(令和元年11月12日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、共同相続人である審査請求人らが、相続により取得した土地について広大地として評価し、相続税の申告をしたところ、原処分庁が、当該土地は中高層の集合住宅の敷地に適しているから広大地には該当せず、また、当該土地の価額から控除すべき土壌汚染の浄化費用相当額は見積金額ではなく実際に負担した金額とすべきであるなどとして相続税の更正処分等を行ったことに対し、審査請求人らが当該処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等の要旨

関係法令等の要旨は、別紙5に記載のとおりである。
 なお、別紙5で定義した略語については、以下、本文においても使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 相続について
     F2(以下「本件被相続人」という。)は、平成27年1月○日に死亡し、その相続(以下「本件相続」という。)が開始した。本件相続に係る共同相続人は、本件被相続人の長女である審査請求人F3(以下「請求人F3」という。)、同長男である審査請求人F1(以下「請求人F1」という。)及び同養子である審査請求人F4(以下「請求人F4」といい、請求人F3及び請求人F1と併せて「請求人ら」という。)の3名であり、本件被相続人がその生前所有していた別表1の順号1ないし3に記載の各土地(以下、当該各土地を併せて「本件土地」という。)を取得した。
     なお、請求人らの間で、平成27年10月26日、本件相続に係る遺産分割協議が成立し、本件土地は、請求人F1が単独で取得した。
  • ロ 本件相続の開始時における本件土地及びその周辺の状況について
    • (イ) 本件土地の位置関係及び形状は、別図1「本件土地付近の略図」に図示したとおりであり、また、その地目、利用区分及び地積は別表1に記載のとおりである。
    • (ロ) 本件土地の周辺の道路の配置状況は、次のとおりである(別図1参照)。
      • A 本件土地は、a市d町○−○の街区に位置し、その南東側部分はe街道(国道f号線)に面している。
      • B e街道は、本件土地の南側で北東方向から南西方向に至る幹線道路であり、本件土地の南西方向約50mの地点(位置)において、g街道(国道h号線、X県道j号線)と交差している(以下、この交差地点を「k交差点」という。)。そして、e街道は、おおむね4車線(片側2車線)の道路であるところ、k交差点を中心としてその前後約500mの区間については8車線(片側4車線。幅員約39m。)の道路であり、本件土地はその8車線部分に面している。
         なお、上記8車線のうち、中央部分の4車線(片側2車線)は高架になっており、g街道と立体交差している。当該部分に接続する4車線分の幅員は約22mである。
      • C g街道は、本件土地の西側で南東方向から北西方向に至る幹線道路である。
         なお、g街道は2車線(k交差点付近等の一部において3車線)の道路であり、幅員は約20mである。
  • ハ 本件土地及びその周辺の公法上の規制について(別図1、同2「当事者双方の主張地域」参照)
    • (イ) 本件土地の大部分(約95%)は、都市計画法第8条《地域地区》第1項第1号に規定する用途地域(以下「用途地域」という。)である準住居地域に存し、その他の部分(約5%)は、第一種住居地域に存する。
       なお、上記の各用途地域の建蔽率(建築基準法第53条《建蔽率》第1項に規定する割合をいう。以下同じ。)はいずれも60%であり、同容積率(建築基準法第52条《容積率》第1項に規定する割合をいう。以下同じ。)はいずれも200%である。
    • (ロ) k交差点を中心にe街道沿いの両側50mまでの地域は準住居地域であり、当該地域より外側の地域は第一種住居地域である。
       なお、k交差点から北東方向へ約200m以上離れた地域は準工業地域である。
       また、上記の各用途地域の建蔽率はいずれも60%であり、同容積率はいずれも200%である。
    • (ハ) k交差点を中心にg街道沿いの両側50mまでの地域は、準住居地域であるが、当該地域より外側の地域は第一種住居地域である。
       なお、上記の各用途地域の建蔽率はいずれも60%であり、同容積率はいずれも200%である。
  • ニ 本件土地の交通、教育等の公的施設及び商業施設への接近性について
    • (イ) 本件土地の南東方向約800mにm鉄道n線p駅が存し、本件土地から同駅までの所要時間は徒歩約10分である。
       なお、同駅からm鉄道n線q駅までの所要時間は約20分であり、同線はr鉄道s線に乗り入れている。
    • (ロ) m鉄道n線p駅付近には、スーパーマーケット(H)のほか、J病院が存する。
    • (ハ) 本件土地の西側の隣地には、コンビニエンスストア(K)が存し、北東側の道路を隔てた建物(Lと称するマンション)の1階部分には、スーパーマーケット(M)が存する。
    • (ニ) 本件土地の北側には、N市立P中学校が隣接する。
       また、本件土地の南東方向約400mにはN市立Q小学校が存し、同じく東方向約400mにはN市R保育園が存する。
  • ホ 本件土地の売買について
     請求人F1及びS1社は、平成28年3月12日、請求人F1を売主、S1社を買主として、要旨次の内容の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。
    • (イ) 請求人F1は、本件土地をS1社に売り渡し、S1社は分譲マンションの建築を目的として買い受ける(第1条)。
    • (ロ) 本件土地の売買代金は960,000,000円とする。
       ただし、後日実測面積が確定し、増減が生じたときは、3.30578u(1坪)当たり、1,228,312円の割合で精算する(第2条)
    • (ハ) S1社が建築工事を着工し、その建築工事の障害となり得る地中埋設物、土壌汚染が存在しないことが確認された後、最終金10,000,000円を支払う(第3条の(3))。
    • (ニ) 本件土地について土壌汚染、地中埋設物等隠れた瑕疵が発見された場合は、請求人F1の責任と負担において解決するものとする(第8条)。
  • へ 土壌汚染の調査と本件土地の売買代金の減額について
    • (イ) S1社は、平成28年5月頃、本件土地に分譲マンションを建築するため、T社に対し、本件土地に係る土壌汚染状況調査を依頼した。
