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(平20.4.2、裁決事例集No.75 659頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、国際線チャーター便に係る取引及び国際線定期便航空券に係る取引を、免税取引に当たるとして消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該取引はいずれも国内における役務の提供取引であると認められるので課税取引に当たるとして、消費税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が原処分庁の認定に誤りがあるとして同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人の平成16年11月9日から平成17年10月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税等についての審査請求(平成19年4月26日請求)に至る経緯及び内容は、次表のとおりである。

(単位:円)
申告等
区分
確定申告 更正及び 賦課決定 異議 申立て 異議決定
年月日 18.01.04 18.07.07 18.09.04 19.04.05
課税標準額 ○○○○ ○○○○ 確定申告のとおり 棄却
控除対象仕入税額 ○○○○ ○○○○
納付すべき消費税額 △○○○○ ○○○○
納付すべき地方消費税額 △○○○○ ○○○○
過少申告加算税額 - ○○○○

(注) 「納付すべき消費税額」及び「納付すべき地方消費税額」の各欄の△印は還付金の額に相当する税額を示す。
ロ なお、請求人は、平成18年7月○日に所在地をP市p町○-○から肩書地へ移動したので、これに伴い、原処分庁は○○税務署長から○○税務署長となった。

(3) 関係法令

 関係法令の要旨は、別紙のとおりである。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、旅行業を営むことを目的として、平成16年11月9日に資本金の額を10,000,000円として設立された法人である。
ロ 請求人は、旅行業法第2条第1項に規定する「旅行業」及び同条第2項に規定する「旅行業者代理業」を営む者には該当せず、同法第3条に規定する「登録」を受けていない。
ハ 請求人は、本件課税期間に係る消費税等の確定申告書の付表2(課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表)に、別表1のとおり記載している。
ニ 請求人の総勘定元帳には、摘要欄に消費税等の課税、非課税及び免税等の課税区分に関する表示が「課税区」欄として設けられており、売上高のページでは、輸出免税等は「輸出売」、課税売上げは「売上5%」として区分して記載され、また、仕入高その他経費に係るページでは、課税仕入れは「仕入5%」、非課税取引は「非仕入」として区分して記載されている。

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2 主張

(1) 原処分庁

 請求人の行う取引は国内における役務の提供と認められ、課税取引に該当する。
イ 国際線チャーター便に係る取引について
(イ) 請求人が行う国際線チャーター便に係る取引(以下「本件チャーター便取引」という。)は、チャーター便販売契約書記載の条項等によれば、国内において委託販売に係る受託者として役務の提供を行う業務である。
(ロ) 本件チャーター便取引に係る販売手数料の額は、当該業務に係る売上高と仕入高との差額と認められ、当該販売手数料の額に105分の100を乗じた金額が課税資産の譲渡等の対価の額となる。
ロ 国際線定期便航空券に係る取引について
(イ) 国際線定期便航空券に係る取引(以下「本件国際航空券取引」という。)は、国内において、請求人に国際航空券の手配依頼を行う各旅行業者(以下「本件各旅行業者」という。)に対し、取次ぎという役務の提供を行っている。
(ロ) 本件国際航空券取引に係る役務の提供の額は、当該取引に係る売上価格と仕入価格の差額に相当する額と認められ、当該差額相当額に105分の100を乗じた金額が課税資産の譲渡等の対価の額となる。
(ハ) 請求人は、原処分庁に対して、請求人の仕入先業者が請求人に販売手数料を支払ったことになるとした上で反論を展開しているが、原処分庁が販売手数料としているのは、飽くまでも売上価格と仕入価格との差額であり、仕入先業者が請求人に販売手数料と称するものを支払うことを指すものではない。
(ニ) 請求人が主張する○○協会発行の参考文献に掲げられている取引は、その取引に係る事実関係が不明であり、本件における国際航空券の取次ぎという役務提供であるところの取引と取引形態が同一のものかが不明であることから、当該参考文献における取扱いを直ちに本件に適用するのは相当ではない。

