(令和8年3月4日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、ロードサービス業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が売上金額を過少に申告していたことにつき隠蔽又は仮装の事実及び偽りその他不正の行為があるとして、所得税等及び消費税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、隠蔽又は仮装の事実及び偽りその他不正の行為はないとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

関係法令の要旨は、別紙のとおりである。
 なお、別紙で定義した略語については、以下、本文においても使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

イ 請求人は、平成29年から、「D」という屋号でロードサービス業(以下「本件事業」という。)を営む個人事業者である。
ロ 請求人の本件事業に係る売上金は、ロードサービスの依頼者である保険会社等からE信用金庫○○支店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○。以下「本件事業用口座」という。)へ全て振り込まれており、現金による決済はない。
ハ 請求人は、平成29年分、平成30年分、令和元年分、令和2年分、令和3年分及び令和4年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の各確定申告書(以下「本件各確定申告書」という。)及び本件各年分の各所得税青色申告決算書(以下「本件各決算書」という。)の作成並びに原処分庁への提出を、内縁の妻であるF(以下「本件内妻」という。)に依頼していた。
 なお、請求人は、所得税の青色申告承認申請書を原処分庁へ提出していない。
ニ 本件内妻は、本件各確定申告書及び本件各決算書の作成に先立ち、本件各年分の本件事業に係る売上金額及び必要経費の金額を勘定科目ごとに記載した一覧表(以下「本件各一覧表」という。)をパソコンで作成していた。
 なお、本件各一覧表の本件各年分の売上金額は、本件内妻が、請求人から本件事業に係る各月の売上金額として伝えられた金額を本件各一覧表の「売上」欄に月ごとに入力したものの合計額であり、本件各一覧表の本件各年分の必要経費の金額は、本件内妻が請求人から受け取った本件事業に係る領収書や請求書等を基に、本件各一覧表の各勘定科目に入力したものであった。

(4) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、本件内妻を介し、本件各年分の所得税等について、本件各確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載し、それぞれ本件各決算書を添付して、いずれも法定申告期限までに申告した。
 なお、本件各決算書の「売上(収入)金額」欄には、別表3−1から別表3−6までの「�@決算書記載額」欄のとおり、売上金額が月ごとに記載されており、これら各月の金額と本件各一覧表の「売上」欄の各月の金額とはいずれも一致している。
ロ 請求人は、令和3年1月1日から令和3年12月31日までの課税期間(以下「令和3年課税期間」といい、他の課税期間についても同様に表記する。)及び令和4年課税期間(以下、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)に係る各確定申告書を、いずれも法定申告期限までに原処分庁へ提出しなかった。
ハ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、令和5年10月2日、請求人の令和2年分、令和3年分及び令和4年分の所得税等を対象とする調査を開始し、同日、当該調査の対象に平成29年分、平成30年分及び令和元年分の所得税等を追加した。
ニ 本件調査担当職員は、令和5年11月13日、請求人に対し質問検査を実施し、同日、その内容を記録した質問応答記録書(以下「本件質問応答記録書」という。)を作成し、請求人は、本件質問応答記録書の問答末尾及び各頁に署名した。
ホ 本件調査担当職員は、令和5年12月8日、上記ハの調査の対象に請求人の本件各課税期間の消費税等を追加した(以下、本件調査担当職員による請求人の本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等を対象とした調査を「本件調査」という。)。
ヘ 原処分庁は、本件調査に基づき、令和6年9月4日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおり、本件各年分の所得税等の各更正処分(以下、このうち平成29年分、平成30年分及び令和元年分の所得税等の各更正処分を「本件所得税等各更正処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件所得税等各賦課決定処分」という。)を行うとともに、別表2の「決定処分等」欄のとおり、本件各課税期間の消費税等の各決定処分並びに無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下、このうち本件各課税期間の消費税等の重加算税の各賦課決定処分を「本件消費税等各賦課決定処分」といい、本件所得税等各更正処分及び本件所得税等各賦課決定処分と併せて「本件各処分」という。)を行った。
ト 請求人は、本件各処分を不服として、令和6年11月20日に再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、令和7年3月12日付でいずれも棄却の再調査決定をし、同月14日に再調査決定書謄本を請求人に送達した。
チ 請求人は、再調査決定を経た後の本件各処分に不服があるとして、令和7年4月14日に審査請求をした。
 なお、請求人は、令和2年分、令和3年分及び令和4年分の所得税等の重加算税の各賦課決定処分のうち過少申告加算税相当額の部分並びに本件消費税等各賦課決定処分のうち無申告加算税相当額の部分については争っていない。
リ 請求人は、令和7年8月5日に住所をd県e市f町○−○から肩書地へ異動した。

