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(平21.6.22、裁決事例集No.77 508頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、中古自動車販売業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、国外に向け出港する船舶の外国人乗組員に対し中古自動車を販売し、この販売は外国貨物の譲渡に該当するため消費税が免除されるとして消費税等の申告をしたところ、原処分庁が、当該販売は、輸出の許可を受ける前の中古自動車の譲渡であり、外国貨物の譲渡には当たらないなどとして行った原処分に対し、請求人が、販売した中古自動車の引渡しの時期は、輸出の許可を受けた後であるから、外国貨物の譲渡に該当するなどとして、その一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 請求人は、平成20年6月22日に、平成17年4月1日から平成18年3月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分について、審査請求をした。
 この審査請求に至る経緯は、別表記載のとおりである。

(3) 関係法令等

 別紙記載のとおりである。

(4) 当事者間に争いがなく、証拠により容易に認定できる事実等

イ 請求人は、本件課税期間において、消費税法第8条《輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税》第1項に規定する「輸出物品販売場を経営する事業者」及び消費税法第9条第1項に規定する「消費税を納める義務が免除される事業者」のいずれにも該当していない。
ロ 請求人は、A国からB港あるいはC港に寄港した船舶の複数のA国人乗組員に対し、請求人のP市内の中古自動車展示場において中古自動車及び自動車部品を販売している(以下、販売先であるA国人乗組員を「本件各購入者」、本件各購入者に販売した各中古自動車及び各自動車部品を「本件各車両等」、この販売に係る取引を「本件各取引」とそれぞれいう。)。
ハ 原処分庁は、本件各取引は、国内において請求人が行った課税資産の譲渡であり、外国貨物の譲渡その他の輸出免税の適用対象となる取引に該当しないため、消費税が課税されるとして、原処分を行った。

(5) 争点

 本件各取引は、輸出免税が適用される外国貨物の譲渡に該当するか否か。

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2 主張

(1) 原処分庁

 消費税法第2条第1項第10号及び関税法第2条第1項第3号によれば、外国貨物とは「輸出の許可を受けた貨物及び外国から本邦に到着した貨物で輸入が許可される前のもの」をいうとされている。
 また、本件各取引は、請求人と本件各購入者とが売買価格等について合意をしたことにより売買契約が成立したものであり、大方の場合、本件各購入者がその場で代金を支払い、本件各車両等のフロントガラスにサインをすることにより本件各車両等の引渡し及び代金の決済が完了している。そして、本件各車両等の輸出手続においては、本件各購入者を輸出者とする「輸出・輸入託送品(携帯品・別送品)申告書」(以下「輸出託送品等申告書」という。)がD税関に提出され、輸出の許可も本件各購入者に対して与えられている。
 そうすると、本件各車両等は、輸出の許可を受けて外国貨物となる前に、既に本件各購入者に譲渡されていたと認められることから、本件各取引は、消費税法第7条第1項第2号に規定する「外国貨物の譲渡」に該当せず、輸出免税の適用対象とならない。
 なお、請求人は、消費税法基本通達9−1−2の定めにより、本船船側に本件各車両等を移動させた日を引渡しの日とすることができるから、本件各取引は外国貨物の譲渡に該当する旨主張するが、同通達は、棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じて合理的と認められる日を引渡しの日とすべき旨を明らかにしており、本件各購入者が、本件各車両等の輸出の申告者であることからしても、本件各車両等が外国貨物となる前に本件各取引は完了していると認められるから、請求人が主張する日を引渡しの日と認めることはできない。

(2) 請求人

 消費税法上の棚卸資産の譲渡の時期については、消費税法基本通達9−1−1に、現に棚卸資産を引渡した日であるとされているところ、この引渡しの日について、消費税法基本通達9−1−2は、引渡しの日として合理的であると認められる日のうち、事業者が選択し、継続適用している日とすることとされている。このため、請求人は、従来から継続して本船船側に本件各車両等を移動した日を引渡しの日として経理処理しており、また、この日は、輸出取引における引渡しの日として合理的な日であるから、本件各車両等の譲渡の日は、本船船側へ本件各車両等を移動した日とされる。
 そうすると、この譲渡の日、すなわち本船船側への移動日においては、既に本件各車両等は外国貨物となっていることから、本件各取引は、消費税法第7条第1項第2号に規定する「外国貨物の譲渡」に該当し、輸出免税が適用される。

