(令和8年2月9日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、税理士業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)に対し、請求人がその業務に係る帳簿書類を提示しなかったことは、法令で規定する帳簿書類の保存がない場合に該当するなどとして、所得税の青色申告の承認の取消処分及び所得税等の更正処分等をしたところ、請求人が、原処分に係る調査は実施されるべきものではなかったとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

関係法令は、別紙3のとおりである。
 なお、別紙3で定義した略語については、以下、本文においても使用する。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

イ 請求人は、税理士業を営む個人事業者である。
ロ 確定申告書等について
(イ) 所得税及び復興特別所得税について
A 請求人は、昭和59年3月15日、「所得税の青色申告承認申請書」を原処分庁に提出し、昭和59年分以後の所得税について青色申告の承認を受けた。
B 請求人は、令和元年分、令和2年分、令和3年分及び令和4年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、各確定申告書にそれぞれ別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、令和元年分は令和2年6月16日に、令和2年分、令和3年分及び令和4年分は令和5年10月31日にそれぞれ申告した。
 なお、請求人は、令和元年分の所得税等の申告に併せて、これに係る災害等の延長申請をしたところ、原処分庁は、災害等の延長申請を承認した。
 また、請求人は、令和5年9月30日に、令和2年分、令和3年分及び令和4年分の所得税等に係る災害等の延長申請をしたところ、原処分庁は、同年11月28日付で、災害等の延長申請を却下した。
(ロ) 消費税及び地方消費税について
 請求人は、平成31年1月1日から令和元年12月31日まで、令和2年1月1日から令和2年12月31日まで、令和3年1月1日から令和3年12月31日まで及び令和4年1月1日から令和4年12月31日までの各課税期間(以下、順次「令和元年課税期間」、「令和2年課税期間」、「令和3年課税期間」及び「令和4年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、各確定申告書にそれぞれ別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、令和元年課税期間は令和5年11月29日に、令和2年課税期間、令和3年課税期間及び令和4年課税期間は令和5年10月31日にそれぞれ申告した。
 なお、請求人は、令和5年9月30日に、本件各課税期間の消費税等に係る災害等の延長申請をしたところ、原処分庁は、同年11月28日付で、災害等の延長申請を却下した。
ハ 原処分に係る調査について
(イ) 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、令和4年9月16日に、請求人に対し、通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項の規定に基づき、令和元年分から令和3年分までの所得税等及び令和元年課税期間から令和3年課税期間までの消費税等の実地の調査を行う旨等の事前通知を行った。
 また、本件調査担当職員は、令和5年11月15日に、請求人に対し、通則法第74条の9第1項の規定に基づき、令和4年分の所得税等及び令和4年課税期間の消費税等の実地の調査を行う旨通知した(以下、請求人に対する一連の調査を「本件調査」という。)。
(ロ) 請求人は、令和4年9月22日に、本件調査担当職員に対し電話により、本件調査について請求人には受忍義務がないことから調査を拒否する旨申述し、令和5年1月4日付及び同月16日付で、「当該調査は、令和4年9月22日連絡のとおり拒否します。」と記載した書面を、それぞれ原処分庁宛に提出した。
ニ 原処分庁は、本件調査の結果に基づき、令和6年7月1日付で、令和元年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分を行うとともに、請求人の本件各年分の所得税等に係る事業所得の金額を所得税法第156条の規定に基づき推計の方法によって算定し、同日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおり、本件各年分の所得税等の各更正処分(以下「本件所得税等各更正処分」という。)並びに過少申告加算税及び無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件所得税等各賦課決定処分」という。)をした。
 また、原処分庁は、本件調査の結果に基づき、令和6年7月1日付で、請求人の本件各課税期間の消費税等について、別表2の「更正処分等」欄のとおり、本件各課税期間の消費税等の各更正処分(以下「本件消費税等各更正処分」という。)及び無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件消費税等各賦課決定処分」という。)をした。
ホ 請求人は、令和6年9月30日に、上記ニの各処分を不服として再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、令和7年1月24日付で別表1及び別表2の「再調査決定」欄のとおり、いずれも棄却の再調査決定をし、その決定書謄本を請求人に対し同月28日に送達した。
ヘ 請求人は、上記ホの再調査決定を経た後の原処分に不服があるとして、令和7年2月27日に審査請求をした。
 なお、請求人は、本件調査についての違法の有無以外は争っていない。