2 争点

(1) 請求人に、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるか否か(争点1)。

(2) 請求人に、通則法第70条第5項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する事実があるか否か(争点2)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(請求人に、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるか否か。)について

原処分庁 請求人
次のとおり、請求人の行為は、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する。 次のとおり、請求人の行為は、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当しない。
イ 請求人は、本件事業に係る真実の売上金額を認識していたにもかかわらず、連年、真実の売上金額を隠匿するため、本件各確定申告書の作成及び提出を依頼していた本件内妻に対し、真実の売上金額より過少な売上金額を口頭で伝え、本件各一覧表に過少な売上金額を記載させた。 イ 請求人が本件事業に係る売上金額を過少に申告したことは、請求人が集計した各月の売上金額の数字が誤っていたのか、あるいは、本件内妻の集計が誤っていたのかは分からないが、これらに基づく単なる過誤やミスであり、隠蔽又は仮装に該当する行為はない。
ロ 請求人は、本件事業に係る真実の売上金額を認識していたにもかかわらず、�@継続的に、本件事業に係る真実の売上金額に比しておよそ41%から63%程度の売上金額しか申告しておらず、本件事業に係る売上金額を過少に申告していたことが認められ、�A令和5年10月2日、本件調査担当職員に対して、本件各一覧表の売上金額は真実の売上金額である旨の虚偽答弁を行った。
 以上�@及び�Aからすると、請求人は、真実の売上金額を隠蔽又は仮装し、これに基づいて過少申告をした、若しくは、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をした場合に該当すると認められる。
ロ 上記イのとおり、請求人が売上金額を過少に申告したことは、請求人が集計した各月の売上金額の数字が誤っていたのか、あるいは、本件内妻の集計が誤っていたのかは分からないが、これらに基づく単なる過誤やミスであり、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動には該当しない。
ハ 本件質問応答記録書の作成に当たっては、本件調査担当職員が請求人からその記載内容に訂正及び追加することはない旨の明示の回答を得て、誤りがない旨の請求人の確認を経た上で署名を得ており、当該署名が強制されたものであるとする事情も見受けられない。 ハ 原処分庁は、本件質問応答記録書を主たる根拠として仮装隠蔽等の事実があったと主張するが、本件質問応答記録書は、次の理由により任意性を欠いて作成されたものであるから、たとえ署名があったとしても、その証拠能力は否定され、本件所得税等各賦課決定処分及び本件消費税等各賦課決定処分は取り消されるべきである。
(イ) 犯罪捜査において調書を作成する場合には、黙秘権や署名の拒否が制度上認められているが、請求人が本件調査担当職員から受けた質問調査においては、税法上、黙秘権及び署名拒否の規定がなく手続に不備がある。
(ロ) 本件調査担当職員は、本件質問応答記録書の作成に当たって、請求人に対し威圧的な態度で署名を迫った。

(2) 争点2(請求人に、通則法第70条第5項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する事実があるか否か。)について

原処分庁 請求人
上記(1)の「原処分庁」欄のとおり、請求人の行為は、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当することから、本件各年分において、請求人は、通則法第70条第5項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」により、所得税等の負担を免れたものと認められるため、本件各年分の所得税等の各法定申告期限から7年を経過する日まで更正処分をすることができる。
 したがって、本件所得税等各更正処分は、適法である。
上記(1)の「請求人」欄のとおり、請求人の行為は、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当しないことから、通則法第70条第5項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」がないにもかかわらず、平成29年分、平成30年分及び令和元年分の所得税等の調査及び本件所得税等各更正処分が行われたことは違法又は不当である。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(請求人に、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるか否か。)について

