(平成29年2月6日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)の所得税並びに消費税及び地方消費税について、原処分庁が、請求人の管理する預金口座への入金について収入に当たるとして決定処分及び重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該入金は立替金の返済を受けたものであるから収入には当たらないなどとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令の要旨

  • イ 行政手続法関係
     行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項は、行政庁は、不利益処分をする場合には、その名宛人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない旨規定している。
  • ロ 国税通則法関係
    • (イ) 国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のものをいい、以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第2項は、同法第66条《無申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出していないときは、当該納税者に対し、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の40の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
    • (ロ) 通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第1項第1号は、決定は、その決定に係る国税の法定申告期限から5年を経過した日以後においては、することができない旨規定している。
       通則法第70条第1項第3号は、課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定は、その納税義務の成立の日から、5年を経過した日以後においては、することができない旨規定している。
       また、通則法第70条第4項第1号は、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税(当該国税に係る加算税を含む。)についての決定は、同条第1項第1号の規定にかかわらず、その決定に係る国税の法定申告期限から7年を経過する日まで、することができる旨規定している。
  • ハ 所得税法関係
    • (イ) 所得税法第36条《収入金額》第1項は、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とする旨規定している。
    • (ロ) 所得税法第37条《必要経費》第1項は、その年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、事業所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他事業所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定している。
    • (ハ) 所得税法第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》第1項第1号は、居住者が支出し又は納付する家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるものは、その者の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入しない旨規定している。
    • (二) 所得税法施行令第96条《家事関連費》第1項第1号は、所得税法第45条第1項第1号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、家事上の経費に関連する経費の主たる部分が事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費以外の経費とする旨規定している。
  • 二 消費税法関係
     消費税法第2条《定義》第1項第12号は、課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けることをいう旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人の概要
     請求人は、平成20年から平成26年までの各年(以下「本件各年」という。)において、「d」の名称を使用して、飲料水の販売業者に顧客を紹介する事業及び携帯電話回線契約紹介事業(以下「d紹介事業」という。)を行うとともに、「e」の名称を使用して、玄関マット等のレンタル物品や事務用品の販売業者に顧客を紹介する事業(以下「e紹介事業」といい、d紹介事業と併せて「本件紹介事業」という。)を行い、収入を得ている。
     また、請求人は、平成24年及び平成25年において、清涼飲料水等の製造及び販売等を業とするf社の代表取締役として、f社から役員報酬を得ている。
  • ロ 本件紹介事業に関する契約書
     請求人は、本件各年において、g社との間で、「eP2」名義でe紹介事業に係る契約を、「d代表P2」名義でd紹介事業に係る契約をそれぞれ締結し、当該取引に関する各契約書(以下「本件紹介事業契約書」という。)を作成した。本件紹介事業契約書の主な記載内容は別表1のとおりである。
     また、請求人は、本件各年において、h社(平成○年○月に○○社から商号変更)との間でe紹介事業に係る顧客紹介契約を、平成20年において、i社との間でd紹介事業に係る顧客紹介契約をそれぞれ締結した。
  • ハ 自動販売機設置に関する取引
     請求人は、本件各年において本件紹介事業とは別に、別表2の「パチンコ店経営会社」欄記載の各会社(順号1から5までを順次、「j社」(平成○年○月に○○社から商号変更)、「k社」、「m社」、「n社」及び「p社」といい、これらを併せて、以下「本件各パチンコ店経営会社」という。)が経営する同表の「パチンコ店」欄記載の各店舗(これらを併せて、以下「本件各パチンコ店」という。)のうちj社、k社及びm社が経営する各パチンコ店に、清涼飲料水等の自動販売機の設置許可を得るために、契約金等の名目で金員(以下「本件協賛金」という。)を支払い、別表3の「各自動販売機設置業者」欄記載の清涼飲料水等の自動販売機の各設置業者(番号2から5までを順次、「q社」、「r社」、「s社」(平成○年○月にt社ほか3社が統合して設立された法人である。)及び「u社」といい、これらとf社を併せて、以下「本件各自販機設置業者」という。)に、同表の「設置場所(パチンコ店)」欄記載の各場所に自動販売機を設置させた。そして、請求人は、本件各自販機設置業者から当該各自動販売機の売上げに応じて金員を受け取っていた(以下、この一連の取引を「本件各自販機取引」という。)。
  • ニ 本件各自販機取引に関する契約書等
    • (イ) 請求人がj社、k社及びm社との間で作成した契約書
      • A 請求人は、j社、k社及びm社との間で、各パチンコ店ごとに自動販売機設置契約書(以下「本件各パチンコ店設置契約書」という。)を作成し、保存しており、主な記載内容は別表4のとおりである。
      • B また、請求人は、本件各パチンコ店設置契約書のうち、別表4の順号1から8までは、相互に補完するものであり、j社又はk社が経営するパチンコ店のうち一店舗について契約書に記載した契約期間の終期が到来し、又は契約本数の清涼飲料水等が販売されても、当該店舗に係る契約は終了せず、全店舗に係る契約期間の終期が到来し、又は全店舗に係る契約本数の清涼飲料水等の販売が完了したときに初めて、取引全てが同時に終了する旨の契約であることを定めた「覚書」(以下「本件覚書」という。)と題する書面をj社又はk社との間でそれぞれ作成し、保存しており、その主な記載内容は、別表5のとおりである。
