(令和元年11月28日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、上場株式等を売却した審査請求人(以下「請求人」という。)が、所得税等の修正申告において、源泉徴収選択口座で生じた上場株式等の譲渡損失の金額等を新たに計上したところ、原処分庁が、当該譲渡損失の金額等を修正申告に計上することはできないとして、また、申告漏れとなっていた一般口座内株式について概算取得費を用いて上場株式等の譲渡所得の金額を計算して、所得税等の更正処分等を行ったことから、請求人が原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

関係法令等は、別紙2のとおりである。
 なお、別紙2で定義した略語については、以下、本文及び別表においても使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 請求人は、平成28年1月○日に死亡した請求人の母であるF(以下「本件被相続人」という。)から、別表1の「銘柄等」欄記載の上場株式等を相続により取得した。
     なお、請求人は、当該相続に係る相続税について、法定申告期限までに申告した。
  • ロ 請求人は、平成28年3月17日に、G証券○○支店において、措置法第37条の11の3第3項第1号に規定する特定口座を開設した。当該特定口座は、源泉徴収選択口座以外の特定口座である(以下、当該特定口座を「本件簡易申告口座」という。)。  
  • ハ 請求人は、平成28年3月23日に、H証券○○支店において、措置法第37条の11の3第3項第1号に規定する特定口座を開設した。当該特定口座は、源泉徴収選択口座である(以下、当該特定口座を「本件源泉選択口座」という。)。
     なお、本件源泉選択口座では、措置法第37条の11の6《源泉徴収選択口座内配当等に係る所得計算及び源泉徴収等の特例》第1項に規定する源泉徴収選択口座内配当等を受け入れている。
  • ニ 請求人は、上記イの上場株式等を、別表1の「口座の種類」欄に掲げた本件簡易申告口座、本件源泉選択口座又は特定口座以外の口座(当該口座は、G証券○○支店及びH証券○○支店の双方に開設されており、以下、これらを併せて「本件各一般口座」という。)に移管する手続をした後、平成28年中に、別表1の順号26を除く上場株式等を譲渡した。
     当該譲渡に係る本件簡易申告口座における利益は〇〇〇〇円、本件源泉選択口座における損失は1,826,781円(以下「本件損失金額」という。)及び本件源泉選択口座における源泉徴収選択口座内配当等は533,194円(以下「本件配当等金額」という。)であった。
     また、本件各一般口座における上場株式等の譲渡による収入金額の合計は5,025,755円であった(以下、請求人が本件各一般口座において譲渡した別表1の順号28ないし40の上場株式等を併せて「本件各株式」という。)。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、平成28年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した(以下、当該申告を「本件当初申告」という。)。
     なお、請求人は、本件当初申告において、上記(3)のニの相続により取得した上場株式等に係る譲渡所得の金額(又は譲渡損失の金額)、利子所得、配当所得の金額について、いずれも申告しなかった。
  • ロ 請求人は、本件簡易申告口座における譲渡所得の金額並びに本件損失金額及び本件配当等金額を含めた上で、平成29年9月29日に、修正申告書に別表2の「修正申告」欄のとおり記載して修正申告をした(以下、当該修正申告を「本件修正申告」という。)。
  • ハ これに対し、原処分庁は、本件損失金額及び本件配当等金額はいずれも本件修正申告に計上することはできず、また、本件各株式に係る譲渡所得の金額が申告漏れであるほか、措置法第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》に規定する取得費に加算される相続税額の計算に誤りがあるとして、別表2の「更正処分等」欄のとおり、平成30年10月15日付で、平成28年分の所得税等の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
     なお、本件更正処分に当たり、原処分庁は、本件各株式の譲渡所得の金額の計算上、取得費に算入する金額について、概算取得費を用いて計算した。
  • ニ 請求人は、上記ハの処分に不服があるとして、平成31年1月10日に、その一部の取消しを求めて審査請求をした。
     なお、請求人は、原処分庁が措置法第39条の規定に基づき取得費に加算した相続税額については争っていない。

2 争点

(1) 本件修正申告において、上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、本件損失金額を算入することができるか否か、また、上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上、本件配当等金額を算入することができるか否か(争点1)。

(2) 本件各株式の取得費について、概算取得費を用いることができるか否か(争点2)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(本件修正申告において、上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、本件損失金額を算入することができるか否か、また、上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上、本件配当等金額を算入することができるか否か。)について

