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(平5.6.17、裁決事例集No.45 189頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 法人税

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、一般土木建築工事業を営む同族会社であるが、平成2年6月1日から平成3年5月31日までの事業年度の法人税について、青色の確定申告書に所得金額、課税土地譲渡利益金額及び納付すべき税額を次表の「確定申告」欄の金額のとおり記載して、法定申告期限までにP税務署長に提出した。
 その後、請求人は、□□国税局の職員による調査(以下「本件調査」という。)を受け、指摘された事項のうち非違を認めるものについて、次表の「修正申告」欄の金額のとおり修正する納税申告書を平成4年1月24日にP税務署長に提出した。これに対して、P税務署長は、平成4年3月13日付で修正申告により納付すべき税額を基礎として、次表の「加算税賦課決定」欄の金額のとおり、過少申告加算税及び重加算税の賦課決定をした。
 更に、P税務署長は、本件調査に基づき、平成4年3月13日付で次表の「更正等」欄の金額のとおり、更正及び同処分に係る重加算税の賦課決定をした。請求人は、この更正及び同処分に係る重加算税の賦課決定に不服があるとして、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号の規定により、異議申立てを経ないで、平成4年5月14日に審査請求をした。

(単位:円)
区分 確定申告 修正申告 加算税賦課決定 更正等
所得金額 388,991,399 414,152,911 479,087,525
課税土地譲渡利益金額 15,172,000 15,419,000 40,641,000
納付すべき税額 137,387,100 146,871,900 176,266,900
過少申告加算税の額 736,000
重加算税の額 738,500 10,286,500

(2) 法人臨時特別税

 請求人は、平成2年6月1日から平成3年5月31日までの事業年度の法人臨時特別税について、青色の法人臨時特別税申告書に課税標準法人税額及び納付すべき税額を次表の「確定申告」欄の金額のとおり記載して、法定申告期限までにP税務署長に提出した。
 その後、請求人は、本件調査を受け、指摘された事項のうち非違を認めるものについて、次表の「修正申告」欄の金額のとおり修正する納税申告書を平成4年1月24日にP税務署長に提出した。これに対して、P税務署長は、平成4年3月13日付で修正申告により納付すべき税額を基礎として、次表の「加算税賦課決定」欄の金額のとおり、過少申告加算税及び重加算税の賦課決定をした。
 更に、P税務署長は、本件調査に基づき、平成4年3月13日付で次表の「更正等」欄の金額のとおり、更正及び同処分に係る重加算税の賦課決定をした。請求人は、この更正及び同処分に係る重加算税の賦課決定に不服があるとして、国税通則法第75条第4項第1号の規定により、異議申立てを経ないで、平成4年5月14日に審査請求をした。

(単位:円)
区分 確定申告 修正申告 加算税賦課決定 更正等
課税標準法人税額 142,111,000 151,547,000 175,897,000
納付すべき税額 3,552,700 3,788,600 4,397,400
過少申告加算税の額 18,000
重加算税の額 17,500 210,000

(3) 消費税

 請求人は平成2年6月1日から平成3年5月31日までの課税期間の消費税について、確定申告書に課税標準額及び納付すべき税額を次表の「確定申告」欄の金額のとおり記載して、法定申告期限までにP税務署長に提出した。
 その後、請求人は平成3年9月2日に更正の請求をしたところ、P税務署長は、平成3年12月4日付で次表の「更正(減額)」欄の金額のとおり更正をした。
 次いで、P税務署長は、本件調査に基づき、平成4年3月13日付で「更正等」欄の金額のとおり、更正及び同処分に係る過少申告加算税又は重加算税の賦課決定をした。請求人は、この更正及び同処分に係る過少申告加算税又は重加算税の賦課決定に不服があるとして、国税通則法第75条第4項第3号の規定により、異議申立てを経ないで、平成4年5月14日に審査請求をした。

