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(平21.10.23、裁決事例集No.78 114頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、平成19年分の所得税について、建物の賃貸借契約の合意解約に伴って取得した金員(以下「本件金員」という。)を譲渡所得として所得税の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該所得は残存期間賃料として受領したものであるから不動産所得に該当するとして更正処分等をしたため、請求人が、その全部の取消しを求めた事案である

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成19年分の所得税について、確定申告書(以下「本件申告書」という。)に、別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに原処分庁に申告した。
ロ 原処分庁は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成20年7月4日、請求人に対し、別表1の「更正処分等」欄のとおりとする更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて、「本件更正処分等」という。)を行った。
ハ 請求人は、平成20年9月3日、上記ロの本件更正処分等を不服として異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年11月12日付で棄却の異議決定をし、その決定書謄本を請求人に対し同月15日に送達した。

(3) 関係法令等の要旨

 別紙記載のとおりである。

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(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁の間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても、その事実が認められる。
イ G社とH社は、P地区に大型店の出店計画をした。
ロ 平成4年4月11日、G社、H社は、出店予定地の地権者であるJ及び請求人の父Kとの間で、要旨以下のとおりの事業協定を締結した。
(イ)G社がJ、Kに支払う建設協力金(追加建設協力金を含む)は、別表2の建物に関する賃貸借契約成立と同時に次のとおり精算する。
A 建設協力金のうち70%が賃貸借契約の保証金
B 建設協力金のうち30%が賃貸借契約の敷金の一部
ハ G社は、J及びKほか10数名の各所有(うちKが所有する土地は、別表3に記載する土地1及び土地2(以下、これらを併せて「本件土地」という。)である。)する土地上に、H社、J及びKと共同してL商業ビルを建設した。
 L商業ビルにおけるKの持分は、別表2「上記1棟の建物のうち請求人の持分」欄のとおり(以下、請求人の持分を併せて「本件建物」という。)である。
ニ 平成4年○月○日、Kは、G社との間で、本件建物につき、建物賃貸借契約書(以下「 本件建物賃貸借契約書」という。)において、要旨以下のとおりの賃貸借契約(以下「本件建物賃貸借契約」という。)を締結した。
(イ) 第2条(期間)
 賃貸借期間は平成4年○月○日より平成24年○月○日(20年間)とする。
(ロ) 第3条(賃料)
 賃料は月額金○○○○円とする。
(ハ) 第4条(保証金等)
A G社は、Kに対し、保証金○○○○円(以下「本件保証金」という。)を支払う。
B G社は、Kに対し、敷金○○○○円を支払う。
C Kは、G社に対し、本件保証金を平成19年○月○日限りで○○○○円、平成24年○月○日限りで○○○○円返還する。
D Kは、G社に対し、Bの敷金をG社の明渡しと同時に返還する。
(ニ) 第13条(特約1
K及びG社とも、賃貸借期間中に本件建物賃貸借契約を解約することはできない。
(ホ) 第14条(特約2
G社は、Kに対し、天変地異等の不可抗力及びKの責めに帰すべき事由以外の事由で、本件建物が毀損して賃貸借契約の目的を達成できなく、本賃貸借契約が失効したときは、直ちに一括してその失効時からの残存賃貸借期間の賃料相当額の金員を支払う。
 なお、上記(ハ)のBの敷金(以下「本件敷金」という。)は、建設協力金の30%(○○○○円)と賃料の10か月分(○○○○円)の合計額である。
ホ 平成17年1月○日にKが死亡し、請求人が本件建物及び本件土地を相続した。
(イ) 請求人とG社は、平成17年8月2日付の「相続による地位承継の覚書」と題する書面において、要旨以下のとおり合意した。
A 本件建物賃貸借契約書の定めにかかわらず、請求人は、Kより返還義務を承継した金○○○○円の預かり保証金のうち平成19年○月○日返還予定の保証金○○○○円を本契約締結後直ちにG社に対し、振込返還することに合意する。
B なお、請求人とG社とは、平成24年○月○日返還の保証金○○○○円の早期返還について継続協議することで合意する。
(ロ) 平成17年8月29日、請求人は、本件保証金のうち、上記(イ)のAに基づき○○○○円をG社に返還した。
ヘ 請求人及びG社は、平成17年9月27日付の「合意解約に関する基本事項」と題する書面において、平成18年2月20日で本件建物賃貸借契約を合意解約すること、当該合意解約に伴って建設協力金と敷金を精算すること、G社等の所有部分の売却に併せて請求人所有の持分も一緒に第三者に譲渡すること等を合意した。
ト 請求人及びG社は、平成19年11月26日、「合意解約書」において、要旨以下のとおりの内容で、本件建物賃貸借契約を解約することに合意した(以下、この合意を「 本件合意解約 」という。)。
(イ) 第2条
 請求人はG社に対して本件敷金及び保証金○○○○円の合計○○○○円について返還債務(以下「本件債務」という。)があることを相互に確認する。
(ロ) 第3条
 G社は請求人に対し、本件建物賃貸借契約を期間内において解約することに伴う残存期間賃料相当額として○○○○円(以下「本件残存期間賃料」という。)の賃料支払債務を負っていることを相互に確認する。
(ハ) 第4条
 上記(イ)及び(ロ)の債権債務をその対当額をもって相殺し、請求人はその差額○○○○円をG社に支払うものとする。
(ニ) 第11条
 請求人は平成19年○月○日付でH社と不動産売買契約を締結するものとする。