原処分庁 請求人
措置法第37条の11の5第1項は、源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額及びその所得の金額の計算上生じた損失の金額について、確定申告をするか否かの選択権を納税者に付与したものといえるところ、請求人は、本件当初申告において、本件損失金額を申告しなかった。
 また、措置法第8条の5第1項も、上記と同様に、配当所得等の金額について、確定申告をするか否かの選択権を納税者に付与したものといえるところ、請求人は、本件当初申告において、本件配当等金額を申告しなかった。
 そうすると、請求人は、譲渡所得の金額、損失の金額及び配当所得等の金額のいずれについても、確定申告をしないことを選択したものと認められる。
 したがって、本件修正申告においては、上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、本件損失金額を算入することができず、また、上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上、本件配当等金額を算入することもできない。
措置法第37条の11の5第1項は、源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額及びその所得の金額の計算上生じた損失の金額を除外したところにより、確定申告をすることができる旨規定しているところ、ここにいう確定申告とは、納税者が源泉徴収選択口座における上場株式等の譲渡所得の金額(又は譲渡損失の金額)を初めて申告するときをいうものと解すべきであり、措置法第8条の5第1項の規定についても、同様に解すべきである。
 したがって、本件においては、本件修正申告で初めて、本件損失金額や本件配当等金額を申告したのであるから、本件修正申告において、上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、本件損失金額を算入することができ、また、上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上、本件配当等金額を算入することもできる。

(2) 争点2(本件各株式の取得費について、概算取得費を用いることができるか否か。)について

原処分庁 請求人
本件各株式の取得費については、原処分に係る調査において、できる限りの調査を尽くしたものの、有償で取得した上場株式等はごく一部であり、大部分の上場株式等の実際の取得価額は判明しなかった。
 このような状況からすれば、本件各株式の取得費について概算取得費を用いて計算したとしても、必ずしも請求人にとって不利な取扱いになるとはいえない。
本件各株式の取得費については、取得価額を示す直接的な証拠資料等はないものの、このような場合には、本件各株式の名義書換日を調査して取得時期を把握し、その時期の相場(終値)を基に、所得税法施行令第118条第1項に規定する総平均法に準ずる方法により取得価額を算定すべきである。
 なお、原処分庁は、できる限りの調査を尽くしたなどと主張するが、原処分庁の行った調査では、立証責任を果たしているとはいえない。
 したがって、本件各株式の取得費については、概算取得費を用いるべきではない。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件修正申告において、上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、本件損失金額を算入することができるか否か、また、上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上、本件配当等金額を算入することができるか否か。)について

