(平成23年6月9日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、M税務署長が、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、○○卸売業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が特定の取引先に対する売上げの代金を従業員名義の預金口座に振り込ませ、当該売上げに係る金額を事業所得の金額の計算上総収入金額に算入していなかったなどとして原処分を行ったのに対し、請求人が、特定の取引先に対する売上げに係る金額を事業所得の金額の計算上総収入金額に算入していなかったのは前回の調査の担当者による指導に従った結果であるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人のまる1平成18年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分(以下「本件青色申告承認取消処分」という。)、まる2平成18年分、平成19年分及び平成20年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税、まる3平成18年1月1日から平成18年12月31日まで、平成19年1月1日から平成19年12月31日まで及び平成20年1月1日から平成20年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成18年課税期間」、「平成19年課税期間」及び「平成20年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の審査請求(平成22年6月11日請求)に至る経緯は、別表1及び別表2のとおりである。
ロ 請求人は、平成22年6月11日に別紙1の1の本件青色申告承認取消処分に係る審査請求を、同日に別紙1の2ないし4の各更正処分及び各賦課決定処分に係る審査請求をした。
 そこで、これらの審査請求について併合審理をする。

(3) 関係法令の要旨

 関係法令の要旨は、別紙4のとおりである。

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成17年11月17日から開始された所得税及び消費税等の税務調査(以下「前回調査」という。)を受けて、所得税については、平成12年分、平成13年分、平成14年分、平成15年分及び平成16年分の各修正申告書を、消費税等については、平成14年1月1日から平成14年12月31日まで、平成15年1月1日から平成15年12月31日まで及び平成16年1月1日から平成16年12月31日までの各課税期間の確定申告書を提出した(以下、請求人が提出した所得税及び消費税等のこれらの申告書を「前回調査申告書」という。)。
ロ 請求人の平成18年分の所得税の確定申告書には、平成18年分所得税青色申告決算書(一般用)が添付されており、その「売上(収入)金額」欄には○○○○円(以下「申告売上額」という。)と記載されている。
 なお、請求人は、消費税等の経理処理について、税込経理方式を適用している。
ハ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、平成21年8月18日から開始した所得税及び消費税等の税務調査(以下「本件調査」という。)において、同年11月2日に、「損益計算書(調査額)」と題する資料(以下「本件資料」という。)を請求人に提示するとともに、所得税については、本件各年分の修正申告書の提出を、消費税等については、本件各課税期間の修正申告書の提出をしょうようした。
ニ 請求人は、平成18年2月から平成20年3月までにおいて、N社(所在地:d市e町○−○)に対して次表のとおり金属の販売を行っており、その代金を、請求人の従業員であったP名義のQ銀行R支店の普通預金口座(口座番号○○○○、以下「本件預金口座」という。)に入金させた。
 なお、本件預金口座の預金通帳及び印章は請求人が保管及び管理をしていた。

平成18年分 平成19年分 平成20年分
216,580,634円 94,361,721円 2,246,006円

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2 争点

  1. 争点1 N社との取引を帳簿に記載しなかったことは青色申告の承認の取消事由に該当するか否か。
  2. 争点2 調査手続は不当か否か。
  3. 争点3 推計の方法による課税の必要性が認められるか否か。

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3 主張及び判断

(1) 争点1について

イ 主張

原処分庁 請求人
 請求人は、N社との取引金額を請求人が管理している本件預金口座に振り込ませ、平成18年分の総勘定元帳にN社との取引を記載していないことから、N社との取引の全部を隠ぺいしたと認められる。
 よって、請求人は、平成18年分の青色申告に係る帳簿書類の記録について所得税法第148条第1項に規定するところに従っておらず、かつ、帳簿書類にN社との取引の全部を隠ぺいして記載しており、これらの行為は、所得税法第150条第1項第1号及び同項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当する。
 なお、前回調査の担当職員(以下「前回調査担当職員」という。)が、請求人に対し、在庫に関しては自由に処分してもよいなどと言った事実はなく、また、前回調査担当職員が、直接請求人に対して前回調査申告書の提出をしょうようしたのは平成18年3月6日のみであって、それ以前に、請求人の自宅において請求人に対し、直接、前回調査申告書の提出をしょうようしたことはない。
 N社との取引を帳簿に記載しなかったのは、前回調査担当職員から、「これで調査は終了しますが、今ある在庫は好きに処分してください。処分した後は、ベンツを買おうがアクセサリーを買おうが何でも買ってください。ただし、処分した在庫に係るものは、ばれないように一切帳簿に載せないでください。これからは、うまく節税・脱税してください。」との指導を受けて当該在庫を処分したものである。このため、請求人がその指導に従ったにもかかわらず、本件調査で前回調査の際にあった棚卸しの処分について指摘され、本件青色申告承認取消処分がされたことには納得できない。
 なお、前回調査担当職員は、何度か請求人の自宅において、請求人と面接し、前回調査申告書の提出のしょうようを行っており、請求人は、前回調査担当職員による上記指導を受けたことにより、平成18年2月20日に、N社との取引に係る振込口座名を変更していることからすれば、前回調査担当職員による当該指導は、少なくとも同日以前である。