    • (ロ) 本件各自販機設置業者との間で作成した契約書
       請求人は、f社及びs社以外の本件各自販機設置業者との間で、自動販売機の設置に関する契約書(以下「本件各自販機業者設置契約書」という。)を作成し、保存しており、その主な記載内容は、別表6−1及び別表6−2のとおりである。
       なお、請求人は、f社及びs社との間でも同内容の自動販売機の設置に関する契約を締結したが、契約書は作成しなかった。
  • ホ 本件協賛金の支払
     請求人は、j社、k社及びm社の各パチンコ店経営会社に対して、本件協賛金を別表4(順号4、5、7及び8を除く。)の「契約金」欄のとおりそれぞれ支払った。
     なお、別表4の順号4、5、7及び8の契約に係る本件協賛金の支払はない。
  • ヘ f社からの契約上の地位の承継
     f社は、n社及びp社との間で、それぞれ本件協賛金と同趣旨の金員を支払って両社の経営するパチンコ店に自動販売機を設置し、清涼飲料水等を販売する取引(以下「本件K取引」という。)を行い、各会社との間で本件各パチンコ店設置契約書と同内容の契約書を別表7のとおり、本件覚書と同内容の覚書と題する書面を別表8のとおり、それぞれ作成し、保存した。
     請求人は、平成25年2月頃、f社に○○○○円(以下、本件協賛金と併せて「本件各協賛金」という。)を支払って、f社から本件K取引に係る契約上の地位を承継したが、この金額は、本件K取引の契約時にf社がn社及びp社に対し支払った契約金○○○○円から、当該地位承継時における契約金の償却額(所定の単価に売上本数を乗じたもの)の累計額○○○○円を控除したものに相当する金額であった。
  • ト 請求人が事業上使用していた預金口座
     請求人は、本件各年において本件紹介事業及び本件各自販機取引を行うに際し、次の(イ)から(ハ)までの各預金口座(以下、これらを併せて「本件各預金口座」という。)をg社、h社及びi社並びに本件各自販機設置業者からの入金口座として使用していた。
    • (イ) X1信用金庫○○支店の「eP3」名義の普通預金口座(以下「eP3預金口座」という。なお、P3は、f社の従業員である。)
       eP3預金口座には、e紹介事業に係る金員が入金されていた。
    • (ロ) 請求人の知人であるP2に依頼して開設したX1信用金庫○○支店の普通預金口座(以下「dP2預金口座」という。)
       dP2預金口座には、平成20年1月から平成22年3月までの期間に係るd紹介事業及び本件各自販機取引に係る金員が入金されていた。
    • (ハ) X1信用金庫○○支店の「dP4」名義の普通預金口座(以下「dP4預金口座」という。なお、P4は請求人の○○である。)
       dP4預金口座には、平成22年4月から平成26年12月までの期間に係るd紹介事業及び本件各自販機取引に係る金員が入金されていた。
  • チ 本件各自販機取引の状況
    • (イ) 入金状況
       dP2預金口座及びdP4預金口座には、本件各年において、本件各自販機設置業者から、本件各パチンコ店に設置された自動販売機の売上げに応じて、上記ハの本件各自販機取引に係る金員が入金されていた(以下、入金された金員を「本件入金」という。)。
    • (ロ) f社における経理処理
       f社は、請求人に対し、本件入金を支払う際に、「御支払伝票」と題する伝票(以下「本件f社各支払伝票」という。)を作成し、保存していた。なお、本件各年の本件f社各支払伝票には、支払先として、本件入金に係る本件各パチンコ店の名称が記載されていた。
       なお、本件各年の本件f社各支払伝票には、支払先として、本件入金に係る本件各パチンコ店の名称が記載されていた。
  • リ 本件入金に係る経理処理
    • (イ) 明細表の作成状況等
       請求人は、本件各年において、本件各自販機設置業者から送付された明細書を基に、本件各パチンコ店に設置した自動販売機の毎月の清涼飲料水等の売上本数、1本当たりの所定の単価(以下、この単価を「本件各自販機取引に係る償却単価」という。)及び本件各協賛金の金額から本件各自販機取引に係る償却単価に売上本数の累計を乗じたものを控除した残額をそれぞれ記載した明細表(以下「本件自販機取引計算書」)を作成し、保存している。
    • (ロ) 本件各自販機取引に係る償却単価
       本件自販機取引計算書に記載された本件各自販機取引に係る償却単価は、別表9−1から別表9−3までのとおりである。
  • ヌ 請求人の申告状況
    • (イ) 国税に関する申告状況
       請求人は、平成20年分から平成24年分までの所得税、平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といい、平成20年分から平成26年分までを併せて「本件各年分」という。)並びに平成22年1月1日から同年12月31日まで、平成23年1月1日から同年12月31日まで、平成24年1月1日から同年12月31日まで、平成25年1月1日から同年12月31日まで及び平成26年1月1日から同年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成22年課税期間」、「平成23年課税期間」、「平成24年課税期間」、「平成25年課税期間」及び「平成26年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、いずれも法定申告期限までに確定申告書を提出しなかった。
    • (ロ) 地方税に関する申告状況
       請求人は、平成19年度から平成26年度までの個人住民税について、a市長に対し、所得金額を○○○○円とする当該各年度の市・県民税申告書(以下「本件各市県民税申告書」という。)を提出した。
       なお、請求人は、本件各市県民税申告書の「収入金額」欄に、本件紹介事業の収入及び本件入金を記載しなかった。
  • ル 原処分等
    • (イ) 原処分に係る調査
       原処分に係る調査担当者(以下「本件調査担当者」という。)は、平成27年1月20日、f社の法人税等の調査を開始し、同年4月30日に、請求人の所得税等及び消費税等の調査(以下、f社の調査を含めて「本件調査」という。)も開始した。
       請求人は、本件調査時に、本件調査担当者に対し、本件入金には本件各自販機設置業者に対する貸付金の元本返済分が含まれており、当該部分は収入金額に当たらない旨及び本件各年の本件紹介事業の費用に係る領収書を提示し、収入金額以上に必要経費が生じている旨をそれぞれ説明した上で、所得が生じなかったため申告しなかった旨主張した。
       なお、請求人は、本件紹介事業及び本件各自販機取引に係る帳簿を作成していなかった。
    • (ロ) 原処分
       原処分庁は、本件調査に基づき、本件入金の全額が事業所得に該当し、請求人の主張する経費の全額について認容できないなどと判断した結果、平成27年9月30日付で、別表10の各「決定処分等」欄のとおり、本件各年分の所得税又は所得税等の各決定処分(以下「本件所得税等各決定処分」という。)並びに重加算税の各賦課決定処分(以下「本件所得税等各賦課決定処分」といい、本件所得税等各決定処分と併せて「本件所得税等各決定処分等」という。)をし、併せて別表11の各「決定処分等」欄のとおり、本件各課税期間の消費税等の各決定処分(以下「本件消費税等各決定処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件消費税等各賦課決定処分」といい、本件消費税等各決定処分と併せて「本件消費税等各決定処分等」という。)をした。
    • (ハ) 各処分に係る各通知書に記載された処分理由の要旨
       上記(ロ)の原処分に係る各通知書(以下「本件各通知書」という。)に記載された処分理由の要旨は、別紙8から別紙19までのとおりである。
       なお、別紙で定義した略語については、以下、本文でも使用する。

