(平成24年3月28日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、一般土木建築工事業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、貸倒損失を損金の額に算入するなどして法人税並びに消費税及び地方消費税の申告をしたところ、原処分庁が、貸倒損失の過大計上、不動産賃貸料収入の計上漏れがあるなどとして、法人税並びに消費税及び地方消費税の各更正処分、源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分並びに重加算税の各賦課決定処分等を行ったのに対し、請求人が、貸倒損失の過大計上、不動産賃貸料収入の計上漏れなどは認める一方、別途、収入計上漏れに対応する土地賃借料、減価償却費などの費用を損金の額に算入すべきであること、また、不動産賃貸料収入の計上漏れなどについては、事実の隠ぺい又は仮装の行為はないなどとして、当該各処分等の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成22年9月27日)に至る経緯は、次のとおりである。
イ 法人税
 請求人の平成17年2月1日から平成18年1月31日まで、平成18年2月1日から平成19年1月31日まで、平成19年2月1日から平成20年1月31日まで及び平成20年2月1日から平成21年1月31日までの各事業年度(以下、順次「平成18年1月期」などといい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税に係る審査請求に至る経緯は別表1のとおりである。
 以下、本件各事業年度の法人税の各更正処分を併せて「本件法人税各更正処分」といい、平成18年1月期、平成19年1月期及び平成21年1月期の事業年度の法人税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分を併せて「本件法人税過少申告加算税各賦課決定処分」といい、本件各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分を併せて「本件法人税重加算税各賦課決定処分」という。
ロ 消費税及び地方消費税
 請求人の平成17年2月1日から平成18年1月31日まで、平成18年2月1日から平成19年1月31日まで、平成19年2月1日から平成20年1月31日まで及び平成20年2月1日から平成21年1月31日までの各課税期間(以下、順次「平成18年1月課税期間」などといい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)に係る審査請求に至る経緯は別表2のとおりである。
 以下、本件各課税期間の消費税等の各更正処分を併せて「本件消費税等各更正処分」といい、平成19年1月課税期間の消費税等に係る過少申告加算税の賦課決定処分を「本件消費税等過少申告加算税賦課決定処分」といい、本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分を併せて「本件消費税等重加算税各賦課決定処分」という。
ハ 源泉徴収に係る所得税
 請求人の平成17年7月分、平成19年4月から同年6月までの各月分、同年8月から同年12月までの各月分及び平成20年4月から同年9月までの各月分の源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)に係る審査請求に至る経緯は別表3のとおりである。
 以下、各月分の納税告知処分を併せて「本件各納税告知処分」という。

(3) 関係法令等

 関係法令等の要旨は別紙3のとおりである。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の概要
 請求人は昭和55年2月○日に設立されたF1(以下「代表者」という。)を代表取締役とする同族会社である。
 代表者の息子であるF2(以下「F2専務」という。)は、請求人の専務取締役として代表者とともに請求人の経営に従事している。
 なお、請求人は、本件各事業年度において、法人税の青色申告の承認を受けていない。
ロ 賃貸用店舗の賃貸料収入等
(イ) 請求人は、代表者が所有するh市○町○−○の土地(以下「本件土地」という。)に賃貸用店舗(以下「本件店舗」といい、本件土地と併せて「本件物件」という。)を建築するため、平成17年7月1日付で、H社との間で、契約金額29,400,000円とする工事施工契約を締結した。H社は、同契約に基づき工事を施工し、本件店舗は、平成17年11月に完成した。
 その後、請求人は、完成した本件店舗について、原因を平成17年11月22日新築、構造を木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建及び種類を店舗として、平成18年1月4日に所有権保存登記をした。
(ロ) 請求人は、本件物件について、賃借人であるDとの間で、平成17年7月22日付で土地建物賃貸借契約(以下、「本件賃貸借契約」といい、本件賃貸借契約に係る契約書を「本件賃貸借契約書」という。)を締結した。
 なお、本件賃貸借契約書には、本件土地の所有者を代表者、本件店舗の所有者を請求人、賃貸人を請求人、賃借人をD、賃貸借期間を平成17年11月16日から平成27年11月16日まで及び賃貸料を月額400,000円とする旨、賃借人であるDは、賃貸人である請求人に対し、本契約に基づく保証金(以下「本件保証金」という。)として7,000,000円を平成17年7月28日までに預託する旨、また、本件保証金については、月額50,000円を上記のDからの賃借料と相殺する旨それぞれ定めている。
(ハ) Dは、平成17年7月28日に本件保証金として7,000,000円を請求人が指定した代表者名義のJ銀行○○支店の普通預金口座(口座番号○○○○。以下「本件預金口座」という。)に振り込んだ(以下、本件預金口座に入金された7,000,000円を「本件保証金入金額」という。)。
 なお、請求人は、本件保証金入金額について、経理処理をしていない。
(ニ) Dは、本件賃貸借契約に基づき、平成17年11月16日から本件物件を賃借し、平成17年11月○日にコンビニエンスストアを開業したが、平成20年9月○日に同店を閉鎖し営業を終了した。
 なお、Dは、平成21年3月○日にL地方裁判所○○支部に破産申立てを行った。
(ホ) 請求人は、Dから、本件賃貸借契約に基づく平成17年11月から平成20年9月までの賃貸料(以下「本件賃貸料」という。)について、現金及び本件預金口座への振込により受領した(以下、本件預金口座への振込により受領した金額を「本件賃貸料入金額」という。)。
 なお、現金で受領した金額は、平成19年1月期が4,000,000円及び平成20年1月期が3,450,000円であり、本件預金口座への振込金額は別表4の「本件賃貸料入金額」欄のとおりである。
(ヘ) 請求人は、現金受領した本件賃貸料について、Dから受領する都度、請求人が領収証を発行し受領金額を雑収入として総勘定元帳に記載していたが、平成19年1月期及び平成20年1月期のそれぞれの決算修正の時点で、それらの現金入金は役員からの借入金であったとして、雑収入からそれらの計上額全額を減額する経理処理をした。
 また、請求人は、本件預金口座へ振り込まれた本件賃貸料についても収入として計上しておらず、その結果、本件各事業年度において、本件賃貸料の全額を収入に計上していなかった。
ハ M社に関する貸倒損失等
(イ) 請求人は、M社から手形割引を依頼され、平成17年6月24日に同社が振り出した約束手形3通(額面は各10,000,000円、支払期日は平成17年12月31日、平成18年1月31日及び同年2月28日であり、以下、この手形3通を「本件手形」という。)を受領したが、経理処理をしなかった。
(ロ) 請求人は、平成17年7月22日に本件手形に裏書した上で、N信用金庫○○支店において本件手形を割り引いたところ、同信用金庫は、本件手形の合計金額30,000,000円から手形割引料641,422円を差し引いた後の29,358,578円を請求人の同支店の普通預金口座に入金した。
(ハ) 請求人は、M社から本件手形を受領したことに対し同社に30,000,000円を支払うべきところ、平成17年7月25日に15,000,000円のみ支払い、一方、同年7月22日から同年9月9日の期間において、上記(ロ)の普通預金口座から本件手形の割引に係る金員15,000,000円を引き出し、請求人の負債である代表者等からの役員借入金を15,000,000円返済した。
(ニ) 請求人は、本件手形の割引による入金について、手形割引日と同日付でN信用金庫○○支店から30,000,000円を借り入れたこととして短期借入金とし、他方、上記(ハ)の役員借入金の返済15,000,000円も各返済日と同日付でM社へ貸し付けたとして、同社へ支払った15,000,000円と併せて30,000,000円を同社に対する短期貸付金とする経理処理をした。
(ホ) 請求人は、平成18年1月4日に本件手形が不渡りとなったことから、支払期日が平成17年12月31日の手形については平成18年1月6日に、平成18年1月31日の手形については同年2月6日に、同年2月28日の手形については同年3月6日にN信用金庫○○支店からそれぞれ買い戻したが、当該買戻しについては経理処理をしなかった。
(ヘ) 請求人は、上記(イ)、(ニ)及び(ホ)のとおり、本件手形の受領、割引及び買戻しについて何ら経理処理をしていないところ、平成18年1月期において、本件手形が不渡りになったことを理由として、上記(ニ)のM社に対する短期貸付金とした30,000,000円の50パーセントに当たる15,000,000円を貸倒損失として損金の額に算入するとともに、債権償却特別勘定として負債科目に計上した。
(ト) 請求人は、平成19年1月期において、M社の倒産により同社に対する短期貸付金の全額が回収不能になったとして、平成18年1月期に計上した債権償却特別勘定を取り崩して債権償却特別勘定戻入益として15,000,000円を益金の額に算入するとともに、同社に対する短期貸付金としていた30,000,000円を貸倒損失として損金の額に算入した。
(チ) 原処分庁は、M社への短期貸付金として実際に支払ったのは15,000,000円のみであり、貸倒損失15,000,000円が過大に計上されたものであるとして平成19年1月期の法人税に係る更正処分をした(以下、原処分庁が過大に計上したとする貸倒損失15,000,000円を「本件M社貸倒損失額」という。)。
ニ 重機の売却収入等
 請求人は、平成18年9月頃にS社に対して、所有していたT社製のバックホー2台(製造番号○○○○及び○○○○。以下、製造番号○○○○を「本件重機A」、製造番号○○○○を「本件重機B」といい、これら2台を併せて「本件重機」という。)を5,250,000円で売却したが、振込手数料630円を差し引いた入金額5,249,370円(以下「本件重機売却収入」という。)を収入として計上しなかった。
ホ U社に対する貸倒損失
 請求人は、U社に対する債権4,050,000円について、平成18年1月期中に倒産により回収不能になったとして貸倒損失に計上し(以下「本件U社貸倒損失」という。)、同事業年度の損金の額に算入した。
ヘ V社に対する外注費
(イ) 請求人は、平成20年1月31日付でV社(現W社。以下「V社」という。)に対する外注費5,000,000円を計上し(以下「本件V社外注費」という。)、平成20年1月期の損金の額に算入したが、本件V社外注費については、V社に工事等を外注した事実を証する請求書等の書類はなく、請求人の総勘定元帳の相手科目は設備未払金勘定とされており、平成21年1月期末においても、未払金のまま計上されている。
(ロ) 請求人の経理担当者は、代表者の指示により、平成20年1月期の決算整理仕訳において、借方を外注費、貸方を設備未払金、金額を5,000,000円とする相手先名の記載がない振替伝票を作成し、総勘定元帳の作成時に相手先名をV社と記載していた。
ト 機械器具の取得に係る請求書等の保存等
 請求人は、平成19年1月課税期間において、X社から砕石クラッシャー(以下「本件機械器具」という。)を取得したが、本件機械器具の取得の際の請求書等の書類を保存していなかった。
 なお、請求人は、平成19年1月課税期間において、本件機械器具に係る消費税額を、消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る消費税額の控除の対象としていた。
チ Y社に対する外注費
(イ) 請求人は、平成19年1月25日にY社に対する貸付金4,000,000円を請求人が振り出した約束手形(額面2,000,000円の手形2通)で支払い、外注費として経理処理をした。
 Y社は、当該4,000,000円について、請求人からの短期借入金として経理処理し、その後、3回に分割し請求人に返済した。
(ロ) 請求人は、Y社からの貸付金の返済について、平成19年3月28日に1,000,000円を請求人のN信用金庫○○支店の普通預金(口座番号○○○○)に振り込ませたほか、同年5月10日に1,700,000円及び同年6月11日に2,000,000円を、それぞれ本件預金口座へ振り込ませた(以下、本件預金口座に振り込ませた合計金額3,700,000円を「本件Y社入金額」という。)。
(ハ) 請求人は、上記(ロ)の平成19年3月28日の返済額1,000,000円をY社からの売上入金として経理処理をしたが、本件Y社入金額については、経理処理をしなかった。
リ 本件預金口座への入金状況等
 請求人は、上記ロの(ハ)の本件保証金入金額、上記ロの(ホ)の本件賃貸料入金額及び上記チの(ロ)の本件Y社入金額を、それぞれ本件預金口座に振り込ませているところ、それらの入金状況及び原処分庁が代表者に対する給与とした金額は、別表4の各欄のとおりである。
ヌ 請求人の消費税等の経理処理
 請求人は、消費税等の経理処理について、平成18年1月期は税抜き経理、平成19年1月期ないし平成21年1月期は、税込み経理で行っていた。

