附帯税

更正又は決定の予知

  1. 延滞税
  2. 過少申告加算税
  3. 無申告加算税
    1. 無申告加算税の賦課
    2. 正当な理由
    3. 更正又は決定の予知(5件)
    4. 期限内申告書を提出する意思があったと認められる場合
  4. 不納付加算税
  5. 重加算税

期限後申告書の提出は決定があることを予知してなされたものではないとした事例

裁決事例集 No.2 - 1頁

 外部から認識することのできる面接調査等が行われておらず、申告案内書及び申告書用紙の送付を受けたにとどまる請求人の期限後申告書の提出は、「調査があった」ことにより決定があることを予知してなされたものであるとすることはできない。

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原処分庁が法定申告期限内に地価税の申告書が提出されていないことを内部資料によって確認した上、請求人の関与税理士事務所員に対し電話で問い合わせた直後に地価税申告書が提出された場合は、国税通則法第66条第3項にいう「調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものではないとき」に該当せず、同条第1項に規定する「納付すべき税額」とは法定申告期限後に提出された申告書に記載された納付すべき税額を指し、税の納付とは直接関係がなく、無申告加算税の基礎となる税額の計算において法定申告期限内に納付された税額を控除すべきではないとした事例

裁決事例集 No.54 - 72頁

 国税通則法第66条第3項にいう「調査」とは、実地調査等の納税者に対する直接的かつ具体的な、いわゆる外部調査はもちろんのこと、申告指導のような納税者が課税庁における検討を認識することができる程度の手続も調査の範囲に含まれ、「決定があるべきことを予知してされたものではないとき」に当たるためには、課税庁の調査を納税者が認識できる以前に自発的な意思に基づいて期限後申告書を提出した場合をいうものと解するのが相当である。
 請求人は、請求人関与税理士が法定申告期限前に作成した平成7年分の地価税の申告書について、内容を了解した上で記名押印して本件地価税申告書の作成を了し、提出方を請求人関与税理士に依頼して交付しており、当該申告書に係る地価税額の全額を法定納期限内に納付しているものの、原処分庁は、請求人の同年分の地価税の課税価格を請求人に係る資料等から算定した結果、申告義務があると見込まれたことから法定申告期限前に地価税の申告書等の用紙を請求人に送付し、法定申告期限内に同年分の地価税の申告書が提出されていないことを内部資料によって確認した上、請求人関与税理士事務所員に対し電話で同年分の地価税について申告書の作成を請求人から委任されているか、また地価税の申告書を提出しているか問い合わせを行っており、本件地価税申告書が提出されたのは、原処分庁から請求人関与税理士が当該問い合わせを受けた直後であることからすると、「調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものではないとき」に該当せず、「予知してされた」と認められる。
 国税通則法第66条第1項によれば、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合以外は、無申告加算税が賦課されることとされており、無申告加算税は納税申告書を法定申告期限までに提出しなかった者に対する行政制裁であるから、同条の規定は納付すべき税額が法定申告期限内に納付されていたとしてもその適用が左右されるものではなく、同条の規定する「納付すべき税額」とは、法定申告期限後に提出された申告書に記載された納付すべき税額を指し、税の納付とは直接関係がなく、無申告加算税の基礎となる税額の計算において法定申告期限内に納付された税額を控除すべきではないと解するのが相当である。

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原処分庁が、請求人自身の面接を経ずに無申告加算税の賦課決定処分をした事案について、国税通則法第66条第5項の「調査」は、机上調査も含む広い概念であることを明らかにした事例(平成24年分の贈与税に係る無申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成26年7月28日裁決)

平成26年7月28日

《ポイント》
 本事例は、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について…決定があるべきことを予知してされたものでないとき」の「調査」の意義について明らかにしたものである。

