(平成25年11月27日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、平成21年分の所得税の税額の計算において、同年中に取得し事業の用に供した画像診断ワークステーションが租税特別措置法(以下「措置法」という。)第10条の3《中小企業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除》第1項に規定する「特定機械装置等」(以下単に「特定機械装置等」という。)に該当し、同条第3項に規定する所得税額の特別控除を受けることができるとして確定申告をしたところ、原処分庁が、当該画像診断ワークステーションは特定機械装置等には該当せず、同特別控除を適用することができないとして、所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったことに対し、請求人が当該各処分の違法を理由としてその全部の取消しを求めた事案であり、争点は、当該画像診断ワークステーションが措置法第10条の3第1項に規定する「特定機械装置等」に該当するか否かである。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成24年12月19日請求)に至る経緯は、別表のとおりであり、請求人は、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号の規定により、異議申立てをしないで審査請求をした。

(3) 関係法令等

 別紙のとおりである。

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人について
 請求人は医師であり、平成14年に、d県e市f町○−○所在の事業所において、「K」の名称で外科の診療所(以下「本件診療所」という。)を開設した。
ロ 請求人の各届出書について
 請求人は、平成15年1月20日に、原処分庁に対して、請求人の事業所得についてまる1所得税の青色申告承認申請書及びまる2建物附属設備、機械装置、工具器具備品及び車両運搬具の減価償却の方法について定率法を選択する旨記載した所得税の減価償却資産の償却方法の届出書をそれぞれ提出し、平成14年分以後の所得税について青色申告の承認を受けるとともに、同年分以後の当該各資産に係る償却費の額について定率法により計算することとなった。
ハ 請求人の画像診断ワークステーションの取得について
 請求人は、平成21年11月、画像診断ワークステーション(以下「本件各機器」という。)を取得し、本件診療所内に設置して請求人の事業の用に供した。
ニ 請求人の平成21年分の所得税の確定申告等について
 請求人は、原処分庁に対し、平成21年分の所得税の確定申告書(以下「本件申告書」という。)を、法定申告期限内である平成22年3月10日に提出した。本件申告書に添付された平成21年分所得税青色申告決算書(一般用)には、本件各機器に係る減価償却の計算の要素として、減価償却資産の名称等について「画像診断ワークステーション」と、取得年月について「平成21年11月」と、取得価額について「XX,XXX,XXX円」と、償却方法について「定率法」と、耐用年数について「5年」と、償却率について「0.500」と、本年分の必要経費算入額について「XXX,XXX円」とそれぞれ記載入力されていた。
 さらに、請求人は、本件申告書に、本件各機器について措置法第10条の3第3項に規定する中小企業者が機械等を取得した場合の所得税の税額控除の適用を受ける旨記載し、平成22年3月12日に、当該税額控除に関する明細書を原処分庁に提出した。当該明細書には、本件各機器に関し、その種類として「電子計算機」、取得年月日及び指定事業の用に供した年月日として「平成21年11月16日」、取得金額として「XX,XXX,XXX円」、税額控除額として「XXX,XXX円」などと記載されていた。請求人は、平成22年11月30日、平成21年分の所得税について修正申告書を提出したが、同申告書においても税額の計算上、同税額控除の適用を前提としていた。
ホ 原処分について
 原処分庁は、請求人に対し、平成24年11月8日、本件各機器は、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」のうち「8 医療機器」に含まれ、措置法第10条の3第1項第1号及び措置法施行規則第5条の8第1項第1号に規定する「電子計算機」には該当しないため、本件特別控除の対象とはならないとして、原処分を行った。