2 争点

 本件調査に原処分を取り消すべき違法があったか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
本件調査には、次のとおり、原処分を取り消すべき違法はない。 本件調査には、次のとおり、原処分を取り消すべき違法がある。
(1) 質問検査権の行使の時期、場所、範囲、程度、方法等については、これを行使する税務職員の合理的な裁量に委ねられていると解されているところ、本件調査において、請求人の申告義務の有無及び請求人が提出した確定申告書の記載内容を確認するために行使された質問検査権が、税務職員に与えられた合理的な裁量を超えて行使されたものとは認められない。 (1) 調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情に鑑み、本件調査を行う客観的な必要性はない。
 また、請求人は、本件調査の対象とされた令和2年分及び令和3年分の所得税等並びに令和元年課税期間から令和3年課税期間までの消費税等に係る申告について、災害等の延長申請を行っており、災害等の延長申請が承認されると、上記申告は期限内申告となるところ、原処分庁は、請求人の上記年分及び課税期間が無申告であるとして本件調査の実施を決定した。これは、申告期限が到来していない年分及び課税期間の調査を行ったことになるから、本件調査は、税務職員の合理的な裁量の範囲内でされたものではない。
(2) 本件調査には、原処分の取消事由となるべき違法があったとは認められない。 (2) 仮に、本件調査に客観的な必要性があるとしても、本件調査の必要性と請求人の私的利益との衡量において、社会通念上相当な限度にとどまるものでなければならないところ、本件調査において、請求人の取引先に対する調査が行われたことにより、顧客への対応を要したり、顧客からの信頼が損なわれたりしたことなどは、請求人の私的利益の侵害に当たるから、本件調査は、請求人の私的利益との衡量において、社会通念上相当な限度にとどまらない調査である。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

イ 通則法第11条の規定によれば、所轄税務署長は、同条所定の災害その他やむを得ない理由により期限までに申告等の行為をすることができないと認めるときは、その理由のやんだ日から2か月以内に限り当該期限を延長することができるとされているにとどまっているのであって、却下の処分がなかったときは期限の延長がされたものとみなす旨の規定が設けられていないから、所得税等の確定申告書等の提出に関する期限については所轄税務署長の延長の決定がなされて初めて延長の効果が生ずると解するのが相当である。
ロ 通則法は、第7章の2《国税の調査》において、国税の調査の際に必要とされる手続を規定しているが、同章の規定に違反したことが課税処分の取消事由となる旨を定めた法令上の規定はなく、また、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来負うべき納税の義務を免れることは、租税公平主義の観点からも問題があると考えられるから、調査手続に瑕疵があるというだけでは課税処分の取消事由となるものではなく、課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続に、刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて権限濫用にわたるなどの重大な違法があり、何らの調査なしに課税処分を行ったに等しいとの評価を受ける場合に限り、その違法が処分の取消事由となるものと解するのが相当である。
 そして、調査手続の瑕疵の有無に関連して、通則法第74条の2第1項は、別紙3の2のとおり規定するところ、同項に基づく質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限のある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解するのが相当である。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