イ 法令解釈
 通則法第68条第1項及び第2項に規定する重加算税の制度は、納税者が過少申告をすること又は期限内申告書を提出しないことについて隠蔽、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
 したがって、重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為又は無申告行為そのものが隠蔽、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実についての隠蔽、仮装と評価すべき行為が存在し、これに基づいた過少申告行為又は無申告行為がされたことを要するものと解するのが相当である。
ロ 認定事実
 原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
(イ) 請求人は、本件事業用口座に係る通帳等の管理や別口座への資金移動等を自ら行っており、本件内妻は、本件事業用口座の通帳等を確認したことがなかった。
(ロ) 請求人は、本件内妻が、毎年年明けから本件各年分の所得税等の確定申告が始まる前までの期間に、本件各一覧表を作成していたことを認識していた。
(ハ) 請求人は、令和7年9月25日、当審判所に対し、上記1の(3)のニの請求人が本件事業に係る各月の売上金額として本件内妻に伝えた金額は、売上金が本件事業用口座に振り込まれた日を収入計上日として各月の振込額を集計したものである旨を答述した(以下、請求人が答述した当該集計方法を「請求人集計方法」という。)。
 なお、当審判所において、請求人集計方法に基づき集計した本件事業に係る各月の売上金額は、別表3−1から別表3−6までの「�A請求人集計方法に基づく集計額」欄のとおりである。
(ニ) 本件事業に係る売上金の各月における振込回数は、別表3−1から別表3−6までの「�C審判所認定額に対応する振込回数」欄のとおりであり、少ない月で1回、多い月で6回であって、その平均は約2.8回(小数点以下第2位を四捨五入したもの)である。
(ホ) 本件事業用口座への振込額を基に当審判所が認定した本件各年分における売上金額は、別表3−1から別表3−6までの「�B審判所認定額」欄の「合計」欄のとおりであり、本件各決算書の「売上(収入)金額」欄の「計」欄の額(別表3−1から別表3−6までの「�@決算書記載額」欄の「合計」欄)を、別表3−1から別表3−6までの「�B審判所認定額」欄の「合計」欄の額で除した割合(いずれも小数点以下第2位を四捨五入したもの。以下「本件申告割合」という。)は、別表3−1から別表3−6までの「�D申告割合」欄のとおり、平成29年分が○○%、平成30年分が○○%、令和元年分が○○%、令和2年分が○○%、令和3年分が○○%、令和4年分が○○%である。
(ヘ) 本件質問応答記録書の問答末尾の請求人の署名の後には、「以上のとおり、質問応答の要旨を記録して、回答者に対し読み上げ、かつ、閲読させたところ、回答者は誤りのないことを確認するとともに、本質問応答記録書のページ数を確認し、回答者欄及び各ページの確認欄に署名した。」との記載がある。
ハ 検討
(イ) 本件事業に係る売上金額について
 請求人は、上記ロの(イ)のとおり、本件事業用口座を自ら管理していたところ、上記1の(3)のロのとおり、本件事業用口座には、本件事業に係る売上金の全てが振り込まれていた。また、上記ロの(ニ)のとおり、本件事業に係る売上金の各月における振込回数は、少ない月で1回、多い月で6回であり、平均しても約2.8回である。そうすると、請求人は、本件事業用口座の通帳を確認することにより、本件各年分における本件事業に係る売上金額を容易に把握できたものと認められる。
 加えて、個人事業者である請求人が、自らの事業に係る売上金額を確認しないことは通常あり得ず、これを否定すべき事情もないことからすれば、請求人は、本件各年分の真実の売上金額を認識していたものと認められる。
(ロ) 本件各一覧表の売上金額について
 上記1の(3)のニのとおり、本件各一覧表の本件各年分の売上金額は、請求人が本件事業に係る各月の売上金額として本件内妻に伝えた金額の合計額であり、また、上記ロの(ハ)のとおり、請求人は、当該金額について、請求人集計方法に基づき集計したものである旨答述しているところ、当審判所において請求人集計方法に基づき本件事業に係る各月の売上金額を集計すると、別表3−1から別表3−6までの「�A請求人集計方法に基づく集計額」欄の各金額となり、当該各金額は、本件各年分に対応する72か月のうちいずれの月においても本件各一覧表の各月の「売上」欄の各金額と一致しない。さらに、当該72か月のうち68か月においては、本件各一覧表の各月の売上金額が当審判所において請求人集計方法に基づき集計した各月の売上金額を下回っている上、当該68か月のうち本件事業に係る売上金の振込回数が1回のみである平成30年7月分(別表3−2の「�B審判所認定額」欄では同年6月分)においても、本件各一覧表の売上金額が当審判所において請求人集計方法に基づき集計した売上金額を下回っている。
 また、上記1の(4)のイのとおり、本件各決算書の「売上(収入)金額」欄の各月の売上金額は、いずれも本件各一覧表の「売上」欄の各月の売上金額と一致しているところ、上記ロの(ホ)のとおり、本件各年分における本件申告割合は、平成29年分が○○%、平成30年分が○○%、令和元年分が○○%、令和2年分が○○%、令和3年分が○○%、令和4年分が○○%となり、請求人が本件各年分において申告した本件事業に係る売上金額は、別表3−1から別表3−6までの「�B審判所認定額」欄の「合計」欄の各金額の4割から6割程度の金額であった。
(ハ) 本件各一覧表に関する請求人の認識について