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2 主張

原処分庁 請求人
 本件各機器は、以下のとおり、特定機械装置等に該当しない。  本件各機器は、以下のとおり、特定機械装置に該当する。
1 本件各機器は、管理医療機器及び特定保守管理医療機器から成るものであり、医療の用に供されることを目的とする資産として、医師である請求人が診療や治療等に使用しているものである。このような医療用機器は、措置法施行令第6条の4第2項第2号に規定する要件、すなわち、薬事法第2条第5項、第6項又は第7項の規定により厚生労働大臣が指定した日の翌日から2年を経過していないものに該当するものであれば、措置法第12条の2第1項の規定により、医療用の機器等の特別償却を適用できるのであって、措置法第10条の3にいう中小企業者が機械等を取得した場合の所得税の特別控除等の適用対象とはならない。 1 措置法第19条の規定からすれば、措置法第10条の3と措置法第12条の2の両方の規定の適用要件を満たす資産があり得ると解釈することができる。措置法第10条の3には、措置法第12条の2の適用資産を除く旨の規定はなく、また、措置法第12条の2に、両方において適用可能資産がある場合は、措置法第12条の2を優先する旨の規定もないのである。
 本件各機器が措置法第12条の2の規定の適用要件を満たしたものであったとしても、重複適用していない限り、措置法第10条の3の適用に影響を及ぼさない。本件各機器は、措置法第10条の3に規定する電子計算機に該当し、請求人は措置法第12条の2ではなく、措置法第10条の3の適用を受けることを選択したのであるから、措置法第10条の3の適用ができる。
2 措置法第10条の3第1項が規定する減価償却資産の意義について、措置法第2条第1項第6号は、所得税法第2条第1項第19号に規定する減価償却資産をいう旨規定している。
 また、耐用年数省令第1条第1項は、所得税法第2条第1項第19号に規定する減価償却資産のうち、鉱業権及び坑道以外のものの耐用年数について、「機械及び装置以外の有形減価償却資産」や「機械及び装置」などの区分に応じて耐用年数を定める旨規定している。
 そして、法的安定性の観点からは、ある法令上の用語は、関連法規における同一の用語と整合的に用いられるべきであるから、本件各機器が「特定機械装置等」のうちの「電子計算機」に該当するか否かについては、耐用年数省令のいずれの「構造又は用途」及び「細目」に該当するのかに基づいて判断するのが相当と解される。
 そうすると、本件各機器は、薬事法に規定された管理医療機器及び特定保守管理医療機器からなる医療の用に供されることを目的とする資産であり、医師である請求人がその事業(診察や治療等)の用に供しているものであるから、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」のうち「医療機器」に該当し、「事務機器及び通信機器」の細目「電子計算機」には該当しない。
2 耐用年数省令別表第一の区分は、措置法施行規則第5条の8第1項第1号に規定する事務処理の能率化等に資するものとして定められた「電子計算機」の判定上は関係がない。
 薬事法は、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行い、保健衛生の向上を図ることを目的としているものであり、薬事法で管理医療機器等に該当しても、電子計算機でなくなるわけではない。また、たとえ耐用年数省令別表第一の種類「器具及び備品」のうち構造又は用途「医療機器」に含まれるとしても、電子計算機でなくなるわけではない。耐用年数省令は減価償却資産の耐用年数及び償却方法等を定めるものであり、資産の属性を定めるものではない。
 したがって、本件各機器については、措置法施行規則第5条の8第1項第1号が規定する要件に基づいて「電子計算機」に該当するか否かを判断すべきである。
3 措置法施行規則第5条の8第1項第1号に規定する事務処理の能率化等に資するものとして定められた「電子計算機」は、主記憶装置にプログラムを任意に設定できる機構を有するものに限られているところ、本件各機器の仕様書等には、「ソフトウェアをインストールやアンインストールしないこと」等の使用上の注意が記載されており、本件各機器は、主記憶装置にプログラムを任意に設定できる機構を有するものではないから、措置法施行規則第5条の8第1項第1号に規定する「電子計算機」には該当しない。 3 措置法第10条の3の規定の適用を受けることができる電子計算機は、措置法施行規則第5条の8第1項第1号に規定する電子計算機であるが、措置法施行規則にある「主記憶装置にプログラムを任意に設定できる機構を有するものに限る。」とは、電子計算機の内部構造、性能についての規定であり、使用方法についての規定ではないことから、本件各機器の仕様書に記載されている使用上の注意は、措置法施行規則第5条の8第1項第1号に規定する「電子計算機」該当性の判定には関係がない。
 そして、本件各機器を構成する主要な機器のうち、まる1画像診断ワークステーション○○(以下「本件画像管理機器」という。)及びまる2画像診断ワークステーション△△(以下「本件画像処理機器」という。)は、中央演算装置、記憶装置、外部からの指令を伝えるキーボード、マウス、処理結果を表示するディスプレイで構成され、Microsoft Windows XPと呼称される基本ソフトウェア(以下「ウィンドウズXP」という。)がインストールされており、措置法施行規則第5条の8第1項第1号に規定する主記憶装置にプログラムを任意に設定できる機構を有する「電子計算機」に該当する。そして、□□(以下「本件デジタル信号化機器」という。)及び◇◇(以下「本件印刷機器」という。)については、措置法施行規則第5条の8第1項第1号に規定する「電子計算機と同時に設置する附属の入出力装置」に該当する。

