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徴収権の消滅時効
- 更正、決定等の期間制限
- 徴収権の消滅時効(5件)
過少申告加算税賦課決定の取消訴訟における課税庁の応訴は当該加算税の徴収権の消滅時効の中断事由となるとした事例
裁決事例集 No.26 - 13頁
国税通則法第72条第3項において準用されている民法上の時効の中断事由となる裁判上の請求には、債務者が提起した債務不存在確認訴訟において債権者が自己の債権を主張して応訴する行為も含まれるものと解されているところ、本件過少申告加算税の基因となった相続税の更正の取消訴訟においては、本件加算税も争われ、これについて原処分庁も応訴し、当該訴訟が現在裁判所において審理中であることは明らかであるから、本件加算税についての徴収権の消滅時効は中断すると解するのが相当である。
昭和58年9月12日裁決
差押えによる国税の徴収権の時効の「中断の事由が終了した時」とは、差押処分に係る財産の換価手続が終了した時又は差押えが解除された時をいうものと解するのが相当であるとした事例
請求人は、差押えがされれば、いくら放置しても時効が進行しないというのであれば、甚だしく不当な結果になる上、差押権者による一方的な意思でなされる差押えは、比較的短期間で完了するのであるから、差押えによる時効中断の事由が終了した時を差押処分の手続自体の終了時である差押登記がされた時と解すべきであると主張する。
しかしながら、国税の徴収権の時効は、国税通則法第73条第1項各号掲記の事由又は民法第147条各号掲記の事由があった時に中断し、国税通則法第73条第1項各号に定める期間を経過した時又は時効中断の事由が終了した時から更に進行することになるところ、差押えにより国税の徴収権の時効が中断された場合、当該差押処分の効力が存続している間は、時効中断事由としての差押えが継続しているのであるから、差押えによる国税の徴収権の時効の「中断の事由が終了した時」とは、当該差押処分に係る財産の換価手続が終了した時又は差押えが解除された時をいうものと解するのが相当である。また、差押財産の換価の時期については、原処分庁の合理的な裁量にゆだねられていると解される上、大量かつ反復的に生じる滞納国税の徴収に当たり、画一的に差押え及び換価を実施することが必ずしも望ましいとはいえないこと、差押財産が有する様々な要因等から、差押財産を直ちに換価することが困難な場合もあること、差押財産を公売に付しても公売が成立しない場合もあること、滞納者は財産の差押えを受けたことによって国税の納付が禁止されるわけではなく、財産の差押えを受けた場合であっても早期に完納することが求められることからすれば、差押処分の効力が存続している間は時効が進行しないことをもって、甚だしく不当な結果を滞納者に招来するものであるということはできず、これを根拠に差押えによる時効中断の事由が終了した時を差押処分の手続自体の終了時である差押登記がされた時と解する請求人の主張は採用できない。
《参照条文等》
国税通則法第72条、第73条第1項
民法第147条、第157条第1項
平成22年2月22日裁決
相続税に係る本来の納税義務者に対する時効の中断及び停止の効果が連帯納付義務者にも及ぶとした事例
相続税法第34条《連帯納付の義務》第1項の連帯納付義務は、本来の納税義務(租税債務)を担保するため、相続人に課された特殊な義務であり、租税債権が消滅しない限り、これを担保するために存続するものと規定されている点等を考慮すると、担保される租税債権と別個に時効消滅することは法の予定するところではないというべきである。そして、同様の趣旨から、独立の時効消滅を認めていない民法第457条《主たる債務者について生じた事由の効力》第1項が類推適用されるべきである(大阪高等裁判所平成14年2月15日判決、最高裁判所平成14年9月13日第二小法廷決定)から、本来の納税義務者に対して生じた時効の中断の効力は、連帯納付義務者にも及ぶと解するのが相当であり、また、連帯納付義務が、相続税徴収の確保を目的として、相続人に課された特殊な義務であることからすれば、本来の納税義務者に対する徴収の猶予の効果は、連帯納付義務者にも及ぶと解するのが相当である。
《参照条文等》
相続税法第34条第1項
国税通則法第72条第1項、第73条第1項第4号、第4項
民法第457条第1項
催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じるとした事例(
第二次納税義務の納付告知処分、
不動産の差押処分・
棄却・平成29年5月29日裁決)
《ポイント》
本事例は、催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じると解するのが相当であるとしたものである。
《要旨》
請求人は、滞納者(本件滞納者)の滞納国税(本件滞納国税)に係る債務の承認によって催告による時効中断の効力が生じるとする原処分庁の民法第153条《催告》の解釈は誤っており、本件滞納国税の徴収権の時効は中断していない旨主張する。
しかしながら、民法第153条は、債権者の催告について、債権者が正規の中断事由によって補強することにより時効中断の効力を認めるものであって、正規の中断手続をとるのが遅れることにより時効が完成するのを防ぐ便法として機能することを期待して定められたものと解され、債権者の催告について、債務者の行為による正規の中断事由である承認を、債権者の行為による正規の中断事由と区別する理由はないというべきであるから、催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じると解すべきである。
これを本件についてみると、本件滞納者の行った承認は、原処分庁が差押予告書(本件差押予告書)の送達によって行った本件滞納国税についての催告後6か月以内にされたものであるから、当該承認によって、本件差押予告書による催告の時効中断の効力が生じたものと認めるのが相当である。
《参照条文等》
国税通則法第72条第1項、第3項
民法第147条、第153条
《参考判決・裁決》
大阪高裁平成18年5月30日判決(判タ1229号264頁)
大審院昭和4年6月22日判決(民集8巻597頁)
最高裁昭和43年6月27日第一小法廷判決(民集22巻6号1379頁)
債権差押処分における被差押債権の不存在又は消滅の主張は債権差押処分の違法又は無効事由と認められないとした事例
《ポイント》
本件は、滞納者や第三債務者による、被差押債権の不存在又は消滅を理由とする差押処分の違法又は無効の主張は、不存在又は消滅が明らかであるような事情、あるいは徴収権の濫用と認められる等の事情が無い限り、認められないと解されるとしたものである。
《要旨》
請求人は、請求人が有する保証金の返還請求権(本件被差押債権)の差押処分(本件差押処分)時において、本件被差押債権は既に消滅しており存在しなかったから、本件差押処分は違法又は無効であり、滞納国税の徴収権の消滅時効は、本件差押処分によって中断していない、したがって、不動産差押処分時において滞納国税の徴収権は時効により消滅している旨主張する。
しかしながら、被差押債権の存在を滞納処分による債権差押処分の要件とする旨の規定は存在せず、また、仮に滞納処分による債権差押処分を行った場合に被差押債権が存在せず又は既に消滅していたとしても、それは結果的に債権差押処分の執行が功を奏しなかったというだけにすぎず、権利者による権利行使がなされたことに変わりはない。したがって、仮に本件被差押債権が消滅しており存在しなかったとしても、そのことによって本件差押処分が違法又は無効になるものではないことから、滞納国税の徴収権の消滅時効は、本件差押処分によって中断している。
《参照条文等》
国税通則法第72条
民法第147条
《参考判決・裁決》
東京地裁平成12年12月21日判決(判時1735号52頁)
大阪高裁昭和37年6月18日判決(訟月8巻8号1351頁)
平成18年3月30日裁決(裁決事例集No.71)