(単位:円)
区分 確定申告 更正(減額) 更正等
課税標準額 8,357,611,000 7,811,740,000 7,815,148,000
納付すべき税額 22,627,800 16,771,400 18,788,700
過少申告加算税の額 10,000
重加算税の額 668,500

(4) 当審判所は、これらの審査請求について国税通則法第104条《併合審理等》第1項の規定により併合審理する。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、法人税及び法人臨時特別税についてはその全部、消費税については、その一部の取消しを求める。
イ 法人税の更正について
(イ) 土地の譲渡価額について
 土地の譲渡価額については、次のAのとおりであるが、原処分庁は次のBのとおり更正を行った。これは、次のCのとおり理由のないものである。
A 請求人が、当期の収益に計上した別紙1に記載の各土地(以下「本件土地」という。)の譲渡価額が404,766,000円(3.3平方メートル当たり(以下「坪当たり」という。)600,000円)であることは、次のことから明らかである。
(A) 請求人は、平成2年6月19日にA株式会社(以下「A社」という。)との間で、本件土地を404,766,000円(坪当たり600,000円)で売買すること及び同地上に建築する中高層共同住宅(以下「本件建物」という。)の工事を請け負うことを目的として協定を締結し、別紙2の「協定書」(以下「本件協定書」という。)を取り交わしたこと。
(B) 請求人は、同日、本件協定書に基づき、A社と本件土地の売買価額を404,766,000円(坪当たり600,000円)とする不動産売買契約を締結し、別紙3の「不動産売買契約書」(以下「本件売買契約書」という。)を取り交わしたこと。
B これに対して、原処分庁は、次の理由により、本件土地の譲渡価額は472,226,000円(坪当たり700,000円)であると認定して更正を行った。
(A) 請求人とA社が、国土利用計画法(以下「国土法」という。)に係る土地売買等の届出について、別紙4の「国土法に基づく土地売買等の届出の経緯」のとおり、当初の届出に対する変更通知を受けたことから、これを取り下げ、改めて本件土地の不動産鑑定評価額517,390,000円(坪当たり766,947円)で届出書を再提出し、不勧告通知を受けていること。
(B) A社が取引銀行である○○銀行××支店(以下「本件取引銀行」という。)から融資を受ける際に、本件土地の購入予定価額を472,230,000円(坪当たり700,000円)としたこと。また、本件取引銀行には、「B社(請求人)の都合で土地の契約金額を67,460,000円減少させ貸出しを実行した。」旨の記録があること。
(C) 平成2年6月29日に本件建物の工事価額(消費税を除く。以下同じ。)を2,597,460,000円とする別紙5の「工事請負契約書」(以下「本件請負契約書」という。)が作成されているが、同時期に、請求人の従業員C男(以下「C男」という。)が株式会社D(以下「D社」という。)の担当者に対して、請求人がA社から受注した工事価額2,597,460,000円と請求人がD社に発注した工事価額2,385,000,000円との差額(以下「本件工事差額」という。)212,460,000円のうち67,460,000円は、土地代の一部である旨を説明していること。
(D) 本件建物の工事代金の実際の支払が、本件協定書第3条に定めた支払方法と異なっているが、これは、請求人が、本件土地の譲渡代金の一部である67,460,000円(坪当たり100,000円)を本件建物の工事代金に付け替えて取引を仮装したことに基因するものであること。
C しかしながら、原処分庁の設定は、次に述べるとおりいずれも根拠のないものである。
(A) 上記Bの(A)について
 本件土地の譲渡価額を404,766,000円(坪当たり600,000円)とすることについては、別紙3の本件売買契約書により明らかである。国土法に係る土地売買等の届出において当初の届出を取り下げ、不動産鑑定評価額517,390,000円(坪当たり766,947円)を予定対価の額として、再度、届出をしたが、これは、A社が株式会社E(以下「E社」という。)へ転売する必要から行われたものであり、本件土地の譲渡価額とは直接の関係はない。
