(平成24年3月8日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人A及びC(以下「請求人ら」という。)が、以前に成立していた遺産分割協議に基づく代償債務が履行されないことから、当該遺産分割協議を解除した上、改めて請求人らが一切の遺産を相続しないという内容の遺産分割協議を行った結果、請求人らは相続財産を取得しないこととなったとして更正の請求(以下「本件各更正の請求」という。)を行ったところ、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことに対して、請求人らが違法を理由にその全部の取消しを求めた事案であり、争点は、当該遺産分割協議を解除し、再分割を行ったことが、国税通則法(以下「通則法」という。)第23条《更正の請求》第2項第3号の規定に該当するか否かである。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成23年5月26日請求)に至る経緯は、別表のとおりである。なお、請求人らは、Aを総代として選任し、審査請求の日と同日にその旨を当審判所に届け出た。

(3) 関係法令

 別紙2のとおりである。

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人らと原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人ら及び共同相続人について
 請求人らは、平成6年4月○日に死亡したD(以下「被相続人」といい、この被相続人の死亡に係る相続を「本件相続」という。)の子であり、本件相続に係る共同相続人は、請求人ら及び被相続人の子で請求人らの弟であるEの3名である。なお、法定相続分は、各3分の1ずつである。
ロ 当初の遺産分割協議について
 請求人らとEは、本件相続に際し、平成6年5月24日付の遺産分割協議書によって、被相続人に係る遺産については、Eが不動産全てを相続し、Eは請求人らに各○○○○円の支払義務を負うといういわゆる代償分割の方法による遺産分割協議を成立させた(以下、当該遺産分割協議による遺産の分割を「本件当初分割」といい、Eの請求人らに対する各代償債務を「本件各代償債務」という。)。
 なお、本件当初分割において、本件各代償債務の弁済期、弁済方法については、まる1「h市d町に所在する『Fセンター』」の売却時、又はまる2本件相続に係る相続税の納付時のいずれかが早く到来した時に、Eが、請求人らに対して、一括して支払うこととされた。
ハ 本件当初分割に基づく相続税の申告について
 請求人ら及びEは、法定申告期限内の平成6年12月12日、本件当初分割に基づき、原処分庁に対して、共同して、相続税の申告をした(以下「本件当初申告」という。)。このうち、請求人らの本件当初申告の内容の概要は、別表の「申告」欄記載のとおりである。なお、本件当初申告においては、請求人らの取得する財産は本件各代償債務であり、その他の被相続人の財産は全てEが取得することが前提とされている。
ニ G国税局長に対する書面の提出について
 請求人らは、平成19年6月19日付で、G国税局長宛に、要旨、まる1遺産分割の経緯、まる2Eが平成16年にFセンターを売却した際、譲渡代金を全てEの債務及び税金等に充当してしまい、請求人らは全く分配を受けていないこと、まる3平成19年に入り、請求人らに対してEの相続税に係る連帯納付義務の文書(未納額はそれぞれ○○○○円)が送付されてきたこと、まる4請求人らとしては、受け取っていない収入に対する納税を果たすことが義務だといわれても理解の範疇を超え、また、資産もなく現実に納付は無理であることから、寛大な処置を求めることを内容とする嘆願書と題する書面を提出した。
 さらに、請求人らは、平成20年5月30日付及び平成21年4月14日付にて、G国税局長宛に、上記と同旨の嘆願書と題する書面を提出した。
ホ 債務不履行を理由とした本件当初分割の解除の意思表示について
 請求人らは、平成22年9月1日、Eに対し、「解除権行使の通知書」と題する書面を送付し、同月2日、同書面は、Eに到達した。
 当該書面には、要旨、本件相続については共同相続人間で遺産分割協議が成立しているところ、その後、同協議に基づき請求人らがEから受け取るべき代償財産○○○○円については、引渡しの期日を経過しても履行がないため、再三にわたり履行をするよう求めてきたが、いまだにその履行は全くされておらず、それにも関わらず、ついには請求人らにEの相続税の連帯納付義務までが課されることになったので、債務不履行を理由に遺産分割協議を解除(債務不履行を理由とする解除を、以下「本件債務不履行解除」という。)する旨が記載されている。
ヘ 再度の遺産分割協議について
 請求人らとEは、平成22年9月9日付で、再度、遺産分割協議書を作成し、署名押印した。当該遺産分割協議書には、要旨、上記ホの債務不履行を理由に本件当初分割に係る遺産分割協議を解除したことにより被相続人の遺産は再び未分割の状態に復することになったため、改めて共同相続人全員で遺産の分割協議を行ったところ、Eが被相続人の財産及び債務の全てを相続し、請求人らは財産を相続しないことに決定した旨が記載されている(当該遺産分割協議による遺産の分割を、以下「本件再分割」という。)。
ト 原処分について
 請求人らは、平成22年10月12日、原処分庁に対し、本件債務不履行解除に係る通知書の写し及び本件再分割に係る遺産分割協議書の写しを添付して、更正の請求をする理由を「相続財産を取得しないこととなったため」とする更正の請求(本件各更正の請求)を行った。
 これに対し、原処分庁は、請求人らに対し、平成23年1月7日付で、代償債権の履行が受けられず、再度、遺産分割協議を行ったとしても、更正の請求ができる場合に該当しないとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分(原処分)を行った。