(5) 争点

イ 争点1 請求人の主張する費用等は、法人税の所得金額の計算上損金の額に算入できるか否か。
(イ) 本件土地の賃借料
(ロ) 本件店舗の減価償却費
(ハ) 本件手形の買戻しに係る借入金の支払利息
(ニ) 本件重機売却収入に係る売却原価
(ホ) 本件U社貸倒損失
ロ 争点2 請求人が行った行為には、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為があるか否か。
(イ) 本件V社外注費を損金の額に算入したこと
(ロ) 本件賃貸料を益金の額に算入しなかったこと
(ハ) 本件重機売却収入を益金の額に算入しなかったこと
(ニ) 本件M社貸倒損失額を損金の額に算入したこと
ハ 争点3 本件機械器具の取得について、消費税の仕入税額控除は認められるか否か。
ニ 争点4 本件保証金入金額、本件賃貸料入金額及び本件Y社入金額は、代表者の給与に当たるか否か。
ホ 争点5 本件保証金入金額の源泉徴収をしなかったことについて、通則法第68条第3項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為があるか否か。

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2 主張及び判断

(1) 争点1 請求人の主張する費用等は、法人税の所得金額の計算上損金の額に算入できるか否か。

イ 法令解釈等
(イ) 法人税法第22条第3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とするものとし、第1号は、当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額を、第2号は、第1号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額を、第3号は、当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものをそれぞれ掲げている。
 そして、同条第4項において、同条第3項の各号に掲げる額については、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとすると規定しており、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準とは、一般社会通念に照らして公正で妥当であると評価され得る会計処理の基準を意味すると解される。
(ロ) 上記(イ)のとおり、法人税法第22条第3項第2号が債務確定基準を採用しているのは、債務として確定していない費用については、その発生の見込み及びその金額が明確ではなく、このような費用を損金の額に算入することを認めると、所得の金額の計算が不明確となることから、課税の公平を確保するために、このような費用の損金の額への算入を否定したものであると解される。
 そして、基本通達2−2−12は、債務確定基準について、法人税法第22条第3項第2号の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、まる1当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること、まる2当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、まる3当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであることの要件の全てに該当するものであるとしており、上記の債務確定基準の趣旨から、当該通達の定めは当審判所においても相当であると認められる。
(ハ) 法人の有する金銭債権が法的に消滅した場合や回収不能となった場合等、貸倒れが発生した場合には、上記(イ)のとおり、法人税法第22条第3項第3号により、その貸倒れによる損失はその法人の損金の額に算入されるものと解され、貸倒れによる損失についても、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算すべきものと解される。
 そして、基本通達9−6−2は、法人が有する金銭債権について、その全額についての回収不能を理由に、いわゆる帳簿貸倒れをする場合の取扱いを定めたものであるところ、当該回収不能債権の帳簿貸倒処理の時期については、「その明らかになった事業年度において」行うべきものであることが明らかにされている。これは、当該金銭債権について、その全額の回収不能が明確になった限りにおいては、直ちに貸倒処理を行うというのが会社法ないしは企業会計上の考え方であり、これに代えて、その後の事業年度において損金算入をするなど利益操作に利用するような処理は、公正妥当な会計処理とは認められないとする趣旨と解され、この取扱いは当審判所においても相当であると認められる。
(ニ) 減価償却費の損金算入について、法人税法第31条第1項及び法人税法施行令第58条が確定した決算において償却費として損金経理することを要件とした趣旨は、減価償却費が法人の内部計算において計上される費用であることから、法人が、確定した決算において、減価償却資産につき償却費として費用計上する意思表示を明確にしたものに限り、課税の公平を維持する観点から、定められた償却限度額の範囲内でその損金算入を認めたものと解される。
 そして、確定した決算において、減価償却資産につき償却費として費用計上する意思表示をしたというためには、その前提として、企業会計上、減価償却資産について自己の資産としての認識を示した上で、その取得価額の一部又は全部を償却費として損金経理することが必要であり、自己の資産として認識する経理処理が行われていない場合のいわゆる簿外の減価償却資産については、原則として、償却費として損金算入する余地はないことを明らかにしたものと解される。
ロ 本件土地の賃借料
(イ) 主張