(2) 請求人

 請求人の行う取引は、国際航空券の売買取引であり、非課税取引に該当する。
イ 本件チャーター便取引について
(イ) 本件チャーター便取引は、国際航空券を一便ごとに一括で仕入れ、売上先である本件各旅行業者に販売しているものであり、当該取引は、国際航空券の売買である。
(ロ) 販売手数料とは、売上げに対して一定額・一定率で収受するものであり、請求人の取引は、売上高と仕入高の差額を収益とし、それらは一定額・一定率ではないことから、販売手数料とは認識できない。
ロ 本件国際航空券取引について
(イ) 本件国際航空券取引は、国際航空券を発券業者から仕入れ、これらを本件各旅行業者に販売しており、国際航空券の売買である。
(ロ) 請求人の仕入価格は、仕入先と請求人との間で協議の上で決定し、また、売上価格も、これまでの取引実績等を考慮して請求人が売上先ごとにそれぞれ決定する。よって、仕入価格、売上価格とも請求人独自が決定したものであり、仕入先は売上価格を、売上先は仕入価格を知ることはなく、同じ仕入先の同一便の航空券であっても、売上先により売上価格が異なることとなる。
(ハ) 消費税法基本通達10-1-12《委託販売等に係る手数料》(2)に定められているとおり、委託者から受ける委託販売手数料の額が役務の提供の対価である。
 原処分庁は、当該通達で記している委託者はだれか、委託販売手数料の金額がいくらかを明示もせず、売上価格と仕入価格の差が手数料だとしているが、当該通達からは当該差額が委託販売手数料と読み取ることはできない。
 消費税は一取引ごとに売上価格に係る仮受消費税の額、仕入価格に係る仮払消費税の額をそれぞれ計算するものであり、原処分庁の理論では、当社が受取ったとされる消費税の支払者は、当社に支払ったとされる手数料の金額も消費税の金額も知ることができず、消費税の支払者においてその会計処理ができないことになる。
(ニ) ○○協会発行の「旅行業者のための消費税・印紙税実務」においては、「航空会社と契約のある旅行会社が行う航空券の発行は不課税であり、二次卸業者及び三次卸業者が行う航空券の売買取引は、いずれも非課税取引である」旨の見解が示されていることからすれば、請求人の行う取引は国際航空券の売買取引であり、非課税取引である。

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3 判断

 本件チャーター便取引及び本件国際航空券取引が、消費税法上、課税取引であるか否かに争いがあるので、判断する。

(1) 本件チャーター便取引について

イ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実及び答述が認められる。
(イ) 請求人は、平成17年3月1日に、G社と同社が日本における総代理店を務める外国航空会社のチャーター便に係る○○地域の販売に関して、チャーター便販売契約(以下「本件チャーター便販売契約」という。)を締結した。
(ロ) 本件チャーター便販売契約に関し、請求人とG社との間で作成された契約書(以下「チャーター便販売契約書」という。)には、要旨次のとおり記載されている。
A G社(甲)は、チャ-ター便の販売に関して、請求人(乙)の販売地域を特定し、独占的にその業務を委託する。
 ただし、販売地域の決定、変更については、G社と請求人において協議の上、定めるものとする。また、G社は、請求人に業務上必要となる航空券その他の書類の提供を行う。(第1条)
B G社と請求人は、別途販売手数料の料率を協議の上、取り決めるものとする。(第3条)
C 請求人は、G社が総代理店契約を受託する航空会社と競合する航空会社の販売代理をG社の許可無く行ってはならない。競合した場合はG社の販売代理を優先する。(第11条)
(ハ) 上記(ロ)のBにおける取決めとして、本件チャーター便販売契約書の「附則」において、「第2条 手数料」として、次のとおり記載されている(以下、同附則に定める手数料を「本件手数料」という。)。