イ 本件調査担当職員は、令和4年10月19日に、請求人の事務所に臨場し、請求人に対して本件調査に応じるよう求めたところ、請求人は、本件調査を拒否する旨申述した。
ロ 本件調査担当職員は、上記イの臨場日以降、請求人に対し、令和4年12月22日付、令和5年1月12日付及び同月23日付の各書面により、帳簿及び請求書等の提示を依頼し、併せて、当該帳簿及び請求書等の提示がない場合、�@青色申告者が行うべき帳簿書類の備付け、記録又は保存が所得税法第148条第1項の規定に従って行われていないものとして、同法第150条第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当する旨、及び、�A帳簿及び請求書等の保存の要件を満たしていないものとして、課税仕入れに係る仕入税額控除の適用がない旨通知した。また、本件調査担当職員は、令和5年12月4日、同月12日、同月21日及び同月22日に、請求人に対し、電話連絡等の方法により、上記通知内容と同趣旨の依頼及び説明を行った。
ハ 請求人は、上記ロの本件調査担当職員からの依頼に応じなかった。
ニ 本件調査担当職員は、令和5年1月25日以降、請求人の各取引先に対して文書による照会等の方法により、取引内容を確認する調査を行った。
ホ 本件調査担当職員は、令和6年6月28日に、Z税務署において、請求人に対し、通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に基づき、本件調査に係る結果説明を行った。

(3) 検討及び請求人の主張について

イ 本件調査の客観的な必要性の有無等について
(イ) 上記3の「請求人」欄(1)のとおり、請求人は、本件調査を行う客観的な必要性はない旨を主張する。
 しかしながら、別紙3の2のとおり、通則法第74条の2第1項に規定する「調査について必要があるとき」とは、権限のある税務職員において、具体的事情に鑑み、客観的な必要性があると判断する場合をいい、適正、公平な課税目的の実現という質問検査制度の目的からみて、過少申告等の疑いが具体的に認められる場合だけに限られず、申告のない場合や、申告の真実性、正確性を調査するために必要がある場合も、「調査について必要があるとき」に含まれるものと解するのが相当である。
 これを本件調査についてみると、本件調査担当職員は、上記1(3)ロ(イ)B及び(ロ)記載の請求人の申告状況等から、申告の真実性、正確性及び申告義務の有無を調査する必要があると判断し、上記1(3)ハ(イ)のとおり、本件調査に係る実地の調査を行う旨の事前通知を行ったことからすれば、本件調査を行う客観的な必要性はあったものと認められる。
(ロ) また、上記3の「請求人」欄(1)のとおり、請求人は、令和2年分及び令和3年分の所得税等並びに令和元年課税期間から令和3年課税期間までの消費税等に係る申告について災害等の延長申請を行っており、災害等の延長申請が承認されると、当該年分及び課税期間に係る調査については申告期限が到来していない年分及び課税期間の調査を行ったことになるから、本件調査は税務職員の合理的な裁量の範囲内でされたものではない旨を主張する。
 しかしながら、災害等による申告、納付等の期限延長については、上記(1)イ及び別紙3の1(2)のとおり、納税者からの災害等の延長申請があり、当該申請に対し、所轄税務署長の延長の決定がなされて初めて効果を生ずるものであるところ、上記1(3)ロ(イ)B及び(ロ)のとおり、請求人の主張する上記各年分及び各課税期間に係る請求人による災害等の延長申請は、いずれも令和5年9月30日に行われた一方、上記1(3)ハ(イ)のとおり、本件調査担当職員による令和元年分から令和3年分までの所得税等及び令和元年課税期間から令和3年課税期間までの消費税等に係る実地の調査を行う旨の事前通知は、令和4年9月16日に行われている。
 そうすると、本件調査担当職員による上記事前通知が行われた時点では、令和2年分及び令和3年分の所得税等並びに令和元年課税期間から令和3年課税期間までの消費税等に係る災害等の延長申請は原処分庁にされておらず、上記事前通知の時点において、本件調査担当職員が、請求人が主張するような申告期限が到来していない年分及び課税期間の調査を行ったことにはならないから、請求人の主張はその前提を欠き、採用できない。
 その点を措くとしても、上記(1)ロのとおり、質問検査の時期等については、権限のある税務職員の合理的な選択に委ねられているのであるから、仮に、原処分庁が申告期限の到来していない年分及び課税期間の調査を行ったとしても、そのことは、本件調査の適法性を左右するものではない。
ロ 社会通念上相当な限度を超えるか否かについて
 上記3の「請求人」欄(2)のとおり、請求人は、仮に、本件調査に客観的な必要性があるとしても、本件調査において、請求人の取引先調査により顧客からの信頼が損なわれたことなどは、請求人の私的利益の侵害に当たるから、本件調査は、請求人の私的利益との衡量において、社会通念上相当な限度にとどまらない調査である旨を主張する。
 しかしながら、上記(1)ロのとおり、取引先等に対する調査は、納税者本人に対する調査と同様に、適正な租税負担を実現するために必要な資料を的確に収集することを目的に行われるものであって、これを行うかどうかの判断及び実施の時期等については、納税者の個別事情からみて、調査権限を有する税務職員の合理的な選択に委ねられている。そして、上記(2)イからハまでのとおり、本件調査において、請求人から帳簿書類等が提示されなかったという事情の下においては、取引先等に対する調査の必要性があり、かつ、調査方法として社会通念上相当であるといえるから、上記(2)ニの各取引先に対する調査に違法性はない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ハ 以上のことから、請求人の主張にはいずれも理由がなく、また、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件調査において原処分の取消事由となる違法はない。