原処分庁 請求人
 請求人が、代表者所有の本件土地を使用していた事実は認められるものの、請求人の帳簿には、代表者に対する賃借料の記載がないこと、また、代表者は賃貸料収入があったとする所得税の確定申告をしていないこと、更には原処分調査において、代表者との賃貸借契約書の提出もなかったことからすると、請求人は本件土地を同人から賃借していたとは認められないので、賃借料として損金の額に算入することはできない。  請求人は、代表者所有の本件土地を使用して本件店舗を建設し、Dに本件物件を賃貸したものであり、本件賃貸料には、代表者の本件土地の賃貸料も含まれていることから、請求人が代表者に支払うべきであった本件各事業年度の本件土地の賃借料相当額について、請求人が算定した金額(月額250,000円、合計額8,750,000円)を請求人の損金の額に算入すべきである。

(ロ) 判断
A 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
 請求人は、代表者との間で本件土地の使用に係る契約書を作成しておらず、賃借料としての金額の取り決めもなかった。また、請求人は、本件各事業年度において、本件土地の使用に係る費用を計上しておらず、代表者に対し、本件土地に係る賃借料の支払いもしていなかった。
B 本件への当てはめ
 上記Aのとおり、請求人と代表者との間で本件土地の使用に係る賃貸借契約書は作成されていないことから、賃借料の額の取り決めの確認ができず、また、請求人は代表者に対して本件土地に係る賃借料を支払っておらず、更に、総勘定元帳に賃借料の計上もしていないことからすると、請求人は本件土地を無償で使用していたものと認められる。
 そうすると、請求人が算定した本件土地の賃借料相当額については、債務が成立していたとはいえず、また、金額も合理的に算定できたものとはいえないことから、上記イの(ロ)の要件を満たしておらず、請求人の損金の額に算入することはできない。
ハ 本件店舗の減価償却費
(イ) 主張

原処分庁 請求人
 本件店舗に係る減価償却費については、請求人がその確定した決算において費用又は損失として経理した事実はなく、損金経理が行われたと認められないことから、当該減価償却費は、損金の額に算入することはできない。  請求人が本件店舗を取得していることは事実であるので、その建物の取得費の減価償却費を損金の額に算入すべきである。

(ロ) 判断
A 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) 請求人は、当審判所に対し、H社が発行した領収書の写し3枚(合計金額30,900,000円)を提出しており、その記載金額が上記1の(4)のロの(イ)のH社との工事施工契約の金額とほぼ一致することから、当該請求人提出資料は、本件店舗の取得に係る領収証の写しであるとするのが相当であり、請求人は、本件店舗を30,900,000円(消費税込み)で取得したものと認められる。
(B) 請求人は、本件店舗を請求人の総勘定元帳に資産として計上しておらず、また、本件各事業年度の本件店舗の減価償却費についても、確定した決算において損金経理していない。
B 本件への当てはめ
 法人が減価償却費を損金の額に算入するためには、上記イの(ニ)のとおり、減価償却資産について自己の資産として帳簿に記載した上で、その取得価額の一部又は全部を償却費として損金経理することが必要であるところ、請求人は、上記Aの(A)のとおり、本件店舗を30,900,000円(消費税込み)で取得したものと認められるものの、上記Aの(B)のとおり、本件各事業年度において、本件店舗を自己の資産として認識できる経理処理をしておらず、また、確定した決算においても当該資産の減価償却費として損金経理していないのであるから、本件店舗の減価償却費に相当する金額を減価償却費として損金の額に算入することはできない。
ニ 本件手形の買戻しに係る借入金の支払利息
(イ) 主張

原処分庁 請求人
 原処分調査において、請求人から簿外の支払利息に関して具体的な説明及び資料の提示が行われておらず、簿外経費としての支払利息の存在を認定することはできないので、当該支払利息は平成19年1月期ないし平成21年1月期の損金の額に算入することはできない。  M社が振り出した本件手形が不渡りとなったことから、その買戻資金として金融機関から借入したが、その借入金の返済のために、更に別途15,000,000円を借入しており(以下「本件別途借入金」という。)、本件別途借入金に対する利息として支払った5,625,000円は、平成19年1月期ないし平成21年1月期の損金の額に算入されるべきである。

(ロ) 判断
A 認定事実
請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) 請求人は、当審判所に対し、本件別途借入金の利息を支払った証拠資料として、Z社が発行したとする平成19年1月22日付1,125,000円、平成20年1月21日付2,250,000円及び平成21年1月20日付2,250,000円の3枚の領収証の写しを提出した。
 なお、Z社の商業登記簿によれば、同社の本店所在地は、h市j町○−○とされているが、各領収証の写しには、法人所在地としてh市i町○−○と記載されている。
 また、請求人は、上記の領収証の写しに係る取引、本件別途借入金及びその支払利息については、請求人の本件各事業年度の総勘定元帳にいずれも計上していない。
(B) 請求人は、上記1の(4)のハの(ホ)のとおり、N信用金庫○○支店から本件手形を買い戻しているところ、同支店の伝票によれば、次のとおり本件手形の買戻しに係る資金手当をそれぞれ行い、同支店に返済したことが認められる。
a 平成17年12月31日期日の手形
 平成18年1月6日に請求人のN信用金庫○○支店の普通預金(口座番号○○○○)からの振替出金6,010,000円、同信用金庫の代表者名義普通預金(口座番号○○○○)からの振替出金3,000,000円及び現金入金1,000,000円により、延滞利息10,000円を含む10,010,000円を返済した。
b 平成18年1月31日期日の手形
 平成18年2月6日に、上記aの請求人の普通預金からの振替出金10,030,000円により、延滞利息30,000円を含む10,030,000円を返済した。
c 平成18年2月28日期日の手形
 平成18年3月6日に、N信用金庫○○支店のF2専務名義の定期預金1口を解約した5,009,220円及び代表者の息子であるF3名義の定期預金2口を解約した4,041,695円の振替出金並びに現金入金979,085円により、延滞利息30,000円を含む10,030,000円を返済した。
(C) 当審判所は、請求人に対し、本件別途借入金に係る契約書等の提出を求めたが、請求人からは、上記(A)の領収証の写し以外に本件別途借入金の存在を明らかにする証拠の提出はなく、当審判所の調査によっても、請求人の上記(B)の資金手当以外に、本件別途借入金あるいは本件手形の買戻しに係る新たな借入金の存在は認められない。
B 本件への当てはめ
 上記Aの(B)のとおり、本件手形の買戻しに当たっては、いずれも請求人、代表者、F2専務及びF3の預金又は定期預金等により資金を手当てしており、当該買戻しのために本件別途借入金及びその支払利息が発生する余地はないと認められ、更に、上記Aの(C)のとおり、請求人が新たに借り入れた事実も認められない。
 また、上記Aの(A)のとおり、請求人から利息支払に係る各領収証の写しの提出があるものの、当該各領収証の写しの法人所在地が法人登記の本店所在地と異なっていること、更に、上記Aの(C)のとおり、本件別途借入金に係る契約書等の提出もなく、本件別途借入金の存在も認められないことから、当審判所は、当該各領収証の写しを本件別途借入金の支払利息の支払を証する証拠として採用することはできない。
 そうすると、請求人は、本件手形の買戻しのために当該利息を支払ったとは認められないことから、当該利息の額を損金の額に算入することはできない。
ホ 本件重機売却収入に係る売却原価
(イ) 主張