(4) 異議申立て等

請求人は、原処分に不服があるとして、平成27年10月30日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は平成28年1月22日付でいずれも棄却の異議決定をした。

なお、請求人は、異議申立てをした際、本件各年分の本件紹介事業及び本件各自販機取引(以下、本件各自販機取引と本件紹介事業を併せて「本件事業」という。)の必要経費と主張する領収書に係る一覧表を作成し、異議審理庁に提出した。

(5) 審査請求

請求人は、上記(4)の異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成28年2月16日に審査請求をした。

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2 争点

  • (1) 争点1 本件各通知書の理由附記に、原処分を取り消すべき違法はあるか。
  • (2) 争点2 本件入金は、所得税法第36条第1項の収入すべき金額か。
  • (3) 争点3 請求人の主張する費用は、事業所得の金額の計算上、所得税法第37条第1項の必要経費に算入すべきか。
  • (4) 争点4 本件各年分において、請求人に通則法第68条第2項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったか。
  • (5) 争点5 本件各年分において、請求人に通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為があったか。

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3 争点についての主張

(1) 争点1(本件各通知書の理由附記に、原処分を取り消すべき違法はあるか。)について

請求人 原処分庁
請求人は、本件調査に際して、上記1の(3)のルの(イ)のとおり、本件入金には貸付金の元本返済分が含まれており、当該部分は損益取引に当たらない旨繰り返し説明していた。貸借取引に当たれば、そもそも総収入金額が発生せず、総収入金額が発生しなければ課税することはできないのであるから、この請求人の説明を否認して課税処分を行う場合、原処分庁は、請求人が本件各自販機取引のうち損益取引に当たらないと説明している部分について、本件各自販機取引が損益取引に該当し、請求人に総収入金額が発生したとする理由を本件各通知書に記載しなければならない。そうでなければ、根拠なく、恣意的に所得税法第27条《事業所得》を適用したことになるからである。
 しかしながら、本件各通知書には、このような理由が記載されていないから、行政手続法第14条第1項に違反し、原処分は取り消されるべきである。
本件各通知書において、本件各年分の事業所得に係る総収入金額については、取引先ごとに年間の収入金額の明細を示しており、必要経費については、請求人の事業の遂行上必要であるものと認定した支払手数料の支払合計金額、業務委託費の支払先及び年間の支払合計金額を記載している。このことからすれば、本件各通知書に記載された事業所得の金額に加算する金額の判断部分に係る理由は、行政庁の恣意抑制及び納税者の不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的な記載がされているから、行政手続法第14条第1項に違反しない。

(2) 争点2(本件入金は、所得税法第36条第1項の収入すべき金額か。)について

原処分庁 請求人
請求人と本件各預金口座に販売手数料を振り込んだ各取引先の間において、貸借取引があるとは認められないから、本件入金は請求人に帰属する収入すべき金額であることは明らかである。 以下のとおり、本件入金は、請求人の本件各自販機設置業者に対する貸付金ないし立替金の返済であるから、当該貸付金等の元本部分(本件各協賛金に相当する額)は、収入すべき金額ではない。
イ 請求人、本件各自販機設置業者及び本件各パチンコ店経営会社の三者は、本来、本件各自販機設置業者が本件各パチンコ店経営会社に対して支払うべき本件協賛金を請求人が立て替え、本件各自販機設置業者が本件各パチンコ店に設置した自動販売機の売上げの一部を、この貸付金等の返済に充てる旨契約した。本件入金は、この契約に基づく貸付金等の回収であり、上記1の(3)のリの(イ)の請求人の経理処理も、これを裏付ける。
ロ 本件各パチンコ店設置契約書及び本件各自販機業者設置契約書は、本件各自販機設置業者が、定型の契約書面を用いたために、上記イの契約の実体と異なる内容の契約書が作成されたにすぎない。

(3) 争点3(請求人の主張する費用は、事業所得の金額の計算上、所得税法第37条第1項の必要経費に算入すべきか。)について

原処分庁 請求人
請求人の主張する費用は、以下のとおり、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入されない。 請求人の主張する費用は、以下のとおり、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入されるべきである。
イ 本件各協賛金の償却額について イ 本件協賛金の償却額について
  償却額についての請求人の主張は、その算定根拠が明らかではない。   本件入金は、上記(2)の「請求人」欄のイのとおり、貸付金等の回収であって、収入ではないが、仮にこの主張が認められなかったとしても、原処分における、本件協賛金に係る償却額の認定は過少である。
  すなわち、本件協賛金の償却額は、上記(2)の「請求人」欄のイの契約における当事者間の口頭ないし暗黙の合意で、売上げ1本当たりの償却単価は、平成21年10月以降XX.XX円に、平成26年3月以降XX.XX円に増額している。この償却額増額の合意の存在を認めず、必要経費となる本件協賛金の償却額を売上げ1本当たりXX円と認定した原処分は誤っている。
ロ その他の経費について ロ その他の経費について
  その他の経費については、請求人の事業の遂行上必要であると認められ、客観的に必要経費として認識できるものは本件各年分の事業所得の金額の計算上、必要経費として総収入金額から既に控除している。   必要経費の不存在について立証責任を負うのは原処分庁であるにもかかわらず、原処分庁が立証責任を尽くすことなく否認したことは違法である。

(4) 争点4(本件各年分において、請求人に通則法第68条第2項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったか。)について

原処分庁 請求人
請求人には、以下のとおり、本件各年分において、通則法第68条第2項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があった。 請求人には、以下のとおり、本件各年分において、通則法第68条第2項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったとはいえない。
イ 本件各預金口座について イ 本件各預金口座について
  請求人は、上記1の(3)のトのとおり、本件各預金口座を開設した上で当該口座に事業に係る入金をさせており、あたかも請求人の事業及び事業に係る収入が請求人に帰属しないかのように装っている。   請求人が、本件各預金口座を開設させ、事業に係る入金をさせたのは、dやeという屋号を重要視し、事業ごとに別の屋号を付した預金口座で入金を管理しようとしたためにすぎない。
ロ 総勘定元帳等の記載について ロ 総勘定元帳等の記載について
  請求人は、f社の総勘定元帳及び本件f社各支払伝票において、支払先について、本件各パチンコ店であって請求人ではないかのように虚偽の記載をさせ、請求人が本件入金を受け取った事実を隠ぺいしている。   f社が、総勘定元帳や本件f社各支払伝票において、支払先として、本件各パチンコ店の名称を記載したのは、当該入金に係る本件各協賛金の支払先であるパチンコ店を明らかにするためであり、ただ、その記載方法が正確でなかったにすぎない。
ハ 確定申告の認識について ハ 確定申告の認識について
  請求人は、本件各市県民税申告書を提出していることからすれば、その事業に係る所得税等や消費税等の確定申告の必要性を十分認識していたと認められる。それにもかかわらず、請求人は、これらの確定申告をいずれもしなかった。   上記(2)の「請求人」欄のイのとおり、本件入金のうち貸付金等の回収部分は収入ではなく、請求人は、収入が1,000万円を超えないため消費税の課税事業者ではない。また、上記(3)の「請求人」欄のとおり必要経費の額を計算すれば、必要経費の額が収入金額を超え所得金額が発生しないことから、申告の必要がないと認識し申告しなかったにすぎない。
  本件各市県民税申告書は、請求人の○○の担当者から依頼されて提出したもので、請求人が申告の必要性を認識していたことを裏付けない。

(5) 争点5(本件各年分において、請求人に通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為があったか。)について

原処分庁 請求人
上記(4)の「原処分庁」欄の請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に当たる。 上記(4)の「請求人」欄のとおり、請求人に、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為があったとはいえない。

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4 判断

(1) 争点1(本件各通知書の理由附記に、原処分を取り消すべき違法はあるか。)について

  • イ 法令解釈

    行政手続法第14条第1項が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されるから、同項に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような同項の趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。

  • ロ 当てはめ

    本件各通知書のうち本件所得税等各決定処分等には、別紙8から別紙14までのとおり、請求人が居住者に該当している旨、原処分庁の認定した請求人の総収入金額及びその内訳、必要経費の額及びその内訳、所得金額、所得控除等の金額並びに請求人が無申告であり、この無申告について、仮装又は隠ぺいが認められるとした根拠として原処分庁が認定した各事実がそれぞれ記載されている。