  甲の手数料 出発地域の代理店 契約代理店
許可運賃 1.25% 3.00% 0.75%
マークアップ 15% 65% 20%

(ニ) G社の代表取締役社長であるHは、本件手数料に関して、具体的な事例を挙げて次のように答述した。
A 航空会社とG社とのチャーター料を100,000ドルとし、G社と直接チャーター便を利用して包括旅行を企画する旅行業者(以下「包括旅行企画業者」という。)とのチャーター料を120,000ドルとした事例で説明する。
B 航空会社とG社は、100,000ドルでチャーター契約を取り交わすが、その際、G社は、チャーター料100,000ドルの5%である5,000ドルを航空会社から得る。そして、このチャーター料100,000ドルを契約書上、「許可運賃」という。
C G社及び各地区代理店である請求人は、5%の手数料では利益が確保できないため、航空会社とのチャーター便の代理店として20,000ドルの利益を上乗せする。そして、この利益の上乗せ分20,000ドルを契約書上、「マークアップ」という。
D 本件チャーター便販売契約書の附則の表は、これら2種類の手数料について、G社と請求人とが受領する手数料の割合を決めているものであり、「出発地域の代理店」は請求人、「契約代理店」はチャーター便販売契約を締結させた代理店を指し、請求人が包括旅行企画業者に対してチャーター便の販売を行った場合には、請求人は「契約代理店」となる。そして、1許可運賃に係る手数料に関しては、許可運賃100,000ドルの5%のうち「出発地域の代理店」及び「契約代理店」手数料の合計3.75%相当額である3,750ドルが請求人の手数料となり、2マークアップに係る手数料に関しては、20,000ドルのうち「出発地域の代理店」及び「契約代理店」手数料の合計85%相当額である17,000ドルが請求人の手数料となる。
E また、G社が、直接包括旅行企画業者とチャーター便販売の契約を締結した場合は、「契約代理店」に関する料率は、G社に加算される。
(ホ) 平成17年7月13日付のJ社との「AIRCRAFT CHARTER AGREEMENT BY INCLUSIVE TOUR OPERATOR(包括旅行業者による航空機貸切契約書)」(以下「本件貸切契約書」という。)には、J社(運航者)の「General Sales Agency(日本における総代理店)」としてG社、「The Charterer(用機者)」として包括旅行企画業者の署名があり、 請求人は「Witness Company(立会人)」として署名している。
(ヘ) 本件貸切契約書には、要旨次のとおり記載されている。
A 本件貸切契約書は、平成17年7月13日、用機者と運航者との間で作成されたものである。当事者双方は、以下の事項について合意した。
B 運航者は、用機者に対し、貸切航空機を本件貸切契約書に定める料金及び条件で、旅行用に提供する。
(A) 航空機:○○○○
(B) 貸切スペース:○○席
(C) フライトスケジュール
 フライトNo.○○○○ 日付8月13日 区間 ○○-○○
 フライトNo.○○○○ 日付8月16日 区間 ○○-○○
(D) 貸切料金:金額83,500ドル
(ト) 請求人から原処分庁所属の調査担当者に提出された平成18年3月7日付の「弊社チャーター事業部の業務内容報告」と題する書面には、チャーター便の申込みから出発までの業務経過が記載されており、その業務内容は、1包括旅行企画業者に対して、出発並びに搭乗券引渡しの案内及び時間・機種変更時における説明、2空港への乗客名簿の提出及び空港との打合せ並びに変更時の対応、3機内食、新聞雑誌の手配、4キャンセル客の処理、5出発当日の搭乗券引渡し、出発及び現地到着確認、及び6帰国時の到着客、帰り荷の確認となっている。
(チ) 本件チャーター便取引に関する代金決済に関しては、請求人が依頼のあった包括旅行企画業者に対して旅行代金を請求し、その代金入金後に、請求人はG社あてに「精算/送金明細表」と題する書面を作成し、許可運賃及びマークアップに係るデストリビュウター(請求人)販売手数料として、包括旅行企画業者に対する販売合計額から、上記(ハ)及び(ニ)のとおりの販売手数料額を差し引いた額をG社に送金し、決済している。
(リ) 請求人の作成する本件課税期間に係る総勘定元帳は、売上げ、仕入れとも、「定期便」、「○○2」及び「CHTR」に区分され、売上高(課税区欄に「売上5%」と表示のある金額を除く。)及び仕入高の合計額は、次表のとおりである。