原処分庁 請求人
 請求人から、本件重機の取得価額などの売却原価に関する具体的な資料が何ら提示されず、原価の金額を算定することはできないのであるから、金額が不明な原価については損金の額に算入することはできない。  本件重機の売却に係る原価は、当然に費用として認められるべきであり、本件重機の残存価額等については売却原価として損金の額に算入されるべきである。

(ロ) 判断
A 認定事実
当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) 請求人は、本件重機AをK社○○支店から平成元年9月に11,600,000円で購入し、本件重機BをQ社から平成5年7月に4,100,000円で購入し、それぞれ総勘定元帳に資産として計上した。
(B) 本件重機Aについては、請求人の平成16年1月期ないし平成19年1月期の各事業年度の総勘定元帳及び法人税確定申告書別表16(1)の償却費明細に記載されていない。
(C) 本件重機Bについては、請求人の本件各事業年度の法人税確定申告書別表16(1)の機械器具に記載されたバックホーと細目、事業の用に供した年月及び取得価額が一致することから、同バックホーが本件重機Bであると認められ、本件重機Bの売却時の帳簿価額は、205,000円であると認められる。
 なお、本件重機Bについては、平成8年3月及び平成11年8月に修理による資本的支出があったと認められ、売却時の当該資本的支出の帳簿価額は、それぞれ60,000円及び42,876円であると認められる。
B 本件への当てはめ
(A) 請求人は、本件重機を購入し、上記1の(4)のニのとおり、平成19年1月期に本件重機を売却していることから、その収益に対応する売却原価については、上記イの(イ)のとおり、損金の額に算入されるところ、本件重機の売却原価は、以下のとおりである。
a 本件重機Aは、上記Aの(B)のとおり、平成16年1月期以降の総勘定元帳等及び法人税確定申告書に記載がないことから、平成16年1月期以前に取得価額の全額が損金の額に算入されたものと推認され、その売却原価は零円とするのが相当である。
b 本件重機Bは、上記Aの(C)のとおり、売却時の帳簿価額と認められる205,000円、60,000円及び42,876円の合計額307,876円を売却原価とするのが相当である。
c 以上のとおり、本件重機の売却原価は307,876円であると認められ、当該金額は平成19年1月期の損金の額に算入される。
(B) 原処分庁は、請求人から本件重機の取得価額などの売却原価に関する具体的な資料が何ら提示されず、原価の金額を算定することはできないのであるから、金額が不明な原価については損金の額に算入することはできない旨主張する。
 しかしながら、当審判所の調査において上記Aの(A)及び(C)のとおり判明したのであるから、原処分庁の主張は採用できない。
ヘ 本件U社貸倒損失
(イ) 主張

原処分庁 請求人
 請求人からU社の倒産に関する具体的な説明や資料の提示がなく、ほかに同社が平成18年1月期中に、倒産したとする事実も認められないことから、平成18年1月期に貸倒損失を損金の額に算入することはできない。  U社が既に倒産し、実態のない会社であることは事実であるので、請求人が回収不能と判断した平成18年1月期に貸倒損失として損金の額に算入されるべきである。

(ロ) 判断
A 認定事実
原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) 商業登記簿によれば、U社は、昭和48年3月○日に設立され、昭和58年3月10日に役員の登記がなされた後の異動はなく、L地方法務局の登記官は、平成元年12月3日付で商法第406条ノ3(平成17年7月法律87号による改正前のもの。以下「旧商法第406条ノ3」という。)第1項の規定により解散登記した。
(B) 代表者は、当審判所に対し、U社は昭和58年頃から同62年頃の間に不渡り事故を起こして倒産したh市の業者であり、同社の代表取締役mが行方不明となり、当時から回収できないと思っていたが、平成18年1月期にn社からの債務免除益を計上し所得金額が多くなったことから、平成18年1月期に4,050,000円を貸倒損失として処理した旨答述した。
B 本件への当てはめ
(A) 旧商法第406条ノ3は、いわゆる休眠会社のみなし解散についての規定であり、同条第1項は、最後の登記をしてから5年を経過した法人について、法務大臣が公告し、2ヶ月以内に営業を廃止していない旨の届出が登記所にない場合には、解散したものとみなす旨、同条第2項は、登記所が第1項の公告をその法人に通知する必要がある旨、同条第3項は、同条第1項により解散したものとみなされた法人が3年以内に定款変更を決議した場合には継続できる旨、それぞれ規定している。
(B) U社は、上記Aの(A)のL地方法務局の登記官の手続により平成元年12月3日に解散登記され、その後3年以内に定款変更を決議した事実もないことから、遅くとも解散登記された時点においては、法人としての実態がなくなったものと推認される。
 また、上記Aの(B)のとおり、U社に関する代表者の答述は、上記の事実とも符号し、特に不合理な点もなく信用できると認められることから、U社は、遅くとも最後に役員登記された昭和58年3月10日の2年後である昭和60年頃には実質的に倒産して同社の代表取締役mが行方不明となり、同時点において、請求人の有していた金銭債権の全額が回収できないことが明らかとなったものと認めるのが相当である。
 そうすると、貸倒損失の計上は、上記イの(ハ)のとおり、その全額の回収不能が明らかになった事業年度において直ちに行うべきであることから、本件U社貸倒損失は、上記の回収不能となった時点(昭和60年頃)が帰属する事業年度で損金の額に算入されるべきものであり、平成18年1月期の損金の額に算入することはできない。

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(2) 争点2 請求人が行った行為には、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為があるか否か。

イ 法令解釈
 通則法第68条第1項に規定する重加算税の制度は、納税者が過少申告をすることにつき事実の隠ぺい又は仮装という不正な方法に基づいて行われていた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を課すことによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものであると解するのが相当であり、同項の規定による重加算税を課し得るためには、納税者が故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい又は仮装の行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に対し、納税者において過少申告の認識を有していることまでを必要とするものではないと解するのが相当である。
 また、ここでいう「事実を隠ぺいする」とは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠ぺいしあるいは故意に脱漏することをいい、「事実を仮装する」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかもそれが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲することをいうものと解される。
 そして、通則法第68条第1項は、隠ぺいし、又は仮装する行為の主体を納税者としているから、本来的には、納税者自身による隠ぺい又は仮装を企図したものと解されるが、上記の重加算税制度の趣旨及び目的からすると、納税者以外の者が隠ぺい又は仮装を行った場合であっても、それが納税者本人の行為と同視できるときには、重加算税を賦課することができると解するのが相当である。
ロ 本件V社外注費を損金の額に算入したこと
(イ) 主張