    また、本件各通知書のうち本件消費税等各決定処分等には、別紙15から別紙19までのとおり、原処分庁の認定した請求人の課税売上高及びその内訳、課税標準額及びその内訳、消費税額、消費税法第30条第7項の規定する場合に該当し課税仕入れに係る消費税額を課税標準額に対する消費税額から控除することができないこと並びに請求人が無申告であり、この無申告について、仮装又は隠ぺいがあるとした根拠として原処分庁が認定した各事実がそれぞれ記載されている。

    以上の本件各通知書の記載内容からすれば、本件各通知書において、処分の理由が、原処分庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条第1項の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示されているといえるから、本件各通知書の理由附記に違法はない。

  • ハ 請求人の主張について

    請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のとおり、本件調査における請求人の主張を認めず課税処分を行う場合、原処分庁は、請求人が本件各自販機取引のうち損益取引に当たらないと主張している部分について、当該取引が損益取引に該当し、請求人に総収入金額が発生したとする理由を示さなければ、根拠なく、恣意的に所得税法第27条を適用したことになる旨主張する。

    しかしながら、本件各通知書に記載された総収入金額及び課税売上高等についての内容から、上記の請求人の主張が認められなかったことは明らかであって、本件各通知書に、当該主張が排斥された理由まで記載しなくても、原処分庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制し、請求人の不服申立ての便宜を図るという行政手続法第14条第1項の趣旨に反するものではない。

    したがって、請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(本件入金は、所得税法第36条第1項の収入すべき金額か。)について

  • イ 法令解釈

    所得税法は人の担税力を増加させる経済的利得は全て所得を構成するという包括的所得概念を採用しており、人の担税力を増加させる経済的利得は、その源泉、形式、合法性の有無を問わず、全て所得として把握するものとし、非課税とする趣旨の規定がない限り、これを課税対象としているものと解するのが相当である。

    そして、所得税法第36条第1項において、別段の定めがある場合を除き、各種所得の金額の計算上計上すべき「収入金額」又は「総収入金額」を「収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)」としており、所得税法では一般に外部からの経済的価値の流入を収入と捉えているものと解するのが相当である。

  • ロ 認定事実及び当てはめ

    原処分関係資料、請求人提出資料並びにq社の従業員であるP5、j社及びk社の代表取締役であるP6の当審判所に対する答述その他当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

    • (イ) 請求人は、別表4及び別表5のとおり、本件各パチンコ店経営会社(n社及びp社を除く。)との間で、本件各パチンコ店(Kx店及びKy店を除く。)に自動販売機を設置して、一定期間又は約定本数に達するまで清涼飲料水等を販売することの承諾と引換えに、本件各パチンコ店経営会社(n社及びp社を除く。)に対し、本件協賛金を支払う旨の契約を締結している。
       また、上記1の(3)のヘのとおり、請求人は、f社から、本件K取引に係る契約(別表7及び別表8のとおり、n社及びp社が経営するパチンコ店に清涼飲料水等の自動販売機を設置し、当該清涼飲料水等を約定本数に達するまで販売する権利と引換えに本件協賛金と同趣旨の金員を支払う旨の契約)上の地位を承継しているが、これらの契約内容に照らすと、本件各協賛金は、いずれも本件各パチンコ店経営会社に対する清涼飲料水等の販売手数料の前払金として支払われたものであると認められる。
    • (ロ) その上で、請求人は、上記1の(3)のニの(ロ)のとおり、本件各自販機設置業者に依頼して、本件各パチンコ店に清涼飲料水等の自動販売機を設置させ、これらを販売させる旨及び本件各自販機設置業者から清涼飲料水等の販売本数に応じた手数料を受領する旨の契約(以下、「本件各自販機業者契約」という。)を本件各自販機設置業者との間で締結し、上記(イ)の契約を含めた一連の取引、すなわち本件各自販機取引を行っている。
       したがって、本件入金は、清涼飲料水等が販売されたことにより本件各自販機設置業者から請求人に対し支払われた手数料であるから、外部からの経済的価値の流入であり、収入に該当する。
       さらに、上記(イ)の契約期間中に本件各自販機業者契約の内容について変更はなく、その他、請求人と本件各自販機設置業者との間で、本件各自販機業者契約以外に、何らかの金銭授受を伴う契約が締結された事実は認められないから、本件入金はその全額が収入すべき金額となる。
       なお、本件事業は請求人の自己の計算と危険において利益を得ることを目的として継続的に行う経済活動に該当するから、請求人が受領した本件入金及び本件紹介事業に係る収入金額は、事業所得の収入すべき金額に該当する。
  • ハ 請求人の主張について

    請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のとおり、本件入金は、請求人の本件各自販機設置業者に対する貸付金ないし立替金の返済であり、当該貸付金等の元本部分(本件各協賛金に相当する額)は、収入すべき金額ではない旨主張する。

    しかしながら、請求人と本件各自販機設置業者との間で、本件各自販機業者契約以外に金銭授受を伴う契約が締結された事実が認められず、本件各自販機業者設置契約書には請求人の主張するような本件協賛金及び別表7の「契約金」欄に記載された金額の返済に関する記載はない。

    また、本件各協賛金が本件各自販機設置業者に対する貸付金あるいは立替金であるならば、請求人は、本件各自販機設置業者ごとの貸付金額等を認識しているはずであるところ、請求人は、当該金額を認識しておらず、また、本件各自販機設置業者ごとに当該金額の残額等を管理しているなどの事実も認められない。

    以上からすると、本件入金が、本件各自販機設置業者に対する貸付金又は立替金の返済であると認めることはできない。

    したがって、請求人の主張には理由がない。

(3) 争点3(請求人の主張する費用は、事業所得の金額の計算上、所得税法第37条第1項の必要経費に算入すべきか。)について

  • イ 法令解釈

    所得税法第37条第1項は、必要経費に算入すべき金額について、所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額、その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用である旨規定し、必要経費を事業に直接要した費用としている。

    そして、上記の「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」とは、当該業務の遂行上生じた費用、すなわち業務と関連のある費用をいうが、単に業務と関連があるというだけでなく、客観的にみてその費用が業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものに限られると解するのが相当である。

    なお、個人の場合には活動全てが利益追求ではなく、所得獲得活動の他にいわゆる消費生活があるので、個人の支出の中には収入を得るために支出されているとは言い難い、むしろ所得の処分としての性質を有しているというべきものがある。例えば、食費・住居費等がその代表であるが、所得税法第45条は、これらを家事費と呼び必要経費に含めないことを明記している。

    しかし、ある支出が家事費であるかそれとも事業上の経費であるか明確に区分できない場合も多く、また、例えば店舗兼用住宅の減価償却費のように、家事費と事業上の経費とが混在している場合も少なくない。

    そこで、所得税法第45条は、両方の要素を有している支出について家事関連費といい、必要経費になる部分が明らかでないためこれを原則として必要経費に含めないとしつつ、所得税法施行令第96条第1項第1号において、家事関連費の主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる一定部分に限ってこれを必要経費に算入することを認めている。