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3 判断

(1) 法令解釈

イ 中小企業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除
(イ) 措置法第10条の3第1項及び第3項は、中小企業者に該当する個人、すなわち常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人で青色申告書を提出するものが、指定期間内にその製作の後事業の用に供されたことのない同条第1項各号所定の減価償却資産(特定機械装置等)を取得又は製作してこれを所定の事業の用に供した場合には、特別な減価償却方法を取るか、供用年の年分に係る所得税額の特別控除を受けるかを選択できる旨規定している。そして、同条第1項第1号は、特定機械装置等として、機械及び装置並びに工具、器具及び備品を挙げ、工具、器具及び備品については、事務処理の能率化等に資するものとして財務省令で定めるものに限る旨を定め、措置法施行規則第5条の8第1項第1号は、前記財務省令で定める工具、器具及び備品として、主記憶装置にプログラムを任意に設定できる機構を有するなど、一定の性能を有する電子計算機を掲げている。  
(ロ) 当該措置が設けられた経緯等は、以下のとおりである。
 いわゆるバブル経済崩壊後の長期にわたる景気の低迷等を一刻も早く打破するため、有効需要を喚起する経済対策を早急に実施する必要から、平成10年4月24日に経済対策閣僚会議が開かれ、所得税等の特別減税の追加実施や投資・住宅についての政策減税等を織り込んだ「総合経済対策」が決定された。その一環として、中小企業者の設備投資を促進するため、平成10年法律第84号による措置法の改正により、当該措置が平成10年6月1日から平成11年5月31日までを指定期間とする1年限りの措置として創設された。
 この措置は、従前存在した中小企業者の機械の特別償却の制度(旧措置法第12条の2)について、別に条文(旧措置法第10条の7)を定めて時限的に拡充する趣旨のものであった。その創設時、特別償却ないし税額控除の対象となる特定機械装置等のうち「器具及び備品」に該当するものの範囲は、「事務処理の能率化等に資するもの」のうち、一定以上の価額で取得され、所定の機能を有するまる1電子計算機、まる2デジタル複写機、まる3ファクシミリ、まる4デジタル構内交換設備、まる5デジタルボタン電話設備、まる6電子ファイリング設備、まる7マイクロファイル設備、まる8ICカード利用設備及びまる9冷房用又は暖房用機器並びにこれらと同時に設置する附属機器等とされていた(旧措置法第10条の7第1項第1号、旧措置法施行規則第5条の11の2第1項)。
 その後この措置は、経済情勢等を踏まえて、数次にわたって指定期間の延長や適用対象等の改正を経て、条項についても、旧措置法第10条の7から第10条の6、第10条の3へと繰り上げられた上、平成18年法律第10号による改正において、その適用を受ける「器具及び備品」の範囲から、電子計算機以外の器具及び備品が全て除外され、新たにインターネットに接続されたデジタル複合機及び一定のソフトウェアが対象資産に追加されたものである(措置法第10条の3第1項第2号、措置法施行規則第5条の8第1項第2号)。
ロ 医療用機器等の特別償却
(イ) その一方で、措置法第12条の2第1項は、青色申告書を提出する個人で医療保健業を営むものが、昭和54年4月1日から平成23年3月31日までの間に、医療用機器等、この場合、一定の規模を有する医療用の機械及び装置並びに器具及び備品のうち、高度な医療の提供に資するもの又は先進的なもの(同項第1号)、あるいは医療の安全の確保に資する機械及び装置並びに器具及び備品(同項第2号)として一定の要件を満たすもので、その製作の後事業の用に供されたことのないものを取得し、又は医療用機器等を製作してこれを当該個人の医療保健業の用に供した場合には、特別な減価償却方法により計算した減価償却費をその年分の事業所得の必要経費に算入することができる旨規定している。
 措置法施行令第6条の4第2項は、前記医療用機器等のうち高度な医療の提供に資するもの又は先進的なものとは、まる1医療用の機械及び装置並びに器具及び備品のうち、高度な医療の提供に資するものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定するもの(同項第1号)若しくはまる2薬事法第2条第5項に規定する高度管理医療機器、同条第6項に規定する管理医療機器又は同条第7項に規定する一般医療機器で、これらの規定により厚生労働大臣が指定した日の翌日から2年を経過していないものである旨規定している。