チ 平成19年○月○日、請求人はH社との間で、本件建物及び別表4の当該借地権について請求人が所有する権利(以下「本件借地権」という。)を、代金総額○○○○円で、要旨以下のとおりの売買契約を締結した(以下、この売買契約に係る契約を「本件借地権付区分所有建物売買契約」という。)。
(イ) 第1条(売買代金)

A 本件借地権○○○○円
B 本件建物○○○○円
C 消費税及び地方消費税額○○○○円

(ロ) 第13条(土地賃貸借契約の締結)
 請求人及びG社は、本契約締結と同時に、請求人所有の土地に関し、土地賃貸借契約を締結するものとし、G社とH社の区分所有建物用地として使用するものとする。
リ 平成19年○月○日、請求人は、本件土地につき、G社との間で、賃貸借契約(以下「本件土地賃貸借契約」という。)を締結した。
ヌ 平成19年○月○日、本件建物及び借地権の売却代金として、H社から請求人のM銀行N支店の普通預金口座に○○○○円が振込入金された。
 同日、請求人は、本件合意解約書の約定に基づき、M銀行N支店のG社の普通預金口座に○○○○円を振込入金した。
ル 本件申告書には、所得税法第90条第1項に規定する平均課税の適用を受ける旨及び同項各号に掲げる金額の合計額の計算に関する明細の記載はない。