原処分庁 請求人
 平成20年1月期に本件V社外注費を計上しているが、請求書等の存在が認められないこと、その外注内容の具体的な説明や資料の提示もないこと、会社自体の存在も確認できないこと及び平成21年1月期末時点で支払の事実もないことからすると、実体のない法人への架空外注費を計上したものと認められ、請求人の行為は事実の隠ぺい又は仮装に当たる。  本件V社外注費は、経理処理を誤って外注費を過大に計上したものであり、意図的に架空経費を計上したものではなく、事実の隠ぺい又は仮装はない。

(ロ) 判断
A 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) 商業登記簿によれば、V社は、次のとおり頻繁に本店所在地や代表者を変更している。
a 平成14年1月○日に本店をk市○町○−○、法人名をP社、代表取締役をqとして設立した。
b 平成16年12月1日にV社へ商号を変更し、本店をh市i町○−○に移転するとともにrが代表取締役に就任した。
c 平成17年11月10日にsが代表取締役に就任した。
d 平成20年2月29日にW社に商号を変更し、tが代表取締役に就任した。
e 平成20年3月1日にu市○町○−○へ本店移転した。
f 平成20年4月15日にh市j町○−○へ本店移転した。
g 平成21年3月5日にvが代表取締役に就任した。
(B) 上記(A)のeの本店移転先として登記された「u市○町○−○」は、請求人の代理人であるwの自宅の住所地である。
 なお、wは、請求人の役員及び従業員としての地位にはないが、請求人の本件各事業年度の経理に関与している。
(C) 異議審理庁の異議調査担当者の調査によれば、平成20年4月15日以降、V社の本店とされた所在地には、V社又はW社の看板等は無く、営業の実態はなかった。また、V社の電話番号も不明であり、その所在を確認できず、代表取締役となっているvも所在不明の状況で、連絡が取れなかった。
 なお、上記所在地は、別法人であるR社の本店の所在地となっており、R社の商業登記簿によれば、wが監査役に就任しているが、同法人も電話番号等が不明である。また、同所在地には、R社の看板等もなく、営業している実態もなかった。
B 本件への当てはめ
 本件V社外注費は、上記1の(4)のヘの(イ)のとおり、平成21年1月期末においても支払されておらず、また、外注した事実を証する請求書等もないことから、請求人がV社に工事等の外注をした事実は認められない。
 なお、V社は、上記Aの(A)及び(C)のとおり、本店及び代表取締役の変更が頻繁な上、現在の本店における営業も不明であることから、実態のない法人であると推認される。
 また、wは、上記Aの(B)のとおり、同人の住所地がV社の登記上の本店として使用されていることからすると、同人はV社が実態のない法人であることを十分認識していたことがうかがわれる。
 更に、本件V社外注費の計上に当たり、代表者は、上記1の(4)のヘの(ロ)のとおり、請求人の経理担当者に指示して相手先の記載をしないまま外注費を計上させ、総勘定元帳作成時にV社と記載させていること及びV社が実態のない法人であることを認識していたwが、上記Aの(B)のとおり、請求人の平成20年1月期の経理に関与していたことが認められる。
 以上のことを総合勘案すると、請求人は、実態のない法人を利用して架空の外注費を計上したものと認められ、このことは、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為に該当すると認められる。
ハ 本件賃貸料を益金の額に算入しなかったこと
(イ) 主張

原処分庁 請求人
 請求人は、本件賃貸料を一度雑収入として計上した後、役員借入金に振り替えしており、また、本件預金口座に直接振り込ませるなど、意図的に収入に計上しなかったものと認められ、請求人の行為は事実の隠ぺい又は仮装に当たる。  本件賃貸料を、雑収入から役員借入金と経理したのは経理担当者の勘違いであり、また、振込みされた賃貸料収入を意図的に計上しなかったものではなく、事実の隠ぺい又は仮装はない。

(ロ) 判断
A 認定事実
原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) 代表者は、当審判所に対し、本件預金口座は自分名義で開設した個人預金であり、通帳及び印鑑も自分が保管しており入出金についても自分が行っている旨答述しているところ、当審判所が本件預金口座の平成17年3月23日から平成21年4月30日までの入出金内容を調査した結果によれば、別表4の入金以外には、毎月の代表者の年金の振込入金、代表者個人の土地建物の売却代金の入金及びy生命との個人契約の保険料の引き落としなどがあったことから、本件預金口座は、代表者の管理下にある同人に帰属する預金であると認められる。
(B) 代表者は、原処分庁に対し、請求人も代表者も資金は一緒であり、いずれ請求人の資金として使われることから、本件賃貸料を収入に計上しなかった旨申述した。
 また、代表者は、当審判所に対して、雑収入を役員借入金とした決算修正は自分の指示により行わせた旨答述していることから、同人が経理担当者に指示して、決算修正の時点で本件賃貸料の現金受領分を収入から減額処理させたものと認められる。
B 本件への当てはめ
 請求人は、本件賃貸料について、上記1の(4)のロのとおり、本件賃貸借契約により賃貸料収入が請求人に帰属することが明らかであるにも関わらず、本件賃貸料の振込入金分については、Dに対し、本件賃貸借契約書に記載された請求人の口座ではなく、上記Aの(A)の本件預金口座を指定して入金させ、収入に計上しなかったものと認められ、また、本件賃貸料の現金受領分については、請求人が各領収証を発行の上受領し、雑収入として総勘定元帳に計上した後、上記Aの(B)のとおり、代表者の指示により、平成19年1月期及び平成20年1月期の各事業年度の決算修正において、それぞれ雑収入計上額の全額を減額することにより収入に計上しなかったものと認められる。
 更に、請求人は、本件店舗について、上記(1)のハの(ロ)のAの(B)のとおり、総勘定元帳に資産として計上していないこと、上記1の(4)のロの(ハ)のとおり、本件保証金についても本件預金口座に入金させ、総勘定元帳に収入として計上していないことなど、これらの一連の行為は、本件賃貸料収入を計上しなかったことに加え、本件店舗及び本件保証金などの本件賃貸借契約に基づく本件賃貸料に関する取引の全てを簿外処理したものと認めるのが相当である。
 そうすると、本件賃貸料の全額を収入金額に計上しなかった行為は、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為に該当すると認められる。
ニ 本件重機売却収入を益金の額に算入しなかったこと
(イ) 主張

原処分庁 請求人
 本件重機の売却収入の代金をF2専務の銀行預金口座に振り込ませ、収益に計上していないことは、意図的に収入に計上しなかったものと認められ、請求人の行為は事実の隠ぺい又は仮装に当たる。  本件重機は会社の所有であるが、会社名で売却すると世間体が悪いと考えて個人名で売却したものであり、売却収入は、結果として請求人の費用等として使用されているのであるから、事実の隠ぺい又は仮装はない。

(ロ) 判断
A 認定事実
 当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) 請求人は、本件重機の売却取引において、S社に対し、平成18年9月30日付でF2専務の個人名義の「御請求明細書」を発行した上で、本件重機の売却代金の振込先については、N信用金庫○○支店のF2専務の個人名義の普通預金口座(口座番号○○○○)を指定した。
(B) S社は、平成18年10月31日に上記(A)の指定された口座へ本件重機売却収入を振り込んだが、請求人は、本件重機の売却取引において、F2専務の名義で発行した請求書など、当該取引に係る書類を保存していなかった。
B 本件への当てはめ
 請求人は、請求人が所有する本件重機について、上記Aの(A)のとおり、S社に対してF2専務の個人名義で請求書を発行し、売却代金も同人の個人名義の預金口座を指定して入金させ、更に、上記Aの(B)のとおり、当該請求書も保存せず、本件重機売却収入を収入に計上しなかったものと認められる。
 そうすると、請求人は、請求人の資産売却取引をF2専務の個人の取引に仮装することによって、本件重機売却収入を収入金額に計上しなかったものと認めるのが相当であって、このことは通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為に該当すると認められる。
ホ 本件M社貸倒損失額を損金の額に算入したこと
(イ) 主張