ロ 判断
(イ) 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 請求人は、「S社」という屋号で事業を営んでいるところ、平成17年12月2日に、N社との取引を開始する際にN社の営業担当者に対し、仕入先名を「T社」、住所を「f市g町○−○」、代表者を「U」とする「仕入与信申請書」の作成を依頼した。
 また、請求人は、平成17年12月3日付の「振込指定依頼書」で指定したN社との取引に係る代金の振込先口座(V銀行g支店のU名義の普通預金口座(口座番号○○○○))を、平成18年2月20日付の「振込指定依頼書」で本件預金口座へ変更した。その結果、平成18年分のN社との取引については、合計金額216,580,634円から振込手数料16,170円を控除した金額216,564,464円が本件預金口座へ入金されたが、請求人は、当該N社との取引について帳簿に記載しなかった。
B 前回調査において、前回調査担当職員が請求人と面接をしたのは、平成17年11月22日、平成18年1月25日及び同年3月6日であるところ、前回調査担当職員は、同年3月6日に請求人の自宅において、請求人に対して前回調査申告書の提出をしょうようした。そして、請求人は、同日に前回調査申告書をM税務署長に提出した。
C 前回調査担当職員は、異議審理庁の異議調査担当職員の質問に対し、在庫分は申告しないでいいなどと言うはずがない旨文書で回答した。
(ロ) 争点についての判断
A 平成18年分の請求人とN社との取引については、上記1の(4)のロ及び上記(イ)のAのとおり、請求人の申告売上額(○○○○円)を超える金額216,580,634円の取引があったにもかかわらず、請求人は、同年分のN社との取引について、帳簿に記載せず、当該金額を同年分の事業所得の金額の計算上総収入金額に算入しなかった。請求人のこのような行為は、所得税法第143条に規定する業務に係る帳簿書類への記録を同法第148条第1項及び所得税法施行規則第57条第1項第2号の規定に従って行っていないと認められ、このことは、所得税法第150条第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当する。
B また、請求人は、上記(イ)のAのとおり、「S社」という屋号で事業を営んでいるが、N社との取引については、「T社」の屋号を使用し、当該取引の代金を従業員名義の本件預金口座に入金させ、さらに当該取引を帳簿に記載しなかったことは、所得税法第143条に規定する業務に係る帳簿書類において取引の一部を隠ぺいしたものと認められ、このことは、同法第150条第1項第3号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当する。
C 以上のとおり、請求人の平成18年分の帳簿書類については、所得税法第150条第1項第1号及び第3号の青色申告の承認の取消事由に該当するので、本件青色申告承認取消処分は適法である。
D 請求人は、N社との取引を帳簿に記載しなかったのは、前回調査担当職員の指導が原因であり、請求人がその指導に従ったにもかかわらず、本件調査で、前回調査の際にあった棚卸しの処分について指摘され、本件青色申告承認取消処分がされたことには納得できない旨主張する。
 しかしながら、請求人の行為は、上記A及びBのとおり、所得税法第150条第1項第1号及び第3号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当し、また、まる1前回調査は、上記1の(4)のイのとおり平成17年11月17日に開始され、上記(イ)のBのとおり平成18年3月6日にM税務署長に前回調査申告書が提出されて終了しているところ、請求人は、上記(イ)のAのとおり、N社との取引について、前回調査の期間中に「T社」の屋号を使用してその代金を本件預金口座に入金させ、当該取引の全部を隠ぺいしたこと、まる2前回調査担当職員は、上記(イ)のCのとおり、請求人が主張する前回調査の際の指導の事実を否定していること、まる3前回調査担当職員が請求人に面接した日について、上記(イ)のBのとおりの事実が認められるのみであって、当該指導の可能性のある時期を特定することさえ難しいこと、また、まる4当該指導の存在を認めるに足るその他の証拠もないことからすれば、請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2について