(B) 上記Bの(B)について
 本件取引銀行への融資申込みは、A社が同社の都合により行ったものであり、請求人は、A社の本件土地の購入資金の調達方法については関知しないところである。
 したがって、本件取引銀行の記録についても、請求人には、全く関係がない。
(C) 上記Bの(C)について
 C男は、本件土地の売買契約の交渉には一切かかわっていない。
 したがって、同人が、D社に対し、本件工事差額の一部が、土地代の一部である旨の説明をしたとしても、それは、説明の便宜のためであり、実態とは関係がない。
(D) 上記Bの(D)について
 本件建物の工事代金の決済が、本件協定書第3条に定めた支払方法と異なっていることは認めるが、これは、次の経緯により、協定締結後、工事代金の支払方法の変更の協議が整い、本件建物の工事代金のうち、67,460,000円を現金支払とすることとして本件請負契約書が作成されたことによるものである。
 したがって、67,460,000円は本件土地の譲渡代金の一部ではない。
a 請求人は、平成2年6月12日付で工事価額を2,625,000,000円とする見積書を提出したところ、A社から一般管理費を95,000,000円減額して、工事価額を2,530,000,000円とすることを求められた。
 しかし、この金額では、大幅な減益となるため、請求人は一般管理費を減額するならば、事前の投下費用として本社経費約1億円を増額するよう要求した。
 そこで、双方の代表者が再三折衝した結果、上記見積書の一般管理費のうち、95,000,000円を減額する代わりに、本件土地の坪当たり100,000円相当額である67,460,000円を本社経費として増額することで決着し、最終的に、一般管理費を27,540,000円減額し、工事価額を2,597,460,000円とする協定を締結した。
b その後、請求人は、資金繰りの関係で工事請負契約時に現金が必要になったことから、A社と再度交渉し、本件建物の工事価額2,597,460,000円のうち、67,460,000円は現金で、残余の工事代金については、本件協定書の支払割合に基づいたところで支払方法を変更し、それに基づき本件請負契約を締結したものである。
 なお、この支払方法の変更は、本件請負契約書で明らかであるから、本件協定書は改定しなかったものである。
(ロ) 本件土地の譲渡収益の計上時期について
 本件協定書第2条により、本件土地の売買契約と本件建物の工事請負契約は、別個の契約ではあるが、不可分一体のものとして合意されているものであり、本来、本件土地の譲渡収益は、本件建物の完成引渡時(翌期以降)に計上すべきものであった。
 しかしながら、請求人は、当期において本件土地の譲渡収益を任意に計上したものであるから、原処分庁が更に67,460,000円を益金として加算したことは不当である。
(ハ) 更正の理由付記について
 法人税の更正通知書に記載の理由1の(3)において、259,746,000円とすべきものを2,597,460,000円と記載しているが、これは全く事実と相違する金額であり、重大な誤りである。
 したがって、重大なかしのある更正は、取り消されるべきである。
ロ 法人税に係る重加算税の賦課決定について
 上記イのとおり、法人税の更正は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、同処分に係る重加算税の賦課決定もその全部を取り消すべきである。
ハ 法人臨時特別税の更正について
 上記イのとおり、法人税の更正は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、それに伴い法人臨時特別税の更正もその全部を取り消すべきである。
ニ 法人臨時特別税に係る重加算税の賦課決定について
 上記ハのとおり法人臨時特別税の更正は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、同処分に係る重加算税の賦課決定もその全部を取り消すべきである。
ホ 消費税の更正について
