別紙11

当事者の主張

争点1 原処分庁の調査手続に違法があるか否か。

原処分庁 請求人
1 原処分庁の調査手続等については、次のとおり、違法はない。 1 原処分庁の調査手続等については、次の理由から違法があり、原処分は取り消されるべきである。
(1) 検体の買上げについて (1) 検体の買上げについて
イ 揮発油の成分検査を目的にガソリンを購入することを違法とする法令はない。 イ 携帯缶によるガソリンの購入は、ガソリン切れ(エンスト)及び発電機への注入目的として行われるものであり、揮発油の成分検査を目的に購入すること自体が違法である。
ロ ガソリンの購入に際し売主に対して購入目的等の明示を求める法令等はない。 ロ 本件の検体の買上げは、原処分庁が請求人に対してガソリンの購入目的を知らすことなく行った違法な購入行為であり、少なくとも、ガソリンの購入(入手)目的を告げ、請求人の同意を得た上でガソリンを入手すべきであった。
ハ セルフ型スタンドにおける携帯缶へのガソリンの給油(販売)については、法令等は、売主にその監視義務を課しているのであって、買主の購入を制限しているものではない。 ハ 本件買上げは、従業員の立会いなしには携帯缶による購入が認められないセルフ式スタンドの場合と比べて公平性を欠いている。
(2) 検体分析の信頼性
 灯油成分が検出された本件検体は、購入から分析・保管まで、各容器にそれぞれ識別標証等を付して管理していたことから、検体の同一性に問題はない。
(2) 検体分析の信頼性
 本件における分析用ガソリンの検体は、請求人の従業員の立会いのないまま、検査缶ではなく、市販の携帯缶で購入されていることから、本件検体の出所が不明であり、検査の過程で本件検体の取り違え等が生じた可能性がある。
(3) 取引先等への調査
 取引先等への調査は、取引の事実関係を確認したものにすぎず、その確認範囲もガソリンの取扱いに関するものである。
(3) 取引先等への調査
 原処分庁が行った不適切な取引先等への調査により、請求人の信用が害されたこと。
2 違法収集証拠について
 本件の調査は、任意の課税調査であって令状を必要とする強制調査ではなく、その証拠収集も任意調査の範囲内で行われたものであり、令状に基づかない証拠の収集で違反であるとの請求人の指摘には理由がない。
2 違法収集証拠について
 本件の課税処分に当たってのガソリンの入手(成分検査のため)、すなわち証拠の収集については、憲法第31条《法定手続の保障》の令状主義に基づいて行われておらず、違法に収集した証拠は証拠とし得ないものである。

