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換価の猶予
- 換価の猶予(2件)
- 滞納処分の停止取消処分
請求人には国税を一時に納付することにより、その事業の継続を困難にするおそれがあるとは認められないとした事例(換価の猶予不許可処分・棄却)
《ポイント》
本事例は、当座資金の額から納付すべき国税の金額を控除した残額はつなぎ資金の額を上回るため、国税を一時に納付することにより事後の決済資金に不足を生じると認められないのであるから、国税徴収法第151条の2第1項に規定する事業の継続を困難にするおそれがあるとは認められないとしたものである。
《要旨》
請求人は、原処分庁が行った換価の猶予不許可処分に対し、コロナ禍が長期間にわたっているため、つなぎ資金の額を1年間の収支状況で考慮すると、国税徴収法第152条《換価の猶予に係る分割納付、通知等》第1項に規定する納付を困難とする金額が算定され、納付すべき国税を一時に納付することにより事業の継続を困難にするおそれがあると主張する。
しかしながら、申請による換価の猶予は納税者救済のための例外的な制度であるから、つなぎ資金は必要最小限度の期間を基礎として計算するものであり、1年間の収支状況を考慮すべきではない。そして、同法第151条の2第1項に規定する事業の継続を困難にするおそれがあると認められる場合とは、事業に不要不急の資産を処分するなど事業経営の合理化を行った後においても、なお国税を一時に納付することにより事後の決済資金に不足を生じ、その結果、滞納者がその事業を休廃止せざるを得ない状態に至るおそれがあると認められる場合をいうものと解されるところ、本件では当座資金の額から納付すべき国税の金額を控除した残額はつなぎ資金の額を上回ることから、国税を一時に納付することにより事後の決済資金に不足が生じるとは認められない。したがって、請求人には国税を一時に納付することにより、その事業の継続を困難にするおそれがあるとは認められない。
《参照条文等》
国税徴収法第151条の2第1項
納付すべき国税を一時に納付することにより、生活の維持を困難にするおそれがあったと認められないとした事例(換価の猶予不許可処分・棄却)
《ポイント》
本事例は、合理性を有する猶予取扱要領の定めに基づき、請求人について納付困難な額が算定されないことから、請求人の国税を一時に納付することにより、その生活の維持を困難にするおそれがあったとは認められず、換価の猶予の申請を不許可とした処分は適法であるとしたものである。
《要旨》
請求人は、売上げの減少により納税資金を捻出することが困難であるとして原処分庁に対し行った換価の猶予申請(本件猶予申請)について、原処分庁が、請求人は申請に係る国税を一時に納付することにより生活の維持を困難にするおそれが認められないとして不許可処分を行った(本件不許可処分)ところ、請求人の毎月の収支状況はマイナスであること、資産は資金収支のマイナスを補填するための借入金を原資とするものであることから、本件猶予申請において納付することができる金額の算定に当たっては、納税の猶予等の取扱要領第7章の納付能力調査によらず、相続税の延納と同様に、債務額を財産から控除した純資産で判定すべきである旨、及び事業が好転しなければ今後返済不能となることを考慮して判断すべきである旨主張する。
しかしながら、国税徴収法施行令第53条《換価の猶予の申請手続等》第3項は、国税徴収法第152条《換価の猶予に係る分割納付、通知等》第1項に規定する納付を困難とする金額の算定に当たっては、滞納者が有する現金、預貯金その他換価の容易な財産から生活維持費等を控除した残額を、納付すべき国税の額から控除する旨規定していること、及び本件猶予申請において検討したつなぎ資金では上記納付を困難とする金額は算定されず、請求人には、納付すべき国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあったとは認められないことから、本件不許可処分を不相当とする理由は認められない。
また、審査請求によって行政処分の取消しを求めるには、当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益が存在していることが必要であるところ、請求人が取消しを求めている債権の差押処分(本件差押処分)は、原処分庁が、差し押さえた債権の一部を取り立てるとともに、取立て後の残額に係る差押えを解除したことによって、その効力が消滅しており、請求人には、本件差押処分の取消しによって回復すべき法律上の利益は存在しないから、本件差押処分の取消しを求める本審査請求は不適法なものである。
《参照条文等》
国税徴収法第151条の2第1項、第152条第1項、第67条第1項
《参考判決・裁決》
令和4年12月9日裁決(裁決事例集No.129)