(5) 本件の争点は次のとおりである。

争点1 請求人がG社から得た本件残存期間賃料の所得区分。

争点2 本件残存期間賃料が不動産所得に該当した場合に、平均課税の適用はあるか。

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2 主張及び判断等

(1) 争点1 請求人がG社から得た本件残存期間賃料の所得区分。

イ 主張
(イ) 原処分庁
 以下の理由から、本件残存期間賃料は不動産所得である。
A 本件金員は、本件合意解約に伴い、本件建物賃貸借契約書の約定に基づく、G社の請求人に対する残存賃貸借期間賃料相当額支払債務の履行として支払われたものである。
 そうすると、本件金員は、残存期間賃料として、請求人の不動産所得を生ずべき建物の賃貸業務の廃止によって業務の収益の補償として取得する補償金に相当するものであり、所得税法施行令第94条第1項第2号に規定する当該業務の遂行により生ずべき賃貸料収入に代わる性質を有する金員の支払を受けたものと認められるから、不動産所得に該当する。
B なお、請求人は、当該所得について、支払を受けた本件残存期間賃料は本件債務と相殺しており、担税力がない旨主張するが、請求人が負っていた本件債務が本件残存期間賃料と相殺されることによって、請求人の債務が減少し、その債務の減少による経済的利得を請求人が受けている以上、担税力のない所得とはいえず、また、納税資金の不足を理由に課税を免れることはできないのであるから、請求人の主張には理由がない。
(ロ) 請求人
 以下の理由から、本件残存期間賃料は譲渡所得である。
A 本件は、G社がL商業ビルから撤退することに伴い、建物を処分する方法として、本件建物を売却し、その敷地について利用権を設定するとともに、請求人がG社に支払うべき敷金及び保証金の精算をするという一連の取引を、
(A) 請求人、G社間の本件合意解約
(B) 請求人、H社間の本件借地権付区分所有建物売買契約
(C) 請求人、G社間の本件土地賃貸借契約
という3つに分割して行ったものであり、このことは、合意解約書第11条の規定、また、本件建物の平成19年度の固定資産税評価額が○○○○円であるのにH社への売却価額が○○○○円であり、単一の取引では到底成立しない金額であることからも明らかである。
 したがって、上記各契約を独立した取引と解釈すべきではなく、一連の取引として一体として捉えるべきである。
 そうすると、請求人は、本件建物と借地権の譲渡の対価としてH社から○○○○円、G社から○○○○円を受領したのであるから、本件残存期間賃料は譲渡所得と見るべきであり、不動産所得には該当しない。
B 所得税法施行令第94条第1項第2号は、賃貸していた物件が契約解除後も賃貸人の手元に残っている場合に、その収益を補償するものに適用される条項であり、賃貸借契約が解約されても当該物件が賃貸人の手元に残っていない場合には、その後の賃料を補償する理由はないから、本条は適用されない。
 本件の場合は、本件建物は売却して手元に残っていないので、同条は適用されないと解するべきである。
C 仮に、本件残存期間賃料が譲渡所得に該当しないとしても、本件残存期間賃料の性質は、建物の賃貸借期間中は解約できないとされている本件建物賃貸借契約にG社が反したことにより請求人が被った損害に対する賠償金類似のものであるから、一時所得に該当する。
D なお、今回の一連の取引において、所得とされる本件残存期間賃料は、敷金及び保証金の支払と相殺しており、この債務の基となった建物自体も本件合意解約によって取り決められた相手に対して売却して無くなっているため、税金の支払は当該所得からではなく手持ち資金及び他から調達せざるを得ないことから、当該所得には担税力がない。担税力のない所得に課税するとする原処分は違法である。
ロ 判断
(イ) 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件合意解約に至る経緯について次の事実が認められる。
A G社は、平成17年、L商業ビルの累積赤字が大きく、今後も業績が上向くことが期待できないとして、請求人に対して、G社のP地区撤退の意向と本件建物賃貸借契約の解約及び本件建物の売却について打診し、以後、数回にわたり交渉に及んだ。
B 請求人は、G社が撤退するのであれば、G社に賃貸していた本件建物の返還を受けても、新たに賃借人を見つけることは容易でないので、本件建物を売却することに同意していたが、その条件として、G社に対して返還しなければならない本件敷金及び本件保証金の負担がなくなる方法を望んでいた。
C G社は、P地区から撤退するに当たって、当初は自社が所有する持分を含めL商業ビル全体の処分を前提としていたが、当該建物の権利関係が複雑で買手を見つけるのは容易でないこと、P地区進出に当たって地元商店街や行政の協力があった経緯もあり安易な撤退は困難であるなどの事情から、結果として撤退を断念した。しかし、請求人ら個人から借りている建物部分の賃料負担が重く、赤字の原因になっていることから、本件建物賃貸借契約の早期の解約に向けて事態を収拾する方法を模索した。
