総則

課税処分と徴収処分との関係

  1. 課税処分と徴収処分との関係(7件)
  2. 申告と徴収処分

源泉所得税の納税告知等の違法を理由として差押えの取消しを求めることはできないとした事例

裁決事例集 No.42 - 245頁

 納税告知は、既に確定した納付すべき源泉所得税の額を明らかにするとともに納税義務を履行するよう請求する処分であり、不納付加算税の賦課決定は同税の納税義務の確定を目的とする処分であるのに対し、差押えは既に確定している納税義務の強制的な履行を目的とする処分であるから、本件納税告知等と本件差押えとは、それぞれ別個の法律効果を目的とする独立した行政処分であり、したがって、仮に本件納税告知等に違法があったとしても、当該納税告知等が無効となるような重大かつ明白なかしがない限り、そのことにより本件差押えが違法となるものではないと解すべきであるところ、請求人は、本件滞納国税の額の確定に誤りがあり、これに基づく本件納税告知等が違法であることを理由として本件差押えの取消しを主張するが、本件納税告知等に重大かつ明白なかしはなく、かつ、その取消しもなされていないことが認められ、また、本件差押え自体については、国税徴収法第47条及び第73条の規定に基づいて適法になされていることが認められるから、本件納税告知等の違法を理由として本件差押えの取消しを求める請求人の主張は、失当である。

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更正の違法を理由として参加差押えの取消しを求めることはできないとした事例

裁決事例集 No.43 - 434頁

 請求人は、本件更正等には、請求人に不動産所得があるとされている相続財産の持分割合等及び受贈財産の貸借関係について訴訟中であるから収入すべき金額が未確定であるのに、原処分庁がその訴訟の一方当事者の申立てだけを採用してこれを確定したものとしている違法があり、したがって、このような違法な課税処分に基づく本件参加差押えは違法である旨主張するが、課税処分と滞納処分とは、それぞれその目的及び効果を異にする別個の独立した行政処分であるから、これらが先行処分と後行処分の関係にある場合においても、課税処分にこれを無効といい得るかしが存するか、又はそれが権限ある機関によって取り消された場合でない限り、当該課税処分のかしは滞納処分の効力には影響を及ぼさないというべきである。また、課税処分が無効となるのは、その処分に重大かつ明白なかしが存する場合に限られるが、当審判所の調査の結果及びその他の全資料によっても、本件更正等に重大かつ明白なかしがあるとは認められず、また、本件更正等が取り消された事実も認められないので、請求人の主張は採用できない。

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1. 遺産の審判分割を原因とする本件各課税処分に重大かつ明白な瑕疵が存在するとは認められず、当然無効でない以上、課税処分とは別個独立の行政処分である本件差押処分の取消しを求めることはできない。2. 相続財産である本件株券は適法、有効に発行されたものと認められるところ、原処分庁は、その交付請求権の差押権者として取立権を行使し、給付を受けて有価証券として差押処分をしたものであり、本件差押処分は適法、有効である。3. 公売期日に公売が実施されず、その期日が経過しており、本件公売処分は不存在であるから、審査請求はその対象を欠く不適法なものとして却下すべきある。

裁決事例集 No.53 - 507頁

  1.  本件各課税処分は、家庭裁判所の審判により未分割の遺産に係る分割が確定し、共同相続人において修正申告書の提出又は更正の請求がされ、請求人に対し更正処分が行われたものであり、本件各課税処分に請求人の主張する重大かつ明白な瑕疵が存在するとは認められず、他に本件各課税処分を当然に無効とすべき特段の事由も認められない。
     課税処分と差押処分とは、それぞれ目的及び効果を異にする別個の手続による行政処分であって、本件各課税処分が当然無効でない以上、差押処分の取消しを求めることはできない。
  2.  本件株券は、商法第225条に規定する記載事項を具備していること、H株式会社はその定款に株券の発行に関し株主総会又は取締役会の決議を要する旨の定めをしていないこと等、その発行は適法、有効と認められ、また、原処分庁は、国税徴収法第67条(差し押えた債権の取立)第1項の規定に基づき、本件株券交付請求権の差押権者としてその取立権を行使し、H株式会社から株券の給付を受けたものであり、取り立てた本件株券を同条第2項の規定に基づき有価証券として同法第56条(差押の手続及び効力発生時期等)の規定に従い差し押さえたのであるから、請求人の主張する本件株券の無効、差押処分の取消しの請求には理由がない。
  3.  本件公売処分は、原処分庁の平成7年9月20日付の公売中止通知書をもって中止する旨が請求人に通知され、上記公売期日には公売は実施されず、その期日が経過したことが認められる。また、公売に関する各規定によれば、公売を中止した後、再びその財産を公売する場合には改めて公売期日を定め、公売広告以下の手続を踏まなければならないことは明らかである。
     公売期日に公売が実施されず、その期日が経過したことは、公売処分は不存在ということになるから、審査請求はその対象を欠く不適法なものとして却下すべきである。

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相続税の納税義務が不存在であることを理由として差押えの取消しを求めることはできないとした事例