 消費税の更正のうち、平成4年1月24日に提出した法人税の修正申告に伴って増加する261,600円を超える部分の更正は違法であるから、その一部を取り消すべきである。
ヘ 消費税に係る重加算税の賦課決定について
 上記ホの法人税の修正申告に伴って増加する過少申告加算税の額10,000円及び重加算税の額52,500円を超える部分の重加算税の賦課決定は違法であるから、その一部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は次のとおり適法であり、請求人の主張にはいずれも理由がない。
イ 法人税の更正について
 法人税の更正は、次のとおり適法である。
(イ) 本件土地の譲渡価額について
A 請求人は、本件土地の売買契約を締結する際、R市長に対し、譲受人であるA社と連名で別紙4に記載のとおり、平成元年10月13日に本件土地の予定対価の額を641,162,375円(坪当たり950,419円)として国土法に基づく土地売買等届出書を提出している。
 これに対して、同年11月10日付でR市長から予定対価の額を404,099,000円(坪当たり599,011円)に変更するよう通知を受け、同年11月17日に当該届出書を取り下げている。
 その後、平成2年4月16日付で本件土地の予定対価の額を不動産鑑定評価額と同額の517,390,000円(坪当たり766,947円)とする届出書を再度提出し、平成2年5月15日付で不勧告の通知を受けていることが認められる。
 このことについて、請求人が主張するように、本件土地の譲渡単価が坪当たり600,000円であるとするならば、平成元年11月10日付の予定対価の変更通知に同意をすれば足りるものであって、当初の届出書を取り下げ、不動産鑑定評価額である坪当たり766,947円を予定対価の額として、再度、届出をする必要はなかったものであり、請求人とA社の間には、坪当たり700,000円とする合意があったことから、上記届出の経緯になったものである。
B A社が、平成2年4月23日に本件取引銀行に本件土地の購入資金の融資の申込みをするに当たり、本件土地の購入予定価額を472,230,000円(坪当たり700,000円)としていること及び当該取引銀行には、「売主であるB社(請求人)の諸都合により当初の打合せの土地、建物の金額を変更し、土地の契約金額を67,460,000円減少させ貸出しを実行した。」との記録があることからも、坪当たり700,000円とする合意があったことは明らかである。
C C男は、D社の担当者に対して、本件工事差額のうち67,460,000円は土地代であると説明している。
 これは、請求人とA社との工事請負価額の決定の場に、C男が請求人の代表者と共に出席しており、その席上で本件工事差額には、土地代差額が含まれている旨の会話を聞いたことから、このように説明したものである。
 したがって、C男が、D社の担当者に対して、単なる説明の便宜に過ぎないとする請求人の主張は事実に反する。
D 本件協定書第3条によれば、本件土地の譲渡代金は、工事請負契約時に現金で404,766,000円が支払われるものとされ、また、本件建物の工事代金も、工事請負契約時に工事価額2,597,460,000円の20パーセントである519,492,000円(現金及び約束手形で、それぞれ工事価額の10パーセントである259,746,000円)が支払われることと定められている。
 しかし、工事請負契約時の支払として、平成2年7月11日に実際に支払われた金額は、本件土地については現金で404,766,000円であるが、本件建物については本件請負契約書に従い573,460,000円(現金320,460,000円、約束手形253,000,000円)が支払われており、本件協定書で定められた支払方法と異なっている。
 ところで、請求人の主張する本件建物の工事価額2,597,460,000円は、本件土地の譲渡価額より67,460,000円(坪当たり100,000円)を付け替えたものであるから、本件建物の工事価額は2,530,000,000円が正当であり、この金額を基に本件協定書の支払割合に従って計算すると、本件建物の工事請負契約時の支払は、工事価額の10パーセントである253,000,000円が現金で、同じく工事価額の10パーセントである253,000,000円が約束手形で支払われたこととなり、それ以後の支払についても本件協定書の支払割合(約束手形でそれぞれ7.7パーセント、7.5パーセント、65パーセント)と一致することとなる。