原処分庁 請求人
 請求人は、M社に対する貸付金30,000,000円のうち、15,000,000円が架空であることを認識していながら、当該貸付金の全額を貸倒損失としたことが認められる。
 また、代表者は、M社に対する貸付金が過大であったことを認識していながら、経理処理の誤りを訂正しなかったものと認められ、請求人の行為は事実の隠ぺい又は仮装に当たる。
 M社に対する貸付金が15,000,000円だけであったことは、原処分調査の当初から代表者も認めているところであり、30,000,000円と経理処理した原因は、決算打合せの時の経理担当者の聞き違いであり、故意に貸倒処理したものではなく、事実の隠ぺい又は仮装はない。

(ロ) 判断
A 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(A) M社は、平成17年春頃から資金繰りが悪くなり、上記1の(4)のハの(イ)のとおり、請求人に手形の割引を依頼するなどして資金繰りを行ってきたが、平成17年11月に手形が不渡りになったことから、同年12月6日に事業を停止して、負債の事後処理を乙弁護士に一任することにした。
(B) 本件預金口座には、M社から平成18年9月26日に1,000,000円及び同年11月1日に100,000円が振込入金された。
(C) M社の代表取締役である甲は、原処分庁の調査担当職員に対し、まる1本件手形を振り出して請求人に割引を依頼したこと、まる2本件手形については、請求人に対する仮払金30,000,000円と経理処理したが、平成17年8月1日に仮払金の返還額15,000,000円を現金で受け取ったことから、仮払金勘定の残額は15,000,000円と経理処理したこと、まる3平成17年11月末に手形の不渡り事故をおこし、その後、倒産状態になったこと、まる4請求人に対する返済として平成18年9月26日に1,000,000円及び同年11月1日に100,000円を本件預金口座に振り込んだが、それ以降は資力が尽きたので支払っていない旨をそれぞれ申述した。
 これらの申述は、同人の手帳の記載及びM社の総勘定元帳の記載に基づいたものであり、また、上記(B)の事実とも一致することから信用できるものと認められる。
 また、同人の手帳には、M社の請求人以外の債権者に対する支払が記載されているところ、平成18年11月以降、請求人以外の債権者への支払についての記載はない。
 そうすると、M社は、上記申述のとおり、平成18年11月頃に請求人に対する債務の返済が不能となったものと認められる。
(D) 原処分庁は、上記1の(4)のハの(チ)のとおり、請求人がM社への短期貸付金として15,000,000円を架空計上することにより、平成19年1月期において、本件M社貸倒損失額を損金の額に算入したことは、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為に該当するとして重加算税の賦課決定処分をしたが、平成18年1月期における上記1の(4)のハの(ヘ)及び(ト)の請求人の債権償却特別勘定を用いた貸倒損失については法人税の更正処分をしていない。
B 本件への当てはめ
(A) 上記1の(4)のハの(イ)、(ハ)及び(ホ)、上記(1)のニの(ロ)のAの(B)並びに上記Aの(A)ないし(C)の各事実によれば、請求人のM社に対する債権債務の推移は次のとおりである。
a 平成18年1月期
 まる1本件手形の受領 30,000,000円(債務の発生)
 まる2現金支払 15,000,000円(債務の減少)
 まる3本件手形(平成17年12月31日期日)の不渡りによる買戻し 10,000,000円(債務の減少)
 以上のことから、平成18年1月期の期末において、請求人にはM社に対する債務5,000,000円が存在したと認められる。
b 平成19年1月期
 まる1期首の債務 5,000,000円
 まる2本件手形(平成18年1月31日期日)の不渡りによる買戻し 10,000,000円(債権の発生)
 まる3本件手形(平成18年2月28日期日)の不渡りによる買戻し 10,000,000円(債権の発生)
 まる4振込入金 1,100,000円(債権の減少)
 以上のことから、平成19年1月期の期末において、請求人にはM社に対する債権13,900,000円が存在したと認められる。
(B) 上記のことから、請求人がM社と行った一連の取引に関して行われるべき税務上の処理は次のとおりである。
a 平成18年1月期
 請求人は、短期貸付金30,000,000円が存在することを前提として、上記1の(4)のハの(ヘ)のとおり、貸倒損失として15,000,000円を損金の額に算入しているところ、上記(A)のaのとおり、期末においてはM社に対する債権そのものが存在しない。
 したがって、請求人が貸倒損失として計上した15,000,000円は損金の額に算入されない。
b 平成19年1月期
(a) 請求人は、上記1の(4)のハの(ト)のとおり、債権償却特別勘定戻入益として15,000,000円を益金の額に算入するとともに、短期貸付金30,000,000円が回収不能になったことを理由に貸倒損失として同額を損金の額に算入したことから、M社との一連の取引に関しては15,000,000円を損金の額に算入したことになるところ、上記(A)のbのとおり、平成19年1月期の期末における債権額は13,900,000円であることから、貸倒損失として損金の額に算入されるのは同金額となる。
 したがって、貸倒損失として損金の額に算入される13,900,000円と請求人が損金の額に算入した15,000,000円との差額1,100,000円は貸倒損失の過大計上額となり損金の額に算入されない。
(b) 一方で、原処分庁は、上記1の(4)のハの(チ)及び上記Aの(D)のとおり、請求人が貸倒損失とした15,000,000円が過大計上であるとして所得金額に加算する更正処分をしているところ、請求人が行うべき処理は上記(a)のとおりであるから、当該15,000,000円は所得金額に加算できない。
(C) 原処分庁は、請求人がM社と行った一連の取引に関して所得金額に15,000,000円を加算する平成19年1月期の更正処分について、本件M社貸倒損失額を通則法第68条第1項の課税標準又は税額等の計算の基礎としているところ、上記(B)のbの(b)のとおり、本件M社貸倒損失額は平成19年1月期において所得金額に加算できないのであるから、本件M社貸倒損失額に係る重加算税については、その計算の基礎となる納付すべき法人税額は算出されない。
 したがって、本件M社貸倒損失額については、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為についての判断をするまでもない。

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(3) 争点3 本件機械器具の取得について、消費税の仕入税額控除は認められるか否か。

イ 主張

原処分庁 請求人
 消費税法第30条第7項は、事業者が当該課税期間の課税仕入れの税額に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れの控除については同条第1項を適用しない旨規定しているところ、請求人が総勘定元帳にX社から本件機械器具を40,000,000円で取得した旨記載した取引については同条第9項に規定する請求書等の保存が行われていないことから、消費税の仕入税額控除は認められない。  平成19年1月期にX社から取得した本件機械器具40,000,000円は、未収金や貸付金の返済として譲り受けたものであり、書類の作成はないが、原処分庁もその存在を確認しており、消費税の仕入税額控除は認められるべきである。

ロ 判断
(イ) 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
 請求人の総勘定元帳によれば、機械器具勘定の年月日欄に「190131」、相手科目欄に「設備未払金 砕石クラッシャーH19.1購入」及び金額欄に「40,000,000円」と記載されているが、相手方の氏名(又は名称)、住所及びやむを得ない理由の記載はない。
(ロ) 本件への当てはめ
 請求人には、上記1の(4)のトのとおり、本件機械器具に係る請求書等の保存がないことからすると、消費税法第30条第7項に規定する帳簿及び請求書等の保存要件を具備していないことは明らかであり、本件機械器具に係る仕入税額控除はできない。
 また、請求人の総勘定元帳には、上記(イ)のとおり、課税仕入れの相手方の氏名(又は名称)、住所及びやむを得ない理由の記載がないことから、消費税法施行令第49条第1項第2号も適用されず、請求人の消費税の仕入税額控除は認められない。