 請求人は、上記1の(3)のハのとおり、本件各確定申告書及び本件各決算書の作成を本件内妻に依頼していたところ、上記1の(3)のニのとおり、本件内妻は、請求人から伝えられた本件事業に係る各月の売上金額に基づいて本件各一覧表を作成しており、請求人においても、上記ロの(ロ)のとおり、本件内妻が本件各一覧表を作成していたことを認識していたことに加えて、上記1の(3)のロ及び上記ロの(イ)のとおり、本件事業に係る売上金は、その全てが本件事業用口座に振り込まれていたところ、本件事業用口座の管理は請求人により行われ、本件内妻が本件事業用口座の通帳等を確認したことはなかった。そうすると、請求人は、本件内妻に本件事業に係る各月の売上金額を伝えることにより、当該売上金額が反映された本件各一覧表が作成されるとともに、本件各一覧表に基づいて本件各確定申告書及び本件各決算書が作成されて原処分庁に提出されることを認識していたものと認められる。
(ニ) 小括
 上記(イ)のとおり、請求人は、本件各年分の真実の売上金額を認識していたにもかかわらず、上記(ロ)のとおり、本件各一覧表の各月の「売上」欄の各金額は、本件各年分に対応する72か月のいずれの月においても、当審判所において請求人集計方法に基づき集計した各月の売上金額と一致せず、そのうちの68か月においては、本件各一覧表の各月の「売上」欄の各金額が当審判所において請求人集計方法に基づき集計した各月の売上金額を下回っており、また、請求人が本件各年分において申告した本件事業に係る売上金額は、別表3−1から別表3−6までの「�B審判所認定額」欄の「合計」欄の各金額の4割から6割程度の金額であった。そして、上記(ハ)のとおり、請求人は、本件内妻に本件事業に係る各月の売上金額を伝えることにより、当該売上金額が反映された本件各一覧表が作成されるとともに、本件各一覧表に基づいて本件各確定申告書及び本件各決算書が作成されて原処分庁に提出されることを認識していたものと認められる。
 そうすると、請求人は、本件内妻に本件各年分の本件事業に係る売上金額が過少となるよう各月の売上金額を伝えたことにより、当該売上金額が反映された本件各一覧表並びに本件各一覧表に基づく本件各確定申告書及び本件各決算書を本件内妻に作成させたものと認められ、このように請求人が本件内妻に本件各一覧表等を作成させたことは、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別の、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の隠蔽又は仮装に当たるというべきである。
 以上からすれば、請求人には、請求人の所得税等の事業所得に係る総収入金額及び消費税等の課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額につき、隠蔽し、又は仮装した事実が認められるから、通則法第68条第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を充足する。
ニ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のイ及びロのとおり、本件事業に係る売上金額を過少に申告したことは、請求人が集計した各月の売上金額の数字が誤っていたのか、あるいは、本件内妻の集計が誤っていたのかは分からないが、これらに基づく単なる過誤やミスであり、隠蔽又は仮装に該当する行為はなく、また、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったものとはいえない旨主張する。
 しかしながら、上記ハの(イ)及び(ロ)で述べたとおり、請求人は、本件各年分の真実の売上金額を認識していたにもかかわらず、請求人が請求人集計方法に基づき集計したとする金額を基礎とした本件各一覧表の各月の「売上」欄の各金額と、当審判所において請求人集計方法に基づき集計した各月の売上金額とは、いずれも一致しない。そうすると、その不一致の多さや本件申告割合からすれば、本件事業に係る売上金額が過少に申告されていたのは、請求人の単なる過誤やミスがあったことによるものである旨の請求人の主張は、それ自体が極めて不自然かつ不合理であるというほかない。
 また、本件内妻についても、請求人が本件各年分の本件事業に係る売上金額が過少となるように各月の売上金額を本件内妻に伝えていたことは、上記ハの(ニ)で述べたとおりである上、請求人が請求人集計方法に基づき集計したとする金額を基礎とした本件各一覧表の各月の「売上」欄の各金額と、当審判所において請求人集計方法に基づき集計した各月の売上金額の不一致の多さや本件申告割合からして、本件内妻の過誤やミスに基因して売上金額が過少となったものと認めることはできない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。
(ロ) 請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のハのとおり、本件質問応答記録書が任意性を欠いて作成されたものであるから、たとえ署名があったとしても、その証拠能力は否定され、本件所得税等各賦課決定処分及び本件消費税等各賦課決定処分は取り消されるべきである旨主張する。
 しかしながら、本件調査における本件質問応答記録書の作成に当たっては、上記1の(4)のニ及び上記ロの(ヘ)のとおり、請求人は、本件質問応答記録書の内容に誤りがないことを確認して、問答末尾及び各頁に署名している上、これらの署名が強制されたものであるなどの証拠も認められない。
 付言するに、請求人の所得税等の事業所得に係る総収入金額及び消費税等の課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額につき、隠蔽し、又は仮装した事実が認められ、通則法第68条第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を充足することは、上記ハの(ニ)で述べたとおりであり、本件質問応答記録書の記載内容やその証拠能力の有無は、重加算税についての上記の判断に影響するものではない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(請求人に、通則法第70条第5項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する事実があるか否か。)について

