(平成23年3月8日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、不動産賃貸業及び農業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が行った土地の譲渡について、当該土地の譲渡収入の額を課税売上割合の計算上、資産の譲渡等の対価の額に算入しないで控除対象仕入税額を算定し、消費税等の還付申告をしたのに対し、原処分庁が、当該土地の譲渡は事業として行われる資産の譲渡等に当たるから、課税売上割合の計算上その譲渡収入の額を資産の譲渡等の対価の額に算入すべきであるとして更正処分等を行ったことから、請求人がその全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 請求人は、平成20年7月1日から平成20年9月30日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分について、平成22年7月29日に審査請求をした。
 この審査請求に至る経緯は、別表記載のとおりである。

(3) 関係法令

 別紙のとおりである。

(4) 基礎事実

イ 請求人は、平成20年4月21日、その所有するc市d町土地区画整理事業地○○街区○画地の土地を分筆し、次の5画地に分割した。

(イ)d土地区画整理事業地○○街区○−1画地地積160平方メートル
(ロ)d土地区画整理事業地○○街区○−2画地地積160平方メートル
(ハ)d土地区画整理事業地○○街区○−3画地地積2,086平方メートル
(ニ)d土地区画整理事業地○○街区○−4画地地積170平方メートル
(ホ)d土地区画整理事業地○○街区○−5画地地積187平方メートル

ロ 請求人は、上記イの各土地のうち(ハ)を除く各土地(以下「各分割土地」という。)に、区画分けの杭打ち、地ならし及び境界のブロック積み等の工事(以下「本件工事」という。)を行い、平成20年から平成21年に順次売却した。
 なお、上記イ(ハ)の土地は、請求人によって稲作農地として使用されている。
ハ 請求人は、平成20年6月20日に、「消費税課税期間特例選択届出書」及び「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、本件課税期間から課税事業者となることを選択した。
ニ 請求人は、上記イ(ホ)の土地(以下「本件土地」という。)をC社に21,920,000円で売却する旨の不動産売買契約を平成20年7月14日付で締結し、同年9月19日に本件土地を引き渡した。
ホ 請求人は、D社との間でd土地区画整理事業地○○街区○画地に賃貸アパート2棟を建築する工事請負契約を締結し、平成20年7月30日に同賃貸アパートの引渡しを受けた。
ヘ 請求人は、c市農業委員会に対し、平成20年9月12日に本件土地の転用届出を行い、同年9月19日に受理通知を受けた。
ト 請求人は、本件課税期間の消費税等について、別表「確定申告」欄のとおり、上記ホの賃貸アパートの建築費用等を課税仕入れに係る支払対価の額に算入し、また、課税売上割合の計算上、本件土地の譲渡を消費税法第2条第1項第8号に規定する「資産の譲渡等」に当たらないものとして、その対価の額を資産の譲渡等の対価の額に算入しないで控除対象仕入税額を算定し、消費税等の還付金の額に相当する税額を算定して確定申告をした。
チ 原処分庁は、本件土地の譲渡は消費税法第2条第1項第8号に規定する「資産の譲渡等」に当たるとして、別表「更正処分等」欄のとおり控除対象仕入税額を算定し、消費税等の還付金に相当する金額を別表「更正処分等」欄のとおりとする更正処分等をした。

(5) 争点

 本件土地の譲渡は、消費税法第2条第1項第8号に規定する「資産の譲渡等」に当たるか否か。

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2 主張

(1) 原処分庁

イ 請求人は、農業の後継者がいないことから各分割土地の売却を従来から計画していたところ、平成19年の収穫が終わってからその分譲を具体化し、稲作農地を宅地にして区画形質の変更を行い、複数年にわたり継続的に対価を得て、各分割土地の譲渡を行ったものである。したがって、本件土地の譲渡は、「資産の譲渡等」に当たる。
ロ 平成19年の秋まで稲作農地であった各分割土地は、平成20年に休耕状態であったとしても、農地の一般的な使用方法を考慮すると、その事実のみをもって本件土地が事業用資産でないということはできず、さらに、まる1本件土地において稲作を行ってから本件工事及び譲渡をするまでの期間が比較的短いこと、まる2本件工事は譲渡を前提として行われたものであることからすれば、本件土地は、その譲渡時において、いまだ事業用資産としての性質は失われていないと解するほかない。したがって、本件土地の譲渡は、消費税法施行令第2条第3項に規定する「事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡等」に当たる。

(2) 請求人

イ 原処分庁は、請求人に農業後継者がいないことから、計画的に土地譲渡がなされた旨認定するが、請求人の農業の規模は請求人の長男が兼業で続けられるものであり、また、農地でなく賃貸アパート経営という選択もあるのであるから、農業後継者不在を理由に計画的な土地譲渡がなされたという原処分庁の認定は誤りである。したがって、本件土地の譲渡は「資産の譲渡等」に当たらない。
ロ 本件土地は、譲渡前に休耕状態になっているのではなく、平成20年4月から同年5月にかけ、宅地に整地した時点で稲作ができなくなったのであるから、農地から非農地になり、その時点で家庭用資産になったのである。したがって、本件土地の譲渡は、家庭用資産を売却したものであって、「事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡等」には当たらない。

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3 判断

(1) 争点について

イ 認定事実
 当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、各分割土地において稲作を行っていたところ、毎年、秋の刈り入れ終了後から翌年の作付けまでの間、各分割土地において作付けを行わず、田を休ませて冬季の休作状態としており、その他の用に使用することはなかった。
(ロ) 請求人は、平成19年も各分割土地において稲作を行い、同年秋の刈り入れ以降、田を休ませていたところ、平成20年2月ころC社から売却の話があったため、同年4月ころから本件工事を行い、平成19年秋の刈り入れ以降、平成20年9月19日に本件土地を引き渡すまで、本件土地を本件工事以外に使用したことはなかった。
ロ 法令解釈
 消費税法第2条第1項第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨規定している。また、消費税法施行令第2条第3項は、資産の譲渡等には、その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡等を含む旨規定しているところ、その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡等とは、事業活動の一環として又はこれに関連して行われる資産の譲渡等を含み、事業の用に供している土地等の譲渡は、事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡等に該当するものと解される。
ハ 判断
 これを本件についてみると、本件土地は、上記1(4)ヘ及び上記イ(イ)のとおり、稲作農地として請求人の事業の用に供されていた土地であって、上記イ(ロ)によれば、平成19年秋の収穫後に作付けを行っていなかったものの、上記イ(イ)に照らせば、例年どおり冬季の休作状態にしていたにすぎないのであるから、この時点において請求人の事業の用に供されていた土地としての性格を失うものではないと認められる。そして、上記イ(ロ)のとおり、本件土地が冬季の休作状態にあった平成20年2月ころに請求人の事業用資産である各分割土地の売却の話があり、それを受けて同年4月ころに本件工事が行われたことからすれば、本件工事は、請求人の事業用資産である本件土地の売却を目的として行われたものにすぎず、事業用資産としての性格を失わせる事情にはならないといえ、また、上記1(4)ヘのとおり本件土地の売却時まで農地の転用申請がされていないことや、他に本件土地の事業用資産としての性格を失わせる事情は認められないことを併せて考えると、本件土地は、売却時点において、請求人が営む事業の用に供していた資産であったと認めるのが相当である。
 そうすると、本件土地の譲渡は、請求人の事業活動に関連して行われる資産の譲渡等であって、「資産の譲渡等」に該当するものと認められる。

(2) 以上のとおり、原処分には、争点について、これを取り消すべき理由はない。
 また、原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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