(4) 争点4 本件保証金入金額、本件賃貸料入金額及び本件Y社入金額は、代表者の給与に当たるか否か。

イ 主張

原処分庁 請求人
 以下の入金については、いずれも本件預金口座に入金され、代表者が個人的に費消したと認められることから、代表者に対する給与に該当し、本件各納税告知処分は適法である。  以下の入金については、代表者がいずれも個人的に費消していないことから、給与に該当せず、本件納税告知処分は違法であり、取り消されるべきである。
(イ) 本件保証金入金額
 本件保証金入金額については、請求人が受領すべきであるにも関わらず本件預金口座に入金されており、7,000,000円のうち建物の取得に充てられたと推認される2,400,000円を除く残額の4,600,000円については、代表者が個人的に費消していると認められる。
(イ) 本件保証金入金額
 本件保証金入金額は、建物取得のための土地造成費として使用したものである。
(ロ) 本件賃貸料入金額
 本件賃貸料入金額については、本件預金口座に直接振り込ませており、代表者が個人的に費消したと認められる。
(ロ) 本件賃貸料入金額
 本件賃貸料入金額は、最終的に請求人に資金として導入され、結果として請求人の費用等として使用されているものである。
(ハ) 本件Y社入金額
 Y社に対する外注費4,000,000円のうち3,000,000円については、本件預金口座へ直接振り込ませており、代表者が個人的に費消したと認められる。
(ハ) 本件Y社入金額
 本件Y社入金額は、最終的に請求人に資金として導入され、結果として請求人の費用等として使用されているものである。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
A 所得税法第28条第1項は、給与所得となる給与等について「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与」と包括的に規定しており、この趣旨からすると、給与等には、雇用契約に限らず、これに類する委任契約などの原因に基づき提供した労務(役務)の対価として、あるいは労務(役務)を提供する地位に基づいて支給されるものも含まれることとなる。
 そして、法人の代表者等が法人経営の実権を掌握し、法人を実質的に支配している事情がある場合には、法人の代表者等が、当該法人の事業活動を通じて得た利得は、給与支出の外形を有しない利得であっても、それが法人の資産から支出されたと認められる場合には、当該利得は、法人の代表者等がその地位及び権限に対して受けた給与であると解するのが相当である。
B 所得税法第36条第1項は、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、その年において収入すべき金額とする旨規定しているところ、法人の代表者等が、当該法人の事業活動を通じて得た利得を受けた場合には、その時点で所得の実現があったものとして、その時期の属する年分の課税所得を計算するものと解される。
(ロ) 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 当審判所は、請求人に対して、本件保証金入金額が土地造成費に充てられたこと並びに本件賃貸料入金額及び本件Y社入金額が請求人に資金として導入され、請求人の費用等として使用されたことを証する資料の提出を求めたが、請求人からそれらの資料は提出されなかった。
 また、本件預金口座から出金された金員が請求人の費用等として使用されたとする証拠もない。
B 本件保証金入金額については、平成17年7月28日に本件預金口座に入金後、同日に6,000,000円、同年8月2日に500,000円及び同月31日に500,000円が現金で引き出されているが、その使途は不明であり、代表者がこれらを全額費消したとする証拠はない。
C 原処分庁は、別表4のとおり、本件保証金入金額のうち4,600,000円について、代表者に対する給与として納税告知処分をしたが、その金額の算定についての根拠となる証拠はない。
(ハ) 本件への当てはめ
A 代表者は、請求人の事業活動を通じて得た本件保証金入金額、本件賃貸料入金額及び本件Y社入金額を請求人の総勘定元帳に記載せず、別表4の各欄のとおり、本件預金口座に入金させているところ、請求人は、上記1の(4)のイのとおり、代表者が代表取締役となっている同族会社であり、また、本件預金口座は、上記(2)のハの(ロ)のAの(A)のとおり、代表者の管理下にあることから、これらの入金された金額は、代表者が自由に処分可能な状態であったと認められる。
B しかし、上記(ロ)のBのとおり、本件保証金入金額については、本件預金口座に入金された後に7,000,000円が引き出され、代表者が当該金員を全額費消したとする証拠がないことから、代表者がその利得を得たものとするのは相当ではなく、また、本件保証金入金額が本件預金口座へ入金された事実のみをもって代表者が入金額の全額を費消したとまでは認められない。
 原処分庁は、上記(ロ)のCのとおり、本件保証金入金額のうち4,600,000円を代表者に対する給与としているところ、本件保証金入金額について、代表者が全額費消したとする証拠はないのであるから、当該4,600,000円が代表者に対する給与に該当するとは認められない。
C 次に、本件賃貸料入金額は、上記(2)のハの(ロ)のBのとおり、請求人の賃貸料収入を計上せず本件預金口座に入金させたものであり、また、本件Y社入金額は、上記1の(4)のチの(イ)及び(ロ)のとおり、請求人の貸付金を外注費として架空計上し、その返済金額については本件預金口座に入金させたものであり、いずれも請求人の簿外の所得に係る金員としたものである。
 したがって、これらは、代表者が請求人の簿外の所得に係る金員を本件預金口座に入金させることよって、それぞれその利得を得たものとするのが相当であり、同人に対する給与に該当すると認められる。
 なお、請求人は、Y社への外注費とした貸付金4,000,000円に対して、総額4,700,000円の返済を受けているが、その差額の700,000円は、貸付金の返済に付随した請求人に帰属する簿外の所得に係る金員であると認められ、代表者がその利得を得たものであるとするのが相当であり、本件Y社入金額はその全額が代表者の給与に該当すると認められる。

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(5) 争点5 本件保証金入金額の源泉徴収をしなかったことについて、通則法第68条第3項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の行為があるか否か。

イ 主張

原処分庁 請求人
 本件保証金入金額については、本件預金口座へ入金され、請求人の総勘定元帳への記載を行っていなかったものであり、このことは、意図的に源泉徴収の対象となる支払事実を隠ぺいしたものと認められる。  本件保証金入金額について、源泉所得税を免れる意図はなく、重加算税の対象となるような隠ぺい又は仮装の事実はない。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 通則法第68条第3項に規定する重加算税は、納税者が事実の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装したところに基づき源泉所得税をその法定納期限までに納付しなかったときに徴収されるものであり、源泉所得税を免れようとする意思を有していることまでを必要とするものではないと解されている。
(ロ) 本件への当てはめ
 本件保証金入金額のうち原処分庁が代表者に対する給与とした4,600,000円は、上記(4)のロの(ハ)のBのとおり、代表者に対する給与に該当しないと認められることから、当該給与に係る重加算税については、その計算の基礎となる徴収すべき源泉所得税の税額は算出されない。
 したがって、本件保証金入金額については、通則法第68条第3項に規定する隠ぺい又は仮装に当たる事実があるか否かについては判断するまでもない。

