更正、決定、徴収、還付等の期間制限

偽りその他不正の行為

  1. 更正、決定等の期間制限
    1. 偽りその他不正の行為(12件)
    2. 更正、決定等の期間制限の特例
    3. その他
  2. 徴収権の消滅時効

確定申告書の記載に偽りその他不正の行為があるとした事例

裁決事例集 No.6 - 1頁

 請求人が貸付先に対して利子を支払った事実を秘匿するように要求し、また、受領した利子の一部を架空名義預金口座に預け入れている事実があり、かつ、これら利子の収入を所得税の確定申告書に記載していない以上、偽りその他不正の行為によって、一部の税額を免れようとしたものと認められるので、更正の期間制限を5年(現行7年)とするのが相当であり、また免れようとした税額に対し重加算税を賦課決定したことも相当である。

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法定申告期限から3年を経過した日以後になされた過少申告加算税の賦課決定は正当であるとした事例

裁決事例集 No.15 - 1頁

 国税通則法第70条第2項第4号に規定する「偽りその他不正の行為」とは、正当な納税義務を免れる行為で社会通念上不正と認められる一切の行為を含むのであって、殊更に所得金額を過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出するいわゆる過少申告行為もこれに該当する。
 したがって、請求人が本件土地の譲渡行為を自己の有利に、譲受人と共同取得した土地を分割したにすぎないと解して、当該譲渡に係る短期譲渡所得の金額を確定申告書に記載しなかったことは、偽りその他不正の行為によって一部の税額を免れようとしたものに該当するので更正の期間制限は5年(現行7年)とするのが相当である。

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売上金額の一部を除外し、これを簿外の代表者名義の預金口座に預け入れることは偽りその他不正の行為に当たるとした事例

裁決事例集 No.33 - 14頁

 売上金額の一部を除外し、これを正規の帳簿に記載のない代表者名義の預金口座に預け入れるとともに当該預金に係る受取利息も収益に計上せずに、所得の金額を過少に記載した確定申告書を提出したことは、偽りその他不正の行為によって、一部の税額を免れようとしたものと認められるので、更正をすることができる期間を5年(昭和56年5月27日以後に法定申告期限が到来するものは7年)とするのが相当であり、また、免れようとした税額に対して重加算税を賦課決定したのも相当である。

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法人の取締役が個人的費消資金をねん出するために行った売上除外は、偽りその他不正の行為により税額を免れた場合に当たるとした事例

裁決事例集 No.38 - 15頁

 [1]本件簿外売上げを行った請求人の取締役は、木製建具部門の責任者であり、代表取締役の父であること、[2]本件簿外売上げに係る取引のすべてが請求人名義で行われていること、[3]取引先も請求人を取引の相手方と認識していることが認められ、これらを総合して判断すると、当該取締役の行為は請求人の行為と同視すべきものであり、本件簿外売上げに係る行為は、請求人の行為に当たるとみるのが相当であるところ、請求人が本件簿外売上げに係る収益の額を所得金額の計算上益金の額に算入しなかったことにより、法人税の税額の全部又は一部を免れたことは、国税通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた場合」に該当する。

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偽りその他不正の行為によりその税額を免れていた部分のみならずその他の部分についても、その法定申告期限から7年を経過する日まで更正できるとした事例

裁決事例集 No.39 - 30頁

 国税通則法第70条第5項の規定は、「偽りその他不正の行為」によって国税の全部若しくは一部を免れた納税者がある場合、これに対して適正な課税を行うことができるように、同条第1項各号に掲げる更正又は賦課決定の除斥期間を同項の規定にかかわらず7年とすることを定めたものであるが、「偽りその他不正の行為」によって免れた税額に相当する部分のみにその適用範囲が限られるものではないと解されている。そうすると、「偽りその他不正の行為」によりその税額を免れていた本件リベート収入のみならず「偽りその他不正の行為」に基づかずにその税額を免れていた本件給与についても、その法定申告期限から7年を経過する日まで更正できることは明らかである。

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給与等の収入金額をことさら過少に申告した行為は、国税通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当するとした事例

裁決事例集 No.62 - 25頁

 請求人は、先輩からの言い伝えを信じて申告したにすぎず、ほ脱の意思をもっていなかったのであるから、請求人の行為は、国税通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当しない旨主張する。
 しかしながら、当審判所の調査の結果によれば、請求人は、各年分の確定申告に当たり、実際の給与等の収入金額を給与明細書等により承知し得たにもかかわらず、多額の金額を除外した後の金額を各年分の確定申告書の給与収入金額欄に記載し、その結果、多額の税額を免れていたことが認められる。
 さらに、請求人が、過去に日本の法人に勤務していたことからして、同人において、800万円をも上回る金額が、非課税所得分の支給額として不相当に高額であると認識し得なかったとは到底認められず、同人は、合理的な根拠もなく恣意的に給与等の収入金額を除外して申告したものと認めるのが相当である。
 これらのことからすれば、請求人が正当な税額を免れる目的で、所得金額をことさらに過少に記載した申告書を提出したことは明らかであり、請求人の行為は、本件規定における「偽りその他不正の行為」に該当する。