 そして、当初は、G社が本件建物を取得する方向で検討していたが、使用状況等からすると本件建物をG社が購入するメリットは少ないことから、H社に購入してもらうことにした。
D H社は、G社から撤退の意向を聞かされたが、L商業ビルの機能を継続して存続することを望んでおり、L商業ビル全体の再建を図るために最終的に請求人を含む個人が所有している建物部分を購入することに同意した。
E 請求人は、平成19年11月に、G社から買主がH社に替わった旨連絡を受けた。請求人は、一度、H社の担当者と面談した後、本件借地権付区分所有建物売買契約を締結した。
(ロ) 法令解釈
 所得税法第26条第1項に定める不動産所得とは、賃貸借契約に基づく賃料のみならず、権利金、礼金等の名目のいかんを問わず、不動産を使用又は収益させることの対価としての性質を有する経済的利益若しくはこれに代わる性質を有するものを含むと解するのが相当である。
 そして、不動産所得を生ずべき業務を行う居住者が、当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもので、その業務の遂行により生ずべき不動産所得に係る収入金額に代わる性質を有するものもまた、不動産等の貸付けの業務の遂行により生ずべき収入金額に代わる性質を有するものであるから、所得税法施行令第94条第1項第2号はこれを不動産所得に係る収入金額とする旨規定している。
(ハ) 本件への当てはめ
A そこで検討するに、請求人、G社間の本件建物賃貸借契約において、本件建物賃貸借期間を20年とし、賃貸借期間中は契約解除をなし得ない旨定めていたところ、両当事者の合意により、賃貸借契約期間の満了を待たずして本件建物賃貸借契約を合意解約することとなり、本件金員は本件合意解約の約定に基づき、残存期間賃料として支払われたものである。
 そうすると、本件金員の性質は、中途解約に伴う賃料収入に対する補償であり、不動産の貸付けにより生ずべき収入金額に代わる経済的利益と認められる。
 したがって、本件金員は、不動産所得に該当する。
B これに対し、請求人は、本件合意解約、本件借地権付区分所有建物売買契約及び本件土地賃貸借契約という3つの契約を独立した取引と解釈すべきではなく、一連の取引として一体として捉えるべきであり、そうすると、請求人は、本件建物と借地権の譲渡の対価として、H社とG社から本件金員を含む合計○○○○円を受領したものであるから、本件金員は譲渡所得と解するべきである旨主張する。
 しかしながら、私法上の取引行為は、私的自治の原則上、取引行為の内容等につき、公序良俗に反したり、不当な目的を実現するために濫用されるような場合を除き、当事者の自由な意思に委ねられているものである。したがって、租税法律主義の下においては、所得区分を判断するに当たっても、原則として、当事者の自由な意思によって成立した契約内容、契約類型等を前提として課税すべきである。
 そして、本件において、本件合意解約、本件土地賃貸借契約及び本件借地権付区分所有建物売買契約はいずれもその給付の内容を異にするものであり、前二者と後者とは契約の当事者をも異にしており、上記各契約は、別個独立の契約である。
 また、G社が本件建物を購入するメリットは少ないことから、G社とH社の協議において、本件建物の買主は名実ともにH社となったのであり、売主である請求人も買主の変更を了承していたものであって、上記各契約を一個の契約であると認めるべき特段の事情があるとも認められないから、これらの契約を一体として捉えるべきであるとする請求人の主張には理由がない。
(ニ) また、請求人は、所得税法施行令第94条第1項第2号の規定は、本件のように、契約解除時には物件の譲渡が決められており、直ちに売却している場合には該当しない旨主張するが、本条の趣旨は、上記(ロ)のとおりであり、本条を契約解除後も賃貸人が引き続き当該物件を所有している場合に限定すべき理由はない。
(ホ) さらに、請求人は、本件残存期間賃料が仮に譲渡所得に当たらないとしても、損害賠償金類似のものとして一時所得である旨主張する。
 しかしながら、一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいうところ、上記(ハ)のAのとおり、本件金員は本件合意解約の約定に基づく残存期間賃料相当額の支払でありその性質は合意解約がなければ本来得べかりし賃料の補償であって、不動産所得に該当するものであるから、これを一時所得と解すべき余地はない。
(ヘ) 審査請求の対象は原処分庁の処分の違法性であるところ、請求人の「担税力のない場合に課税するのは違法である」という主張は単に請求人の見解を披歴しているにすぎず、原処分庁の処分の違法性について具体的に主張しているものとは認め難いから、主張自体失当である。その点をおくとしても、本件残存期間賃料が本件債務の一部と相殺されたことにより、請求人は負っていた債務が減少するという経済的利益を得たこととなるから、担税力がないとはいえず、いずれにしても、請求人の主張には理由がない。

