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更正及び決定の特則
- 更正及び決定の特則(2件)
- 同族会社の行為又は計算の否認
遺産分割調停の成立に基づきされた他の共同相続人からの更正の請求に係る減額更正処分の後に、請求人に対して行われた相続税法第35条第3項第1号の規定に基づく増額更正処分に違法はないとした事例
請求人は、共同相続人らが共同で提出した相続税の申告を修正等する場合には、共同相続人らの間で協議の上、共同で修正申告又は更正の請求をすることが社会通念に合致するもので、請求人の同意がないままに先行してなされた他の共同相続人に対する相続税の還付手続は誤りであり、請求人に対する更正処分も誤りである旨主張する。
しかしながら、本件では、遺産が未分割のまま申告が行われた後、遺産分割調停の成立により共同相続人らの相続税額に増減が生じたため、他の共同相続人が更正の請求をし、原処分庁は、同人に対する減額更正処分をした後に、相続税法第35条第3項第1号の規定に基づき、職権で請求人に対する更正処分をしたのであり、その過程に何ら違法な点は見当たらない。相続税法は、同法第27条第4項で、共同で申告することができる旨を定めているに止まり、共同で修正申告又は更正の請求をしなければならない旨の規定はなく、また、同法第35条第3項第1号は、「更正の請求に基づき更正をした場合において」と規定し、減額更正処分が先行することを予定しているから、請求人に対する更正処分に先立ち、請求人の同意を得ずに他の共同相続人による更正の請求及び同更正の請求に対する原処分庁による減額更正処分がなされたとしても何ら違法ではない。
《参照条文等》
相続税法第27条、第31条、第32条、第35条
平成22年1月5日裁決
請求人が訴訟上の和解に基づき受領した解決金は、遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であると断定することはできないため、更正の特則である相続税法第35条第3項第1号の要件は満たさないと判断した事例(平成28年6月相続開始に係る相続税の更正処分・全部取消し)
《ポイント》
本事例は、請求人が、訴訟上の和解に基づき受領した解決金は、その全額が遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であると認めるに足りる客観的な証拠はなく、価額弁償金以外の法的性質を有する金員が含まれていることを否定できず、遺留分減殺請求に基づく価額弁償金に該当すると断定することはできないことから、更正の特則である相続税法第35条《更正及び決定の特則》第3項第1号の要件は満たさないと判断したものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人が被相続人が有する一切の財産を請求人の兄に相続させる旨の公正証書遺言の無効を求める訴えを提起したところ、訴訟上の和解により請求人の兄から請求人に対して支払われることとなった解決金(本件解決金)について、@当該訴訟における双方の代理人弁護士の認識、A当該訴訟において請求人が予備的主張として遺留分減殺請求に基づく価額弁償を請求していたこと及びB当該和解後に請求人の兄が本件解決金の全額が請求人の個別的遺留分であることを前提として行動していたことからすると、本件解決金は遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であって、その全額が請求人の相続税の課税価格に算入される旨主張する。
しかしながら、@和解調書には、本件解決金が遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であることを示す記載はないこと、A当該訴訟における双方の代理人弁護士のいずれの申述内容も、本件解決金の全額が遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であるとするものではなく、担当裁判官の心証も不明であること、B当該訴訟においては、主位的には公正証書遺言の無効を主張しているのであって、予備的な主張を根拠にして本件解決金の性質を判断することはできないこと及びC請求人の兄も、和解当時、本件解決金には遅延利息が含まれていると認識していたと考えられること等からすると、本件解決金は、その全額が遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であると認めるに足りる客観的な証拠はなく、価額弁償金以外の法的性質を有する金が含まれていたことを否定できない。したがって、原処分庁の主張には理由がない。
《参照条文等》
相続税法第35条