イ 主張

請求人 原処分庁
 次のとおり、原処分に係る調査手続は不当である。  次のとおり、原処分に係る調査手続に不当な点はない。
(イ) 請求人が前回調査担当職員から受けた上記(1)のイの請求人の主張欄に記載の指導に従ったにもかかわらず、原処分庁が、本件調査で、前回調査の際にあった棚卸しの処分について売上計上漏れを指摘した。 (イ) 前回調査担当職員が請求人に対して請求人が主張するような指導をした事実はない。
(ロ) 原処分庁は、上記(イ)の売上げの原価である仕入れについては調査しようともせず、請求人の仕入れの資金調達から資金の流れについても全く調査した様子もない。 (ロ) 本件調査は、通則法、所得税法及び消費税法の規定に従い、適法に行われている。
(ハ) 原処分庁は、調査の途中経過として、本件資料を提示し、修正申告をしょうようしたが、請求人が本件資料について合意できないことを申し立てた後一度も面会することなく更正処分をした。 (ハ) 本件調査担当職員は、平成21年11月2日に、本件資料を請求人に提示し内容について説明を行っているが、その後、平成22年2月8日に、請求人の関与税理士であるx(以下「本件関与税理士」という。)の事務所において、請求人及び本件関与税理士に対し、原処分に係る調査額の説明を行っている。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 所得税法第234条第1項第1号又は消費税法第62条第1項第1号の規定は、所得税又は消費税について、調査の権限を有する税務職員において、当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記載保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事実にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合には、職権調査の一方法として、上記各号に規定する者に対して質問し、又はその事業に関する帳簿、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行う権限を認めた趣旨であって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、その必要と相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、これを権限ある税務職員の合理的な選択にゆだねたものと解するのが相当である。
(ロ) 本件への当てはめ
 請求人が不当と主張する、まる1前回調査担当職員の指導に従ったにもかかわらず、棚卸しの処分に係る売上計上漏れを指摘されたこと、まる2仕入れを調査しなかったこと、まる3更正処分前の請求人への説明がないことという各点については、質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目に係るものであるところ、当審判所の調査の結果によっても、上記(1)のロの(ロ)のDのとおり、請求人が主張する前回調査の際の指導なるものの存在は認められないことから、請求人の上記まる1の主張はその前提を欠き、また、請求人の上記まる2の主張についても、本件調査担当職員が、社会通念上相当な限度において合理的な選択により質問検査を行ったことを否定する証拠の存在を認めることはできず、下記(3)のロの(ハ)のBのとおり、請求人がいわゆる実額主張を行うものでもないことから、本件調査の調査手続が不当ということはできない。さらに、請求人の上記まる3の主張については、当審判所が原処分関係資料を調査したところ、本件調査担当職員は、平成22年2月8日に請求人及び本件関与税理士に対して原処分に係る調査額の説明をしている事実が認められる。したがって、請求人の主張には理由がない。