(ロ) この措置は、昭和54年法律第15号により新設されたものであるが、当初は、上記イの(ロ)で述べた、措置法第10条の3第1項及び第3項の前身である中小企業者の機械の特別償却の制度と同じ条文(当時の措置法第12条の3、その後の同法第12条の2)に新たな項を付加する形で規定された。
(ハ) このような医療用機器等の特別償却制度が創設されたのは、昭和54年当時、例えば電子装置を組み込んだ医療用電子機器等、高度な機能を有する医療用機器が開発されるなど技術の進歩がめざましく、これらの機器を使用することによって従来よりも高度な治療が可能になってきたにもかかわらず、その普及が十分ではない状況にあったことから、これら新鋭の医療用機器の導入を促進することが国民に医学技術の進歩に伴う高度な医療を提供していく上からも緊要であるとされたことによるものであった。
 なお、かかる医療用機器の特別償却について、中小企業者の機械の特別償却の制度(当時の旧措置法第12条の3)と同じ条に別の項を設けて規定されたのは、立法時、その適用対象者の実情からも、同制度と同様の規定構造をとることが適当であると考えられたことによる。
 その後、中小企業者の機械の特別償却制度については、平成15年度の税制改正の際、適用期限の到来をもって廃止されることとなり、それに伴い当該条文の見出しが「医療用機器等の特別償却」に改められた。医療用機器等の特別償却制度については、適用対象について、その時々の必要に応じて、例えば医療施設に係る消防用資産や看護業務省力化機器等が追加され、その後除外されるなど変更され、また特別償却割合についても、数次にわたり改正がされた。そして、平成21年度の税制改正において、特別償却の対象となる医療用機器等の範囲について、現行条文のとおり高度管理医療機器、管理医療機器若しくは一般医療機器のうち、厚生労働大臣が指定した日から2年を経過していないもの等高度な医療の提供に資するもの又は先進的なものと、一定の医療の安全の確保に資する機器と定められたのである。
ハ 医療機器
(イ) 薬事法は、医療機器を、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等であると定義した上で(同法第2条第4項)、当該医療機器の副作用又は機能障害などの不具合が生じた場合における人の生命及び健康への影響等の危険度に応じ、高度管理医療機器(同第5項)、管理医療機器(同第6項)及び一般医療機器(同第7号)に区分し、それぞれ規制しているものである。
(ロ) 措置法基本通達12の2−5は、措置法第12条の2第1項第1号に規定する医療用機器は、直接医療の用に供される機械及び装置並びに器具及び備品をいい、病院、診療所等が有する減価償却資産であっても、例えば、事務用の器具及び備品、給食用設備、クリーニング設備等のように直接医療の用に供されない減価償却資産は同法にいう医療用機器には該当しない旨定めているところ、当該通達の取扱いは、当審判所においても相当と認める。
ニ 特定機械装置等に該当する電子計算機
(イ) 上記イで述べた措置法第10条の3の規定内容やその制定経緯等からすれば、同条が、特別償却ないし税額控除の対象となる工具、器具及び備品について「事務処理の能率化等に資するもの」として財務省令で定めるものに限ったのは、中小企業における不特定の事務の用に供し、その事務処理の能率化等に資する工具、器具及び備品を、同対象とする趣旨であったものと解される。
(ロ) したがって、直接医療の用に供される機械及び装置、器具又は備品である医療用電子機器については、措置法第12条の2に規定する「医療用機器」に該当する場合に、同条にいう特別償却を受けることは別段、仮に措置法第10条の3が要求するものと同様の機能を有したとしても、その用途等からして同条による特別償却ないし税額控除の適用は受けないのであって、請求人主張のように、措置法第12条の2と措置法第10条の3が選択的に適用できるわけではないものと解される。また、そのように解することが、措置法が医療用電子機器等の技術向上を受けて、中小企業者の特別償却の制度とは別途、医療用機器の特別償却制度を設け、その後、各制度がそれぞれの趣旨にのっとり、社会・経済情勢の変化等に伴って適用対象や特別償却割合等に係る法改正を繰り返してきた経緯等からしても、相当である。