(4) 原処分の適法性

イ 所得税の青色申告の承認の取消処分
 上記(2)イからハまでのとおり、原処分庁は、請求人に対し、帳簿書類等の提示を再三にわたり求めたにもかかわらず、請求人が帳簿書類等を提示しなかったことから、帳簿書類の備付け等がないとして、請求人の令和元年分以後の青色申告の承認を取り消しているところ、上記1(3)ヘのとおり、請求人はこれを争わず、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人が、上記帳簿書類等の提示要求に応じた事実は認められない。
 そして、上記の各事実からすれば、請求人が、所得税法第148条第1項に規定する帳簿書類の備付け等を正しく行っていることを税務署長において確認することができず、このことは、所得税法第150条第1項第1号所定の取消事由に該当するから、所得税の青色申告の承認の取消処分は適法である。
ロ 本件所得税等各更正処分
(イ) 推計の必要性
 原処分庁は、上記1(3)ニのとおり、請求人の本件各年分の事業所得の金額を、所得税法第156条の規定に基づいて推計の方法により算定しているところ、上記1(3)ヘのとおり、請求人はこれを争わず、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人の本件各年分の事業所得の金額を実額で算定することは著しく困難であり、推計の必要性があったものと認められる。
(ロ) 事業所得の収入金額の算定
 原処分庁は、請求人の本件各年分の事業所得の金額を算定するため、上記(2)ニのとおり、各取引先に対する調査によって、請求人の本件各年分の事業所得に係る総収入金額を、別表3−1から別表3−4までの各「原処分額」欄のとおり算定しているところ、当審判所の調査及び審理の結果によれば、令和元年分から令和3年分までの総収入金額にはいずれも集計違算が認められるから、別表3−1から別表3−3までの各「審判所認定額」欄のとおりとすることが相当である。また、令和4年分の総収入金額については、当審判所の調査及び審理によっても別表3−4の「原処分額」欄の金額と同額であると認められる。
(ハ) 事業所得の金額の算定
 原処分庁は、本件各年分において請求人と業種及び業態に類似性があり、事業規模が同程度であると認められる同業者(以下「本件類似同業者」という。なお、本件類似同業者の抽出基準は別表4のとおりである。)の総収入金額に対する事業所得の金額の割合(以下「同業者所得率」という。)を請求人の本件各年分の総収入金額に乗じて算定しているところ、上記(ロ)を前提に当審判所において調査及び審理した結果、原処分庁が行った推計方法には、本件類似同業者の抽出過程における次のA及びBの誤りを除いた範囲において、一応の合理性があると認められる。
A 原処分庁が抽出した本件類似同業者のうち、令和元年分の2件の者については、いずれも別表4順号8の抽出基準を満たさないため、これを除外するのが相当である。
B 原処分庁が抽出した本件類似同業者のうち、令和4年分の1件の者については、所得金額に誤りがあることから、当該誤りを是正するのが相当である。
(ニ) 上記(ハ)以外の所得金額等の算定
 原処分庁は、請求人の本件各年分の不動産所得、給与所得及び雑所得の各金額等について、別表1の「更正処分等」欄のとおりそれぞれ算定しているところ、上記1(3)ヘのとおり、請求人はこれを争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
(ホ) 小括
A 令和元年分、令和3年分及び令和4年分について
 上記(3)のとおり、本件調査に本件所得税等各更正処分を取り消すべき違法はない。また、上記1(3)ヘのとおり、請求人は令和元年分、令和3年分及び令和4年分の所得税等の各更正処分のその他の部分についてこれを争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。そして、上記(ロ)及び(ハ)の各誤りを是正することで、より合理性のある本件類似同業者が抽出されると認められるところ、これにより令和元年分、令和3年分及び令和4年分の同業者所得率等を算定すると、別表5−1、別表5−3及び別表5−4の各「審判所認定額等」欄のとおりとなり、これに基づき、請求人の令和元年分、令和3年分及び令和4年分の事業所得の金額を算定すると、それぞれ別表6の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