 以上のとおり、本件建物の工事代金の実際の支払が、本件協定書第3条に定めたものと異なることとなったのは、請求人が、67,460,000円を本件建物の工事価額に付け替えて取引を仮装したことに基因するものであり、本件土地の譲渡価額が、472,226,000円(坪当たり700,000円)であることは明らかである。
(ロ) 本件土地の譲渡収益の計上時期について
 本件土地は、次に述べるとおり、平成2年7月11日に引き渡されたものであるから、請求人が、当該事業年度において本件土地の譲渡収益を計上したことは適正な処理であり、原処分庁が、これに譲渡収益の差額を加算したことは適法である。
A 本件売買契約書第3条では、売買代金を平成2年7月11日に一括現金で支払い、同第6条では売買代金の全額の授受が完了すると同時に、本件土地の所有権が移転するものとされており、これに基づき所有権移転登記が行われていること。
 更に、同第8条で費用収益の帰属についても同第3条の引渡しの日を境に、それぞれに帰属すると定められていること。
B 本件協定書第2条において、「本件土地、建物とは別個の契約とするも、両契約は不可分一体のものとする。」としているが、それぞれの所有権移転の時期は、同第7条により、本件土地については、代金の全額支払と同時に、本件建物については、引渡しの時に移転すると定めていること。
C 本件土地については、平成2年7月11日に代金が支払われ、所有権が移転すると同時に、融資の担保として、債務者をA社、根抵当権者を本件取引銀行とする根抵当権が設定されていること。
D 更に、本件土地は、平成2年8月30日にA社からE社に譲渡され、同日付で所有権移転登記がされていること。
(ハ) 更正の理由付記について
 請求人は、更正通知書の更正の理由に事実とかけ離れた金額を記載した重大なかしがあるから、更正は、取り消されるべきである旨主張する。
 更正の理由1の(3)の4行目において「同じく10パーセント相当額である2,597,460,000円を約束手形で支払うと定めており」とあるのは、「同じく10パーセント相当額である259,746,000円を約束手形で支払うと定めており」と記載すべきであったものである。
 この記載誤りは、一読して誤りであることが容易に判別できるものであり、しかも、更正の金額に影響をもたらすものではないから、更正の理由付記を求める法人税法第130条《青色申告書に係る更正》第2項の趣旨に反するものではない。
 したがって、本件更正通知書に係る更正の理由付記の一部に記載の誤りがあることをもって、更正が直ちに違法となるものではない。
ロ 法人税に係る重加算税の賦課決定について
 上記イで述べたとおり、請求人の行為は、法人税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装した行為に該当するので、国税通則法第68条《重加算税》第1項の規定に基づいて行った重加算税の賦課決定は適法である。
ハ 法人臨時特別税の更正について
 上記イで述べたとおり、法人税の更正は適法であるから、それに伴って行った法人臨時特別税の更正も適法である。
ニ 法人臨時特別税に係る重加算税の賦課決定について
 上記イで述べたとおり、請求人の行為は、法人臨時特別税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装した行為に該当するので、国税通則法第68条第1項の規定に基づいて行った重加算税の賦課決定は適法である。
ホ 消費税の更正について
 上記イで述べたとおり、法人税の更正は適法であり、また、それに伴って行った消費税の更正も適法である。
ヘ 消費税の重加算税の賦課決定について
 上記イで述べたとおり、請求人の行為は、消費税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装した行為に該当するので、国税通則法第68条第1項の規定に基づいて行った重加算税の賦課決定は適法である。