トップに戻る

2 主張

請求人 原処分庁
1 本件債務不履行解除について 1 本件債務不履行解除について
 請求人らは、Eに対して、本件当初分割に係る遺産分割協議について債務不履行を理由に解除する旨の意思表示をし、当該意思表示は有効であるから、通則法施行令第6条第1項第2号に規定する「申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に係る契約が、解除権の行使によって解除され」た場合に該当する。
 なお、本件債務不履行解除に係る意思表示の有効性については、最高裁平成元年2月9日判決(以下「平成元年判決」という。)とは、以下のように事案が異なり、解除の意思表示として有効である。
 すなわち、まる1平成元年判決の事例において債務不履行となっているのは遺産の分割に際して付加された遺産に属さない債務(実母の扶養等をすべき債務)であって、協議の目的は既に達成されている事例であり、本件は、遺産の帰属を定めた協議自体(代償債務)が債務不履行となっているため、協議の目的がいまだに達成されていない事案である。また、まる2本件各代償債務は、相続税の課税価格の基礎に算入され、これにより請求人らは相続税を納付すべき義務及び連帯納付責任が課せられることとなる。そして、まる3本件では、遺産分割協議の当事者の全員の間において、債務不履行を理由として本件当初分割を覆そうとしたものであり、解除を認めてもその法的安定性が害されることは全くなく、むしろ請求人らの権利(正義)が実現されることとなる事例である。なお、最高裁平成2年9月27日判決によって遺産分割の合意解除が認められているにも関わらず、法定解除権(債務不履行解除権)の行使が認められないとする根拠はない。また、まる4平成元年判決は、被相続人から承継取得した債務ではない「実母の扶養等をすべき債務」の不履行に関する事案であるが、本件は、自己の相続権に起因して取得した債務であると見るのが相当な代償債務の不履行に関する事案である。
 平成元年判決からすれば、遺産分割協議成立後に、相続人の一人が負担した債務を履行しないときであっても、他の共同相続人は民法第541条《履行遅滞等による解除権》によって当該遺産分割を解除することはできないものと解されることから、本件各代償債務の不履行を理由とする解除は、法定の解除事由に基づいて行われたものと認められず、「解除権の行使によって解除」(通則法施行令第6条第1項第2号)された場合に該当しない。
2 本件再分割について 2 本件再分割について
 仮に、請求人らとEが、本件再分割において、本件当初分割に係る遺産分割協議を合意解除したものであるとしても、当該合意解除の経緯としては、Eは、資力を喪失したことにより、請求人らに対し、本件当初分割において定められた本件各代償債務を履行せず、しかも、請求人らは、Eの相続税に係る連帯納付義務まで課されたので、このような連帯納付責任を消滅させ、また、既に納付した相続税の返還を求める方が経済的合理性の観点からも得策であると考え、本件再分割において、請求人らは本件当初分割に係る遺産分割協議を合意解除し、改めて請求人らが財産を相続しない旨の遺産分割をしたものである。
 本件では、まる1債務不履行解除という法定の解除事由によって(合意)解除がされたものであって、まる2請求人らは連帯納付責任までも課され、借財をしないと当該責任を果たすことができず、本件当初分割時から事情の変更があり、本件当初分割の効力を維持するのが不当なものであって、まる3このような事情となったことについて、請求人らに何らの帰責性もないのであるから、通則法施行令第6条第1項第2号に規定する「申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に係る契約が、当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され」た場合に該当する。
 通則法施行令第6条第1項第2号に規定する「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除」とは、法定の解除事由がある場合、事情の変更により契約の効力を維持するのが不当な場合及びその他これに類する客観的理由に基づいてされた場合であるとされている。
 本件では、請求人ら及びEは、本件再分割の際に、相続人らの合意に基づき本件当初分割に係る遺産分割協議を合意解除したものであると認められる。
 当該合意解除が、本件各代償債務の不履行を理由としていたとしても、民法第541条による遺産分割協議の解除はできないのであるから、法定の解除事由があるとは認められない。さらに、当該合意解除については、本件各更正の請求は、本件再分割において、請求人らが財産を相続しないことを理由とするものであり、当該合意解除は、請求人らに連帯納付責任が課されたことを理由としていること、本件当初分割に基づきEが取得した不動産の一部を既に売買等により処分していること及び本件再分割において請求人らは被相続人に係る相続財産を一切取得しないとしていることから、当該合意解除は、事情の変更により本件当初分割の効力を維持するのが不当な場合、その他これに類する客観的理由に基づいてされたものとは認められない。
3 解除と請求人らの納付すべき税額について 3 解除と請求人らの納付すべき税額について
 請求人ら及びEは、本件再分割を行ったことから、相続税法の規定に基づき、当該分割によって請求人らが取得した財産の価額により相続税の課税価格を計算し、通則法第23条第2項第3号の規定に基づく更正の請求に及んだものである。
 なお、国税庁のホームページにおいて、実務上、第2次相続に係る相続税の申告書の提出後に、第1次相続についての分割協議が確定し、第2次相続の被相続人の相続財産が第2次相続の当初申告額より少なくなったにも関わらず、納税者側から是正する手続がない場合において、これを放置することが課税上著しい不公平となると税務署長が認めるときには、調査結果に基づき、通則法第71条第1項第2号に規定する「・・無効な行為により生じた経済的効果がその行為の無効であることに基因して失われたこと・・又は取り消しうべき行為が取り消されたこと・・」に該当するものとして減額更正を行っても差し支えないという柔軟な取扱いがなされているところであり、本件でも、法を柔軟に解し、本件各更正の請求を認めるべきである。
 また、仮に、請求人の主張する解除が、通則法第23条第2項第3号の規定に該当するものとしても、相続財産が未分割となるのみであり、請求人らが納付すべき税額は当初申告を下回るものではなく、Eのみが更正の請求をすることができるものであって、請求人らが更正の請求をすることができるものではない。