(3) 争点3について

イ 主張

原処分庁 請求人
(イ) 請求人が本件調査において提示した帳簿書類は、以下の理由により、請求人の業務の全部を網羅したものとは認められず、請求人の帳簿書類には信ぴょう性がなく、実額による収支計算の方法では事業所得の金額の算定が不可能であり、推計の必要性があった。
A N社との取引金額について本件各年分の総勘定元帳への記載がない。
B 在庫に関する棚卸表がなく、在庫管理がされていない。
C 財務日記帳の現金残高が総勘定元帳の現金勘定に記載されている金額と異なる。
D 給与賃金の支払に係る原始記録の保存がなく、また、財務日記帳に記載された給与賃金の金額と総勘定元帳に記載された金額が異なる。
E 減価償却費について、その内容を確認することができる書類の提示がない。
(イ) 前回調査では、請求人が現金式簡易帳簿及び総勘定元帳を記帳していなかったにもかかわらず、収支計算によって前回調査申告書を徴しているが、本件調査の対象となった本件各年分については、税理士が関与し、前回調査の時にはなかった現金式簡易帳簿及び総勘定元帳も記帳しており、請求人は記帳義務を果たしていたことから、推計の必要性はなく、前回調査と同様に収支計算ができたはずである。
 なお、原処分庁は、請求人が前回調査における棚卸額の認定の誤りを主張したが、聞き入れなかった。原処分庁が前回調査における棚卸額の認定の誤りを是正すれば推計による更正処分をする必要はなかった。
(ロ) 請求人に対して提示した本件資料における事業所得の金額は、実額により算定したものではない。 (ロ) 本件調査担当職員は、本件調査の途中経過として、平成21年11月2日時点における調査額を本件資料により説明し、修正申告をしょうようしていることから、推計の必要性はなかった。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 所得税法第156条は、所得の金額を推計して更正又は決定することを認めているところ、これは、税務調査に対する納税者の協力が得られない場合や帳簿書類の不備等によって納税者の所得金額を直接資料によって把握することができない場合に、課税を放棄することは租税の公平負担の見地から許されないため、課税庁が入手した、又は容易に入手し得る推計のための基礎事実及び統計資料等の間接的な資料を用いて、所得額に近似した額を推計し、これをもって課税することを是認する趣旨と解される。
 このため、推計課税は、まる1納税者が帳簿書類等を備え付けていない場合、まる2帳簿書類等を備え付けてはいるが、その内容が不正確で信頼性に乏しい場合、まる3納税者が調査に協力しない場合などに許されると解される。
(ロ) 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 本件調査において、請求人及び本件関与税理士が本件調査担当職員に提示した帳簿書類は、次のとおりであり、在庫に関する棚卸表は作成していないとして提示しなかった(以下、請求人及び本件関与税理士が本件調査担当職員に提示した帳簿書類を「本件提示書類」という。)。
(A) 本件各年分の総勘定元帳
(B) 本件各年分の財務日記帳
(C) 本件各年分の仕入れに関する仕切書
(D) 平成17年12月分から平成19年9月分までの売上げに関する請求書(控)
(E) 表紙に「W社」、「H18年〜H19」及び「W社(○○)」と記載された大学ノート
B 請求人は、当審判所に対して、日々の現金による売上げ及び経費等の支払を管理するために、現金出納帳を兼ねた財務日記帳を作成しており、そして、財務日記帳に記載された現金入金及び現金出金の金額を基に、本件関与税理士の事務所の職員によって総勘定元帳の現金勘定が記載されている旨答述した。
 なお、財務日記帳の様式においては、現金入金を売上入金とその他の入金(売掛金入金、借入金、普通預金引出入金、事業主借等)に区別するとともに、現金出金を必要経費となる出金とその他の出金(専従者給与、借入金返済、買掛金支払、普通預金預入出金、事業主貸等)に区別し、前日及び当日の現金残高を記載することとなっている。
C 本件各年分の各月末における財務日記帳の現金残高と総勘定元帳の現金勘定の残高は、別表3のとおりであり、財務日記帳には、平成19年4月以降の残高の記載がなく、また、財務日記帳の「給料賃金」及び「専従者給与」欄の記入漏れが散見され、後日、記入漏れとして記入したり、総勘定元帳の現金勘定には、財務日記帳に記載のない「Q銀行引出し」又は「事業主借入」の記載があったりするなど、財務日記帳と総勘定元帳の現金勘定との間に整合性がない。
D 本件関与税理士は、請求人が作成した財務日記帳、預金通帳等を基にして総勘定元帳及び本件各年分の所得税の確定申告書を作成した。そして、請求人は、当該確定申告書をM税務署長に提出した。
E 請求人は、上記(1)のロの(イ)のAのとおり、平成18年分の請求人とN社との取引について、帳簿に記載せず、当該取引に係る金額を事業所得の金額の計算上総収入金額に算入しておらず、また、平成19年分及び平成20年分のN社との取引についても帳簿に記載せず、当該取引に係る金額を事業所得の金額の計算上総収入金額に算入していなかった。
F 請求人は、本件調査担当職員に対し、N社との取引に係る売上原価に関する書類の提示をしなかった。
G 請求人は、在庫の棚卸しを行っておらず、平成17年分の所得税の確定申告書に添付した平成17年分収支内訳書(一般用)の「期首商品(製品)棚卸高」及び「期末商品(製品)棚卸高」の「金額」欄には記載がなく、平成18年分の所得税の確定申告書に添付した青色申告決算書(一般用)の「期首商品(製品)棚卸高」の「金額」欄にも記載がない。
 また、本件関与税理士は、当審判所に対し、本件各年分の期末商品棚卸高について、確定申告書を作成する時期に、だいたいこれくらいという請求人からの聴き取りにより記載した旨答述しており、本件各年分の所得税の確定申告書に添付された青色申告決算書(一般用)の「期末商品(製品)棚卸高」の「金額」欄は、請求人からの聴き取りに基づき記載されたものであって証拠資料に基づき算定されたものではない。
H 本件各年分の給与の額については、財務日記帳と総勘定元帳に別表4のとおり記載されており、それによると次のとおり金額が異なっているところ、請求人は、本件調査担当職員に対し、当該給与の支給時期及び支給額を確認できる書類を提示しなかった。