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3 判断

(1) 法人税の更正について

 本件土地の譲渡価額について争いがあるので以下審理する。
イ 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく当審判所の調査したところによってもその事実が認められる。
(イ) 請求人は、平成2年6月19日にA社との間で本件土地の譲渡価額を404,766,000円、本件建物の工事価額を2,597,460,000円とする別紙2の本件協定書を作成したこと。
(ロ) 請求人は、同日、本件協定書に基づき、本件土地についてA社との間で別紙3の本件売買契約書を作成したこと。
(ハ) 更に、同年6月29日に本件建物について、工事請負価額を上記(イ)の本件協定書と同額とする別紙5の本件請負契約書を作成したが、その代金の支払方法は、本件協定書と異なること。
(ニ) 本件土地に係る国土法に基づく届出の経緯については、別紙4に記載のとおりであること。
ロ 当審判所が関係人及び原処分関係資料を調査したところ、次のとおりである。
(イ) A社の代表取締役F男は、当審判所に対して、次のとおり答述している。
A 本件土地の価額については、国土法の土地売買等届出に対する予定対価の変更通知の額404,099,000円(坪当たり599,011円)及び取引実例並びに近隣の地価公示価格を参考にして、404,766,000円(坪当たり600,000円)とすることに代表者間で合意に達し、本件協定書及び本件売買契約書を取り交わしたこと。
B 国土法に基づく土地売買等の届出については、当初の届出が、変更通知によって404,099,000円(坪当たり599,011円)と低く抑えられたことから、この額ではE社へ転売できないため、同届出を取り下げたものであり、その後、当社が改めて不動産鑑定を依頼し、その評価額517,390,000円(坪当たり766,947円)をもって再届出をしたものであること。
 また、当社からE社へ転売する際の本件土地に係る国土法の届出は、予定対価の額を500,000,000円(坪当たり741,168円)とし、不勧告通知を受けて、同額でE社へ譲渡したこと。
C 本件取引銀行に対し、本件土地の購入予定価額を472,230,000円(坪当たり700,000円)として融資申込みを行ったが、これは、本件土地の価額のほかに仲介料、抵当権設定費用、登記費用及び不動産取得税等の土地取得付帯費用並びに近隣対策費を見込んだものであること。
(ロ) 当審判所が、A社を調査したところ次の事実が認められる。
A 本件建物について、請求人から平成2年2月5日付で工事価額を2,880,000,000円とする当初の見積書が提出されたが、構造計算のやり直しを求めた結果、同年6月12日付で工事価額を2,625,000,000円とする見積書が再提出されたこと。
 これに対して、A社は、工事価額の大幅な減額要求を行い、代表者同士の折衝の結果、上記見積書の一般管理費を27,540,000円減額し、本件建物の工事価額を2,597,460,000円とする協定を締結したこと。
 その後、請求人から工事契約時の現金支払分の増額を要求され、A社は、これに応じて支払方法を変更し、工事請負契約を締結したこと。
B A社が、本件土地及び本件建物をE社へ転売するに際し、その収支を見積もった平成2年6月19日付の事業収支計算書には、土地の原価は404,766,000円(坪当たり600,000円)、建物の原価は2,597,460,000円(いずれも付帯費用を除く。)で計上されていること。
 また、平成2年1月1日から平成2年12月31日までの事業年度の期末棚卸資産に本件土地は404,766,000円で計上されていること。
(ハ) 当審判所が、本件取引銀行を調査したところ、次の事実が認められる。
A A社は、平成2年4月23日に本件土地の購入予定価額を472,230,000円(坪当たり700,000円)として融資の申込みをしていること。
B 平成2年8月20日付で本件取引銀行の支店長から本店審査部長あての「A株式会社S町プロジェクトに関する補足説明」と題する書類に「売主であるB社(請求人)の諸都合により当初の打合せの土地、建物の金額を変更し7月11日契約し、744百万円支払いました。」という記載があること。
(ニ) 原処分関係資料によるとD社R支店の営業部次長■■がC男から電話で連絡を受け、前記ロの(ロ)のAの平成2年6月12日付で再提出された見積書の写しに、本体2,385,000,000円、土地67,460,000円、別途20,000,000円、本社経費125,000,000円、合計(契約金額)2,597,460,000円とメモをしていること。
