に渡航していた期間中の各日付となっており、請求人は、上記ハの(イ)のA及び(ロ)のAのとおり、これに沿った答述をしている。
(ロ) しかしながら、上記ハの(ハ)のAのとおり、請求人は本件親族受領書が作成されたのは原処分調査後である旨答述するので、当該答述を前提とすれば、本件親族受領書記載の各受領日及び各受領金額は、実際の受渡日に作成されたものではなく遡って記載されたことになる。このことに加え、請求人の答述内容からすると、当該各受領日や当該各受領金額は本件親族の記憶に基づき記入したものとされ(同(ハ)のE)、また、請求人自身も実際にいくらの金額を本件x3居住親族に渡したのかについて覚えていないし記録を残していない旨答述し(同(イ)のC)、本件x1居住親族に渡したとする金額についても明確な答述をしない(同(ロ)のAないしC)上に、同(ハ)の各答述内容からは、そもそも本件親族受領書が誰によってどのように作成されたのかについての経緯も判然としない。
 そうすると、請求人が実際に本件親族に対しいくらかの金銭を渡した事実があったとしても、本件親族受領書記載の各受領日の一部の日付が請求人のx2国渡航期間中の日付となっているからといって、このことのみから直ちに請求人が本件親族に対し別表7のとおりの当該各受領日において各受領金額を渡したとは認め難い。
(ハ) また、請求人は、本件親族に生活費をまとめて前払した旨主張するが、上記ハの(イ)及び(ロ)の各答述を前提とすれば、請求人は、本件親族の収入や必要な支出等の生活状況を把握しておらず(同(イ)のD及び同(ロ)のD)、本件親族に対し金銭を渡す時期やその金額は請求人が任意に決めたものであるとし(同(イ)のB及び同(ロ)のB)、請求人は本件親族が請求人から受領した金員をどのような使途に使用したかを確認してもいない(同(イ)のD及びE並びに同(ロ)のE)。
 そうすると、請求人が実際に本件親族に対しいくらかの金銭を渡した事実があったとしても、請求人が渡したとする金額は、本件親族が日常生活を営む上で必要とされる金額をその都度渡したものではない。
 さらに、請求人が提出した別表7の本件親族受領書の記載内容を前提として、請求人が本件親族に金銭を渡したとする回数をみても、同表の「平成20年」の各欄のとおり、平成19年ないし平成23年のうち平成20年については金銭の交付が全く無く、その他の各年については年に1回程度の頻度であったとしている。
(ニ) 以上のことからすれば、仮に、請求人が本件親族に対し本件親族受領書記載の各金額を渡していたとしても、あるいは請求人が当該各金額とは異なるいくらかの金銭を渡した事実があったとしても、本件各年分において請求人と本件親族とが同一の生活共同体に属して日常生活の資を共通にしていたとは認められない。
(ホ) なお、請求人は、当審判所に対し、請求人が本件親族を扶養していたことを裏付ける書類として、まる1本件x3居住親族の一部が無収入である旨証明するg町の印影がある各書類、A請求人が請求人の両親を扶養している旨証明する請求人及び請求人の父が以前勤めていたV社発行の書類及びB本件x1居住親族の各人について、x1の○年度の所得税に関し、扶養親族を有していたことを示す資料が無い旨を証明するx1の]国税局発行の各書類をそれぞれ提出したが、まる1については、これらの書類はg町に居住の親族以外の親族についても無収入であることを証明するものであって不自然な上、x2国の官公庁が発行した正式な公文書かどうかも不明であるから、当該各書類はこれらの親族が無収入であることを証明したものとは認められない。また、Aについては、X社が既に退職した後の請求人と請求人の父親との扶養関係を正確に把握することができるか否かは不明である上に、そもそもX社が扶養関係を証明する権限及び資格を有するか否かも明らかではないから、当該書類は、請求人が請求人の両親を扶養している事実を証明しているとは認められない。さらに、Bについては、同国税局が、本件x1居住親族のいずれの者についても扶養親族を有していたことを示す資料を保有していないことを証する書類にすぎず、何ら請求人が本件x1居住親族を扶養していたことを裏付けるものではない。
(ヘ) 以上のとおり、請求人が本件親族受領書のとおり本件親族に対し生活費等を渡して扶養していたとは直ちに認め難く、また、仮にいくらかの金銭を手渡していたとしても、請求人と本件親族とが生計を一にしていたとは認められないから、本件各年分において、本件親族はいずれも請求人の扶養親族に該当しない。
 したがって、請求人は本件各年分において扶養控除の適用を受けることができない。

4 本件各決定処分の適法性について

 請求人の本件各年分の本件業務に係る雑所得の金額は上記3の(1)のロの(ホ)のとおりであり、扶養控除の適用を受けることができないことは同(2)のニの(ヘ)のとおりであるから、これを前提に請求人の本件各年分の納付すべき税額を算定すると、別表9−2の「納付すべき税額」欄の各金額のとおりとなるところ、平成22年分及び平成23年分の各納付すべき税額は、異議決定後の額をいずれも上回るから、当該各年分の所得税の各決定処分はいずれも適法であるが、平成19年分ないし平成21年分の各納付すべき税額は、いずれも異議決定後の額を下回るので、これらの年分の所得税の各決定処分は、いずれもその一部を別紙1ないし別紙3の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

5 本件各賦課決定処分の適法性について

(1) 上記4のとおり、平成19年分ないし平成21年分の所得税の各決定処分は、いずれもその一部を取り消すべきであるから、無申告加算税の賦課決定処分の基礎となる税額は、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円となる。
 そして、請求人の場合、期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があったとは認められない。
 したがって、同項及び同条第2項の規定に基づいて無申告加算税の額を計算すると、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円となり、これらの金額は、当該各年分の無申告加算税の各賦課決定処分の額をいずれも下回るから、当該各年分の無申告加算税の各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙1ないし別紙3の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
(2) 上記4のとおり、平成22年分及び平成23年分の所得税の各決定処分はいずれも適法であり、請求人の場合、期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があったとは認められないから、同項及び同条第2項の各規定に基づき行われた当該各年分の無申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

6 その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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