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3 判断

(1) 争点について

イ 法令解釈
 消費税法第7条第1項本文及び同項第2号は、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、外国貨物の譲渡又は貸付けについては、消費税を免除する旨規定している。
 また、消費税法第2条第1項第10号は、外国貨物は、関税法第2条第1項第3号に規定する外国貨物をいう旨規定し、関税法第2条第1項第3号は、外国貨物は、輸出の許可を受けた貨物及び外国から本邦に到着した貨物(外国の船舶により公海で採捕された水産物を含む。)で輸入が許可される前のものをいう旨規定している。
ロ 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件各取引に係る輸出手続等について、次の各事実が認められる。
(イ) 本件各購入者は、請求人の中古自動車展示場において、購入を希望する中古自動車等を選び、請求人と売買価格の交渉を行い、売買価格の合意により売買契約が成立すると、大方の場合、その場で購入代金を現金で支払っており、残りの場合、A国に帰国後、振込送金の方法により支払う旨の合意をし、いずれの場合も、購入者を明示するため中古自動車のフロントガラスに本件各購入者の名前をサインする。
(ロ) その後、本件各購入者は、D税関において、旅券による本人確認を受けた後、関税法基本通達67−2−7及び67−2−8に定める旅具通関(以下「旅具通関」という。)の手続により、輸出託送品等申告書を提出して本件各車両等に係る輸出申告を行い、輸出託送品等申告書(許可書用)にD税関長の許可印を、また、輸出託送品等申告書(業者用)にD税関統括監視官の確認印をそれぞれ受けている。
 なお、輸出託送品等申告書の用紙(3枚つづり)は請求人が用意し、申告者である本件各購入者は、旅具通関手続における携帯品、別送品及び託送品の別に応じて、当該申告書用紙の荷送人欄、受取人欄及び申告者欄にサインをし、請求人がその他の事項を記載して販売会社欄に記名押印している。
(ハ) D税関から輸出の許可を受けた本件各車両等には、通関確認証が発行されている。
(ニ) 中古自動車及び自動車部品を国外に輸出するには、○○港施設利用組合(以下「利用組合」という。)の業務事業実施要領に定める検査(以下「組合検査」という。)を受ける必要があるため、請求人は、輸出の許可を受けた本件各車両等のフロントガラスなどに通関確認証をちょう付した上で、本件各車両等を利用組合の仮置場に搬入している。
(ホ) その後、請求人は、組合検査が終了した本件各車両等を仮置場からふ頭のゲート内の保管置場にいったん移動し、さらに、A国に向けて出港する日に、本船船側に移動している。
ハ これを本件についてみると、本件各取引は、売買価格の合意により本件各購入者と請求人との間で売買契約が成立し、大方の場合、本件各購入者が、その場で代金を支払っており、残りの場合、A国に帰国後、振込送金の方法により支払う旨の合意があり、いずれの場合にも、本件各車両等のフロントガラスにサインしたことにより本件各車両等の引渡しが完了したものと認められる。その後、本件各購入者が、申告者としてサインして輸出託送品等申告書を作成し、D税関に提出して輸出の許可を受け、本件各車両等を本邦外に持ち出したものと認められる。
 そうすると、本件各車両等の引渡しが完了した時点では、本件各車両等は、輸出の許可を受けていないため外国貨物に該当しないというべきである。
ニ この点について、請求人は、消費税法基本通達9−1−2の定めを適用して、「引渡しの日」について、本件各車両等を本船船側に移動した日とすることができる旨主張するが、上記ロのとおり、旅具通関手続前に本件各車両等の引渡しは完了し、その後において、本件各購入者が本件各車両等の輸出の許可を受けているのであって、請求人が本件各車両等を本船船側に移動した日を「引渡しの日」としていることは合理的であるとは認められないことから、この点に関する請求人の主張は採用できない。

(2) 原処分について

 以上のとおり、原処分には、争点について、これを取り消すべき理由はない。
 また、原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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