部門
区分
定期便・○○2 CHTR
売上高 ○○○○円 ○○○○円
仕入高 ○○○○円 ○○○○円

 なお、「定期便」及び「○○2」は本件国際航空券取引を、「CHTR」は本件チャーター便取引を扱う部門である。
ロ 本件チャーター便取引に対する判断
(イ) 本件チャーター便取引に関しては、当事者間の契約内容、取引状況及び収益の帰属状況等を総合して判断すべきところ、上記イの認定事実によれば、請求人は、G社との間で販売契約を締結し、外国航空会社とのチャーター便販売契約の○○地域における代理店として、1包括旅行企画業者に対してチャーター便販売の営業活動を行い、2上記イの(ホ)のとおり、外国航空会社の日本における総代理店と包括旅行企画業者との本件貸切契約に際しては立会人として署名し、3上記イの(ト)のとおり、チャーター便の出発までの各種手配及び出発当日から帰国までの現地確認等を行い、さらには、4上記イの(ハ)及び(チ)のとおり、一定の料率で本件手数料を計算し、本件手数料以外の収益についてはすべてG社に送金し、代金決済していることからすると、本件チャーター便取引は、請求人がチャーター便の販売をG社から委託され、当該販売業務の対価として、上記イの(ハ)に定めた一定の料率で本件手数料を得ていたものと認められる。
 そうすると、請求人は、G社に対し、国内において役務の提供を行い、その対価として手数料を得ていたとみることが相当であり、本件チャーター便取引は、消費税法上、課税取引に該当する。
(ロ) 請求人の主張
 請求人は、1本件チャーター便取引は国際航空券を一便ごとに一括で仕入れ、売上先である包括旅行企画業者に販売しているものであり、当該取引は国際航空券の売買であり、また、2販売手数料とは、売上げに対して一定額・一定率で収受するものであり、請求人の取引は売上高と仕入高の差額を収益とし、それらは一定額・一定率ではなく、販売手数料とは認識できないことから、消費税法上、非課税取引である旨主張するが、この点に関する当審判所の判断は、上記(イ)のとおりであるから、請求人の主張には理由がない。