    • (ロ) T社は、平成28年6月にかけて本件土地に関する土壌汚染状況調査を実施したところ、特定有害物質(六価クロム及びふっ素)が把握されたことから、S1社に対し、同年7月26日付で、要旨別紙6のとおりの「御見積書」と題する書面を発行した(以下、当該書面を「本件見積書」という。)。
    • (ハ) 請求人F1及びS1社は、平成28年9月15日、本件売買契約第2条(上記ホの(ロ))の本件土地の実測の結果に基づき、本件土地の地積が2,579.10uに確定したこと及び同実測の結果、上記ホの(ロ)の売買代金は1,707,353円減額することを確認する内容の「実測精算確認書」を作成した。
    • (ニ) 請求人F1及びS1社は、平成29年3月11日、本件売買契約第8条(上記ホの(ニ))に定める土壌汚染が発見されたことに基づき、要旨、次の事項を確認する内容の覚書(以下「本件覚書」という。)を作成した。
      • A 請求人F1及びS1社は、本件売買契約第8条に定める本件土地の隠れた瑕疵(土壌汚染)が発見されたことを確認した(第1項)。
      • B 請求人F1及びS1社は、上記Aの土壌汚染の浄化費用が25,600,000円であることを確認した(第2項)。
      • C 請求人F1は、上記ホの(ハ)の最終金10,000,000円を控除した残金額15,600,000円を平成29年3月末を目途にS1社に支払う(第3項)。
  • ト 本件土地上へのマンション建設について
     S1社は、平成30年1月11日、本件土地上に、Uと称する地上7階建てのマンション(以下「本件建物」という。)を建築した。
     なお、本件建物の3階部分は、e街道の高架部分と同程度の高さである。
  • チ 国税庁の発出した情報について
    • (イ) 国税庁は、平成16年6月29日、「『財産評価基本通達の一部改正について』通達のあらましについて(情報)」(資産評価企画官情報第2号、資産課税課情報第10号)を発出し、当該情報の「2広大地の評価」の3の(3)において、マンション適地の判定に際し、評価の対象となる宅地において、マンションの敷地として使用するのが最有効使用と認められるか否かの判断は、その土地の周辺地域の標準的使用の状況を参考とすることになるのであるが、戸建住宅とマンションが混在している地域(主に容積率200%の地域)にあっては、その土地の最有効使用を判定することが困難な場合もあるとして、このような場合には、周囲の状況や専門家の意見等から判断して、明らかにマンション適地と認められる土地を除き、広大地に該当する旨示していた。また、他にマンション適地の判断基準の参考として、近隣地域等に現にマンションが建てられ、また現在も建築工事中のものが多数ある場合、つまりマンション敷地としての利用に地域が移行しつつある状態で、しかもその移行の程度が相当進んでいる場合であるとの基準を示していた(国税庁が平成17年6月17日に発出した「広大地の判定に当たり留意すべき事項(情報)」(資産評価企画官情報第1号、資産課税課情報第7号)においても、マンション適地の判定について上記情報と同旨の内容を示していた。以下、上記各情報を併せて「広大地に関する情報」という。)。
    • (ロ) 国税庁は、平成16年7月5日、「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」(資産評価企画官情報第3号、資産課税課情報第13号)を発出し、当該情報の「1土壌汚染地の評価」の2の(1)において、土壌汚染地の価額については、原価方式として、土壌汚染がないとした場合の土地の評価額から、土壌汚染の浄化費用に相当する金額等を控除して評価する旨及び控除する土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、相続税評価額のレベルに合わせて見積額の80%相当額とする旨示していた(以下、当該情報を「土壌汚染地の評価に関する情報」という。)。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人らは、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について、別表2の「期限内申告」欄のとおり記載した申告書を法定申告期限までに共同して原処分庁に提出した。
  • ロ 請求人らは、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、平成29年3月15日、本件相続税について、別表2の「修正申告」欄のとおりとする修正申告書を共同して原処分庁に提出した(以下「本件修正申告」という。)。
     その際、本件修正申告における本件土地の価額は、別表3−1のとおり、広大地に該当するものとして評価されており、土壌汚染に関する点は考慮されていない。
  • ハ 原処分庁は、平成30年4月25日付で、請求人らに対し、別表2の「更正処分等」欄のとおり、本件相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
     その際、当該各更正処分における本件土地の価額は、別表3−2のとおり、広大地通達の定めを適用しないところで、土壌汚染の浄化費用相当額(上記(3)のヘの(ニ)のBの金額25,600,000円の80%相当額)を控除したものである。
  • ニ 請求人らは、平成30年7月23日、上記ハの各更正処分及び各賦課決定処分に不服があるとして、再調査の請求をした。
  • ホ 再調査審理庁は、平成30年10月19日付で、上記ニの再調査の請求については、別表2の「再調査決定」欄のとおり、いずれも棄却し、上記ニの各賦課決定処分に係る再調査の請求については、同欄のとおり、いずれもその一部を取り消す再調査決定をした(以下、上記ハの各更正処分及び再調査決定によりその一部が取り消された後の過少申告加算税の各賦課決定処分をそれぞれ「本件各更正処分」及び「本件各賦課決定処分」という。)。
  • ヘ 請求人らは、平成30年11月21日、再調査決定を経た後の原処分を不服とし、それぞれ審査請求をし、同日、請求人F1を総代として選任し、その旨を届け出た。
     なお、請求人らは、本審査請求において、本件各更正処分のうち、本件土地が広大地に該当しないとされた点及び土壌汚染の浄化費用を本件見積書の金額51,300,000円の80%相当額ではなく本件覚書の金額25,600,000円の80%相当額とされた点以外の部分については争わず、本件土地の価額については別表3−3のとおり主張する。