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国税通則法第70条第5項を適用して行われた更正処分が国会附帯決議に反し違法である旨の請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.65 - 46頁

 請求人は、国税通則法第70条5項の規定については、更正決定等の期間制限が5年から7年に改正された昭和56年の衆参両議院大蔵委員会において「今回の改正により延長された更正、決定等の制限期間における調査に当たっては、高額かつ悪質な脱税者に重点を置き、中小企業者を苦しめることのないよう特段の配慮をすること」との附帯決議がなされているところ、原処分庁は、本件調査において中小企業者に対し過度の調査を行い、また、僅少な金額についてまで課税しており、本件更正処分は附帯決議に反している旨主張する。
 しかしながら、本件附帯決議は、調査に当たって尊重する趣旨のものであるところ、本件において、原処分庁は、請求人の取引先から本件公表外銀行預金口座に振込みが行われている事実等から、大口又は悪質な不正計算が想定されたので、本件各事業年度についての調査が必要であると判断したというものであり、その判断は相当と認められる。また、本件更正処分は、請求人の行為が国税通則法第70条第5項の規定における偽りその他不正の行為に該当するからなされたものであることが明らかであるから、本件更正処分に違法な点はなく請求人の主張は理由がない。

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偽りその他不正の行為を行なった者には、納税者本人のみならず、納税者の委任を受けた者も含まれるとした事例

裁決事例集 No.66 - 77頁

 請求人は、国税通則法第70条第5項は、不正行為の場合における期間制限の延長であり、仮に本件立退き料が譲渡費用に当たらないとしても、本件立退き料は悪意をもって申告したわけではないから、本件立退き料に係る更正処分は既に時効が成立しており、不適法な処分である旨主張する。
 しかしながら、偽りその他不正の行為を行なった者には、納税者本人のみならず、納税者の委任等を受けた者も含まれると解されているところ、請求人の委任を受けたGは偽った契約書に基づいて譲渡所得の申告を行なっており、申告の効果及び責任は請求人に帰属するから、国税通則法第70条第5項に該当するというべきである。
 また、国税通則法第70条第5項は、偽りその他不正の行為によって国税の全部又は一部を免れた納税者がある場合、これに対して適正な課税を行うことができるよう、更正の除斥期間を7年と定めたものであり、偽りその他不正の行為により免れた税額に相当する部分のみに限らず、当該年分の所得の全部を更正の対象として同条第5項を適用することができると解するのが相当である。

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住宅借入金等特別控除の適用を意図して、住民票上の住所の記載を居住の事実がない住宅の所在地とするべく住民票上の異動を繰り返し、確定申告書に当該住宅の所在地等を記載し税務署長に提出した請求人の行為は、偽りその他不正の行為であると認めた事例

平成22年7月1日裁決

 請求人は、まる1平成12年12月の住民票異動時には請求人が取得した本件住宅に住むつもりであったこと、まる2少なくとも平成12年分の所得税の確定申告時には住宅借入金等特別控除の適用がないことを知らなかったこと及びまる3当該確定申告時の税務相談において住宅借入金等特別控除の適用ができる旨を告げられたためこれに沿った申告をしたとの事情から、請求人の住民票上の住所を異動させた行為等は偽りその他不正の行為には該当しない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、本件住宅を「自己の居住の用」に供していないことから住宅借入金等特別控除の適用を受けることができないにもかかわらず、住宅借入金等特別控除の適用を意図して、課税庁に対し請求人が本件住宅所在地に居住しているように装うため、請求人の住民票上の住所の記載を本件住宅所在地とするべく住民票上の異動を繰り返し、平成13年分、平成14年分及び平成16年分の所得税の確定申告書には本件住宅所在地等を記載し税務署長に提出して住宅借入金等特別控除の適用を受けたのであり、このことは、住宅借入金等特別控除の要件の一つである「自己の居住の用に供した」事実について虚偽の外形を作出する等の偽りその他不正の行為をしたものと認められるのであるから、上記まる1又はまる2の主張をもってしても、請求人の上記各年分における偽りその他不正の行為の存在が左右されるものではなく、また、上記まる3の主張である相談担当者が請求人に対して居住の事実がなくとも住宅借入金等特別控除の適用がある旨の指導等を行ったと認められる証拠もない。