(ハ) 加えて、所得税法上の減価償却方法等に関する特例である措置法第10条の3は、各減価償却資産の耐用年数を定めた耐用年数省令と密接な関係を有するから、措置法第10条の3の「特定機械装置等」のうちの「電子計算機」は、耐用年数省令における「電子計算機」と同義に解するのが相当であるところ、耐用年数省令における「電子計算機」は、用途等を事務機器及び通信機器とするものであり、医療用の機器については別途医療機器として区分が設けられている。このことも、医療用の電子計算機が措置法第10条の3の特定機械装置等に当たらないことと整合するのである。詳細は、以下のとおりである。
A 措置法第2条第1項第6号は、同法第10条の3を含む同法第2章の「所得税法の特例」における減価償却資産の意義について、所得税法第2条第1項第19号に規定する減価償却資産をいう旨規定している。そして、所得税法第2条第1項第19号は、減価償却資産の意義について、事業所得等を生ずべき業務の用に供される建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産等で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう旨規定し、同条を受けた所得税法施行令第6条は、第7号において「器具及び備品」を掲げている。
B 他方で耐用年数省令第1条第1項第1号は、所得税法第2条第1項第19号に規定する減価償却資産(鉱業権及び坑道等を除く。)の耐用年数を規定するに当たり、所得税法施行令第6条第7号に掲げる「器具及び備品」に該当する資産について、耐用年数省令別表第一に定めるところによるものとし、同表は「器具及び備品」を構造又は用途に応じて12に区分し、更に細目を設けて分類した上で網羅的に掲げている。
C 一般に、法的安定性の観点から、ある法令上の用語の意味は、特段の事情がない限り関連法規における同一の用語と整合的に解釈することが相当である。ましてや、前記措置法、所得税法及び耐用年数省令の規定の関係に加え、措置法第10条の3が、中小企業者が機械等を取得した場合に特別な減価償却方法を採ることなどを選択できる旨定めた規定であることからすれば、措置法第10条の3にいう「器具及び備品」並びにこれを受けた措置法施行規則第5条の8にいう「電子計算機」は、耐用年数省令にいう「器具及び備品」ないし「電子計算機」と同義に解するべきである。
D そうであるところ、耐用年数省令別表第一には、種類を「器具及び備品」とする区分の中に、構造又は用途を「事務機器及び通信機器」とする区分があり、そこには、細目として「電子計算機」が掲げられており、同「電子計算機」は、更にまる1パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く。)及びまる2その他のものに分けられている。そして、耐用年数省令において「器具及び備品」に分類されたもののうちには、ほかに「電子計算機」という項目は存在しないことからすると、耐用年数省令は、「器具及び備品」中の「電子計算機」について、その用途等が「事務機器及び通信機器」であるもの、すなわち事務や通信等に使用される「計算機」を想定しているものと解される。
E 一方、耐用年数省令別表第一には、種類を「器具及び備品」とする区分の中に、構造又は用途を「医療機器」とする区分があり、そこには、細目として、消毒殺菌用機器、手術機器等が列挙された上「その他のもの」という細目が設けられているから、同区分においては、医療の用に供される減価償却資産が網羅されているということができる。
 そして、耐用年数省令における「医療機器」の意味について、薬事法上の医療機器と異なる解釈をすべき事情は特段認められないから、診療用又は治療用の器具備品は、全て耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」の「医療機器」に区分されるものと解するのが相当である。
F そうすると、診療又は治療用の機器は、耐用年数省令別表第一「器具及び備品」中、「医療機器」に該当する一方で、「電子計算機」には該当しないというべきである。
G そして、措置法施行規則第5条の8第1項第1号に定める「電子計算機」と、耐用年数省令にいう「電子計算機」は同義に解するのが相当であるから、診療又は治療用の機器は、たとえ電子計算機としての機能を有するものであったとしても、同号の「電子計算機」に当たらず、措置法第10条の3の適用を受けない。