2 争点

(1) 本件土地は、広大地に該当するか否か(具体的には、1本件土地の属する「その地域」の範囲、2「その地域」における標準的な宅地の地積及び3本件土地はマンション適地に該当するか否か。)(争点1)。

(2) 本件土地の評価につき、控除すべき土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、実際に負担した本件覚書の金額25,600,000円の80%相当額とすべきか、又は本件見積書の金額51,300,000円の80%相当額とすべきか(争点2)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(本件土地は、広大地に該当するか否か(具体的には、1本件土地の属する「その地域」の範囲、2「その地域」における標準的な宅地の地積及び3本件土地はマンション適地に該当するか否か。)。)について

原処分庁 請求人ら
次のイないしハからすると、本件土地は広大地に該当しない。 次のイないしハからすると、本件土地は広大地に該当する。
イ 本件土地の属する「その地域」の範囲 イ 本件土地の属する「その地域」の範囲
(イ) 「その地域」とは、1河川や山などの自然的状況、2行政区域、3都市計画法による土地利用の規制などの公法上の規制等、4道路、鉄道及び公園など、土地の利用状況の連続性や地域としての一体性を分断する場合がある客観的な事情を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解される。 (イ) 「その地域」は河川や道路又は行政規制の状況等によりどのように区分されているかのみによって判断するのではなく、評価対象地が置かれている周辺と利用状況等がおおむね同一と認められる地域か否かをより重視して判断すべきである。
(ロ) そうすると、次のAないしCから、本件土地の属する「その地域」は、a市d町○−○の街区(準住居地域の部分に限る。)及び同○番の街区(ただし、e街道の敷地である土地を除く。以下、上記各街区を併せて「原処分庁主張地域」という。別図2参照。)となる。
A 原処分庁主張地域は、幅員約38mのe街道の北西側に面する。
B 原処分庁主張地域は、準住居地域である。
C 原処分庁主張地域は、主にマンション及び戸建住宅が混在している。
(ロ) そうすると、原処分庁主張地域にk交差点から北西方向へ約200mまでのg街道沿いの両側の準住居地域を加えた地域が「その地域」となる(以下、当該地域を「請求人ら主張地域」という。別図2参照。)。
(ハ) 請求人が「その地域」に含まれるとするk交差点より北西方向のg街道沿いの地域は、同街道の幅員が約18mであること及び主に戸建住宅と2階以下の共同住宅が混在する地域であることから、原処分庁主張地域とは利用状況及び環境が異なる。 (ハ) 原処分庁は、行政区域には該当しない町名の違いを都合よく勘案し、都市計画法における用途地域や規制の状況などが同一の地域を判断要素の外にして極めて限定的な狭い範囲を「その地域」としており、不当である。
ロ 原処分庁主張地域における標準的な宅地の地積
 原処分庁主張地域においては、マンションの敷地の用に供されている土地の占める割合が最も大きく、また、その地積の平均は約500uあるから、本件土地は標準的な宅地の地積に比して著しく広大な土地である。
ロ 請求人ら主張地域における標準的な宅地の地積
 住宅地図によれば、請求人ら主張地域における標準的な宅地の地積は100uないし200uであるから、本件土地は標準的な宅地の地積に比して著しく広大な土地である。
ハ 本件土地はマンション適地であるか否か ハ 本件土地はマンション適地であるか否か
(イ) マンション適地とは、「その地域」におけるマンションの建築状況、用途地域・建蔽率・容積率や地方公共団体の開発規制、また、交通、教育、医療等の公的施設への接近性から判断して、評価対象地をマンション等の敷地とすることが経済的に最も合理的であると認められる場合を指すと解される。 (イ) 相続税法第22条は、時価の意義について規定し、国税庁長官は、評価通達により時価の意義、評価に関する原則及び各種財産の具体的評価方法を定め、評価方法を統一することにより課税の公平を図り、納税者の申告の便宜に供している。また、国税庁が発出した広大地に関する情報では、マンション適地の判定について、「評価対象の土地の標準的使用の状況を参考とすることになる。しかし、戸建住宅とマンションが混在する地域(主に容積率200%の地域)は、周囲の状況や専門家の意見から判断して、明らかにマンション適地と認められる土地を除き、広大地に該当する」とし、また、マンション適地の判断基準について「1近隣地域等に、現にマンションが建てられている、2現在も建築工事中のマンションが多数あるという具体的な二つの基準を設け、マンション敷地としての利用に地域の移行が相当程度進んでいる場合である」としている。
(ロ) そして、次のAないしEからすると、本件土地はマンション適地に該当する。
A 原処分庁主張地域は、準住居地域に存し、容積率が200%である。
B 原処分庁主張地域は、交通の便が極めて良く、公立の小中学校が近くに存する。
C 原処分庁主張地域における土地の標準的な使用はマンションの敷地であり、e街道に面する土地については、主にマンションの敷地に利用されている。
D 原処分庁主張地域に存する500u以上の土地について、戸建住宅の敷地として開発された事例はないが、マンションの敷地として開発された事例は3件存する。
E 本件土地には、本件相続の開始後、現にマンション(本件建物)が建築された。
(ロ) そうすると、「その地域」の範囲が原処分庁主張地域であるとしても、次のA及びBからして本件土地は、いまだ明らかにマンションの敷地に適しているとは認められないからマンション適地に該当しない。
A 住宅地図等で見るとおり、原処分庁主張地域に存するマンションの棟数は少なく、マンション建築の進行度合いも遅い(原処分庁主張地域内のマンションは全て本件相続の開始日の前年2月以前に建築されたものであり、本件相続の開始後も1棟しか建築されていない。)。
B 原処分庁主張地域におけるマンションの敷地の占有割合は僅か36.5%にすぎない。
  (ハ) 本件相続時には本件土地上にマンションは存在せず、また、相続税の申告期限においてもマンションの計画すらなく、相続開始から3年も経った時期にマンションが建築されたことを理由にマンション適地と認定する原処分庁の主張は誤りである。
  (ニ) 原処分は、広大地に関する情報を無視したものであるから、上級官庁の通達、ひいては、相続税法第22条に反した違法なものである。

(2) 争点2(本件土地の評価につき、控除すべき土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、実際に負担した本件覚書の金額25,600,000円の80%相当額とすべきか、又は本件見積書の金額51,300,000円の80%相当額とすべきか。)について