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(2) 本件国際航空券取引について

イ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、航空会社がパッケージ・ツアー等の旅行商品を企画する旅行業者に旅行商品の素材として割当てた国際線航空券(航空券、宿泊及び地上手配を包括して販売することを条件とした個人包括旅行運賃が適用されるもの)を宿泊及び地上手配を付けずに航空券だけ(エアー・オンリー)で取引するいわゆる格安な航空券(以下「本件国際航空券」という。)を取り扱っている。
(ロ) 請求人は、本件国際航空券の取引に当たり、本件国際航空券の発券等を扱う旅行業者(以下「本件各発券業者」という。)から「K」と称する本件国際航空券の価格表(以下「本件仕入価格表」という。)を半年(4月から9月まで及び10月から3月までの各半年)ごとに提示されている。
(ハ) 請求人は、上記2の(2)のロの(ロ)のとおり、本件仕入価格表に、請求人と本件各旅行業者との取引実績等に応じて、本件各旅行業者ごとに異なる請求人の利益を加算した本件国際航空券の価格表(以下「本件売上価格表」という。)を作成し、半年(4月から9月まで及び10月から3月までの各半年)ごとに本件各旅行業者に提示している。
(ニ) 請求人は、当審判所に対し、本件国際航空券取引の1件別明細である「L」のうち、平成17年5月分を提出した。
 このLにおける出発日が平成17年5月15日、同月17日、同月18日及び同月25日である取引の記録によれば、別表2のとおり、出発日、航空会社、方面、仕入先及び仕入価格が同一であっても、顧客によって売上価格は異なる。
(ホ) 請求人は、本件航空券の申込みから引渡しまで、要旨次のとおり取引を行っている。
A 請求人は、本件各旅行業者から、ファクシミリ等により特定の便に係る本件国際航空券の予約申込みを受け、当該申込みに基づき、請求人は本件各発券業者に対して、予約を行う。
B 申込みを受けた本件国際航空券の予約が完了すると、本件各発券業者から、予約内容の確認を受け、請求人は、本件各旅行業者に対し、予約内容の確認を行う。
C 請求人は、本件各旅行業者に対し、最終的に予約内容の確認が終了した時点で、本件各発券業者に発券及び請求書の発行を依頼し、同時に、本件各旅行業者に対して請求書を発行する。
D 請求人は、本件各発券業者に対して請求金額を支払い、本件国際航空券の引渡しを受け、その後、本件各旅行業者に対して、後払い等の代金決済に関する特段の取決めがない限り、本件航空券の代金受領と引き換えに、本件国際航空券を引き渡している。
(ヘ) 本件各旅行業者と請求人との間では、本件国際航空券販売に関する取次ぎという役務の提供に対する対価を支払う旨の契約等はなく、また、本件各発券業者と請求人との間では、本件国際航空券販売に関する委託契約等もなく、それぞれ本件売上価格表及び本件仕入価格表に基づいて、本件国際航空券に係る取引が行われている。
(ト) 請求人が、上記(ホ)のCの確認時に本件各発券業者に対して発行している表題が「○○○○」と書かれた様式には、様式の下段部分が「○○依頼書」と記載され、搭乗者の氏名、出発・帰国日、便名、区間、さらに明細として、航空運賃、○○空港使用料、航空保険・燃料サーチャージ、現地出国税の各項目と、1人当たりの単価、人数、請求額が記載されている。
(チ) 請求人が、本件各旅行業者に対して使用している請求書には、搭乗者の氏名、出発・帰国日、便名、区間、さらに請求明細として、航空運賃、○○空港使用料、航空保険・燃料サーチャージ、現地出国税の各項目と、1人当たりの単価、人数、請求額、振込先口座名が記載されている。
(リ) 請求人は、本件各旅行業者から収受する代金全額を、総勘定元帳において売上げとして、また、本件各発券業者に対する支払額を、総勘定元帳において仕入れとして記載している。
(ヌ) 請求人は、M社との間で、平成16年11月1日付で業務委託契約を締結し、N社等日本発着定期便の航空券販売及び同便利用の主催旅行、ユニット販売の業務を委託し、委託料を支払った。
(ル) 請求人は、上記(ヌ)のM社に対する委託料を、総勘定元帳の仕入高のページの「課税区」欄において「非仕入」と区分しており、本件課税期間において合計○○○○円計上している。
(ヲ) 請求人の総勘定元帳は、消費税に関する課税区分が適用欄に記載され、また、担当部署ごとの区分表示は記載されているが、課税仕入れについて、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等のみに要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに、区分表示されていない。
ロ 法令解釈