    このように、所得税法は、明確に事業上の経費といえないものは、原則として必要経費としないこととしているのである。

  • ロ 検討
    • (イ) 本件各協賛金の償却額について
      • A 認定事実及び当てはめ
         原処分関係資料、請求人提出資料並びにq社の従業員であるP5、j社及びk社の代表取締役であるP6及び請求人の当審判所に対する答述その他当審判所の調査及び審理の結果によれば、上記(2)のロの(イ)のとおり、本件各協賛金は、本件各パチンコ店における清涼飲料水等の販売手数料の前払金であるから、客観的にみて、本件各自販機取引に係る業務に直接関連し、かつ、当該業務の遂行上必要な費用と認められ、所得税法第37条第1項の「当該収入を得るため直接要した費用」に該当し、本件各年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される。
         そして、本件各年分に必要経費として算入されるべき本件各協賛金の償却額について検討すると、請求人は、j社、k社及びm社の各社に別表4の「契約金」欄の金額の本件協賛金及びf社に○○○○円を支払うことと引換えに、別表3の「設置場所(パチンコ店)」欄記載の店舗において、清涼飲料水等の販売本数が別表4の「契約有効期間」欄及び別表7の「契約有効期間」欄記載の本数(以下「本件販売予定本数」という。)に達するまで、本件各パチンコ店に清涼飲料水等の自動販売機を設置することの承諾を受けていたのであるから、本件各年分の必要経費として算入されるべき本件各協賛金に係る販売手数料の金額は、本件協賛金及び別表7の「契約金」欄に記載された金額をそれぞれ本件販売予定本数で除して算出した清涼飲料水等の売上げ1本当たりの金額に、年間の販売本数を乗じた金額であると認められる。
      • B 請求人の主張について
         請求人は、上記3の(3)の「請求人」欄のイのとおり、仮に本件入金が貸付金等の返済でないとしても、本件協賛金の償却額は、本件各自販機取引の当事者間の口頭ないし暗黙の合意で、売上げ1本当たりの償却単価は平成21年10月以降XX.XX円に、平成26年3月以降XX.XX円に増額している旨主張する。
         しかしながら、本件各協賛金の償却額は本件各自販機取引の当事者間で決定するものではなく、支払った協賛金額と販売許可された本数により決定するものであるところ、本件各パチンコ店設置契約書及び本件K取引に係る契約書上、協賛金額や販売許可本数の変更は行われておらず、加えて、j社及びk社の代表取締役であるP6の本件調査における申述や当審判所に対する答述に当該償却額に関するものは認められないことからすれば、請求人の主張するような償却額増額の事実は認められない。
         したがって、請求人の主張には理由がない。
      • C 原処分庁の主張について
         原処分庁は、j社及びk社が経営する各パチンコ店における上記販売手数料の金額について1本当たりXX円、m社に係る同金額について1本当たりXX円及びn社及びp社に係る同金額について1本当たりXX円である旨主張する。
         しかしながら、当審判所の調査の結果によると、j社及びk社が経営する各パチンコ店については、本件協賛金のうち○○○○円を契約本数の合計本数である○○○○本で除して算出した金額であるXX.XX円(小数点3位を切上げ)、m社については、本件協賛金のうち○○○○円を契約本数である○○○○本で除して算出した金額であるXX.XX円(小数点3位を切上げ)、n社及びp社が経営する各パチンコ店については、別表7の「契約金」欄に記載された金額の合計額○○○○円を契約本数の合計本数である○○○○本で除して算出した金額であるXX円を、清涼飲料水等1本当たりの売上げに係る販売手数料とするのが相当であると認められる。
         また、原処分庁は、平成26年分のs社に係る売上本数について、○○○○本であると主張するが、当審判所の調査の結果、s社に係る売上本数は、○○○○本であると認められることから、本件各自販機設置業者が設置した自動販売機の清涼飲料水等の本件各年分に係る売上本数は、別表12の「合計」欄の「本数(本)」欄のとおりである。
         そうすると、本件各協賛金のうち、本件各年分の必要経費に算入すべき販売手数料の金額は、別表12の「合計」欄の各「金額(円)」欄のとおり、平成20年分が7,385,216円、平成21年分が11,458,400円、平成22年分が11,422,632円、平成23年分が9,775,361円、平成24年分が10,275,605円、平成25年分が9,717,262円、平成26年分が8,706,631円となる。
    • (ロ) 請求人の主張するその他の必要経費について
      • A 業務委託費(別表13−1から別表13−7までに記載の各支出)について
        • (A) 「区分」欄に1とある各支出について
           「区分」欄に1とある各支出は、原処分関係資料、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果、請求人の知人であるP2、P7、P8、P9及びL社の代表者であったP10に対する支出であり、当該各支出は、本件事業に係る新規顧客の紹介、開拓等の業務を委託するために支出したものと認められることから、当該各支出は、本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用と認めることができる。
           したがって、「区分」欄に1とある各支出については、いずれも本件各年分の各事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される。
        • (B) 「区分」欄に2とある各支出について
           「区分」欄に2とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、P11に対する支出であり、請求人は、m社の紹介者であるP11に対する業務委託費である旨主張する。
           しかし、請求人がm社との間で自動販売機設置契約を行ったのは、上記各支出のあった平成20年及び平成21年よりも前の平成17年であり、その他に請求人とP11の間で業務委託が行われた事実を確認できないことから、当該各支出は、いずれも客観的にみて、本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な経費であったとは認められない。
           したがって、「区分」欄に2とある各支出については、平成20年分及び平成21年分の各事業所得の金額の計算上、いずれも必要経費に算入することはできない。
      • B 接待交際費(別表14−1から別表14−7までに記載の各支出)について
        • (A) 「区分」欄に3とある各支出について
           「区分」欄に3とある各支出について、請求人は、j社及びk社の社長との懇親会参加費や取引先の開店祝いなどと主張するものの、請求人から当該各支出に係る領収書の提出がなく、当審判所の調査の結果によっても、請求人が当該各支出をした事実を認めることはできない。
           したがって、「区分」欄に3とある各支出については、平成20年分から平成23年分まで、平成25年分及び平成26年分の各事業所得の計算上、いずれも必要経費に算入することはできない。
        • (B) 「区分」欄に4とある各支出について
           「区分」欄に4とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、飲食店等に対する支出であり、請求人は、取引先との飲食費などと主張する。
           しかし、上記各支出は、飲食等の相手先が本件事業の取引先の者とうかがえる場合、相手先に取引先や顧客ではない者が含まれている場合、あるいは相手先が不明な場合に区分できるが、いずれの場合も、本件事業を遂行する上で、上記各相手先をそれぞれ個別に接待しなければならない理由が明らかではなく、これらが個人的な付き合いの飲食等である可能性がある。そうすると、仮に、当該各支出が本件事業と関連性があるとしても、当該各支出は家事関連費となるにすぎず、当該各支出の主たる部分が本件事業の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できない以上、当該各支出を必要経費に算入することはできない。
           したがって、「区分」欄に4とある各支出は、本件各年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
        • (C) 「区分」欄に5とある各支出について
           「区分」欄に5とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、制服代等であり、請求人は、本件紹介事業の顧客の子等が通う○○へ寄贈した制服等及び取引先の整骨院と繋がりのある柔道選手を招待して行ったイベントに関する支出であり、必要経費に該当する旨主張する。
           しかし、顧客の子等が通う○○に制服等を寄贈することや上記イベントの開催と本件事業との客観的な関連性は乏しく、仮に、当該各支出が本件事業と関連性があるとしても、当該各支出は家事関連費となるにすぎず、当該各支出の主たる部分が本件事業の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できない以上、当該各支出を必要経費に算入することはできない。
           したがって、「区分」欄に5とある各支出については、平成21年分から平成24年分まで及び平成26年分の各事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
        • (D) 「区分」欄に6とある各支出について
           「区分」欄に6とある各支出は、請求人提出資料、g社の従業員であるP12の当審判所に対する答述その他当審判所の調査及び審理の結果、eが主催しe紹介事業の顧客等が参加したゴルフコンペに係る費用である。そして、当該ゴルフコンペの参加者には、e紹介事業の顧客やg社のブロック長等が含まれており、その参加者と当該ゴルフコンペの招待状の内容から、当該ゴルフコンペは請求人を含めたe紹介事業に関係する者の関係強化を目的として実施されたものと認められることから、当該各支出は、客観的にみて、本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用であると認められる。
           したがって、「区分」欄に6とある各支出については、平成21年分から平成26年分までの各事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される。
        • (E) 「区分」欄に7とある各支出について
           「区分」欄に7とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、飲食店等に対する支出であり、請求人は、かつて所属していた○○がv県で開催した会議にOBとして参加した際に支出した飲食費等であり、会議の参加目的が、新規顧客の開拓が目的であったことから、必要経費に該当する旨主張する。
           しかし、上記会議と本件事業の関連性は認められず、当該会議に出席することによって、顧客の拡大につながることが期待されるとしても、その内容は、具体性に乏しい。
           また、上記各支出は、いずれも個人生活上の支出である性格も有していることからすれば、仮に、当該各支出が本件事業と関連性があるとしても、当該各支出は家事関連費となるにすぎず、当該各支出の主たる部分が本件事業の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できない以上、当該各支出を必要経費に算入することはできない。
           したがって、「区分」欄に7とある各支出については、いずれも平成22年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
        • (F) 「区分」欄に8とある各支出について
           「区分」欄に8とある各支出は、原処分関係資料、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果、本件紹介事業の顧客に対する開店祝いの花代である。そして、上記各支出は、事業上の関係強化を目的とするものと認められることから、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上、必要な経費であると認められる。
           したがって、「区分」欄に8とある各支出については、平成24年分及び平成25年分の各事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される。
        • (G) 「区分」欄に9とある各支出について
           「区分」欄に9とある各支出は、原処分関係資料、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果、e主催のディナーショーに係る支出である。そして、上記ディナーショーに参加した者は、主にeの取扱商品を利用していない者であること及び当該ディナーショーにおいて、eの取扱商品が説明されていることからすると、当該ディナーショーの開催目的は請求人が行うe紹介事業の新規顧客の開拓及び知名度の拡充を図ったものであると認められる。
           したがって、「区分」欄に9とある各支出は、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用であると認められることから、平成25年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される。
      • C 旅費交通費(別表15−1から別表15−7までに記載の各支出)について
        • (A) 「区分」欄に3とある各支出について
           「区分」欄に3とある各支出について、領収書の提出がなく、当審判所の調査の結果においても、請求人が当該各支出をした事実を認めることはできない。