原処分庁 請求人ら
次のイ及びロからすると、本件土地の評価につき、控除すべき土壌汚染の浄化費用相当額は、実際に負担した本件覚書の金額25,600,000円の80%(相続税評価額の水準)相当額とすべきである。 次のイないしニからすると、本件土地の評価につき、控除すべき土壌汚染の浄化費用相当額は、本件見積書の金額51,300,000円の80%(相続税評価額の水準)相当額とすべきである。
イ 土壌汚染地の評価において浄化費用相当額を控除することとしているのは、土壌汚染対策として、土壌汚染の浄化、遮水工封じ込め等の措置を実施するための費用の負担を考慮するものであることからすると、当該土壌汚染の浄化に当たり、その実際に負担した浄化費用の金額に基づいて浄化費用相当額を算定することが、上記浄化費用相当額を控除することの趣旨からみても合理的である。そして、見積額と異なる金額の浄化費用を実際に負担していることが判明している場合には、その実際に負担した浄化費用の金額が適正な見積額であったということができ、あえて当初の見積額に基づく必要性は見いだせないことから、このような場合には、その実際に負担した浄化費用の金額を土壌汚染地の評価上の浄化費用の「見積額」と捉えて、これに基づいて浄化費用相当額を算定することができると解すべきである。 イ 土壌汚染地の評価に関する情報によれば、土壌汚染地の評価については、土壌汚染がないものとした場合の価額から浄化費用に相当する金額を控除することとしており、当該控除する浄化費用に相当する金額は、見積額の80%相当額であるとされている。
ロ 本件見積書の金額が51,300,000円であるのに対し、実際に負担した金額は約半額の25,600,000円である。また、課税時期と実際に負担した時点において浄化費用の価額に大きな変動があると認められる事情はうかがえない。 ロ 本件見積書の金額51,300,000円は、T社が調査を行い見積もったものであり、不当に増額したものとは考え難い。
  ハ 広辞苑のとおり見積額とは実際の工事金額とは異なるものであることは明白である。
  ニ 実際に負担した本件覚書の金額25,600,000円は、本件見積書の金額51,300,000円を基に交渉した結果の金額にすぎないから、譲渡所得の計算上控除する費用の金額としては合理的であっても、土地の評価上控除する金額の基礎金額としては相当でない。
 なお、最終支払額を採用するならば、80%に圧縮する必要はなく、100%相当額とすべきである。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件土地は、広大地に該当するか否か(具体的には、1本件土地の属する「その地域」の範囲、2「その地域」における標準的な宅地の地積及び3本件土地はマンション適地に該当するか否か。)。)について