ハ 以上の各事実及び関係人の答述を総合して判断すると、次のとおりである。
(イ) 原処分庁は、本件土地の売買に係る国土法の届出及びA社の本件取引銀行に対する融資申込みの経緯より、本件土地の譲渡価額は、472,226,000円(坪当たり700,000円)である旨主張する。
 しかし、請求人及び原処分庁の双方に争いのない国土法に基づく土地売買等の届出の経緯のうち、不動産鑑定評価額517,390,000円(坪当たり766,947円)による再届出については、前記ロの(イ)のBのA社の代表者の答述によれば、本件土地及び本件建物は、E社へ転売を予定していたものであり、専らA社の事情により行われたものとみるのが相当である。
 また、前記ロの(ハ)のAのとおり、A社が融資申込みをした事実は認められるものの、前記ロの(イ)のCのA社の代表者の答述のとおり、これはA社の資金調達の都合にすぎず、金融機関に融資申込みをした金額が、そのまま当事者の取引の実態を反映したものであると認定することはできない。
 更に、前記ロの(ハ)のBの本件取引銀行の記録では、原処分庁の主張する「土地の契約金額を67,460,000円減少させた。」という事実は認められない。
(ロ) 原処分庁は、C男が、D社の担当者に対して本件工事差額のうち67,460,000円は土地代であると説明したと主張するが、前記ロの(ニ)のとおり、この説明の事実は認められるものの、当審判所の調査によると、C男は、本件土地の譲渡価額の決定に関与していたとは認められないから、この事実をもって67,460,000円が土地代であると認定することはできない。
(ハ) 原処分庁は、本件建物の工事代金の支払方法が本件協定書と本件請負契約書で異なっており、本件請負契約書の工事代金2,597,460,000円のうち、67,460,000円(坪当たり100,000円)は、本件土地の譲渡価額から付け替えることにより、取引を仮装して支払われたものであるから、本件土地の譲渡価額は472,226,000円(坪当たり700,000円)である旨主張する。
 しかしながら、本件建物の工事価額については、前記ロの(ロ)のAのとおり、再提出された見積額の大幅な減額をA社が求めたのに対し、請求人は本社経費の増額を要求し、折衝の結果、本件土地の坪当たり100,000円に相当する金額である67,460,000円を本社経費と認め、再提出された見積書の一般管理費を27,540,000円減額して、最終的に2,497,460,000円と決定したものであり、その後、請求人が、この67,460,000円を工事請負契約時における現金支払額の計算において、上乗せして支払を受けることになったとみるのが相当である。
 更に、本件土地の譲渡価額について、前記ロの(ロ)のBのとおり、A社が作成した事業収支計算書及びA社の期末棚卸資産に本件土地を404,766,000円(坪当たり600,000円)で計上している事実は、前記ロの(イ)のAのA社の代表者の答述を裏付けている。
 したがって、本件土地の譲渡価額は、本件売買契約書のとおり404,766,000円(坪当たり600,000円)であると認めるのが相当である。
ニ 以上のとおり、本件土地の譲渡価額については、請求人の主張のとおりと認められるので、更正を取り消すのが相当である。
 なお、「本件土地の譲渡収益の計上時期」及び「更正の理由付記」については、特に判断するまでもない。

(2) 法人税に係る重加算税の賦課決定について

 重加算税の賦課決定については、その基礎となった更正の取消しに伴い、取り消すのが相当である。

(3) 法人臨時特別税の更正について

 法人税の更正の取消しに伴い、法人臨時特別税の更正も取り消すのが相当である。

(4) 法人臨時特別税に係る重加算税の賦課決定について

 重加算税の賦課決定については、その基礎となった更正の取消しに伴い、取り消すのが相当である。

(5) 消費税の更正について

 法人税の更正の取消しに伴い、消費税の更正の一部を取り消すのが相当である。

(6) 消費税に係る重加算税の賦課決定について

 重加算税の賦課決定については、その計算の基礎となる更正の取消しに伴い、その一部を取り消すのが相当である。

(7) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても相当と認められる。

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