           したがって、「区分」欄に3とある各支出は、平成20年分から平成22年分まで、平成25年分及び平成26年分の各事業所得の金額の計算上、いずれも必要経費に算入することはできない。
        • (B) 「区分」欄に10とある各支出について
           「区分」欄に10とある各支出は、原処分関係資料、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、上記Bの(B)、(C)及び(E)の各支出に付随して支出されたタクシー代、運転代行代及び宿泊費等である。
           しかし、上記Bの(B)、(C)及び(E)の各支出が、本件事業との関連性に乏しく、本件事業の遂行上必要な経費とは認めることができないことは上記Bの(B)、(C)及び(E)で述べたとおりであり、これに付随する支出である「区分」欄に10とある各支出も、同様に本件事業の遂行上必要な費用と認めることはできない。
           したがって、「区分」欄に10とある各支出については、本件各年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
        • (C) 「区分」欄に11とある支出について
           「区分」欄に11とある支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、旅行会社に対する支出であり、請求人は、業務委託をするための会議の旅費交通費であると主張する。
           しかし、上記支出は、上記会議の開催場所、開催内容等が不明であり、会議開催の有無も確認できないことから、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用とは認められない。
           したがって、「区分」欄に11とある支出については、平成20年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
        • (D) 「区分」欄に12とある各支出について
           「区分」欄に12とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、○○線の利用料金と認められるものの、その利用目的が不明で、本件事業との関連性が認められないので、当該各支出は客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用であるとは認められない。
           したがって、「区分」欄に12とある各支出については、いずれも平成20年分及び平成23年分の各事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
        • (E) 「区分」欄に13とある各支出について
           「区分」欄に13とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、タクシー代、運転代行代及び駐車場代と認められるものの、その利用目的が不明で、本件事業との関連性が認められないので、当該各支出は客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用であるとは認められない。
           したがって、「区分」欄に13とある各支出については、平成22年分から平成26年分までの各事業所得の金額の計算上、いずれも必要経費に算入することはできない。
      • D 広告宣伝費(別表16−1から別表16−6までに記載の各支出)について
        • (A) 「区分」欄に14とある各支出について
           「区分」欄に14とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果、○○等への支出であり、請求人は、広告宣伝費である旨主張する。
           そして、上記各支出は、支出の相手先においてパンフレット等に本件紹介事業の広告を掲載した等の事実が認められることから、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用であると認められる。
           したがって、「区分」欄に14とある各支出については、平成21年分、平成24年分及び平成25年分までの各事業所得の金額の計算上、いずれも必要経費に算入される。
        • (B) 「区分」欄に15とある各支出について
           「区分」欄に15とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、○○等への支出であり、請求人は、広告宣伝費である旨主張する。
           しかし、上記各支出を本件事業の広告宣伝費に係るものと認めるに足る証拠はなく、また当該各支出に係る広告宣伝の事実も確認できなかったことからすれば、当該各支出は、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用とは認められない。
           したがって、「区分」欄に15とある各支出については、いずれも平成21年分から平成23年分まで及び平成26年分の各事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
        • (C) 「区分」欄に16とある各支出について
           「区分」欄に16とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、○○等への支出であり、請求人は、広告宣伝費である旨主張する。
           しかし、上記各支出に係る支払先の所在地等や広告宣伝の事実が確認できなかったことから、当該各支出は、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用とは認められない。
           したがって、「区分」欄に16とある各支出については、平成22年分、平成24年分及び平成26年分の各事業所得の金額の計算上、いずれも必要経費に算入することはできない。
        • (D) 「区分」欄に17とある支出について
           「区分」欄に17とある支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果よると、○○への支出であり、請求人は、広告宣伝費である旨主張する。
           しかし、上記各支出は、本件事業と直接関係のない有志の旅行に対する支出であり、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な経費とは認められない。
           したがって、「区分」欄に17とある支出については、平成26年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
      • E 販売促進費(別表17に記載の各支出)について
        • (A) 「区分」欄に18とある支出について
           「区分」欄に18とある支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、P13に対する支出であり、請求人は、ジュース代金の贈答に係る費用で、販売促進費である旨主張する。
           しかし、上記支出は、その目的が明らかでないことから、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要であると認められない。
           したがって、「区分」欄に18とある支出については、平成25年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
        • (B) 「区分」欄に19とある支出について
           「区分」欄に19とある支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、図書カードの購入費用であり、請求人は、サッカー大会における販売促進費である旨主張する。
           しかし、サッカー大会において図書カードを贈答することが、本件事業の遂行上必要であるとする理由が明らかではなく、図書カードを贈答することと本件事業の関連性は乏しいことからすれば、上記支出は、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用とは認められない。
           したがって、「区分」欄に19とある支出については、平成25年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
      • F 消耗品費(別表18−1及び別表18−2に記載の各支出)について
        • (A) 「区分」欄に20とある支出について
           「区分」欄に20とある支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、家電量販店に対する支出であり、請求人は、ビデオカメラを購入した消耗品費である旨主張する。
           しかし、上記支出に係るビデオカメラの存在が確認できず、また、当該支出がビデオカメラの購入代かどうかも不明であることから、当該支出が客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用とは認められない。
           したがって、「区分」欄に20とある支出については、平成22年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
        • (B) 「区分」欄に21とある支出について
           「区分」欄に21とある支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果、ゴミ箱の購入費用であり、当該ゴミ箱は、j社及びk社が経営する各パチンコ店に設置された自動販売機の横に設置するゴミ箱であることが認められることから、当該支出は、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用であると認められる。
           したがって、「区分」欄に21とある支出については、平成26年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される。
      • G 雑費(別表19−1から別表19−3までに記載の各支出)について
        • (A) 「区分」欄に22とある支出について
           「区分」欄に22とある支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、個人に対する支出であり、請求人は、顧客の紹介手数料として支払った旨主張する。
           しかし、上記支出の領収書には支払先の住所・氏名の記載はあるものの、その支払先の現在の住所地が不明で、当該支出の内容について確認することができないことから、当該支出は、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用であるとは認められない。
           したがって、「区分」欄に22とある支出については、平成21年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
        • (B) 「区分」欄に23とある各支出について
           「区分」欄に23とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果、本件紹介事業の屋号が入った印鑑等の購入費用であり、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用であると認められる。
           したがって、「区分」欄に23とある各支出は、平成23年分及び平成24年分の各事業所得の金額の計算上、いずれも必要経費に算入される。
        • (C) 「区分」欄に24とある各支出について
           「区分」欄に24とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、○○等への支出であり、当該各支出は寄附金と認められることから、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用であるとは認められない。
           したがって、「区分」欄に24とある各支出については、いずれも平成24年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
      • H その他(別表20−1及び別表20−2に記載の各支出)について
        • (A) 「区分」欄に25とある支出について
           「区分」欄に25とある支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、m社への支出であり、自動販売機設置契約を中途で解除した際に、返金された契約金の未償却額が過大であったことから、当該過大額をm社に返金したものと認められる。
           したがって、「区分」欄に25とある支出については、平成22年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
        • (B) 「区分」欄に26とある各支出について
           「区分」欄に26とある各支出は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によると、東日本大震災に関連した募金や特定団体に対する支出であり、寄附金と認められることから、客観的にみて本件事業に直接関連し、かつ、本件事業の遂行上必要な費用として認めることはできない。
           したがって、「区分」欄に26とある各支出については、平成23年分の事業所得の金額の計算上、いずれも必要経費に算入することはできない。
    • (ハ) 総括
       上記の結果を踏まえ、本件各年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される額は、別表21の「審判所認定額」欄の「必要経費の額」の「小計18」欄のとおりとなる。