《要旨》
 請求人は、国税通則法(通則法)第66条《無申告加算税》第5項に規定する「調査」とは、外部から認識することができる面接調査、すなわち質問検査権の行使をすることであり、部内資料の収集のような手続は「調査」には当たらない旨、また、この点をおくとしても、原処分庁の担当職員(本件担当者)は、請求人の代わりに税務署を訪れた税理士(本件税理士)に税務代理権限証書を提出させていないので、面接時には、本件税理士が請求人に代理して本件担当者の質問調査権の行使を受けたことにならないから、請求人に対する「調査」があったとは認められない旨主張する。
 しかしながら、通則法第66条第5項に規定する「調査」とは、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て決定に至るまでの思考、判断を含む包括的な概念であり、税務調査全般を指すものと解されるところ、まる1原処分庁の職員は、署内資料の検討等により、請求人の贈与税の申告が必要であると見込まれると判断していること、まる2本件担当者は、請求人の贈与税の申告について、本件税理士に面談し、資料の交付や説明をしていることなどが認められるから、これら一連の行為は、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程であると認められる。また、面接時には、本件税理士が請求人に代理して本件担当者の質問調査権の行使を受けたことにならないという点については、請求人の本件税理士への連絡、本件税理士と本件担当者の面接の状況等からすると、少なくとも、本件税理士が、請求人に係る贈与税の申告の要否についての税務署での面接において、請求人に代理又は代行して応答し、面接の内容を請求人に報告するという内容の委任契約が成立していたものと認められる。以上のことから、本件においては、通則法第66条第5項に規定する「調査」があったと認められる。

《参照条文等》
 国税通則法第66条第5項

《参考判決・裁決》
 東京高裁平成17年4月21日判決(訟月52巻4号1269頁)

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期限後申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について決定があるべきことを予知してされたものでないとした事例(1平成23年分及び平成24年分の所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分、2平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分・1全部取消し、2一部取消し・平成29年9月26日裁決)

平成29年9月26日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が行った期限後申告書の提出は、調査の内容・進捗状況、それに関する請求人の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断した結果、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当するとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、調査担当職員(本件調査担当職員)が、請求人の配偶者の所得税に係る調査(本件調査)において、請求人名義の不動産から生じる不動産所得が当該配偶者の所得として申告され、請求人が申告していない事実を把握し、請求人の所得税の課税標準等又は税額等を認定するために税理士(本件税理士)に質問を行ったのであるから、本件調査後の期限後申告書(本件期限後申告書)の提出は国税通則法第66条《無申告加算税》第5項(平成28年法律第15号による改正前のもの。)に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
 しかしながら、「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことは、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断すべきところ、請求人は、本件調査に応じた本件税理士を通じて請求人の所得税に係る調査を認識したものの、本件調査とは別の契機により不動産の名義どおりに申告をやり直したいとの申出を行い、期限後申告を行ったのであるから、本件期限後申告書の提出は「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当する。その結果、納付すべき税額に5%を乗じて計算した無申告加算税の額が5,000円未満となった年分は処分の全部を、その他の年分は上記5%相当額を超える部分につき処分の一部をそれぞれ取り消すことが相当である。

《参照条文等》
 国税通則法第66条第5項

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このまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で期限後申告書を提出したとは認められないとして、無申告加算税の賦課決定処分を取り消した事例(平成26年12月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成30年1月29日裁決)

平成30年1月29日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が、相続税の申告及び納付を決意した後、原処分庁所属の職員との申告相談を経て期限後申告書を提出したものと認められるとして、無申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消したものである。

《要旨》
 原処分庁は、原処分庁所属の職員(本件職員)は、請求人に対し、相続税に係る調査の事前通知をした上で当該調査を行う旨説明したほか、調査結果の内容の説明とともに期限後申告を勧奨しており、請求人は、調査があったことを認識し、期限後申告をしなければやがて決定されるであろうことを認識することができたものと認められるから、請求人が提出した期限後申告書(本件期限後申告書)は、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、請求人の母と本件職員との間で行われた請求人の相続税に関する相談結果を契機として、相続税の申告及び納付を決意し、その後、本件職員との申告相談を経て本件期限後申告書を提出したものと認められるから、請求人が、このまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で本件期限後申告書を提出したとは認められず、そもそも本件期限後申告書の提出に至るまで、相続税に関する調査を受けていたとの認識を有していたとも認められない。したがって、本件期限後申告書の提出は、同項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する。

《参照条文等》
 国税通則法第66条第5項

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