(2) 認定事実

 原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件各機器を構成する機器等について
(イ) 本件各機器は、病院等でX線写真等の画像を画像データとして保存し、ディスプレイ上に投影するなどして患者の診察の用に供するための装置である。
(ロ) 本件各機器を構成する主要な機器は、まる1本件画像管理機器、まる2本件画像処理機器、まる3本件デジタル信号化機器、及びまる4本件印刷機器であり、相互にLANケーブルで接続されて使用される。そして、本件画像管理機器は、本件診療所の診療室内の請求人の机上に設置されており、本件画像処理機器、本件デジタル信号化機器及び本件印刷機器は、本件診療所のレントゲン室内に設置されている。
ロ 本件画像管理機器の機能等について
 本件画像管理機器は、診療所等で使用し、X線診断装置、超音波診断装置及びMRI装置等から転送された画像情報をシステム内の外部記憶装置に保存した上で、ディスプレイ上に投影したり、画像と、患者情報、検査情報の参照・確認・修正を行い、また外部装置である印刷装置等に出力することを目的とする機器である。加えて、ディスプレイ上に表示した画像情報を用いて使用者が読影を行い、その結果を読影レポートとして作成、保存することを目的とする読影レポート機能も有しており、平成○年○月○日に厚生労働大臣から薬事法上の管理医療機器の指定を受けているものである。本件画像管理機器は、汎用品であるパーソナルコンピューターの端末とマウスやキーボード、モニター等とで構成される。
ハ 本件画像処理機器の機能等について
 本件画像処理機器は、X線診断装置等で撮影され、本件デジタル信号化機器によってデータ化された患者の画像データを受信し、必要に応じてコンピューター処理した上、放射線科情報システム(RIS)等から受信した患者情報と併せて整理し、本件画像管理機器等に出力することで画像情報を診療のために提供する機能を有する。さらに、X線診断装置に照射条件を送信して照射結果を受信する機能も有しており、平成○年○月○日に、厚生労働大臣から薬事法上の管理医療機器の指定を受けているものである。本件画像処理機器は、汎用品であるパーソナルコンピューターの端末とマウスやキーボード、モニター等で構成されていた。
ニ 本件デジタル信号化機器の機能等について
 本件デジタル信号化機器は、X線診断装置等で撮影した画像を装置内の輝尽性蛍光板に蓄像し、レーザービームの走査で取り出して信号化する機能を有し、コンピューター処理した画像情報を診療のために提供することを目的とする機器であり、平成○年○月○日に厚生労働大臣から薬事法上の管理医療機器の指定を受けているものである。
ホ 本件印刷機器の機能等について
 本件印刷機器は、X線診断画装置等から受け取った画像信号を専用のフィルムに印刷することを目的とした機器であり、平成○年○月○日に薬事法上の一般医療機器の届出を行っているものである。
ヘ インストールされているソフトについて
 本件画像管理機器は、基本ソフトとしてウィンドウズXPがインストールされ、アプリケーションソフトとしてメールソフト及びインターネットブラウザがインストールされていた。当該アプリケーションソフトは、主としてメーカーとの連絡用に購入当初からインストールされていたものであり、仕様書には、使用上の注意として、あらかじめインストールされている以外のソフトウェアをインストールしないこと、あらかじめインストールされているソフトウェアをアンインストールしないこと、基本ソフト及び基本ソフトに附帯するファイルとアプリケーションソフトの設定変更をしないことなどが記載されていた。
 また、本件画像処理機器は、あらかじめ基本ソフトとしてウィンドウズXPがインストールされており、仕様書には使用上の注意として、ソフトウェアをインストールやアンインストールしないことや、基本ソフトの設定変更をしないことなどが記載されていた。
ト 本件各機器の機能等について
 本件各機器を請求人に販売したN社(本店所在地は、g県h市i町。)のe支店長であるP(以下「P支店長」という。)は、当審判所からの質問に対し、要旨次のとおり回答した。
 なお、P支店長の回答は、自己が職務上取扱う製品の性状等に関する答述であって内容にも格別不自然な点はなく、その他信用性を疑わせる事情も認められないから、信用できる。
(イ) 本件各機器は、X線写真等の画像を画像データとして保存し、適時ディスプレイ上等に投影するなどして、患者の診察に役立てる医療機器である。
(ロ) 本件画像管理機器及び本件画像処理機器は、汎用品のパーソナルコンピューターを使用し、基本ソフトもウィンドウズXPがインストールされている。また、販売者であるN社又は製造業者であるQ社が管理者権限を保有している事実はない。
(ハ) 本件画像管理機器及び本件画像処理機器には、画像診断ワークステーションとして使用するのに必要なソフトウェアのみがインストールされており、例えばワード、エクセルなど、通常のパーソナルコンピューターとしてのアプリケーションソフトはインストールされていないため、販売時の状態ではパーソナルコンピューターとしての通常の使用はできない。そもそも、本件各機器は本来医師の診療に使用するものであり、パーソナルコンピューターとして使用されることは想定していない。
 なお、本件各機器は、他のアプリケーションソフトがインストールされた場合に、画像診断ワークステーションとしての使用に不具合が生ずる可能性があり、本件各機器の製造業者は、アプリケーションソフトのインストール等を行わないよう仕様書に記載しており、当該インストール等を原因とする不具合が生じた場合には、修理等に応じないこととしていた。