  • イ 法令解釈
    • (イ) 相続税法第22条について
       相続税法第22条は、相続財産の価額は、特別に定める場合を除き、当該財産の取得の時の時価によるべき旨を規定しており、ここにいう時価とは、相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解するのが相当である。
       しかし、客観的な交換価値は、必ずしも一義的に確定されるのではないから、これを個別に評価する方法を採った場合には、その評価方式等により異なる評価額が生じたり、課税庁の事務負担が重くなり、大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となったりするおそれがある。そこで、課税実務上は、特別の定めのあるものを除き、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、原則としてこれに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。このように、あらかじめ定められた評価方式によってこれを画一的に評価することは、税負担の公平、効率的な租税行政の実現という観点から見て合理的であり、相続財産の評価に当たっては、評価通達によって評価することが著しく不適当と認められる特別の事情がない限り、評価通達に定められた評価方法によって画一的に評価することが相当である。
    • (ロ) 広大地通達について
       広大地通達は、評価の対象となる宅地の地積がその地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大な宅地で、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものの価額の評価について、減額の補正を行う旨定めている。
       このような減額の補正を行うこととした趣旨は、評価の対象となる宅地の地積が、当該宅地の価額の形成に関して直接影響を与える特性を持つ当該宅地の属する地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、当該宅地が評価の時点において経済的に最も合理的に使用されておらず開発行為を要するときに、経済的に最も合理的な開発行為が当該宅地を細分化して戸建住宅を建築することである場合には、当該開発行為により道路、公園等の公共公益的施設用地の負担が必要になって、いわゆる潰れ地が生じ、評価通達15ないし同20−5による減額の補正では十分といえない場合があることから、このような宅地の価額の評価に当たっては、潰れ地が生じることを当該宅地の価額に影響を及ぼす事情として、価値が減少していると認められる範囲で減額の補正を行うこととしたものと解される。
       しかしながら、評価の時点における当該宅地の属する地域の建物の建築状況等に照らして、経済的に最も合理的な使用が、当該宅地を工場の敷地やマンション等の敷地として一体で使用することである場合には、公共公益的施設用地の負担は必要とならず、潰れ地が生じないため、減額の補正を行う必要はないことから、広大地に該当しない旨も定めている。
       当審判所においても、上記のとおりの広大地通達の取扱いは相当であると解する。
    • (ハ) 広大地通達に定める「その地域」について
       上記(ロ)の広大地通達の趣旨に照らすと、同通達でいう評価の対象となる宅地の属する「その地域」とは、1河川や山などの自然的状況、2行政区域、3都市計画法による土地利用の規制などの公法上の規制等、4道路、鉄道及び公園など、土地の利用状況の連続性や地域の一体性を分断して土地利用上の利便性や利用形態に影響を及ぼすことがあり得る客観的な事情を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。
    • (ニ) 標準的な宅地の地積について
       上記(ロ)の広大地通達の趣旨に照らすと、広大地通達にいう「標準的な宅地の地積」とは、評価の対象となる宅地の付近で状況の類似する地価公示の標準地及び都道府県地価調査の基準地の地積並びに「その地域」における宅地の標準的な使用に基づく平均的な地積を勘案して求めた地積を指すものと解するのが相当である。
    • (ホ) 評価の対象となる土地がマンション適地である場合(潰れ地が生じない場合)について
       上記(ロ)の広大地通達の趣旨に照らすと、評価の対象となる宅地がマンション適地である場合(潰れ地が生じない場合)とは、「その地域」における1マンションの建築の状況、2用途地域・建蔽率・容積率や地方公共団体の開発規制、3交通、教育、医療等の公的施設及び商業施設への接近性から判断して、当該宅地をマンションの敷地として使用することが経済的に最も合理的であると認められる場合を指すと解するのが相当である。
  • ロ 認定事実
     請求人ら提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ)  k交差点付近の住居系の用途地域については、平成8年5月10日のX県告示第○号の用途地域の変更により、上記1の(3)のハのとおり本件相続の開始時と同じく準住居地域及び第一種住居地域に区分された。
    • (ロ)  原処分庁主張地域には、マンション及び戸建住宅が混在している。
    • (ハ) 上記(イ)の用途地域変更後から本件相続の開始時までの間における原処分庁主張地域内での500u以上の土地に係る建物の建築及び開発行為の各状況を調査したところ、3件のマンション(別表4−1の順号1及び2並びに別表4−2)及び1件のコンビニエンスストア(別表4−1の順号3)の建築事例が認められたが、戸建住宅の建築に係る開発行為が行われた事例は認められなかった。
  • ハ 当てはめ
    • (イ) 本件土地が属する「その地域」について