イ 法令解釈
 通則法第70条は、国税の更正、決定等の期間制限について規定しており、同条第5項において、偽りその他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れた国税についての更正決定等に関しては、その除斥期間を7年と規定し、それ以外の場合よりも長い除斥期間を規定している。これは、偽りその他不正の行為によって国税の全部又は一部を免れた納税者がある場合にこれに対して適正な課税を行うことができるよう、より長期の除斥期間を規定したものであり、同項にいう「偽りその他不正の行為」とは、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為をいうものと解するのが相当である。
ロ 検討及び請求人の主張について
 本件では、上記(1)のハの(ニ)のとおり、請求人の行為について、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実が認められるところ、かかる行為は、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような偽計その他の工作を伴う不正な行為にも該当するということができるから、請求人に通則法第70条第5項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する事実があったというべきである。
 これに対し、請求人は、通則法第70条第5項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」がないにもかかわらず、平成29年分、平成30年分及び令和元年分の所得税等の調査及び本件所得税等各更正処分が行われたことは違法又は不当である旨主張するが、請求人に「偽りその他不正の行為」があったと認められることは、上記のとおりであるから、請求人の主張には理由がない。

(3) 原処分の適法性について

イ 本件所得税等各更正処分の適法性について
 上記(2)のとおり、請求人は、本件各年分の所得税等について、通則法第70条第5項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」によりその全部又は一部の税額を免れていたものと認められるから、請求人の本件各年分の所得税等については、各法定申告期限から7年を経過する日まで、更正処分をすることができる。
 これに基づき、当審判所において、平成29年分、平成30年分及び令和元年分の所得税等の総所得金額及び納付すべき税額を計算すると、いずれも本件所得税等各更正処分の額と同額となる。
 また、本件所得税等各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件所得税等各更正処分はいずれも適法である。
ロ 本件所得税等各賦課決定処分の適法性について
 上記(2)のとおり、請求人は、本件各年分の所得税等について、通則法第70条第5項第1号に規定する「偽りその他不正の行為」によりその全部又は一部の税額を免れていたものと認められ、また、上記(1)のとおり、請求人には、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を充足する行為が認められるから、法定申告期限から7年を経過する日まで、重加算税の賦課決定処分をすることができる。
 これに基づき、当審判所において、本件各年分の所得税等に係る重加算税の額を計算すると、本件所得税等各賦課決定処分の額と同額となる。
 また、本件所得税等各賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件所得税等各賦課決定処分はいずれも適法である。
ハ 本件消費税等各賦課決定処分の適法性について
 請求人が、本件各課税期間の消費税等の期限内申告書を提出しなかったことについて、通則法第66条第1項のただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められず、また、上記(1)のとおり、請求人には、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を充足する行為が認められる。
 これに基づき、当審判所において、本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の額を計算すると、本件消費税等各賦課決定処分の額と同額となる。
 また、本件消費税等各賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件消費税等各賦課決定処分はいずれも適法である。

(4) 結論

よって、審査請求は理由がないから、いずれも棄却することとする。

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