相続税の課税価格の計算

相続開始前3年以内の贈与

  1. 分割財産に係る課税価格
  2. 非課税財産
  3. 債務控除
  4. 相続開始前3年以内の贈与(5件)
  5. その他

相続開始前3年以内に贈与により取得した財産は贈与税の更正・決定等の期間経過後であっても相続税の課税価格に加算すべきであるとした事例

裁決事例集 No.23 - 173頁

 請求人は、相続開始前3年以内の贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算するのは、当該財産に係る贈与税について国税通則法第70条の規定による除斥期間が経過していないものに限ると主張するが、贈与財産の加算に関して、相続税法第19条には、相続開始前3年以内に被相続人から贈与によって取得した財産を相続財産に加算する旨規定されているのみで、その加算される贈与財産に係る贈与税額それ自体につき更正の期間を徒過したものを除く旨の規定がないのであるから、贈与税額の更正についてその制限期間を徒過したか否かにかかわりなく、贈与財産の全額を加算すべき法意と解するほかなく、したがって請求人の主張には理由がない。

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相続人らが所有する取引相場のない株式は、被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けたものと認定した事例

裁決事例集 No.40 - 236頁

 請求人らは、被相続人が代表取締役をしていた会社の株式を元従業員ら10名から贈与により取得した旨主張するが、[1]当該元従業員及びその相続人は、同会社の株主であったとする認識がなく、当該従業員らが当該株式の実質の所有者であったとする資料は見当らないこと、[2]被相続人及び請求人総代は、相続開始前3年以内に当該株式の名義が請求人らに異動したとして会社の関与税理士に通知していることなどを総合すると、本件株式は、被相続人の名義株であって、請求人らは相続開始前3年以内に被相続人から本件株式の贈与を受けたものであると認めるのが相当である。

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相続開始前3年以内に贈与があった場合の当該贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算したとしても、贈与税の課税関係が消滅するものではないとした事例

裁決事例集 No.55 - 466頁

 請求人は、本件定期預金については、相続税法第19条の規定により相続税の課税価格とみなして本件相続税の課税価格に加算しているから、贈与税の課税対象とはならない旨主張するが、同条の規定の趣旨は、相続税法が採用している相続税の累進税率の適用による税負担が、財産を生前贈与することによって軽減されて公平を欠く結果となることを考慮し、相続開始前3年以内の贈与財産の価額を相続税額の計算上、相続財産の価額に加算することにより所要の調整をすることにあると解されるところ、同条第1項の規定により相続税の課税価格とみなされた贈与財産については、贈与税が課税されることが前提とされたものであって、贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算したからといって贈与税の課税関係が消滅するものではない。
 本件においては、贈与税の課税が相続税の課税関係より後になされているが、それをもって贈与税の課税の当否に何ら影響を及ぼすものではない。

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原処分庁が配偶者が取得したと主張する財産は、遺産分割協議以前より存在し、当該遺産分割協議で子が取得したものと認めるのが相当であるから、配偶者が相続により取得した財産はなく、相続税法第19条に規定する相続開始前3年以内の贈与加算の適用もないとした事例

裁決事例集 No.67 - 543頁

 原処分庁は、本件構築物を、第一回遺産分割協議書作成後に新たに発見された財産であるとして、第二回遺産分割協議書に基づき、妻Mが取得したものと主張するが、本件構築物は、[1]第一回遺産分割協議書作成時に明らかに存在していたこと、[2]それぞれの共同住宅に附随した設備等であることから、共同住宅の取得者が併せて取得すると理解するのが相続人の通常の意思と合致するといえること、[3]共同住宅はKが取得し、その不動産賃貸収入を確定申告していることから、本件構築物もKが取得したものと認めるのが相当である。
 そうすると、妻Mは、本件相続により相続財産を取得していないことから、相続税法第19条に規定する「相続により財産を取得した者」に該当しないこととなるので、固定資産税及び交換差金相当額を贈与により取得したか否かを判断するまでもなく、妻Mに同条の適用はない。

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被相続人が米国f州にジョイント・テナンシーの形態で所有していた不動産について、生存合有者(ジョイント・テナンツ)が取得した被相続人の持分は、みなし贈与財産に該当し、相続税の課税価格に加算されるとした事例(1平成21年12月相続開始に係る相続税の過少申告加算税の変更決定処分、2平成21年12月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、3平成21年12月相続開始に係る相続税の過少申告加算税の各賦課決定処分・1全部取消し、2一部取消し、3棄却・平成27年8月4日裁決)

平成27年8月4日裁決

《要旨》
 請求人らは、ジョイント・テナンシーの形態により被相続人が米国f州に所在する不動産(本件不動産)について有する持分は、我が国における共有財産ではないから、相続税の課税価格に算入されるべきものではない旨主張する。
 しかしながら、被相続人及び請求人P2がジョイント・テナンシーの形態で所有している本件不動産については、ジョイント・テナンツ(合有者)の一人である被相続人が死亡したことにより、その権利は、相続されることなく、生存者への権利の帰属(サバイバー・シップ)の原則に基づいて、残りのジョイント・テナンツである請求人P2の権利に吸収されたものと認められる。そして、サバイバー・シップの原則により請求人P2の権利が増加した時に対価の授受があった事実は認められないから、生存者である請求人P2は相続税法第9条《贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合―その他の利益の享受》に規定する「対価を支払わないで利益を受けた場合」に該当すると認められるところ、この権利の増加は、同条により、請求人P2が被相続人から贈与により取得したものとみなされる。さらに、この権利の増加につき、請求人P2には、相続税法第19条《相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項が適用されることとなる。したがって、被相続人がジョイント・テナンシーの形態で所有する本件不動産の持分については、請求人P2が被相続人から贈与により取得したものとみなされ、本件不動産の価額の2分の1に相当する部分の金額については、相続税の課税価格に加算すべきものと認められる。

《参照条文等》
相続税法第9条、第19条

《参考判決・裁決》
静岡地裁平成19年3月23日判決(税資257順号10665)

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