(4) 争点4(本件各年分において、請求人に通則法第68条第2項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったか。)について

  • イ 認定事実

    原処分関係資料、請求人提出資料並びにq社の従業員であるP5、j社及びk社の代表取締役であるP6及び請求人の当審判所に対する答述その他当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

    • (イ) 他人名義での本件各パチンコ店設置契約書及び本件覚書(一部を除く)の作成及び保存
       請求人は、契約者が自己であるにもかかわらず、別表4の順号1ないし5、7、9及び別表5の順号1のとおり、本件各パチンコ店設置契約書及び本件覚書の一部について、契約名義人を「d代表P2」とし、他人名義の契約書を作成し、保存した。
    • (ロ) 借名口座の使用
       請求人は、上記1の(3)のトの(ロ)のとおり、d紹介事業及び本件各自販機取引に係る入金先の口座として、口座名義を「P2」とするdP2預金口座を使用していた。
       ただし、平成22年4月以降は、口座名義人のP2が、請求人に対し、dP2預金口座の使用中止を申し入れたことから、請求人は、dP4預金口座を開設して、d紹介事業及び本件各自販機取引に係る入金先の口座として使用した。
       また、請求人は、本件各年を通じて、上記1の(3)のトの(イ)のとおり、e紹介事業に係る入金先の口座として、口座名義を「eP3」とするeP3預金口座を使用していた。
    • (ハ) 他人名義での本件各自販機業者設置契約書の作成及び保存
      • A q社との契約書