争点2 請求人が行った灯油をガソリンに混和する行為は新たな揮発油の製造に当たるか否か。

原処分庁 請求人
1 灯油の混和の状況について 1 灯油の混和の状況について
 原処分庁は、以下の事実関係を基に、請求人の代表者等が本件ミニローリーのディスペンサーの給油ノズルを本件各給油所の各地下タンクの注油口に差し込み、灯油をガソリンに混和したと判断した。
(1) 本件各給油所が仕入れたガソリンは、製油所移出時点では灯油よりも比重の軽いガソリンには通常は含まれず灯油成分として顕著な炭化水素の一つであるノルマル・テトラデカン(分子式C14H30)を含有していなかった。また、ガソリン輸送中のタンクローリーにおける灯油混和はない。
(2) 一部の検体買上げ(本件各給油所において各1件の計3件)は、原処分庁の職員が請求人の代表者等が本件ミニローリーのディスペンサーの給油ノズルを本件各給油所の各地下タンクの注油口に差し込んだ現場を目視した後に行っている。
(3) 本件各給油所から買い上げた上記(2)の3個の検体からノルマル・テトラデカンが検出され、灯油の推定混和率は、それぞれ17.6%、2.16%及び2.69%であった。
(4) 請求人は、本件ミニローリー1KLで灯油残量が10L程度あるので、ガソリンとの混和割合が1%程度であるとしているが、仮にその原因が本件各給油所間でのガソリン融通の際の灯油との混和の結果であるとすると、その混和されたガソリンを本件各給油所の各地下タンク(10KL又は30KL)に落とし込むと、この混和割合は0.1%又は0.03%となる。
 そうすると、本件各給油所間でのガソリン融通の際の混和であるとする請求人の主張は、原処分庁が把握している混和事実とかい離するものであり、請求人が主張するような混和があったとは考えられない。
 請求人は、本件ミニローリーを使って本件各給油所間で灯油、軽油及びガソリンを融通しており、本件ミニローリーに灯油を積み込んで灯油を融通した後にガソリンを積み込むと、前に積み込んだ灯油の残量があり、これが本件ミニローリーにガソリンを積み込んだ際にガソリンと混和されることになる。
 この場合の本件ミニローリーの灯油残量の実態は、10〜25Lが正しい数値であり、原処分庁の計算数値(10Lの灯油が10KL又は30KLのタンクに落とし込まれた場合の混和割合は0.1%又は0.03%)と大きくかけ離れている。
2 灯油を混和する行為は新たな揮発油の製造といえるか否かについて 2 灯油を混和する行為は新たな揮発油の製造といえるか否かについて
(1) 原処分庁は、まる1請求人は、所轄消防署長に対し、本件ミニローリーのタンクにガソリンを積み込む場合に必要な消防法等で定められた許可申請手続等を行っていないこと、まる2本件ミニローリーのタンクは、ガソリンなどの第1石油類よりも引火性が低い灯油などの第2石油類を貯蔵するための構造となっていること、まる3本件ミニローリーによるガソリンの融通の事実に関する確認資料等は一切提示されていないことから、本件ミニローリーに残っていた灯油とガソリンとの混和ではなく、請求人が本件各給油所の各地下タンクにおける混和を積極的に行ったものと判断した。
 仮に本件ミニローリーで混和されたとしても、請求人がガソリン融通により混和が生ずることを認識しているにも関わらずあえてこれを行う行為は、積極的操作によるブレンド操作があったものと解することができる。
 以上から、当該在庫数量が灯油の混和により製造された新たな揮発油に該当し、揮発油の製造に該当する行為を行う場所は揮発油の製造場であり、本件各給油所は揮発油の製造場に該当する。
 したがって、製造場から移出される揮発油については揮発油税等の納税義務がある。
(1) 本件ミニローリーによるガソリンの融通によって生じた本件ミニローリーに残っていた灯油とガソリンとの混和は、積極的な行為ではなく、「ブレンド操作」に該当しないことは明らかであるので、揮発油税等における新たな揮発油の製造には当たらず、それを前提とした課税原因は生じない。
(2) 灯油混入が原因での車両トラブルの有無、他の調査事例の混和率との差異等は本件の課税処分に影響するものではない。 (2) 灯油混入が原因での車両トラブル等は1台たりともなく、また、マスコミで報道され問題となったスタンド業者の灯油混和事件については、10%から20%の混和率と聞いているが、当社の場合は最高でも1%くらいである。