      • A 上記1の(3)のハの(ロ)及び(ハ)並びに別図1のとおり、本件土地の大部分が存する準住居地域の範囲はe街道沿い及びg街道沿いの両側50mの地域であるところ、上記1の(3)のロの(ロ)のBのとおり、本件土地の南側に位置するe街道は、k交差点付近の8車線の部分において約39m、その前後の4車線の部分も約22mと幅員が広く、高架部分のある幹線道路であるから、本件土地の存する準住居地域は、e街道により南北に分断されていると認められる。
         また、上記1の(3)のロの(ロ)のCのとおり、本件土地の西側に位置するg街道についても、k交差点付近等の一部において3車線であり、その前後の2車線の部分も約20mと幅員の広い幹線道路であるから、本件土地の存する準住居地域は、g街道により東西に分断されていると認められる。
      • B 次に、k交差点付近におけるe街道とg街道とを比較すると、e街道は幅員が約39mと広く8車線もあるため、3車線のg街道に比して交通量が多く、振動・騒音も大きいと考えられること、また、e街道には高架部分があって、e街道沿いの地域はg街道沿いの地域に比して眺望が劣るものと認められる(上記1の(3)のトのとおり、本件建物の3階部分がe街道の高架部分と同程度の高さに相当する。)。
         そうすると、e街道沿いの地域とg街道沿いの地域を、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域としてひとくくりにすることはできない。
      • C 以上からすると、本件土地の属する「その地域」は、別図2の原処分庁主張地域のとおり、都市計画法による公法上の規制等(準住居地域、建蔽率60%、容積率200%)が同一であり、かつ、e街道の北側沿いに存する、k交差点から北東方向へ約200mまで、e街道沿いの北側50mまでの準住居地域(具体的には同地域内のa市d町○−○の街区の一部及び同○番の街区)とすることが相当である。
      • D この点、請求人らは、上記3の(1)の「請求人ら」欄のイのとおり、本件土地の属する「その地域」は、原処分庁主張地域にk交差点から北西方向へ約200mまでのg街道沿いの両側の準住居地域を加えた地域とされるべきである旨主張する。
         しかしながら、g街道沿いの地域とe街道沿いの地域を同一の条件の地域としてひとくくりにすることができないのは上記Bのとおりであるから、請求人らの主張は採用できない。
    • (ロ) 「その地域」における「標準的な宅地の地積」について
       原処分庁及び請求人らが主張する「その地域」における標準的な宅地の地積は異なるものの、上記3の(1)のロのとおり、原処分庁と請求人らのいずれも本件土地が「その地域」における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地に該当すると主張するところ、当審判所も、本件土地は2,579.10uもの広さがあることから、本件土地は「その地域」における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地であるものと認める。
    • (ハ) 本件土地はマンション適地に該当するか否かについて
      • A まず、原処分庁主張地域におけるマンションの建築の状況をみると、上記ロの(ハ)並びに別表4−1及び別表4−2のとおり、平成8年5月10日の用途地域変更後から本件相続の開始時までの間に建築された4件の建物のうち3件がマンションであって、戸建住宅の建築に係る開発行為は認められなかった。
      • B 次に、原処分庁主張地域における用途地域・建蔽率・容積率や地方公共団体の開発規制をみると、上記1の(3)のハの(イ)のとおり、用途地域は準住居地域であり、建蔽率が60%、容積率が200%であるから、マンションの建築に係る地方公共団体の開発規制は厳しくない地域であるといえる。
      • C そして、原処分庁主張地域における交通、教育、医療等の公的施設及び商業施設への接近性をみると、上記1の(3)のニのとおり、本件土地はp駅から道路距離約800mの徒歩約10分の位置に所在し、同駅からq駅までは約20分と〇〇へのアクセスに優れている上、p駅付近にJ病院、400m圏に公立の小学校や保育園、隣接地に公立の中学校やスーパーマーケットやコンビニエンスストアがあって、公的施設及び商業施設への接近性にも優れている。
      • D そうすると、原処分庁主張地域はマンションの敷地としての利用に移行しつつある状況にあるといえ、本件土地の経済的に最も合理的な使用は、明らかにマンションの敷地として一体で利用することであると認められるから、本件土地はマンション適地に該当する。
      • E 請求人らは、上記3の(1)の「請求人ら」欄のハの(イ)及び(ロ)のとおり、広大地に関する情報によると、明らかにマンション適地と認められない本件土地は広大地に該当する旨、また、原処分庁主張地域に存するマンションの棟数は少なく、同地域におけるマンションの敷地の占有割合36.5%は大きくないから、本件土地はマンション適地に該当しない旨主張する。
         しかしながら、上記A並びに別表4−1及び別表4−2のとおり、原処分庁主張地域内の大規模な土地上には主としてマンションが建築されている上、本件相続の開始時の前年にもマンションが建築されていることなどからして、上記Dのとおり、本件土地は明らかにマンション適地であると認められるから、請求人らの主張は採用できない。
         また、請求人らは、上記3の(1)の「請求人ら」欄のハの(ハ)のとおり、本件相続の開始時には存在しなかったマンションが建築されたことを理由に、本件土地をマンション適地と認定することは誤りである旨主張するが、上記Dのとおり、本件土地上に現にマンションである本件建物が建築されていることをもってマンション適地と判断するものではないから、請求人らの主張は採用できない。