(6) 本件法人税各更正処分

イ 争点1の(ニ)については、上記(1)のホのとおり、本件重機の売却原価の金額307,876円を平成19年1月期の損金の額に算入する(別表6の2のまる8)。
ロ 上記(2)のホのとおり、請求人が平成18年1月期に計上した貸倒損失15,000,000円は損金の額に算入されず(別表6の1のまる7)、また、原処分庁が平成19年1月期に貸倒損失の過大計上とした本件M社貸倒損失額は、平成19年1月期において所得金額に加算できない(別表6の2のまる5)。
ハ 請求人は、平成18年1月期にM社への短期貸付金30,000,000円を計上するとともに、未収利息1,500,000円(30,000,000円×5%)を計上しているところ、原処分庁は、短期貸付金を15,000,000円と算定し、未収利息750,000円が過大計上であるとし、また、平成19年1月期に未収利息についても貸倒れになったとして750,000円の貸倒損失の計上漏れとして損金の額に算入している。
 しかしながら、上記(2)のホの(ロ)のBの(A)のaのとおり、平成18年1月期に短期貸付金は存在せず、未収利息を計上する必要はないから、平成18年1月期の未収利息の過大計上額は1,500,000円となり(別表6の1のまる10)、それに伴い、平成19年1月期の貸倒損失の計上漏れは零円となる(別表6の2のまる10)。
ニ ところで、原処分庁は、別表5の「原処分庁主張額」欄のとおり、本件各事業年度において、請求人の法人税の所得金額の計算上、益金の額及び損金の額にそれぞれ加算又は減算すべき金額がある旨主張し、請求人もこれを争わないとしているが、当審判所において調査したところ、以下のとおりである。
(イ) 原処分庁は、別表5のまる6のとおり、M社からの償却債権取立益1,100,000円を益金の額に算入すべきとしているが、上記(2)のホの(ロ)のBの(A)のbのとおり、同金額1,100,000円は、請求人がM社から債権(未収金)を回収したものであり、損益取引ではなく貸借取引であることから益金の額に算入することはできない。
 ただし、同金額1,100,000円は、貸倒損失とした債権(未収金)を回収したものであることから、貸倒損失の過大計上となり、損金の額に算入されない(別表6の2のまる6)。
(ロ) また、原処分庁は、別表5のまる14のとおり、請求人がz社に対して、平成21年2月20日付で請求した5,419,109円のうち平成21年1月21日から同月29日までの○○高速道路工事の場内運搬(大型ダンプ常用)の代金892,500円については、平成21年1月期の益金の額に算入すべきとしている。
 しかしながら、請求人の工事収入に係る経理処理は毎月20日締めの方法により請求し、収益計上する経理処理を行っており、また、対応する費用についても毎月20日締めの方法により経理処理を継続して行っていると認められるところ、当該経理処理は、法人税法第22条第4項に定める一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(費用収益対応の原則)に従って計算されていると認められる。
 そうすると、原処分庁が、特定の売上先の売上の一部のみを抽出して、費用収益対応の原則によらず、益金の額に算入することはできないものと認められることから、上記の運搬代金892,500円は、平成21年1月期の益金の額に算入することはできない。
(ハ) 上記(イ)及び(ロ)を除く原処分庁の主張額については、別表5の各欄のとおり、請求人の法人税の所得金額の計算上、それぞれ益金の額及び損金の額に算入すべきものと認められる(別表6の1のまる5及びまる11、別表6の2のまる9、別表6の3のまる6及びまる11、別表6の4のまる8)。
ホ 以上のことから、請求人の本件各事業年度の法人税の所得金額は、別表6の1ないし4の「審判所認定額」欄のとおりとなるところ、平成18年1月期及び平成20年1月期は、審判所認定額が各更正処分の額を上回ることから、平成18年1月期及び平成20年1月期の各更正処分はいずれも適法であり、また、平成19年1月期及び平成21年1月期については、審判所認定額が各更正処分の額をいずれも下回ることから、別紙1及び別紙2の「取消額等計算書」のとおりいずれもその一部を取り消すことが相当である。

(7) 本件各事業年度の法人税に係る加算税の賦課決定処分

イ 本件法人税重加算税各賦課決定処分
 上記(6)のホのとおり、平成19年1月期及び平成21年1月期については、各更正処分の一部取消しに伴い、その基礎となる税額がそれぞれ○○○○円及び○○○○円となることから、請求人に課される重加算税はそれぞれ○○○○円及び○○○○円となるところ、当該金額は各賦課決定処分の額をいずれも下回ることから、別紙1及び別紙2の「取消額等計算書」のとおりいずれもその一部を取り消すことが相当である。
 また、平成18年1月期及び平成20年1月期については、基礎となる税額が各賦課決定処分における額と同額であるから、平成18年1月期及び平成20年1月期の重加算税の各賦課決定処分は適法である。
ロ 本件法人税過少申告加算税各賦課決定処分
 上記(6)のホ及び上記イのとおり、平成19年1月期及び平成21年1月期の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分の一部取消しに伴い、その基礎となる税額がそれぞれ○○○○円及び○○○○円となることから、請求人に課される過少申告加算税は○○○○円及び○○○○円となるところ、請求人には、重加算税の取消し後の納付すべき税額の計算の基礎となった事実が平成19年1月期及び平成21年1月期の法人税の更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、平成19年1月期については賦課決定処分の額を上回ることから適法であり、平成21年1月期については賦課決定処分の額を下回ることから別紙2の「取消額等計算書」のとおりその一部を取り消すことが相当である。
 また、上記(6)のホのとおり、平成18年1月期の法人税の更正処分は適法であり、請求人には、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてされた平成18年1月期の過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

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(8) 本件消費税等各更正処分

 上記(3)のロの(ロ)のとおり、平成19年1月課税期間において、本件機械器具に係る消費税の仕入税額控除はできず、また、上記(2)、(4)、(5)及び(6)のとおり、消費税等の課税標準額等に変動はなく、当審判所において計算した本件各課税期間の消費税等の額は、原処分の額と同額となることから、本件消費税等各更正処分は適法である。

(9) 本件各課税期間の消費税等に係る加算税の賦課決定処分

イ 本件消費税等重加算税各賦課決定処分
 上記(8)のとおり、本件消費税等各更正処分は適法であり、上記(2)のロないしニのとおり、本件賃貸料及び本件重機売却収入について収入金額に計上しなかったこと、本件V社外注費を架空に計上したことは、法人税の所得金額の計算において通則法第68条第1項に規定する課税標準又は税額等の基礎となるべき事実の全部又は一部の隠ぺい又は仮装に該当することから、同項並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定により重加算税の賦課決定をした本件消費税等重加算税各賦課決定処分は適法である。
ロ 本件消費税等過少申告加算税賦課決定処分
 上記(8)のとおり、本件消費税等各更正処分は適法であり、請求人には、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、上記イの重加算税の対象となる金額を除いた税額に基づき、同条第1項並びに地方税法附則第9条の4及び第9条の9第1項の規定により過少申告加算税の賦課決定をした本件消費税等過少申告加算税賦課決定処分は適法である。

(10) 本件各納税告知処分

イ 平成17年7月分の源泉所得税の納税告知処分は、上記(4)のロの(ハ)のBのとおり、取り消すことが相当である。
ロ 平成19年4月分から同年6月分まで、平成19年8月分から同年12月分まで及び平成20年4月分から同年9月分までの各月分の源泉所得税の納税告知処分については、上記(4)のロの(ハ)のCのとおり、代表者の給与に該当するものであることから、これらを基に請求人の各月分の納付すべき源泉所得税の額を算定すると別表7の「審判所認定額」欄のとおりとなり、これらの金額は、各納税告知処分における納付すべき税額を、平成19年4月分から同年6月分まで及び同年8月分から同年12月分までは上回り、また、平成20年4月分から同年9月分までは同額となることから、上記各月分の各納税告知処分は適法である。

(11) 本件各納税告知処分に係る加算税の賦課決定処分

イ 重加算税の賦課決定処分
 平成17年7月分の源泉所得税の納税告知処分は、上記(10)のイのとおり、取り消すべきものであることから、平成17年7月分に係る源泉所得税の重加算税の賦課決定処分は取り消すことが相当である。
ロ 不納付加算税の賦課決定処分
 平成19年4月分から平成19年6月分まで、平成19年8月分から平成19年12月分まで及び平成20年4月分から平成20年9月分までの源泉所得税の納税告知処分は、上記(10)のロのとおり、いずれも適法であり、また、同納税告知処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、納税告知処分前の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第67条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてされた平成19年5月分及び同年6月分に係る不納付加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

(12) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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