(A) 平成18年分については、財務日記帳の「給料賃金」及び「専従者給与」欄の金額を合計すると21,162,000円であるのに対し、総勘定元帳の給与手当勘定、雑給勘定及び賞与勘定の金額を合計すると19,294,000円である。
(B) 平成19年分については、財務日記帳の「給料賃金」及び「専従者給与」欄の金額を合計すると13,567,000円であるのに対し、総勘定元帳の給与手当勘定及び賞与勘定の金額を合計すると13,760,300円である。
(C) 平成20年分については、財務日記帳の「給料賃金」欄には記載がなく、「専従者給与」欄には平成20年3月5日の400,000円だけが記載されているのに対し、総勘定元帳の給与手当勘定、雑給勘定、賞与勘定及び専従者給与勘定の金額を合計すると15,070,500円である。
I 請求人は、本件各年分の所得税の確定申告書に減価償却費の計算の明細表を添付しており、当該明細表の「本年分の必要経費算入額」及び「未償却残高(期末残高)」の「計」欄に、平成18年分はそれぞれ23,791,854円及び125,153,969円、平成19年分はそれぞれ29,634,200円及び135,288,756円、平成20年分はそれぞれ29,244,281円及び129,250,449円と記載しているが、本件調査担当職員に対し、当該減価償却資産の取得時期及び取得価額を確認できる書類を提示しなかった。
(ハ) 本件への当てはめ
 上記(ロ)の事実を上記(イ)に当てはめると、次のとおりである。
A 請求人が備え付けている上記(ロ)のAの本件提示書類について、まる1財務日記帳と総勘定元帳の現金勘定は、上記(ロ)のB及びCのとおり、本来記載されるべき事項が記載されていないなど取引を正確に記帳したものではなく、同様に給与の額についても、同Hのとおり異なっていることから、財務日記帳と総勘定元帳の相互間に不一致が認められること、まる2N社との取引については、上記1の(4)のニのとおり本件各年分の合計で3億円を超える取引があったにもかかわらず、請求人は、上記(ロ)のD及びEのとおり、当該取引を帳簿に記載せず、かつ、当該取引に係る金額を事業所得の金額の計算上総収入金額に算入せずに本件各年分の所得税の確定申告をしたこと、まる3請求人は、上記(ロ)のA、F及びGのとおり、在庫に関する棚卸表を作成しておらず、書類等に基づく棚卸高の算定もできないことから、期首及び期末の棚卸高が不明であるため、N社への売上げに係る原価のみならず、他の売上げに係る原価も適正に算定できないこと、まる4給与及び減価償却費の額については、上記(ロ)のH及びIのとおり、本件各年分の合計で1億円を超える額であるにもかかわらず、証ひょう書類によって必要経費としての立証がされないことからすれば、本件提示書類には、事業に係る取引が継続的かつ秩序正しく記録されているとは認められず、本件提示書類の備付けはあるものの、その内容が不正確で信頼性が乏しいといわざるを得ない。
 以上のことは、上記(イ)のまる2の帳簿書類を備え付けてはいるが、その内容が不正確で信頼性に乏しい場合に当たることから、原処分段階において、推計の必要性はあったと認められる。
B 請求人は、当審判所に対し、本件各年分の事業所得の金額を収支計算の方法によることを主張せず、帳簿書類を提示しないことから、当審判所においても、本件各年分の事業所得の金額を推計の方法により算定せざるを得ない。
(ニ) 請求人の主張について
A 請求人は、本件調査の対象となった本件各年分については、税理士が関与し、前回調査の時にはなかった現金式簡易帳簿及び総勘定元帳も記帳しており、記帳義務を果たしていたことから、本件各年分の事業所得の金額の算定に当たり推計の必要性はなかった旨主張する。
 しかしながら、請求人は、本件提示書類を備え付けてはいるものの、その内容が不正確で信頼性に乏しい場合に当たることから、本件各年分の事業所得の金額の算定に当たり推計の必要性はあったと認められることについては、上記(ハ)のAのとおりである。したがって、請求人の主張には理由がない。
B 請求人は、原処分庁が前回調査における棚卸額の認定の誤りを是正すれば推計による更正処分をする必要はなかった旨主張する。
 しかしながら、前回調査において棚卸額の認定に誤りがあったとする証拠はなく、また、上記(ロ)のGのとおり、そもそも在庫の棚卸しが行われていない本件においては、そのことが本件各年分において請求人の事業所得の金額の算定に係る推計の必要性やその結果に基づく所得税の更正処分の必要性の判断に影響するものではないと認められる。したがって、請求人の主張には理由がない。
C 請求人は、本件調査担当職員が請求人に対し、本件調査の途中経過として、平成21年11月2日時点における調査額を本件資料により説明し、修正申告をしょうようしていることから、本件各年分の事業所得の金額の算定に当たり推計の必要性はなかった旨主張する。
 しかしながら、本件調査担当職員が請求人に対して調査額を本件資料により説明し、修正申告のしょうようをしたことは、その時点において把握した事実等に基づき算定した事業所得の金額を示したものにすぎず、もとより法律上の効果を伴うものでも、請求人や本件調査担当職員を拘束するものでもない上、本件調査担当職員から、本件資料による事業所得の金額の説明があったからといって、それにより、請求人の事業所得の金額及び納付すべき所得税額が確定するものでもない。そして、原処分庁が主張するように、本件資料が売上原価に係る一定の推計額を基礎としていることからすれば、本来の課税標準等について請求人と原処分庁との間に合意が成立せず、原処分庁が更正処分を行わなければならなくなった本件において、原処分庁が売上原価に係る一定の推計額を基礎とした所得金額の算定方法によらずに、統計学的基盤も有する、透明性や中立性のより高い所得金額の推計方法として、類似同業者の平均特前所得率(類似同業者の青色申告の特典を控除する前の事業所得の金額を総収入金額で除して計算した特前所得率の平均値をいう。以下同じ。)による推計方法を採用して当該更正処分を行ったことは、むしろ合理的かつ妥当な判断であったものと認められる。したがって、本件調査担当職員が本件資料により修正申告のしょうようを行ったことのみを理由として、本件各年分の事業所得の金額の算定に当たり推計の必要性はなかったと判断することはできず、請求人の主張には理由がない。