(2) 争点2(本件土地の評価につき、控除すべき土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、実際に負担した本件覚書の金額25,600,000円の80%相当額とすべきか、又は本件見積書の金額51,300,000円の80%相当額とすべきか。)について

  • イ 認定事実
     請求人ら提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) T社は、昭和○年に財団法人として設立され、平成○年に一般財団法人に移行した法人であり、土壌汚染対策法第3条第1項の規定に基づき、環境大臣により、土壌汚染に関する状況調査を実施することについて技術的能力等を有するものとして指定された者である。
       また、T社が、本件見積書を発行した日を含む平成28年度以前の5年間において実施した土壌汚染状況調査件数及び同対策工事件数は、別表5のとおり相当数に上る。
       S1社は、本件土地の土壌汚染対策工事のうち、仮設工事、山留め工事及び掘削工事等の土工事などについては、本件建物の建築工事と重複する部分があることから、同対策工事費用を節減するため、同対策工事を本件建物の建築工事を発注したS2社に発注することとしたところ、本件見積書の金額51,300,000円(上記1の(3)のヘの(ロ)及び別紙6)の内訳上、汚染土壌の運搬・処分費(別紙6の「6.汚染土壌運搬・処分費の24,321,750円」(消費税及び地方消費税込みの金額は26,267,490円)参照)は本件建物の建築工事と重複しないと考え、S2社に支払う土壌汚染対策工事費用の金額は25,600,000円とした。
    • (ロ) S2社は、本件土地の土壌汚染対策工事において必要となる仮設工事、山留め工事及び掘削工事等の土工事などのうち、S2社が施工する本件建物の建築工事と重複する部分については自ら行うこととし、それ以外の部分について、平成28年10月14日、S3社に対し、34,236,000円で外注した。
       S3社が行った土壌汚染対策工事は、主として本件建物の建築工事と重複しない汚染土壌の運搬及び処分であった。
    • (ハ) S2社は、平成28年12月28日、平成29年1月31日及び同年2月28日の3回に分け、S3社に対し、土壌汚染対策工事費用として上記(ロ)の金額である34,236,000円及び追加工事の金額である680,400円の合計34,916,400円を支払った。
    • (ニ) S1社は、平成29年4月20日、S2社に対し、25,600,000円を支払った。
  • ロ 検討
    • (イ) 相続財産の評価に当たっては、評価通達に定められた評価方法によって画一的に評価することが相当であることは、上記(1)のイの(イ)のとおりであるところ、評価通達1の(3)は、相続財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべき全ての事情を考慮する旨定めており、本件のような、土壌汚染地の評価について、土壌汚染の浄化費用を控除すべきか否かについては、評価通達に特に定めはないが、土壌汚染地の評価に関する情報のとおり、課税実務においては、土壌汚染の浄化費用相当額を控除して評価することが認められており、当審判所においても、このような課税実務における取扱いは、上記評価通達1の(3)の定めに照らし、相当であると解されるから、以下、本件土地の土壌汚染の浄化費用相当額に関し検討する。
    • (ロ) 請求人F1がS1社に支払い、同社がS2社に支払った金額は25,600,000円であり、本件見積書の金額51,300,000円に比して低額であるところ、「25,600,000円」という金額は、上記イの(イ)のとおり、本件見積書における汚染土壌の運搬・処分費の金額を基とした金額であり、仮設工事、山留め工事及び掘削工事等の費用を含まない金額であったと認められる。
       そして、上記イの(ロ)及び(ハ)のとおり、S2社から土壌汚染対策工事についての外注を受け、本件建物の建築工事と重複しない主に汚染土壌の運搬及び処分を行ったS3社に支払われた金額は34,916,400円であることからすると、土壌汚染対策工事の総額は、上記34,916,400円に加えて、S2社が行った本件建物の建築工事費用の金額のうち、土壌汚染対策工事と重複する部分の工事費用の金額であったことが認められる。
