ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.66 >> (平15.9.2裁決、裁決事例集No.66 265頁)>> 別表2
別表2
鑑定評価額の計算過程
1 収益還元法による試算価格(収益価格)
収益還元法の適用に当たっては、将来における借地権の消滅の可能性を有機的に判断 することが難しいことから、次の永久還元手法を採用した。
(1) 年間純地代の算定
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年間純地代(![]() ![]() |
2,400,000 円 | 375,532 円 | 2,024,468 円 |
(2) 上昇率の算定
P 市内の地料水準を考慮して3年毎に4%アップと査定
(3) 還元利回りの算定
標準的な利回りとしての5%を採用
(4) 土地価格の査定
取引事例比較法により求めた比準価格197,000 円/と、収益還元法により求
めた収益価格129,000 円/
とにより、比準価格はかなり規範性が高いのに対して、収益価格は、なお、想定的要素が多く介在していることなど、近隣地域の収益性を適切に反映せしめることができたのか、かなり疑問の残ることは否めないため、比準価格を重視し、収益価格も十分参酌して、近隣地域の標準価格を187,000 円/
と決定した。
(5) 対象不動産の更地価格の決定(個別的要因は100/100)
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土地価格(![]() ![]() |
187,000 円/![]() |
1,493.96 ![]() |
279,400,000 円 |
(相続税評価額は268,912,800円)
(6) 建物の建替承諾料等の経済的利益率
一般的に借地非訟事件等においては、更地価格の8〜10%を中心に決定されることが多く、本件では地域性を考慮して8%を採用した。
(7) 建物の残存耐用年数の査定
建物の経年経過(13 年)及び外観から管理状況等を勘案して残存耐用年数を17年と査定した。
以上により、次の算式のとおり地料54,258,000円、
建物の建替承諾料等の経済的利益9,752,000円の合計額が
収益還元法による試算価格(収益価格)64,010,000円と決定される。
- (算式)
地料
2,024,468 円{(1+0.05)²+(1+0.05)+1}/(1+0.05)³−1−0.04=54,258,000 円建物の建替承諾料等の経済的利益
279,400,000 円×8%×1/(1+0.05)17=9,752,000 円収益価格
54,258,000 円+9,752,000 円=64,010,000 円
2 割合方式に基づく試算価格
底地割合は完全所有権価格(更地価格等)の何割という水準で定まるものであり、商業地域が住宅地域等より低い傾向があるものの、本地域及び類似地域における利用目的・借地条件等が大きく異ならない限り、底地割合はそれほど大差はないものと判断される。
したがって、同一需給圏の類似地域は相当広範囲となる傾向が認められ、時点がやや古い取引事例であっても比較的規範性を維持し得る点に留意されたい。
(1) 取引事例
イ 正常価格(第三者間の取引)
別表2付表−1のとおり
ロ 限定価格(借地人による底地の買取)
別表2付表−2のとおり
(2) 対象底地割合の決定
第三者間取引にかかる底地割合にはかなりのばらつきが見られた。これは、借地権の個別性によるものであるが、当事者の個別事情及び特に地料や建物の内容等が及ぼす影響も大きい。
そこで、本件では、取引事例A、Bの地域性・個別性等を十分比較考慮しつつ、限定価格としての底地割合(DないしG)や対象不動産に付着する敷地利用権も賃借権であることを重ねて勘案した結果、底地割合を30%と判断した。
(3) 割合方式に基づく試算価格
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底地価格(![]() ![]() |
279,400,000 円 | 30% | 83,820,000 円 |
3 試算価格の調整及び鑑定評価額の決定
収益還元方式に基づき算定された収益価格64,010,000 円と、割合方式に基づく試算価格83,820,000 円を基に、本件では、不動産鑑定評価基準にのっとり、収益還元法に基づく収益価格をやや重視し、前者と後者を3対1の比率で加重平均し、端数処理した金額69,000,000 円を正常価格としての底地価格として決定した。