第二次納税義務

徴収不足との関係

  1. 第二次納税義務の通則
  2. 清算人等の第二次納税義務
  3. 共同的な事業者の第二次納税義務
  4. 無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務
    1. 処分の意義
    2. 徴収不足との関係(2件)
    3. 無償譲渡と認めた事例
    4. 無償譲渡と認めなかった事例
    5. 低額譲渡と認めなかった事例
    6. 利益を与える処分
    7. 受けた利益額の算定
    8. 債務免除
    9. その他
  5. 事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務
  6. その他

滞納法人が行った債権放棄と同法人の滞納国税の徴収不足との間に基因関係が認められるとした事例

裁決事例集 No.41 - 339頁

 請求人は、滞納法人の滞納国税の徴収不足は、請求人が債権放棄を受けたことに基因するものではない旨主張するが、原処分庁が滞納法人に対し、差押え等の執行ができた昭和59年1月17日の時点における滞納法人の主な資産はB社に対する貸付金及び手形債権であったことが認められるけれども、当時、B社は、事実上の倒産状態にあり、その実質的な資力を喪失していたことが認められ、したがって、原処分庁が、滞納法人がB社に対して有する債権の差押えをしてもその回収が見込めず、本件滞納国税を徴収できなかったことは明らかであるし、また、徴収法第39条に規定する徴収不足と無償譲渡等との間の基因関係について、同条の解釈としては、当該無償譲渡等の処分がなかったならば、徴収不足を生じなかったであろうということができる場合には、基因関係を認めるのが相当であるとされているところ、B社に係る債権債務を除いた滞納法人の純資産は84,297,111円であるのに、滞納法人が行った債権放棄の金額は67,792,041円となることが認められ、この債権放棄がなければ本件滞納国税にかかる徴収不足は生じなかったであろうということがいえるから、本件債権放棄と本件滞納国税の徴収不足との間の基因関係を認めることができるというべきである。

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「滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合」に該当しないとする請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.72 - 633頁

 請求人は、滞納法人は評価額328百万円又は347百万円の貸付金を有しているところ、本件滞納国税は約260百万円であるから、本件告知処分は、第二次納税義務の要件である「徴収不足」を充足していない旨主張する。
 しかしながら、貸付債権を評価するに当たっては、一定利率の下で複利計算して一定期間後に一定額を受け取るために現在要する額を算出する方法によって得られた金額のみにとらわれることなく、国税債権の徴収確保という観点から、差し押さえた財産が公売によって国税債権額に見合う額で確実に回収できるものか否かという観点からも検討されてしかるべきであり、そのためには、貸付条件の内容等をも考慮に入れ、特定の者の主観的価値や愛着的価値によることなく、客観的な交換価値、すなわち市場性をもった交換価値であるか否かという総合的な見地から行うのが相当である。
 これを本件貸付金についてみると、その貸付金の第三債務者(同族法人)の営業収益等及び財務状態(1年平均営業利益は約860万円の赤字となっていること、2約定による弁済が不履行となっていること、3債務超過であること等)並びに本件貸付契約の内容(1貸付金が多額であるにもかかわらず無担保で連帯保証人もいないこと、2無担保であるにもかかわらず返済期間が長期で、かつ、低利であること、3返済期限が不確定要素を含み、かつ、債務不履行に関する約定がないこと)をもってすれば、社会通念上、本件貸付金は、同族法人グループ内でのみ通用するものであり、しかも、その市場性は限られたものとなり、公売を前提とした客観的な交換価値としての評価は極めて低い額になるものと思料される。さらに、本件貸付金については、返済期限が不確定要素を含んでいること及び債務不履行に関する約定がないことを併せて考慮すれば、むしろ市場性をもった交換価値を認めることはできず、公売財産として不適当なものというべきであるから、徴収不足の判定から除外するのが相当である。そうすると、滞納法人の財産は「徴収すべき額に不足する」状態であったとみるのが相当である。

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