 以上に基づき、請求人の令和元年分、令和3年分及び令和4年分の総所得金額及び所得税等の納付すべき税額を算定すると、それぞれ別表7の「審判所認定額」欄のとおりとなり、令和元年分及び令和3年分の納付すべき税額は原処分の額を上回り、令和4年分については、原処分の額と同額であると認められる。
 したがって、令和元年分、令和3年分及び令和4年分の所得税等の各更正処分はいずれも適法である。
B 令和2年分について
 上記(3)のとおり、本件調査に本件所得税等各更正処分を取り消すべき違法はない。また、上記1(3)ヘのとおり、請求人は令和2年分の所得税等の更正処分のその他の部分についてこれを争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。そして、上記(ロ)の誤りを是正し、令和2年分の同業者所得率等を算定すると、別表5−2の「審判所認定額等」欄のとおりとなり、これに基づき、請求人の令和2年分の事業所得の金額を算定すると、別表6の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
 以上に基づき、請求人の令和2年分の総所得金額及び所得税等の納付すべき税額を算定すると、別表7の「審判所認定額」欄のとおりとなり、令和2年分の納付すべき税額は原処分の額を下回る。
 したがって、令和2年分の所得税等の更正処分は、その一部を別紙1の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
ハ 本件消費税等各更正処分
(イ) 上記(2)イからハまでのとおり、原処分庁は、請求人に対し、課税仕入れ等の消費税額の控除に係る帳簿及び請求書等の提示を再三にわたり求めたにもかかわらず、請求人がこれらを提示しなかったことから、本件各課税期間の仕入税額控除の適用はないとして、本件消費税等各更正処分をしているところ、上記1(3)ヘのとおり、請求人はこれを争わず、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人が、上記帳簿書類等の提示要求に応じた事実は認められない。
 そして、上記の各事実からすれば、請求人は、本件各課税期間において、消費税法第30条第7項に規定する課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存していない場合に該当し、請求人に同項ただし書に規定する災害その他やむを得ない事情があったとも認められない。
 したがって、本件各課税期間に請求人が行った課税仕入れについて、仕入税額控除の適用はない。
(ロ) 令和元年課税期間、令和3年課税期間及び令和4年課税期間について
 上記(3)のとおり、本件調査に本件消費税等各更正処分を取り消すべき違法はないものの、当審判所の調査及び審理の結果によれば、上記ロ(ロ)のとおり、令和元年分及び令和3年分の総収入金額にはいずれも集計違算があることから、これに伴い、令和元年課税期間及び令和3年課税期間の各課税売上高の計算には誤りが認められる。
 また、上記1(3)ヘのとおり、請求人は令和元年課税期間、令和3年課税期間及び令和4年課税期間の消費税等の各更正処分のその他の部分についてこれを争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 以上に基づき、請求人の令和元年課税期間、令和3年課税期間及び令和4年課税期間の消費税等の課税標準額及び納付すべき税額を算定すると、それぞれ別表8の「審判所認定額」欄のとおりとなり、令和元年課税期間及び令和3年課税期間の納付すべき税額は原処分の額を上回り、令和4年課税期間については、原処分の額と同額であると認められる。
 したがって、令和元年課税期間、令和3年課税期間及び令和4年課税期間の消費税等の各更正処分はいずれも適法である。
(ハ) 令和2年課税期間について
 上記(3)のとおり、本件調査に本件消費税等各更正処分を取り消すべき違法はないものの、当審判所の調査及び審理の結果によれば、上記ロ(ロ)のとおり、令和2年分の総収入金額には集計違算があることから、これに伴い、令和2年課税期間の課税売上高の計算には誤りが認められる。
 また、上記1(3)ヘのとおり、請求人は令和2年課税期間の消費税等の更正処分のその他の部分についてこれを争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 以上に基づき、請求人の令和2年課税期間の消費税等の課税標準額及び納付すべき税額を算定すると、別表8の「審判所認定額」欄のとおりとなり、令和2年課税期間の納付すべき税額は原処分の額を下回る。