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(2) 争点2 本件残存期間賃料が不動産所得に該当した場合に、平均課税の適用はあるか。

イ 主張
(イ) 請求人
 仮に、本件残存期間賃料が不動産所得に該当した場合、臨時所得に該当する。
 請求人は、確定申告の際には、本件残存期間賃料を譲渡所得と判断して申告したものであり、臨時所得に該当する所得がなかったため、確定申告書に平均課税の適用を受ける旨の記載ができなかったのであるから、そのことは、所得税法第90条第5項に規定する「やむを得ない事情」に該当し、平均課税の適用を受けることができる。
(ロ) 原処分庁
 本件残存期間賃料は臨時所得に該当し、平均課税の適用の対象となるが、平均課税の適用は、確定申告書にその適用を受ける旨を記載することが要件とされており、本件申告書にその旨の記載はないことからその適用を受けることはできない。
 請求人は、確定申告書に平均課税の適用を受ける旨の記載をしなかったことについてやむを得ない事情がある旨主張するが、所得税法第90条第5項に規定する「やむを得ない事情」とは、客観的に見て納税者の責めに帰すことができない事情と解されるところ、請求人の主張する事情は、税法の解釈を誤り、本件残存期間賃料を譲渡所得として申告したためであり、これは客観的に見て納税者の責めに帰すことができない事情とはいえないから、やむを得ない事情があったとはいえず、平均課税の適用を受けることはできない。
ロ 判断
 所得税法第90条第5項に規定する「やむを得ない事情」とは、災害又はそれに準ずるような自己の責めに帰することができない客観的事情がある場合をいい、租税に関する知識不足や誤解などの主観的事情はこれに当たらないと解するのが相当であるところ、請求人が確定申告書に平均課税の適用を受ける旨の記載をしなかったのは、同人が税法の解釈を誤り、残存期間賃料相当額を譲渡所得として申告したためであり、これは客観的にみて納税者の責めに帰すことができない事情とはいえないから、やむを得ない事情があったと解することはできない。
 したがって、請求人は、平成19年分の所得税の計算において、平均課税の適用を受けることはできない。

(3) 本件更正処分について

イ 総所得金額
 上記(1)のとおり、本件残存期間賃料は不動産所得に係る収入金額に算入すべきであるから、不動産所得の金額は、請求人が確定申告書に記載した不動産所得の金額○○○○円に本件残存期間賃料○○○○円を加算した○○○○円となり、これに給与所得の金額○○○○円を加えた○○○○円が総所得金額になる。
ロ 分離長期譲渡所得の金額
 上記(1)のとおり、本件残存期間賃料は不動産所得となるから、分離長期譲渡所得の収入金額は、本件建物及び本件借地権の譲渡価額○○○○円に固定資産税等の負担相当額として受け取った210,370円を加えた○○○○円となり、これから、取得費199,153,256円及び譲渡費用15,000円の合計額199,168,256円を控除した△○○○○円が分離長期譲渡所得の金額になるところ、措置法第31条第1項により、分離長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、所得税に関する法令の適用については、当該損失の金額は生じなかったものとみなされる。
ハ 以上のとおり、請求人の総所得金額は○○○○円となり、これに対する納付すべき税額は○○○○円となるため、いずれも本件更正処分の金額と同額となるから、本件更正処分は適法である。

(4) 本件賦課決定処分について

 上記(3)のとおり、本件更正処分は適法であり、また、請求人には本件更正処分により納付すべき税額の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてされた本件賦課決定処分は適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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