(イ) 消費税法施行令第11条に規定する「役務の提供に係る請求権を表彰する証書」とは、その文書に役務の提供に係る請求権が化体された文書であり、「証書」とは事実の証明に供する文書をいうから、当該文書の所持人に対してその作成者又は給付義務者がこれと引換えに特定の役務の提供をすることを約する文書である。また、消費税法上、役務の提供とは、請負契約に代表される土木工事、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介等のほか、興業、宿泊、飲食、技術援助、情報の提供、便益、著述その他種々のサービスを提供することをいうものと解されるから、航空旅客運送も役務の提供に当たる。したがって、航空旅客運送に係る請求権を表彰する文書は、消費税法別表第一第4号ハに規定する物品切手等に該当するものと解される。
 そして、消費税法上、資産の譲渡とは、資産につきその同一性を保持しつつ他人に移転させることをいうものと解されるから、売買契約による財産権の移転は、資産の譲渡に当たるといえ、物品切手等の売買は、非課税取引である物品切手等の譲渡に該当する。
 なお、特定の役務の提供に係る請求権を表彰する証書を発行する行為は、当該請求権の原始的設定行為であって、資産の譲渡とは法的性格が異なるものであるから、物品切手等の譲渡には該当しないものと解される。
(ロ) 「取次ぎ」とは、他人の計算において自己の名義により法律行為をすることを引き受ける行為をいう。ここで「他人の計算において」とは、取引の経済的効果が他人に帰属することをいい、「自己の名義により」とは、自ら法律行為の当事者として権利義務の主体となることをいう。例えば、証券取引所の会員である証券会社が顧客の注文に応じて行う有価証券の売買などがこれに当たる。
 また、「取次ぎ」を行う者とそれを委託した者との関係は、「取次ぎ」を行う者に対して法律行為をすることを委託したものであるから、委任であると解される。そして、「取次ぎ」を行う者は委託を受けて法律行為をするのであるから、「取次ぎ」を行うことは、法律行為をすることを委託した者との関係でみれば、その者に対する役務の提供に該当すると認められる。
ハ 本件国際航空券取引に対する判断
 上記1の(4)の基礎事実、上記イの認定事実及び上記ロの法令解釈に照らして判断すると以下のとおりである。
(イ) 請求人は、上記イの(イ)ないし(ホ)のとおり、本件各旅行業者に対して、本件売上価格表を提示し、本件各旅行業者から本件国際航空券の申込みを受けると、本件各発券業者に対して、本件仕入価格表に基づいて発券の申込みを行い、本件国際航空券を本件各旅行業者に引き渡し、これに対して、本件各旅行業者が本件売上価格表に記載された価格に相当する金員を請求人に支払っている事実が認められ、また、本件国際航空券の代金に関しては、請求人は、上記イの(ニ)のとおり、本件各旅行業者に対しては、取引実績等に応じて自己の計算に基づいた利益を加算した異なる価格表を呈示しているため、同じ本件各発券業者へ申し込んだ同一便に係る本件航空券であっても、金額の相違していることが認められる。
(ロ) また、請求人と本件各旅行業者との間では、上記イの(ヘ)のとおり、本件国際航空券の取引に関して、本件国際航空券販売に関する取次ぎという役務の提供に対する対価を支払う旨の契約等は認められない。さらに、上記イの(チ)のとおり、本件国際航空券の航空運賃及び航空運送にかかわる諸費用(○○空港使用料、航空保険・燃料サーチャージ及び現地出国税)に相当する金額の合計額を取引金額としており、それ以外に、本件国際航空券に係る手数料、報酬それらこれに類するものを支払う旨の合意があったと認めるに足る事実は認められない。
(ハ) 原処分庁は、「請求人における本件国際航空券の売上価格と仕入価格の差額」が本件各旅行業者に対する役務の提供の対価の額であると主張するが、そうであるとすると、請求人が航空券を廉価で購入できた場合の経済的効果は、委託者である本件各旅行業者にではなく、受託者である請求人に帰属することになる。「取次ぎ」においては、上記ロの(ロ)のとおり、取引の経済的効果は委託者に帰属するから、請求人と本件各旅行業者との合意の内容が原処分庁の主張のとおりであるとすると、請求人と本件各旅行業者との間の取引が法令で使用している意味の「取次ぎ」であるとは認められない。
(ニ) そうすると、本件国際航空券取引は、本件各旅行業者が請求人に対して、本件売上価格表の価格に相当する金員を代金として本件国際航空券を購入することを申し込み、請求人がこれを承諾したことにより、請求人と本件各旅行業者との間で本件国際航空券の売買契約が成立したとみるのが相当である。したがって、本件国際航空券取引は、消費税法上、航空券という資産の譲渡に該当するものと認められる。
 そして、本件国際航空券は、上記ロの(イ)のとおり、消費税法第6条第1項に規定する別表第一第4号ハに掲げる物品切手等に該当することから、その売買である本件国際航空券取引は、非課税取引と認められる。
(ホ) 原処分庁の主張
 原処分庁は、本件国際航空券取引は、国際航空券の取次ぎという役務の提供であり、売上価格と仕入価格の差額に相当する額が、当該役務の提供の対価である旨主張する。
 しかしながら、本件国際航空券取引を国際航空券の取次ぎという役務の提供とみることはできないことは、上記(ハ)のとおりであり、本件国際航空券取引は、上記(ニ)のとおり、本件各旅行業者と請求人の間における売買取引であると認められる。したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由はない。