       そうすると、請求人F1がS1社に支払い、S1社がS2社に支払った土壌汚染対策工事費用の金額25,600,000円は、土壌汚染対策工事費用の総額ではなく、土壌汚染対策工事を本件建物の建築工事と並行して行うことを前提とした場合における限定的な金額と認められるから、本件土地に係る土壌汚染の浄化費用相当額として本件土地の評価に用いるのは相当でない。
    • (ハ) 他方、T社が算定した本件見積書の金額51,300,000円は、本件建物の建築工事と並行して行われることを前提とした場合における限定的な土壌汚染対策工事費用の金額ではなく、一般的な土壌汚染対策工事費用の総額であると認められる。T社は、一般財団法人であって、本件見積書の交付先であるS1社とは資本関係もマンション建築などの取引関係もない。
       そして、T社は、土壌汚染状況調査に関し技術的能力を有するものとして環境大臣に指定された者であり、別表5のとおり、平成24年度から5年間に限っても、年間400件前後の土壌汚染状況調査実績を有していることからすれば、本件見積書の金額51,300,000円は、T社が中立的立場から公正に算出した適正なものと認められる。
       また、本件相続の開始時から本件見積書の発行日に至る約1年半の間に、本件土地に係る土壌汚染の浄化費用の金額に影響を与えた特段の事情があったともうかがえない。
    • (ニ) したがって、本件の事実関係においては、本件土地に関して必要とされる土壌汚染対策工事費用の金額は本件見積書の金額51,300,000円とすることが相当であり、本件土地を評価するに際し控除すべき土壌汚染の浄化費用の金額は、51,300,000円の80%相当額とすることが相当である。
  • ハ 原処分庁の主張について  原処分庁は、請求人F1が実際に負担した土壌汚染対策工事費用の金額は25,600,000円であり、実額が明らかである以上、本件土地の評価につき、請求人らの主張する本件見積書の金額51,300,000円の80%相当額を控除することは相当でない旨主張する(上記3の(2)の「原処分庁」欄)。
     しかしながら、請求人らが支払った25,600,000円は、上記ロの(ロ)のとおり、S1社が、S2社に対し、本件建物の建築工事と土壌汚染対策工事を並行して行わせることにより、重複工事部分の費用を節減させることを前提とした金額であり、土壌汚染対策工事を単独で行うのではなく、本件建物の建築工事を並行して行うという事情の下における土壌汚染対策工事費用の金額であるから、本件土地に係る土壌汚染の浄化費用相当額として本件土地の評価に用いるのは相当でない。
     したがって、原処分庁の主張には理由がない。

(3) 本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の適法性について

  • イ 本件各更正処分の適法性
     上記(1)及び(2)からすると、本件土地は広大地には該当しないが、本件土地の評価において控除すべき土壌汚染の浄化費用相当額は本件見積書の金額51,300,000円の80%相当額であると認められることから、当審判所において、本件土地の価額を評価すると、別表6のとおりとなる。
     これを前提に、請求人らの本件相続税に係る課税価格及び納付すべき税額を計算すると、いずれも別表7の「審判所認定額」欄のとおりとなる。そうすると、本件各更正処分のうち、同欄の課税価格及び納付すべき税額を上回る部分の金額は、いずれも違法であり、取消しを免れないから、本件各更正処分は、いずれもその一部を別紙2ないし4の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
     なお、本件各更正処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

  • ロ 本件各賦課決定処分の適法性
     本件各更正処分は、上記イのとおり、その一部を取り消すべきであるところ、その他の本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。したがって、請求人らの過少申告加算税の額を計算すると、いずれも別表7の「審判所認定額」欄のとおりとなり、本件各賦課決定処分の金額にいずれも満たないから、本件各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙2ないし4の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(4) 結論

以上のとおり、請求人らの審査請求には理由がある。

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