(4) 推計の合理性について

 請求人は、推計の方法による課税について、推計の必要性はなかったと主張するのみで、推計の合理性については何ら主張していない。そこで、当審判所において審理したところ、以下のとおりである。
イ 原処分庁は、請求人の本件各年分の事業所得の金額を、総収入金額に類似同業者の平均特前所得率を乗じて推計の方法により算定しているところ、およそ業種、業態に類似性のある同業者にあっては、特段の事情がない限り、同程度の収入に対して同程度の所得を得るのが通例であり、このことは請求人の営む事業の場合にあっても例外ではなく、かつ、請求人に特段の事情があるとは認められないから、原処分庁の用いた推計方法には合理性があると認められる。
ロ ところで、原処分庁は、L国税局管内に事業所を有し、請求人と同業種の者で、かつ、その年分の総収入金額が請求人のそれの0.5倍以上2倍以下であるなど事業規模の類似する事業を営む青色申告者を類似同業者として、別表5のとおり本件各年分について各5件を選定しているところ、当審判所において原処分庁の類似同業者の選定方法についてその適否を審理した結果、別表6のとおり、類似同業者の選定漏れが平成18年分については1件、平成19年分及び平成20年分については各6件認められた。
ハ そこで、当審判所が本件各年分の平均特前所得率を計算すると、別表6の「特前所得率」の「平均」欄のとおり平成18年分は13.66%、平成19年分は9.69%、平成20年分は11.07%となる。

(5) 所得税の更正処分について

イ 平成18年分について
(イ) 事業所得の総収入金額
 原処分庁は、総収入金額を○○○○円と主張しているところ、当審判所の調査の結果によっても、別表7の「平成18年分」の「合計」欄のとおり○○○○円であることが認められる。
(ロ) 事業所得の金額
 請求人の事業所得の金額は、上記(イ)の事業所得の総収入金額○○○○円に、上記(4)のハの13.66%を乗じた金額となり、別表8の「平成18年分」の「審判所認定額」の「事業所得の金額」欄のとおり○○○○円となる。
(ハ) 譲渡所得の金額
 原処分庁は、譲渡所得の金額を○○○○円と主張しているところ、当審判所の調査の結果によると、以下のとおりである。
A 総収入金額
 請求人は、平成17年1月にq社t支店(所在地:a県u市v町○−○)から19,110,000円で購入した事業用の自走式油圧ショベル(以下「本件重機」という。)を、平成18年3月に同社に○○○○円で譲渡したことから、総収入金額は○○○○円であることが認められる。
B 取得費
 原処分庁は、譲渡資産である本件重機の取得費を14,810,250円であると主張するが、本件重機は、平成20年財務省令第32号による改正前の減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第2「機械及び装置」の「334 ブルドーザー、パワーショベルその他の自走式作業用機械設備」に該当するので、その耐用年数である5年を適用して算定した減価償却費の額3,439,800円を取得価額19,110,000円から控除した残額15,670,200円が取得費となる。
C 特別控除額 
 所得税法第33条《譲渡所得》第3項に規定する譲渡所得の特別控除額は、同条第4項の規定により500,000円となる。
D 譲渡所得の金額
 譲渡所得の金額は、上記Aの総収入金額○○○○円から上記Bの取得費15,670,200円を控除し、さらに、上記Cの特別控除額500,000円を控除した残額○○○○円であることが認められる。
(ニ) 総所得金額
 請求人の総所得金額は、別表8の「平成18年分」の「審判所認定額」の「総所得金額」欄のとおり○○○○円となり、平成18年分の更正処分に係る総所得金額を下回るので、別紙2の「取消額等計算書」のとおり、更正処分の一部を取り消すべきである。
ロ 平成19年分について
(イ) 事業所得の総収入金額
 原処分庁は、総収入金額を○○○○円と主張しているところ、当審判所の調査の結果によっても、別表7の「平成19年分」の「合計」欄のとおり○○○○円であることが認められる。
(ロ) 事業所得の金額
 請求人の事業所得の金額は、上記(イ)の事業所得の総収入金額○○○○円に、上記(4)のハの9.69%を乗じた金額となり、別表8の「平成19年分」の「審判所認定額」の「事業所得の金額」欄のとおり○○○○円となる。
(ハ) 総所得金額
 請求人の総所得金額は、別表8の「平成19年分」の「審判所認定額」の「総所得金額」欄のとおり○○○○円となり、平成19年分の更正処分に係る総所得金額を下回るので、別紙3の「取消額等計算書」のとおり、更正処分の一部を取り消すべきである。
ハ 平成20年分について
(イ) 事業所得の総収入金額
 原処分庁は、総収入金額を○○○○円と主張しているところ、当審判所の調査の結果によっても、別表7の「平成20年分」の「合計」欄のとおり○○○○円であることが認められる。
(ロ) 事業所得の金額
 請求人の事業所得の金額は、上記(イ)の事業所得の総収入金額○○○○円に、上記(4)のハの11.07%を乗じた金額○○○○円から事業専従者控除額○○○○円を控除した金額となり、別表8の「平成20年分」の「審判所認定額」の「事業所得の金額」欄のとおり○○○○円となる。
(ハ) 総所得金額
 請求人の総所得金額は、別表8の「平成20年分」の「審判所認定額」の「総所得金額」欄のとおり○○○○円となり、平成20年分の更正処分に係る総所得金額を上回るので、更正処分は適法である。