(3) 判断

イ 請求人は、本件各機器は措置法施行規則第5条の8第1項第1号に定める電子計算機に該当するから、同法第10条の3第1項第1号に定める器具及び備品に該当し、同条第3項の定める所得税額の控除の対象となる旨主張する。
ロ 上記(1)のニのとおり、措置法第10条の3第1項第1号に定める「器具及び備品」に該当するものとして措置法施行規則第5条の8第1項第1号に定める「事務処理の能率化等に資する」電子計算機とは、不特定の事務の用に供される汎用電子計算機をいうところ、病院、診療所等において直接診療又は治療の用に供する医療用電子機器は、医療という特定の業務に使用されるものであり、上述の事務処理の能率化に資するものでないから同号の電子計算機に当たらず、特定機械装置等には該当しない。
ハ そうであるところ、上記1の(4)のイ及び上記(2)のとおり、本件各機器は、本件診療所内にあって、いずれも、X線診断装置等の画像をデジタル信号化した上で送信し、加工、保存、印刷等することにより、患者の画像情報等を医師である請求人に提供し、もって診察・治療等に資するものである。
 すなわち、本件各機器のうち、まる1本件画像管理機器は、X線診断装置、超音波診断装置及びMRI装置等から転送された画像情報をシステム内の外部記憶装置に保存し、ディスプレイ上で画像、患者情報、検査情報の参照・確認・修正を行い、外部装置である印刷装置等に出力することを目的とする機器であり、まる2本件画像処理機器は、本件デジタル信号化機器によって信号化された患者の画像データを受信し、必要に応じ画像処理を行った上、患者情報と合わせて整理し、本件画像管理機器等に出力することを目的とする機器であり、さらに、まる3本件デジタル信号化機器は、X線診断装置等で撮影した画像を信号化することを目的とする機器であって、これらの装置はいずれも薬事法上の管理医療機器の指定を受けている。また、まる4本件印刷機器は、X線診断画装置等から受け取った画像信号を専用のフィルムに印刷することを目的とした機器であって、薬事法上の一般医療機器の届出がされているものである。
 そして、本件各機器は、一部に汎用性のあるパーソナルコンピューターが使用され、記憶装置、演算装置、制御装置及び入出力装置等を有して情報の保存、加工、送信等を行っているものの、それらは、飽くまでも医療機器として使用する場合の必要に応じたもので、通常事務所等で行われるような事務の用に供することは想定されておらず、かかる使用に耐えうるだけのアプリケーションソフト等も備えていない。また、請求人が、これらを医療の業務以外の事務に用いていたといった事情も認められない。
 そうすると、本件各機器は、医師等により直接に患者の診療又は治療の用に供されるものであって、措置法第10条の3第1項第1号にいう「事務処理の能率化等に資する」ものであるといえないから、これを前提とする特定機械装置等の内の「電子計算機」には該当しないものと解するのが相当である。
ニ 以上のことからすれば、本件各機器は、特定機械装置等に該当しないこととなる。したがって、請求人は、本件各機器のうち、措置法第12条の2に規定する「医療用機器」に該当するものについて同条による特別償却の適用を受けることは別段、措置法第10条の3第3項に規定する所得税の特別控除の適用を受けることはできないというべきである。
ホ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、薬事法は医療機器の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行い保健衛生の向上を図ることを目的としているものであり、本件各機器が同法に規定する管理医療機器等に該当し、また、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」の「医療機器」に含まれるとしても、本件各機器が電子計算機でなくなるわけではない旨主張する。
 しかしながら、上記ロないしニで認定説示のとおり、措置法第10条の3に規定する特定機械装置等に該当する「電子計算機」は、中小企業における不特定の事務の用に供し、その事務処理の能率化等に資する汎用電子計算機をいい、医療機器はこれに該当するものではない。
 この点に関する請求人の主張は採用することができない。
(ロ) 請求人は、措置法第19条の規定を挙げて、同法第10条の3と同法第12条の2の両方の規定の適用要件を満たす資産があり得るのであって、本件ワークステーションが措置法第12条の2の規定の適用要件を満たしたものであったとしても、請求人において、同条の適用を受けず、措置法第10条の3の適用を受けることを選択した以上は同条の適用が可能である旨主張する。
 そこで検討するに、措置法第19条は、個人の有する減価償却資産が、措置法第10条の3や措置法第12条の2を含む減価償却資産に関する特例のうち、二以上の規定の適用を受けることができるものである場合には、これらの規定のうち、いずれか一の規定のみを適用することを定めた規定である。
 減価償却資産には、様々なものがある一方、措置法第10条の3と、措置法第12条の2の適用対象は、それぞれの立法趣旨に基づき、また、その時々の情勢も反映して定められたものであって、当然に互いの適用を排除するものではないから、観念的には両者の適用対象に重なり合いが生じることがないわけではない。措置法第19条は、このような場合を想定し、重畳的な適用を排除した規定であるといえる。
 しかしながら、措置法第10条の3第1項第1号は、特定機械装置等のうち、工具、器具及び備品について、あえて事務処理の能率化等に資するものに限る旨規定していること、これについて、同条の適用を受ける工具、器具及び備品を、中小企業における不特定の事務の用に供し、その事務処理の能率化等に資するものに限る趣旨であると解するのが相当であることは、上記(1)のニの(イ)で述べたとおりである。措置法第12条の2の適用対象となる医療機器は、直接医療の用に供される機器をいうから、措置法第10条の3にいう器具及び備品に該当するものではない。