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(3) 更正処分の適法性について

 本件チャーター便取引及び本件国際航空券取引に関する当審判所の判断は、上記(1)及び(2)のとおりであり、それに基づいて本件課税期間における消費税等の納付すべき税額を算出すると、消費税等の額は、別表3-1「審判所認定額」欄のとおりである。
イ 課税標準額
 課税標準額は、上記1の(4)のハのとおり、消費税等の確定申告書の付表2に記載された課税売上額(税抜き)○○○○円に、上記(1)のイの(リ)のとおり、本件チャーター便取引に係る売上の合計額○○○○円とそれに対応する仕入高の合計額○○○○円の差額である○○○○円に105分の100を乗じた額○○○○円を加算した金額○○○○円について、国税通則法第118条《国税の課税標準の端数計算等》第1項の規定により千円未満の端数金額を切り捨てた後の金額○○○○円である。
ロ 課税標準額に対する消費税額
 課税標準額に対する消費税額は、上記イの課税標準額に消費税法第29条《税率》に規定する税率100分の4を乗じて計算した金額○○○○円である。
ハ 控除対象仕入税額
(イ) 課税売上割合
 課税売上割合とは、本件課税期間中における資産の譲渡等の対価の額の合計額のうちに、課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合をいう。
 本件課税期間の資産の譲渡等の金額は、消費税等の確定申告書の付表2に記載されている非課税売上額○○○○円に、上記(1)のイの(リ)のとおり、本件国際航空券取引の額(非課税売上)○○○○円及び上記イの○○○○円を加算した金額○○○○円となる。
 そうすると、本件課税期間の課税売上割合は、別表3-2のとおり、資産の譲渡等の対価の額の合計額○○○○円のうちに、課税資産の譲渡等の額○○○○円の占める割合となり、当該割合は95%未満となることから、請求人は、消費税法第30条第2項の規定により控除対象仕入税額を計算することとなる。
(ロ) 請求人は、上記3の(2)のイの(ヲ)の事実からすれば、消費税法第30条第2項第1号に規定する「課税仕入れにつき、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等のみに要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものにその区分が明らかにされている場合」には当てはまらないと認められることから、同項第2号に規定する計算方法である「当該課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算する方法」により、課税仕入れの税額に、課税売上割合を乗じた額が控除対象仕入税額となる。
(ハ) したがって、控除対象仕入税額は、上記1の(4)のハの課税仕入れに係る支払対価の額○○○○円と上記(2)のイの(ヌ)及び(ル)のM社に対する委託料の額○○○○円の合計額に、105分の4を乗じた金額○○○○円に、当審判所が認定した課税売上割合を乗じて算出した金額○○○○円である。
ニ 消費税の納付すべき税額
 消費税の納付すべき税額は、上記ロの課税標準額に対する消費税額○○○○円から、上記ハの(ハ)の課税仕入の税額○○○○円を控除し、さらに、その控除後の金額について国税通則法第119条《国税の確定金額の端数計算等》第1項の規定により百円未満の端数金額を切り捨てた後の金額○○○○円である。
ホ 地方消費税の課税標準額となる消費税額
 地方消費税の課税標準額となる消費税額は、上記ロの課税標準額に対する消費税額○○○○円から、上記ハの(ハ)の控除対象仕入税額○○○○円を差し引いた後の金額について、地方税法第72条の82《地方消費税の課税標準額の端数計算の特例》の規定により、百円未満の端数金額を切り捨てた後の金額○○○○円である。
ヘ 地方消費税の納付すべき税額
 地方消費税の納付すべき税額(譲渡割額)は、上記ホの地方消費税の課税標準額となる消費税額○○○○円に地方税法第72条の83《地方消費税の税率》に規定する100分の25の税率を乗じて計算した金額について、地方税法第20条の4の2《課税標準額、税額等の端数計算》第3項の規定により百円未満の端数金額を切り捨てた後の金額○○○○円である。
ト 消費税等の納付すべき税額
 消費税等の納付すべき税額は、上記ニの納付すべき消費税額○○○○円と上記への地方消費税の譲渡割額○○○○円の合計額○○○○円である。
チ 以上のとおり、本件課税期間の消費税等の納付すべき税額は、更正処分における消費税等の納付すべき税額を上回ることとなるため、原処分は適法である。

(4) その他

 過少申告加算税の賦課決定処分を含む原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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