(6) 消費税等の更正処分について

 請求人は、本件各課税期間の消費税等の各更正処分の取消理由として、上記(2)の調査手続の不当を主張するのみで、課税資産の譲渡等の対価の額及び仕入税額控除の額等の算定について何ら主張しない。そこで、当審判所において、審理したところ、以下のとおりである。
イ 課税資産の譲渡等の対価の額
 請求人の本件各課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額は、別表9の各課税期間の「課税資産の譲渡等の対価の額」欄のとおり、平成18年課税期間は○○○○円、平成19年課税期間は○○○○円、平成20年課税期間は○○○○円であることが認められる。
ロ 課税標準額
 請求人の本件各課税期間の課税標準額は、上記イの課税資産の譲渡等の対価の額(千円未満の端数を切捨て)であり、平成18年課税期間は○○○○円、平成19年課税期間は○○○○円、平成20年課税期間は○○○○円となる。
ハ 消費税額
 請求人の本件各課税期間の消費税額は、上記ロの課税標準額に100分の4を乗じた金額であり、別表11の各課税期間の「消費税額」欄のとおり、平成18年課税期間は○○○○円、平成19年課税期間は○○○○円、平成20年課税期間は○○○○円となる。
ニ 本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額
 請求人の本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額は、別表10の各課税期間の「合計」欄のとおり、平成18年課税期間は○○○○円、平成19年課税期間は○○○○円、平成20年課税期間は○○○○円であることが認められる。
ホ 控除対象仕入税額
 請求人の本件各課税期間の控除対象仕入税額は、上記ニの本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に105分の4を乗じた金額であり、別表11の各課税期間の「控除対象仕入税額」欄のとおり、平成18年課税期間は○○○○円、平成19年課税期間は○○○○円、平成20年課税期間は○○○○円となる。
ヘ 消費税等の額
 上記イないしホに基づき、納付すべき消費税等の額を計算すると、別表11のとおりとなり、当審判所が認定した本件各課税期間の消費税等の額は、いずれも本件各課税期間の消費税等の各更正処分の額を上回ることから、本件各課税期間の消費税等の各更正処分は適法である。