 措置法第19条は、措置法第10条の3と措置法第12条の2の双方の適用対象となる減価償却資産があった場合の規定であるところ、本件各機器のような、医療機器である電子計算機等は、そもそも措置法第10条の3の適用対象とならないのであるから、措置法第19条の適用の問題は生じないものというほかない。したがって、これに関する請求人の主張は採用することができない。
(ハ) また、請求人は、措置法第10条の3については、中小企業者の設備投資を促進するために導入されたものであるところ、医業を営んでいる中小企業者が、医療機器を導入した場合に同条の特別償却等を認めることは、中小企業者の設備投資の促進につながるから、同条の趣旨にかなうなどと主張する。
 しかしながら、措置法第10条の3は、中小企業者の設備投資であれば一律に特別償却等を認めているのではなく、一定の要件を満たす電子計算機等に限っているところ、医療用電子機器等については、これに当たらないものと解すべきことは、前述のとおりである。
(ニ) 請求人は、医業を営む者について措置法第10条の3の適用がほとんど認められないとすることは相当でないとも主張する。
 しかしながら、医療用機器であるとして同条の適用を受けない電子計算機は、直接医療の用に供される機械及び装置、器具又は備品に限られるのであり、医業を営む者が使用した電子計算機が直ちにこれに当たるというものではない。そして、一定の要件を満たす医療用機器については、措置法第12条の2により別途特別償却の制度が設けられていることも前述のとおりである。
 中小企業者の特別償却等及び医療用機器の特別償却に関する法が、それぞれその時々の社会・経済情勢を踏まえて適用対象や特別償却割合等につき数次にわたり改正された結果、平成21年当時の法の下では、特定の医療用電子機器が特別償却の対象とならなかったり、中小企業者の特別償却等の方が、特別控除も選択可能であることや特別償却割合等の点で医療用機器等の特別償却よりも有利であるなどの事情があったとしても、それは、結局のところ現行の医療機器等の特別償却制度の適用対象や特別償却割合等について定めた立法政策の問題であり、これをもって措置法第10条の3の適用を認めるべきであるということもできない。
 したがって、この点における請求人の主張は採用することができない。
(ホ) 更に請求人は、措置法施行規則第5条の8第1項第1号の規定は、同号に該当する「電子計算機」の内部構造及び性能について一定の限定をしているが、使用方法について限定する規定ではないことから、本件各機器の仕様書に記載されている使用上の注意は、措置法施行規則第5条の8第1項第1号に規定する「電子計算機」該当性の判定には関係がないとし、本件画像管理機器及び本件画像処理機器は、それぞれ中央演算装置、記憶装置、外部の指令を伝えるキーボード、マウス、処理結果を表示するディスプレイで構成され、基本ソフトウェアとしてウィンドウズXPがインストールされており、措置法施行規則第5条の8第1項第1号に規定する主記憶装置にプログラムを任意に設定できる機構を有する「電子計算機」に該当し、本件デジタル信号化機器及び本件印刷機器については、「電子計算機と同時に設置する附属の入出力装置」に該当するから、本件各機器は、措置法第10条の3の規定の適用を受ける電子計算機に該当する旨主張する。
 確かに、本件画像管理機器及び本件画像処理機器には、汎用品であるパーソナルコンピューターが使用されており、新たなアプリケーションソフトをインストールすることもできるなど、主記憶装置にプログラムを任意に設定できる機構を有している。
 なお、この点について原処分庁は、本件各機器は、仕様書等に、使用上の注意としてソフトウェアをインストールやアンインストールしないことが記載されているから、主記憶装置にプログラムを任意に設定できる機構を有しているとは認められない旨主張するが、本件各機器を構成するパーソナルコンピューターが、その機構上主記憶装置にプログラムを任意に設定することが可能であることは前記のとおり明らかであり、仕様書等にこれをしないようにとの注意書があったことは、かかる認定を左右するものではない。
 しかしながら、措置法第10条の3第3項に規定する所得税額の特別控除の対象となる特定機械装置等のうちの「電子計算機」は、中小企業における不特定の事務の用に供し、その事務処理の能率化等に資する汎用電子計算機をいうことは、上記ロないしニ及び上記(イ)で認定説示したとおりである。しかるに、本件各機器は、一体として診療の用に供されるものであって、医療以外の業務に使用されることは想定されていない。したがって、本件各機器の一部に汎用品であるパーソナルコンピューターが用いられており、記憶装置にプログラムを任意に設定できる機構を有するなど、措置法第10条の3に規定する「電子計算機」に要求される機能を有していたとしても、その用途からして措置法第10条の3にいう不特定の事務の用に供しその事務処理の能率化等に資するものとはいえず、同条の「電子計算機」とみることはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
(ヘ) 小括
 上記のとおり、本件各機器は、特定機械装置等のうちの「電子計算機」には該当しないから、措置法第10条の3第3項に規定する所得税の特別控除を適用することができない。

(4) 過少申告加算税の賦課決定処分について

 請求人の平成21年分の所得税の更正処分は上記(3)のニのとおり適法であり、また、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定により本件賦課決定処分をしたことは適法である。

(5) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠書類によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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