トップに戻る

3 判断

(1) 法令解釈

イ 遺産分割協議と債務不履行解除について
 共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して当該協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は民法第541条によって当該協議を解除することができないと解するのが相当である。なぜならば、遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、その後は当該協議において当該債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関係が残るだけと解すべきであり、しかも、このように解さなければ民法第909条《遺産の分割の効力》本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになるからである。
 そうすると、遺産分割協議においては、仮に、一部の共同相続人が、他の共同相続人に対して、遺産分割協議において負担した債務の不履行を理由とする解除の意思表示を行っても、当該意思表示は無効であるから、このような場合は、通則法施行令第6条第1項第2号にいう「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に係る契約が、解除権の行使によって解除され」た場合に該当しないと解すべきである。
 なお、共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではないと解される。
ロ 通則法第23条第2項の更正の請求について
 通則法第23条第2項に規定する後発的事由に基づく更正の請求は、納税申告時等には納税者において予知し得なかった事態その他やむを得ない事由が後発的に生じ、これによって課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更が生じたため、本来であれば遡って税額の減額をすべき場合、納税者の側からする更正の請求を認めないとすると帰責事由のない納税者に酷な結果が生じる場合等があると考えられるため、このような一定の場合に後発的事由に基づく更正の理由を認めることによって、租税債務の可及的速やかな確定という要請を犠牲にしてもなお保護されるべき納税者の救済を認めた規定であると解される。