  • イ 法令解釈
    • (イ) 別紙2の1の(2)のとおり、措置法第37条の11の5第1項柱書及び第1号は、源泉徴収選択口座を有する居住者のその年中にした源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡に係る年分の所得税については、納税者の選択により、源泉徴収選択口座において生じた上場株式等の譲渡による所得の金額又は損失の金額を株式等の譲渡所得等の金額又は譲渡損失の金額から除外して、その年分の確定申告を行うことができる旨規定している。
       そうすると、当該規定は、納税者が確定申告をする時点において、源泉徴収選択口座で生じた上場株式等の譲渡による所得の金額(又は譲渡損失の金額)を上場株式等に係る譲渡所得等の金額(又は譲渡損失の金額)に含めて確定申告をするか、それを除外して確定申告をするかを納税者の選択に委ねている趣旨と解されるところ、源泉徴収選択口座において生じた当該譲渡所得の金額(又は譲渡損失の金額)を上場株式等に係る譲渡所得等の金額(又は譲渡損失の金額)に含めずに確定申告をした場合には、納税者が、当該確定申告においては当該譲渡所得の金額(又は譲渡損失の金額)を含めないという選択をしたものといえるから、その後にされた、当該確定申告を前提とする更正の請求又は修正申告において、当該譲渡所得の金額(又は譲渡損失の金額)を上場株式等に係る譲渡所得等の金額(又は譲渡損失の金額)の計算上、算入することはできないと解される。
    • (ロ) また、別紙2の1の(1)のとおり、措置法第8条の5第1項は、所得税法第23条第1項に規定する利子等又は同法第24条第1項に規定する配当等で措置法第8条の5第1項第1号ないし第7号に掲げるものを有する居住者は、その年分の所得税について、これらに係る配当所得等の金額を除外したところにより、確定申告をすることができる旨規定している。
       そうすると、当該規定は、措置法第37条の11の5と同様に、確定申告をする時点において、上場株式等配当に係る配当所得の金額を総所得金額又は上場株式等に係る配当所得等の金額に含めて申告をするのか、それを除外して申告をするのかを当該上場株式等配当に係る配当所得を有する者(納税者)の選択に委ねている趣旨と解されるところ、配当所得等の金額を総所得金額又は上場株式等に係る配当所得等の金額に含めずに確定申告をした場合には、納税者が、当該確定申告において当該配当所得等の金額を含めないという選択をしたものといえるから、その後にされた、当該確定申告を前提とする更正の請求又は修正申告においても、当該配当所得等の金額を総所得金額又は上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上、算入することはできないものと解される。
  • ロ 当てはめ
     請求人は、前記1の(3)のニ及び(4)のイのとおり、本件源泉選択口座において上場株式等を譲渡した際に本件損失金額が生じ、また、本件配当等金額を得たものであるが、本件当初申告において本件損失金額及び本件配当等金額を含めて確定申告していない。すなわち請求人は、措置法第37条の11の5第1項及び措置法第8条の5第1項の規定に従い、本件源泉選択口座における上場株式等に係る譲渡所得及び配当所得等の金額の計算上、本件損失金額及び本件配当等金額を除外したところにより確定申告することを選択したものと認められる。
     したがって、請求人は、本件修正申告において、上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、本件損失金額を算入することも、上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上、本件配当等金額を算入することもできない。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、前記3の(1)の「請求人」欄のとおり、本件修正申告は、納税者が源泉徴収選択口座における上場株式等に係る譲渡所得の金額(又は譲渡損失の金額)等を初めて申告するものであるから、本件損失金額や本件配当等金額を算入できる旨主張する。
     しかしながら、上記ロのとおり、請求人は、本件源泉選択口座における上場株式等に係る譲渡所得及び配当所得等の金額の計算上、本件損失金額及び本件配当等金額を除外したところにより確定申告することを選択したものと認められるのであり、当該確定申告を前提とする修正申告において、本件損失金額を上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上算入することはできず(上記イの(イ))、本件配当等金額を上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上算入することはできない(上記イの(ロ))ものと解されるのであるから、仮に、請求人の主張が、本件当初申告において本件損失金額や本件配当等金額を申告から除外することを意図的に選択したものではない旨の主張であるとしても、当該主張は、租税法律主義の下において、措置法第37条の11の5第1項の文理に反する独自の解釈を前提とするものといわざるを得ず、採用することはできない。 