 したがって、令和2年課税期間の消費税等の更正処分は、その一部を別紙2の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
ニ 本件所得税等各賦課決定処分
(イ) 令和元年分、令和3年分及び令和4年分について
 上記ロ(ホ)Aのとおり、令和元年分、令和3年分及び令和4年分の所得税等の各更正処分はいずれも適法であり、令和元年分の所得税等の更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が当該更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第5項第1号に規定する正当な理由があるとは認められず、また、請求人が令和3年分及び令和4年分の所得税等の各確定申告書を法定申告期限までに提出しなかったことについて、通則法第66条(令和5年法律第3号による改正前のもの。以下同じ。)《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そして、当審判所において令和元年分、令和3年分及び令和4年分の過少申告加算税又は無申告加算税の額を算定すると、別表7の「審判所認定額」欄の「過少申告加算税の額」欄又は各「無申告加算税の額」欄のとおりとなり、いずれも各賦課決定処分の額と同額となる。
 したがって、令和元年分、令和3年分及び令和4年分の所得税等の各賦課決定処分はいずれも適法である。
(ロ) 令和2年分について
 上記ロ(ホ)Bのとおり、令和2年分の所得税等の更正処分はその一部を取り消すべきであるから、無申告加算税の計算の基礎となる税額の一部を減額すべきである。
 なお、請求人が令和2年分の所得税等の確定申告書を法定申告期限までに提出しなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そして、当審判所において令和2年分の無申告加算税の額を算定すると、別表7の「審判所認定額」欄の「無申告加算税の額」欄のとおりとなり、賦課決定処分の額を下回る。
 したがって、令和2年分の所得税等の賦課決定処分は、その一部を別紙1の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
ホ 本件消費税等各賦課決定処分
(イ) 令和元年課税期間、令和3年課税期間及び令和4年課税期間について
 上記ハ(ロ)のとおり、令和元年課税期間、令和3年課税期間及び令和4年課税期間の消費税等の各更正処分は適法であり、また、請求人が令和元年課税期間、令和3年課税期間及び令和4年課税期間の消費税等の各確定申告書を法定申告期限内に提出しなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そして、当審判所において令和元年課税期間、令和3年課税期間及び令和4年課税期間の無申告加算税の額を算定すると、別表8の「審判所認定額」欄の各「無申告加算税の額」欄のとおりとなり、いずれも各賦課決定処分の額と同額となる。
 したがって、令和元年課税期間、令和3年課税期間及び令和4年課税期間の消費税等の各賦課決定処分はいずれも適法である。
(ロ) 令和2年課税期間について
 上記ハ(ハ)のとおり、令和2年課税期間の消費税等の更正処分はその一部を取り消すべきであるから、無申告加算税の計算の基礎となる税額の一部を減額すべきである。
 なお、請求人が令和2年課税期間の消費税等の確定申告書を法定申告期限までに提出しなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そして、当審判所において令和2年課税期間の無申告加算税の額を算定すると、別表8の「審判所認定額」欄の「無申告加算税の額」欄のとおりとなり、賦課決定処分の額を下回る。
 したがって、令和2年課税期間の消費税等の賦課決定処分は、その一部を別紙2の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(5) 結論

よって、審査請求は理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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