裁決事例集 No.60 - 605頁

 請求人らは、相続財産が存在しないのにもかかわらず行われた相続税の決定処分等は無効であり、相続税の納税義務はないから、これに基づいてされた不動産の差押処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、被相続人に相続財産があることが登記簿上推認され、かつ、相続税の決定処分等について異議申立てもされていないのであるから、同処分等は適法に確定しており、さらに、仮にこれに瑕疵があったとしても、当該課税処分の瑕疵が重大かつ明白で当然無効であるか、権限のある者によって取り消されない限り、滞納処分に影響を及ぼすものではないと解されるところ、本件においては、このような特段の事情は認められないから、請求人の主張には理由がない。

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共同相続人の相続税の申告は錯誤に基づく無効な申告であるとは認められないから、相続税法第34条に基づく差押処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.65 - 993頁

 相続税について、その申告書の記載内容について錯誤があるときには、錯誤による無効を主張できる場合があり得るが、それは、相続税法の定める申告及び修正申告、更正の請求等の制限の趣旨を考慮すると、当該錯誤が客観的に明白かつ重大であって、国税通則法等に定める是正方法以外にその是正を許さないとすると、納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合に限り許されるものと解すべきである。
 請求人は、Bが提出した本件申告書は、Bの錯誤に基づく無効なものであるから、本件申告に基づき確定した本件相続税額は不存在というべきであり、本件差押処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、[1]Bは法定相続分である7分の1の割合で遺産を取得した旨を本件申告書に記載していること、[2]被相続人の遺産のほとんどをKに取得させる旨記載された遺言書と題する書面があること、[3]Bは本件申告書に係る相続税の納付をしていないことが認められるものの、他方で、Bは当該書面の内容を争い、遺産の一部の帰属についての訴訟が係属中であることに照らすと、これら[1]ないし[3]の事情が認められるからといって、直ちにBの申告について客観的に明白かつ重大な錯誤がある場合に該当するとはいえず、また、他に納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情があるとは認められないから、請求人の主張には理由がない。

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課税処分の取消訴訟が係属中であっても、課税処分の効力は妨げられず滞納処分は続行されるとともに、課税処分と滞納処分はそれぞれ目的を異にする別個独立した行政処分であるから、違法性は承継されないとした事例

平成23年11月17日裁決

《ポイント》
 この事例は、滞納処分の前提となった課税処分に係る取消訴訟の裁判が係属している中で、滞納処分の取消しを求めて審査請求がされた場合において、いわゆる「執行不停止」の原則に従い、取消訴訟が係属中であっても滞納処分の執行・手続の続行は妨げられず、また、先行する課税処分が重大かつ明白な瑕疵により無効であるか、違法を理由として権限ある機関によって取り消された場合でない限り、先行する課税処分の違法性を理由として滞納処分の取消しを求めることはできないと判断したものである。

《要旨》
 請求人は、本件差押処分の前提となった加算税の各賦課決定処分(本件各賦課決定処分)の取消訴訟の裁判が係属中で、いずれも違法な処分であるため、裁判で取り消されることが明らかであり、まる1本件各賦課決定処分を前提とした、形式的な国税徴収法に基づく本件差押処分は、原処分庁の権限の濫用であり、不当な手続であるとともに、まる2本件差押処分は、本件各賦課決定処分と密接に関連し、不可分の関係であることから、前提となる本件各賦課決定処分の違法性が承継され、本件差押処分も違法となる旨主張する。
 しかしながら、行政事件訴訟法第25条《執行停止》第1項の規定により、本件各賦課決定処分の取消訴訟が係属中であっても、本件各賦課決定処分の効力は妨げられず、本件各賦課決定処分に係る納付すべき税額に基づき、滞納処分は続行されることとなるところ、原処分庁は、督促に係る国税が完納されておらず、裁判所からの執行停止命令もなされていないことから、滞納国税につき督促手続を経て国税徴収法第47条《差押の要件》第1項第1号の規定に基づき本件差押処分を行ったものである。
 また、課税処分は、国税の納税義務を具体化し、その納付すべき税額を確定させることを目的とする処分であり、滞納処分は、既に具体的に確定した税額が納期限までに完納されない場合に、国税債権の強制的実現を目的とする徴収手続であって、両者はそれぞれ目的を異にする別個独立した行政処分であるから、違法性は承継されず、課税処分が重大かつ明白な瑕疵により無効であるか、違法を理由として権限ある機関によって取り消された場合でない限り、先行する課税処分の違法性を理由として滞納処分の取消しを求めることはできないと解するのが相当であるところ、先行する本件各賦課決定処分には重大かつ明白な瑕疵はなく、また、違法を理由として権限ある機関によって取り消された事実もないので、本件各賦課決定処分の違法性を前提とした請求人の主張はその前提を欠くものである。

《参照条文等》
 国税通則法第105条第1項
 行政事件訴訟法第25条

《参考判決・裁決》
 平成14年12月11日裁決(裁決事例集No.64・126頁)

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源泉徴収に係る所得税の納税告知処分の違法性は滞納処分に承継されないとした事例

平成25年2月19日裁決

《要旨》
 請求人は、債権の差押処分等(本件各滞納処分)に係る国税の一部について、その前提となる源泉徴収に係る所得税の納税告知処分(本件告知処分)が違法であるから、本件各滞納処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、請求人が違法であると主張する本件告知処分については、その処分に重大かつ明白な瑕疵があったとは認められず、また、違法を理由として権限ある機関によって取り消された事実もないと認められることから、請求人の主張には理由がない。

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和45年12月24日第一小法廷判決(民集24巻13号2243頁)
 平成3年12月18日裁決(裁決事例集No.42・245頁)

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