(7) 加算税の賦課決定処分について

イ 請求人とN社との取引について
 請求人は、上記(1)のロの(イ)のA及び上記(3)のロの(ロ)のEのとおり、本件各年分のN社との取引について、当該取引の代金を請求人が管理していた本件預金口座に振り込ませ、当該取引を帳簿に記載せず、業務に係る帳簿書類において取引の一部を隠ぺいしていることが認められ、そして、当該取引の一部が隠ぺいされた帳簿書類を基に作成した所得税及び消費税等の確定申告書をM税務署長に提出していたことが認められる。
 このことは、通則法第68条第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当する。
ロ 所得税について
(イ) 平成18年分について
 請求人がN社との取引を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき平成18年分の所得税の確定申告書を提出していたことは、上記イのとおり通則法第68条第1項の規定に該当することから、原処分庁が当該取引に係る隠ぺいについて重加算税を賦課したことは相当である。また、過少申告加算税の賦課決定処分は、当該処分に係る税額の計算の基礎となった事実について、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、原処分庁が同条第1項及び第2項の規定に基づき過少申告加算税を賦課したことは相当である。
 しかしながら、原処分庁は、平成18年分のN社との取引金額に別表5の平均特前所得率15.42%を乗じて計算した金額を重加算税の対象となる所得金額として過少申告加算税及び重加算税の額の計算の基礎となる税額を算定しているところ、上記(4)のハのとおり、上記の平均特前所得率については、別表6の平均特前所得率13.66%によるのが相当である。
 そうすると、平成18年分の所得税の過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分については、上記(5)のイのとおり、平成18年分の所得税の更正処分の一部が取り消されることにより、過少申告加算税及び重加算税の額の計算の基礎となる税額を算定すると原処分に係る過少申告加算税及び重加算税の額の計算の基礎となった税額を下回るので、別紙2の「取消額等計算書」のとおり、いずれもその一部を取り消すべきである。
(ロ) 平成19年分について
 請求人がN社との取引を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき平成19年分の所得税の確定申告書を提出していたことは、上記イのとおり通則法第68条第1項の規定に該当することから、原処分庁が当該取引に係る隠ぺいについて重加算税を賦課したことは相当である。また、過少申告加算税の賦課決定処分は、当該処分に係る税額の計算の基礎となった事実について、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、原処分庁が同条第1項及び第2項の規定に基づき過少申告加算税を賦課したことは相当である。
 しかしながら、原処分庁は、平成19年分のN社との取引金額に別表5の平均特前所得率12.72%を乗じて計算した金額を重加算税の対象となる所得金額として過少申告加算税及び重加算税の額の計算の基礎となる税額を算定しているところ、上記(4)のハのとおり、上記の平均特前所得率については、別表6の平均特前所得率9.69%によるのが相当である。
 そうすると、平成19年分の所得税の過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分については、上記(5)のロのとおり、平成19年分の所得税の更正処分の一部が取り消されることにより、過少申告加算税及び重加算税の額の計算の基礎となる税額を算定すると原処分に係る過少申告加算税及び重加算税の額の計算の基礎となった税額を下回るので、別紙3の「取消額等計算書」のとおり、いずれもその一部を取り消すべきである。
(ハ) 平成20年分について
 請求人がN社との取引を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき平成20年分の所得税の確定申告書を提出していたことは、上記イのとおり通則法第68条第1項の規定に該当することから、原処分庁が当該取引に係る隠ぺいについて重加算税を賦課したことは相当である。また、過少申告加算税の賦課決定処分は、当該処分に係る税額の計算の基礎となった事実について、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、原処分庁が同条第1項及び第2項の規定に基づき過少申告加算税を賦課したことは相当である。
 しかしながら、原処分庁は、平成20年分のN社との取引金額に別表5の平均特前所得率10.08%を乗じて計算した金額を重加算税の対象となる所得金額として過少申告加算税及び重加算税の額の計算の基礎となる税額を算定しているところ、上記(4)のハのとおり、上記の平均特前所得率については、別表6の平均特前所得率11.07%によるのが相当である。
 そうすると、平成20年分の所得税の過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分については、上記の平均特前所得率11.07%により、過少申告加算税及び重加算税の額の計算の基礎となる税額を算定すると原処分に係る過少申告加算税及び重加算税の額の計算の基礎となった税額を上回るので適法である。
ハ 消費税等について
 請求人がN社との取引を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき本件各課税期間の消費税等の確定申告書を提出していたことは、上記イのとおり通則法第68条第1項の規定に該当することから、原処分庁が当該取引に係る隠ぺいについて、N社との取引金額を基に重加算税の額の計算の基礎となる税額を算定して重加算税を賦課したことは相当である。また、平成18年課税期間及び平成20年課税期間の過少申告加算税の各賦課決定処分は、いずれも過少申告加算税の額の計算の基礎となった事実について、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、原処分庁が当該事実のうち重加算税の額の計算の基礎とならない事実を基に過少申告加算税の額の計算の基礎となる税額を算定して同条第1項の規定に基づき過少申告加算税を賦課したことは相当である。
 したがって、平成18年課税期間及び平成20年課税期間の過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分並びに平成19年課税期間の重加算税の賦課決定処分は、いずれも適法である。

(8) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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