(2) 判断

 本件当初分割に係る遺産分割協議の解除についての請求人らの主張を整理すれば、1の主張は、通則法施行令第6条第1項第2号に規定する「解除権の行使によって解除され」た場合に該当する、2の主張は、同号に規定する「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され」た場合に該当すると主張していると解されるので、以下これらに沿って検討する。
イ 本件当初分割が解除権の行使によって解除されたか否かについて
 上記1の(4)のホのとおり、本件債務不履行解除は、本件当初分割においてEが請求人らに対して負担した本件各代償債務を履行しないとして、本件当初分割に係る遺産分割協議を解除するものであり、相続人の1人が他の相続人に対して遺産分割協議において負担した債務を履行しないことを理由に民法第541条によって当該協議を解除しようとするものにほかならないのであるから、上記(1)のイのとおり、かかる解除は認められないものであり、本件債務不履行解除に係る意思表示は無効である。
 したがって、本件債務不履行解除をもって、本件当初分割に係る遺産分割協議が、「解除権の行使によって解除され」た場合に該当するということはできない。
ロ 本件当初分割に係る遺産分割協議が当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除された場合に該当するか否かについて
 上記1の(4)のニないしトからすれば、本件当初分割においてEが請求人らに対して負担した本件各代償債務が履行されない上、請求人らにEの相続税に係る連帯納付義務の履行が求められる事態となったことから、上記1の(4)のホのとおり、平成22年9月1日に請求人らがEに対して本件各代償債務の不履行を理由に本件当初分割に係る遺産分割協議を解除(本件債務不履行解除)する旨記載した書面を送付するとともに、その直後の同月9日付で、請求人らとEの間において、上記1の(4)のヘのとおり、本件当初分割に係る遺産分割協議が解除されたことを前提に改めて共同相続人全員で遺産分割協議を行い、Eが被相続人の財産及び債務の全てを相続することに決した旨の遺産分割協議書(本件再分割に係る遺産分割協議書)が作成され、上記1の(4)のトのとおり、同年10月12日、請求人らは、本件債務不履行解除に係る上記書面の写し及び本件再分割に係る上記遺産分割協議書の写しを添付して本件各更正の請求を行ったことが認められる(なお、本件当初分割時において本件各代償債務の履行が不能又は著しく困難であったなどの事情はうかがわれない。)。
 このような経緯からすると、本件債務不履行解除に係る意思表示が無効であって本件債務不履行解除はその効力を生じないとしても、請求人ら及びEは、本件当初分割に係る遺産分割協議が解除によりその効力を失ったことを前提に改めて被相続人の相続財産について遺産分割協議を行ったということができるから、請求人らとEとの間で本件当初分割に係る本件遺産分割協議を解除する合意(以下「本件合意解除」という。)が成立したものと認められるのであり、上記1の(4)のヘの再度の遺産分割協議において請求人らとEとの間で成立した合意の内容は、本件当初分割に係る遺産分割協議を解除する本件合意解除とともに、被相続人の相続財産について改めて遺産分割協議を成立させる(本件再分割)ものであると認められる(なお、通則法第23条第2項第3号、通則法施行令第6条第1項第2号の規定の適用において、本件合意解除と本件再分割を一体のものとしてみることができるかどうかはひとまずおくとして検討を進めることにする。)。
 そして、かかる合意による本件再分割の内容は、上記1の(4)のヘのとおり、請求人らが被相続人の遺産について一切相続しないというものであり、本件当初分割の内容が、請求人らがEに対して本件各代償債務の弁済を受ける権利を取得するものであったことからすると、実質的には請求人らがかかる権利(代償請求権)を放棄するものとなっており、本件再分割は、被相続人の財産の相続に関する限り、請求人らに何ら利点がないものということができる。このような本件再分割を含む合意を請求人らはあえて行っているところ、上記の本件再分割に至った経緯に加えて、請求人ら自ら、Eが本件当初分割において定められた本件各代償債務を履行しない上、請求人らはEの相続税に係る連帯納付義務まで課せられたので、これを消滅させるため、本件合意解除と本件再分割を行った旨主張していることからすれば、上記の合意は、Eの相続税に係る請求人らの連帯納付義務を免れることを目的としてされたものといわざるを得ない。
 ところで、相続税法は、相続税の課税方式として、遺産全体を各相続人が民法に定める相続分に応じて取得したものとした場合における各取得金額に所定の税率を適用して税額を算定した上その税額の総額を各相続人等の取得した財産の額に応じてあん分する仕組みを採用しており、課税の面における相続人等の間の負担の公平が図られているが、各相続人等に各別に相続税の納税義務を負わせると、共同相続人中に無資力者があったときなどには、相続税債権の満足が得られなくなるおそれがあって、租税の徴収確保の上から適当ではない結果を招来することになることなどに鑑み、相続税法は、相続税徴収の確保を図るため、同法第34条第1項において、相互に各相続人らに特別の責任として連帯納付義務を規定したものと解される。
 上記のような相続税法第34条第1項の規定の趣旨からすれば、本件再分割における請求人らとEとの間の上記合意は、上記のような相続税の連帯納付制度そのものを否定して、不当に相続税の徴収を免れるに等しいというべきであるから、上記(1)のロの後発的事由に基づく更正の請求を認めた趣旨に照らしても、このような合意を成立させたことが通則法第23条第2項3号の規定を受けた通則法施行令第6条第1項第2号に規定する「やむを得ない事情」に当たるとは到底解することができない。
 したがって、上記合意の成立をもって、本件当初分割に係る遺産分割協議が「やむを得ない事情によって解除され」たものと認めることはできない。
ハ まとめ
 上記イ及びロのとおり、本件当初申告に係る課税標準等又は税額の基礎となった事実に係る契約である本件当初分割に係る遺産分割協議が通則法施行令第6条第1項第2号に規定する「解除権の行使によって解除され」たということも、「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され」たということもできないから、請求人らの主張するその余の事項について判断するまでもなく、本件各更正の請求は、通則法第23条第2項第3号に規定する要件を満たさず、したがって、更正をすべき理由がないとした原処分は適法である。

(3) 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る

トップに戻る