《参照条文等》
 国税通則法第70条第5項
 租税特別措置法(平成13年3月法律第7号による改正前のもの。)第41条第1項

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請求人の取締役営業部長が行った架空仕入れは、国税通則法第70条第5項の「偽りその他不正の行為」に該当するとした事例

平成22年12月1日裁決

 請求人は、取締役営業部長が行った架空仕入れが請求人の行為とみなされたとしても、請求人は、仕入先が請求人に対して正規の請求書で請求を行ってきたことから、その請求に基づいて仕入代金の決済を行ったのであり、本件各事業年度等に係る各確定申告書を税額を免れる意図をもって提出したものではないから、国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第5項の規定の適用はない旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第70条第5項の趣旨は、「偽りその他不正の行為」を行った者への制裁を目的としたものではないから、納税者の補助者又は代理人によるものであっても、納税義務の確定手続において客観的に「偽りその他不正の行為」によって税額を免れた事実が存在する場合には、納税者が具体的な偽りその他不正の行為を意図し、又は指示したか否かを問うことなく、同項の規定の適用があると解すべきであり、「偽りその他不正の行為」とは、税の賦課徴収を不能又は困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行っていることと解される。
 請求人の取締役営業部長が行った架空仕入れに係る各行為は、税の賦課徴収を困難とする偽計その他の工作を伴う不正な行為といえ、請求人はこれにより、虚偽の事実が記載された会計帳簿等に基づき、本件各事業年度等に係る確定申告をしていたことになるから、請求人が不正の行為を認識していたか否かにかかわらず、請求人の納税義務の確定手続において、客観的に偽りその他不正の行為によって税額を免れた事実が存在するといえる。

《参照条文等》
 国税通則法第70条第5項

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単発的で少数の売上伝票の欠落があることのみでは、売上除外があったとまではいえず、国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの)第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」に当たらないとした事例

平成24年5月25日裁決

《要旨》
 原処分庁は、まる1従業員等が店舗で使用していた一綴りの売上伝票は、品名及び単価等を記載すると筆圧痕として次の伝票に当該記載内容が残る場合があるところ、当該筆圧痕に対応する売上伝票のうち数枚が存在しないこと、まる2従業員等が売上伝票を集計し、売上伝票を入れる封筒の表にその日の売上金の合計額等を記載すると、封筒内の売上伝票等に筆圧痕として当該合計額が残ることがあるところ、当該筆圧痕の金額が売上げとして請求人が記帳した金額を上回ることなどから、請求人は、売上伝票を破棄する方法により売上除外している旨主張する。
 しかしながら、売上伝票の欠落が単発的で少数である場合には、売上伝票の破棄による売上金額の一部除外があったと認定することはできず、国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの)第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第5項に規定する偽りその他不正の行為があったとすることはできない。

《参照条文等》
 国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの)第68条第1項、第70条第5項

《参考判決・裁決》
 最高裁平成18年4月25日第三小法廷判決(民集60巻4号1728頁)
 東京高裁平成16年11月30日判決(税資254号順号9841)

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偽りその他不正の行為が認められないとして処分を取り消した事例(平成17年分〜平成23年分の所得税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、平18.1.1〜平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・全部取消し・平成26年1月17日裁決)

平成26年1月17日裁決

《要旨》
 原処分庁は、平成17年分の売上金額の一部を隠ぺい又は仮装行為に基づく申告漏れと認定しているが、当該隠ぺい又は仮装行為に基づく申告漏れに対応する所得金額は異議決定により算出されないとしたから、それに対応する所得税額は存在しない。
 そうすると、平成17年分の所得税の修正申告により納付すべき税額は、平成17年分の売上金額の残部(上記売上金額の一部以外の部分)の申告漏れに係るものであると認められる。
 ところで、国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項は、納税者が「偽りその他不正の行為」により国税を免れた場合の加算税の賦課決定の除斥期間を7年と規定しているところ、当審判所が上記申告漏れの態様を調査した結果によれば、平成17年分の売上金額の残部が申告漏れとなったことについて、請求人が自らに帰属しないような外形を作出したとか、本件調査において、請求人が真実の所得を秘匿するため、虚偽の資料を作成し又は領収証の控えつづりを秘匿するなどして、これらの申告漏れが発覚し難い状況を作出したとかの事実を認めることはできず、請求人が平成17年分の所得税の賦課徴収を不能又は困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行ったとはいえないから、平成17年分の売上金額の残部の申告漏れに係る行為は、国税通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」には該当しないというべきである。

《参照条文等》
 国税通則法第70条第4項

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