(2) 争点2(本件各株式の取得費について、概算取得費を用いることができるか否か。)について

  • イ 法令解釈等
     別紙2の2の(1)及び(2)のとおり、株式等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上、取得費に算入する金額は、金銭の払込みにより取得した株式等や購入した株式等については、その払込みをした金銭の額(取得のために要した費用を含む。)又はその購入の代価(購入手数料等を含む。)であるが、2回以上にわたって同一銘柄の株式等を取得している場合には、所得税法施行令第105条第1項第1号に掲げる総平均法に準ずる方法によって算出した1単位当たりの金額に、譲渡した株数を乗じて計算した金額となる。
     そして、別紙2の2の(3)のとおり、本件通達規定は、納税者が、株式等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額に関し、譲渡をした同一銘柄の株式等について、概算取得費を当該株式等に係る譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費として計算しているときは、これを認めて差し支えない旨定めていることからすれば、当該規定は、取得費の額について、納税者の利便性も考慮し、納税者の利益に反しない限り、簡便な計算方法によることを認める趣旨であり、当審判所においても相当と認められる。
     そうすると、原処分庁が課税処分を行うに当たって、請求人に対する調査を含め、その調査を尽くしても取得時期及び取得価額が明らかにならない場合及び概算取得費を取得費の額とすることが納税者の利益と認められる場合において、概算取得費を用いることも相当である。
  • ロ 検討
     上記イの総平均法に準ずる方法による株式等の取得費の算定に当たっては、当該株式等の取得価額が必要であるところ、これらの事項は、取引証券会社から交付される取引報告書や顧客勘定元帳などにより確認することが可能であり、これらによっても取得価額が明らかでない場合には、株式等の名義書換日を調べて取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、明確かつ簡便な推定方法として合理的であると解される。
     本件においては、本件各株式の取得価額について、これらを直接的に立証する客観的な証拠資料等が確認できないところ、上記同様、本件各株式についてその名義書換日を調べて取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、合理性を有する取得価額の把握方法であると解される。
     そして、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件各株式は本件被相続人が有償取得したものと推認され、また、本件各株式について、本件被相続人に係る顧客勘定元帳及び有価証券明細簿並びに本件各株式の名義書換代理人からの回答等を検討したところ、本件各株式のうち、J社、K社、L社、M社、N社、P社、Q社及びR社の各株式の名義書換日やその日の終値等の状況は、別表3−1ないし3−8の「年月日」、「取引区分等」、「増加株数」、「減少株数」、「残株数」及び「備考」の各欄のとおりであった(以下、名義書換日が判明した銘柄の株式を「本件各判明分株式」という。)。
     なお、本件各株式のうち、S社、T社及びU社については、いずれも最初の名義書換日が判明しなかった。
     以上を前提とすれば、本件各判明分株式については、有償取得されたことを前提に、名義書換日の相場(終値)で取得価額を算定することも明確かつ簡便な推定方法として合理性を有する取得価額の把握方法であると解されることから、本件各判明分株式の取得費については、概算取得費によらず、総平均法に準ずる方法により算定することが相当である。
     もっとも、本件各判明分株式のうち、P社及びQ社の各株式の取得費については、概算取得費により算定した金額が総平均法に準ずる方法により算定した金額を上回るため、概算取得費により算定するのが相当である。
     また、上記のとおり、本件各株式のうち、S社、T社及びU社については、最初の名義書換日が判明しなかったのであるから、その取得費についても、概算取得費により算定するのが相当である。
  • ハ 原処分庁の主張について
     原処分庁は、前記3の(2)の「原処分庁」欄のとおり、本件各株式の取得費については、できる限りの調査を尽くしたものの、有償で取得した上場株式等はごく一部であり、大部分の上場株式等の実際の取得価額は判明しなかった旨主張する。
     しかしながら、上記ロでみたとおり、本件各判明分株式の取得費については、名義書換日及びその時期の相場(終値)を確認することで取得価額を算定することが可能であるといえるから、総平均法に準ずる方法により算定すべきである。
     したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。

(3) 上場株式等に係る譲渡所得の金額について

上記(1)のとおり、本件修正申告においては、上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、本件損失金額を算入することはできず、上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上、本件配当等金額を算入することもできない。
 また、上記(2)のとおり、P社及びQ社の各株式を除く本件各判明分株式の取得費については、概算取得費ではなく、総平均法に準ずる方法により算定すべきであるところ、かかる方法により本件各判明分株式の1株当たりの取得価額を算定すると、別表3−1ないし3−8の「1株当たりの取得価額の計算」の各欄のとおりとなり、これに基づき、当審判所において、本件各株式に係る譲渡所得の金額を計算すると、別表4の「5所得金額」欄の「合計」欄のとおり、〇〇〇〇円となる。
 そして、請求人は、別表1の順号41の単元未満株式について、発行会社へ買取請求を行い売却換金しているところ、当該単元未満株式に係る譲渡損失の金額は〇〇〇〇円となる。
 なお、前記1の(3)のニのとおり、本件簡易申告口座に係る利益の金額は〇〇〇〇円であり、別表5の「3措置法第39条加算額」欄のとおり、措置法第39条の規定に基づき取得費に加算する金額は〇〇〇〇円であるため、同表の「4所得金額」欄のとおり、本件簡易申告口座に係る譲渡所得の金額は〇〇〇〇円となる。
 以上に基づき、請求人の平成28年分の上場株式等に係る譲渡所得の金額を計算すると、別表6の「上場株式等に係る譲渡所得の金額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、〇〇〇〇円となる。

(4) 本件更正処分の適法性について

以上に基づき、当審判所が認定した請求人の平成28年分の所得税等の納付すべき税額は、別表6の「所得税等の納付すべき税額」欄の「審判所認定額」欄のとおりとなり、本件更正処分における所得税等の納付すべき税額を下回るから、本件更正処分はその一部を別紙1の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
 なお、本件更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

(5) 本件賦課決定処分の適法性について

上記(4)のとおり、本件更正処分の一部が取り消されることに伴い過少申告加算税の基礎となる税額は〇〇〇〇円となるところ、この税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 以上に基づき、当審判所において、請求人の平成28年分の所得税等に係る過少申告加算税の額を計算すると、別表6の「過少申告加算税の額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、〇〇〇〇円となり、本件賦課決定処分の額に満たないから、本件賦課決定処分は、その一部を別紙1の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(6) 結論

よって、審査請求は理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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