争点3 課税標準となる移出数量の算定に合理性が認められるか否か。

原処分庁 請求人
1 原処分庁が算定した課税標準となる移出数量の算出根拠等は、次のとおりである。 1 原処分庁が課税標準となる移出数量を算出するため使った計算式では、正確な数量は次の理由から導き出すことはできない。
(1) 荷卸の際にタンクローリーの運転手及び請求人の従業員等が作成する積込・荷卸作業手順確認書又は安全作業等確認書(以下「荷卸作業手順確認書」という。)の荷卸後タンク在庫数量等が、タンクローリー運転手と請求人の従業員等の双方が厳重に確認した数量であることは、タンクローリーの運転手の申述からも明らかである。
 請求人は、ガソリンの移出数量は請求人が採用している店舗で商品を販売するごとに商品の販売情報を記録して集計結果を在庫管理などに用いるシステム(以下「POSシステム」という。)のデータ管理会社におけるデータ(以下「本件POSデータ」という。)の記録によることができない事情がある旨主張しているが、本件POSデータに基づかなくとも移出数量の算出は可能である。
 そして、本件各給油所で製造された新たな揮発油の数量のうち課税対象となるべき数量は、灯油成分が検出された本件検体(ガソリン)の購入時におけるタンク内の在庫数量のうち各課税期間内に移出された数量であり、当該移出数量を算出するに当たり、本件検体の購入時のタンク内の在庫数量は、本件検体の購入直前のガソリン仕入れ時における荷卸後のタンク在庫数量から当該検体購入直前までの移出数量を差し引いて算出した「在庫数量」である。
 そして、上記の移出数量は、実数である同在庫数量を限度とし、本件検体の購入直前の荷卸後のタンク在庫数量と、本件検体購入後最初の荷卸前のタンク在庫数量との開差数量を両棚卸間の経過時間で除することにより1時間当たりの移出数量を算出し、これに本件検体の購入直前の荷卸から本件検体の購入時までの経過時間を乗じることによって算出したものである。
(1) 各地下タンクにはそれぞれ約1割の余裕があるので、値動きの関係で安値のガソリンが入手できる場合は、タンクの規定容量を超えて貯蔵能力一杯に荷卸することがあり、この場合は、規定容量を超えると罰則らしきものがあるため、タンクローリー運転手が伝票に書き込む荷卸前タンク在庫数量は、「当方及びローリー運転手双方の良い数字」あるいは「つじつまが合う数字」を書く場合が大半であり、信用できない。
 また、日々の販売数量を把握するPOSシステムによる「ジャーナル」は破棄しており正確な移出数量は把握できない上、本件POSデータに反映されないポンプテストカードで移出した数量もあり、本件POSデータによることもできない。
(2) 請求人が所轄消防署に提出したg店及びd店のガソリンタンク見取図によれば、両給油所は地下タンク底部でのパイプジョイントではなく、各吸油管が分配弁等により結合しているにすぎず、各タンクの在庫数量は把握できる。
 また、タンクメーカーからの聴き取りで、ガソリンタンクは複数であっても各吸油管は同時にガソリンを吸い上げてディスペンサーから給油される仕組みとなっていることを確認している。
(2) g店及びd店のガソリンタンクは底部にパイプジョイントがあり、残量の確実な数量把握が不可能であること。
 なお、U社の担当者によれば、d店の地下タンクは、全ての地下タンクからガソリンをくみ上げての給油になる設計とのことであった。
 例えば、d店については、3本の地下タンクの残量は、設計上、パイプの長さ、地下タンク残量の上下によりくみ上げ量が変化するものであり、原処分庁が主張するような単純な算式では算出は不可能である。
(3) 本件ミニローリーによるガソリンの融通の事実を確認していない。
 なお、移出数量の計算においては各地下タンク内の在庫の減少数量(在庫間比較による数量)を計算根拠としていることから、仮に請求人が主張するガソリンの融通があったとしても、融通元の給油所(揮発油の製造場)からの移出数量及び融通先の給油所(揮発油の製造場)への移入数量のいずれについても、比較する地下タンク内の在庫に反映された上で算出されていることから、タンク内在庫の比較により合理的に移出数量を算出できる。
(3) 本件検体の買上げの実施時(以下「本件検体購入時」という。)の在庫数量については、本件ミニローリーによる本件各給油所間等におけるガソリンの融通によって、製油所からの荷卸以外にガソリンの受入れ及び払出しがあるので、前回荷卸後の実在庫数量から次回荷卸前の実在庫数量までの開差数量(以下「荷卸間開差数量」という。)のみでは正確な実在庫数量及びそれを基にした本件検体購入時の在庫数量を計算することは不可能であり、原処分庁の上記計算方法による本件検体購入時の在庫数量は信用することができない。
2 揮発油税法及び地方揮発油税法(以下「揮発油税法等」という。)は課税要件事実の算定方法を制限していないことから、移出数量の算出方法はそれが合理的なものである限り、単一の算出方法に限定されるものではない。原処分庁は、POSシステムのデータによらない在庫数量を比較する方式での課税標準の算定方法を示したものであって、本件の課税処分の法的根拠(揮発油税法第3条第1項他)等を変更したものではない。 2 原処分庁は、本件の課税処分の根拠及び理由を、本件審査請求において変更してきたが、原処分庁が違法な形で収集した本件POSデータに基づく原処分庁の本件の課税処分の根拠や理由を変更するものであり、原処分庁の本件の課税処分が誤りであったことを示すものであって、本件の課税処分は何ら理由と根拠を欠くものとして取り消されなければならない。

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