        請求人は、別表6−1のとおり、q社との本件各自販機取引に当たって、「d」名義の契約書を作成し、保存した。

      • B u社との契約書

        請求人は、別表6−2のとおり、u社との本件各自販機取引に当たって、「d代表P2」名義の契約書を作成し、保存した。

    • (二) 他人名義での本件紹介事業契約書の作成及び保存等
       請求人は、本件紹介事業の取引先であるg社との間で、別表1のとおり「eP2」及び「d代表P2」の名義の契約書を作成し、保存するほか、g社の担当者に対して、eの代表者は「P14」という第三者であって、請求人は本件紹介事業の「窓口的存在」と説明していた。
    • (ホ) 支払先を仮装した本件f社各支払伝票の作成及び保存等
       f社は、上記1の(3)のチの(ロ)のとおり、販売手数料の支払先を請求人ではなく、本件各パチンコ店の名称とする本件f社各支払伝票を作成し、保存していたが、f社に支払先を偽る理由がないことからすれば、本件f社各支払伝票は、支払先であり、かつ、同社の代表取締役である請求人の意向に従い作成されたものと合理的に推認されるから、当該事実を認定することができる。
    • (ヘ) 支払先を仮装した本件f社各支払伝票の作成及び保存等
       請求人、本件各自販機設置業者及び本件各パチンコ店経営会社は、上記(3)のロの(イ)のとおり、本件各自販機取引に係る本件各協賛金の償却単価を変更することはなかったが、請求人は、上記1の(3)のリ及び別表9−1から別表9−3までのとおり、以下のパチンコ店について、本件各自販機取引に係る償却単価を過大に記載した本件自販機取引計算書を作成し、保存した。
      • A M店、N店及びQ店
         M店、N店及びQ店の本件各自販機取引に係る償却単価を、f社に自動販売機を設置させた部分については、平成21年10月分以降XX.XX円に、平成26年3月以降XX.XX円に、q社に自動販売機を設置させた部分については、平成21年10月以降1本当たりの受取手数料の全額に、r社に自動販売機を設置させた部分については、平成26年1月以降(当月以降、自動販売機取引を開始している。)1本当たりの受取手数料の全額にそれぞれ変更したとして本件自販機取引計算書へ記載した。
      • B R店及びS店
         R店及びS店の本件各自販機取引に係る償却単価を、f社、q社及びr社に自動販売機を設置させた部分については、1本当たりの受取手数料の全額として本件自販機取引計算書へ記載した。
      • C T店
         T店の本件各自販機取引に係る償却単価を、平成24年9月15日以降XX.XX円として本件自販機取引計算書へ記載した。
    • (ト) 損失が発生する旨の記載のあるメモの作成、保存及び提示
       請求人は、上記(ヘ)のとおり作成した本件自販機取引計算書に基づき本件各年分について、必要経費が収入金額を上回り損失が発生する旨のメモ(以下「本件メモ」という。)を作成し、保存した。
       また、請求人は、本件調査において、本件調査担当者に対し、本件メモを提示した。
    • (チ) 請求人の意図
       上記(イ)から(ト)までの請求人の行為からすれば、請求人は、本件各年分の所得が生じず、申告をする必要がないかのように見せかける意図をもって、これらの行為を行ったことが認められる。
  • ロ 法令解釈
     通則法第68条に規定する「事実を隠ぺいする」とは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実について、これを隠ぺいしあるいは故意に脱漏することをいい、また「事実を仮装する」とは、所得財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲することをいうと解するのが相当である。
  • ハ 当てはめ
     以上のとおり、請求人は、本件各年分の所得が生じず、申告をする必要がないかのように見せかける意図に基づいて、本件各パチンコ店設置契約書等に他人名義を用い、本件事業に係る収入を借名口座へ入金させ、f社に支払先を仮装した本件f社各支払伝票を作成し、保存させるなどして、所得の帰属を偽装し、また、必要経費を過大に記載した本件自販機取引計算書及び本件メモを作成し、保存し、これを本件調査担当者に提示することによって、本件各自販機設置業者との取引において、あたかも事業所得が発生していないような外観を作出した。
     これらの請求人の行為は、本件事業に係る収入の帰属及び必要経費の額について故意に事実をわい曲したといえ、その結果、法定申告期限までに確定申告書を提出しなかったものと認められるから、通則法第68条第2項に規定する「事実を仮装する」に該当し、重加算税の賦課決定の要件を満たす。
  • ニ 請求人の主張について
     これに対し、請求人は、上記3の(4)の「請求人」欄のとおり、1本件各預金口座は屋号を重要視して使用したにすぎない、2f社が総勘定元帳等において支払先として本件各パチンコ店の名称を記載したのは本件入金に係る本件各協賛金の支払先を明らかにするためだった、3必要経費が収入を超えることから所得が発生しないため、申告の必要がないと認識していたにすぎないなどと主張する。
     しかしながら、屋号を重要視するのであれば、請求人の氏名に屋号を付加すればよかったのであり、なぜ、他人の名前に付加したのか不可解であるし、また、本件各協賛金の支払先を明記したいのであれば、総勘定元帳や支払伝票の摘要欄等にその旨記載するなど他の方法があるのに、あえて支払先として記載するのは不自然である。
     さらに、請求人が行った本件自販機取引計算書における売上げ1本当たりの金額XX.XX円や、XX.XX円などといった本件各自販機取引に係る償却単価には、上記(3)のロの(イ)のBのとおり何の根拠もないのであって、そのような償却単価の増額の合意がないことは請求人が一番よく知っている事柄である。そして、請求人が所得が生じないようにみせるために本件自販機取引計算書及び本件メモを作成し、保存等したことは前述のとおりであるから、上記の請求人の主張は、いずれも理由がない。

(5) 争点5(本件各年分において、請求人に通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為があったか。)について

請求人は、上記(4)のハのとおり、申告を免れる意図で、所得の帰属及び過大な必要経費を仮装したものと認められ、これらの請求人の行為は、税の賦課徴収を不能又は困難にするような偽計その他の工作ということができるから、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当する。

(6) 本件所得税等各決定処分の適法性について

  • イ 事業所得の金額について
    • (イ) 事業所得の総収入金額
       上記(2)のロの(ロ)の本件入金はその全額が本件各自販機取引に係る収入金額であり、本件紹介事業に係る収入金額との合計額が本件事業に係る総収入金額となる。
       そうすると、請求人の本件各年分に係る事業所得の総収入金額は、別表21の各「審判所認定額」欄の9欄のとおり、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円、平成26年分が○○○○円となる。
    • (ロ) 事業所得の必要経費の額
       原処分庁は、本件各年分の本件事業の必要経費として別表21の各「原処分庁主張額」欄の10から17までの各欄に掲げる金額を認定しているところ、当審判所の調査の結果によれば、上記(3)のロのとおりとなり、請求人の本件各年分に係る事業所得の必要経費の額は、別表21の各「審判所認定額」欄の18欄のとおり、平成20年分が10,325,216円、平成21年分が14,444,440円、平成22年分が15,649,662円、平成23年分が12,721,037円、平成24年分が13,644,890円、平成25年分が14,973,308円、平成26年分が12,875,239円となる。
    • (ハ) 事業所得の金額
       そうすると、請求人の本件各年分の事業所得の金額は、上記(イ)の本件各年分に係る事業所得の総収入金額から上記(ロ)の本件各年分に係る事業所得の必要経費の額を控除した額となり、別表21の各「審判所認定額」欄の19欄のとおり、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円、平成26年分が○○○○円となる。
  • ロ 総所得金額について
     請求人には、平成20年分、平成21年分、平成22年分、平成23年分及び平成26年分において、事業所得の金額以外の所得はないため、当該各年分の総所得金額は、上記イの(ハ)の当該各年分の事業所得の金額と同額になる。
     一方、請求人は、平成24年分及び平成25年分において、いずれもf社から給与収入を得ており、それぞれ給与所得控除後の給与所得の各金額は、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円であり、当該各年分の総所得金額は、上記イの(ハ)の当該各年分の事業所得の金額に当該給与所得の金額をそれぞれ加算した金額となり、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円となる。
  • ハ 所得控除の額について
     原処分庁は、本件各年分の所得控除の額を別表22の「原処分庁主張額」欄の4から12までの各欄の金額と認定しているところ、平成21年分、平成22年分、平成25年分及び平成26年分については、請求人はそれを争わず、当審判所の調査の結果によっても相当と認められ、当該各年分の所得税又は所得税等の決定処分の金額と同額となる。
     なお、請求人は、平成23年分について、○○控除の額以外の所得控除の額は争わないところ、請求人は当審判所に対し、○○控除について、請求人の子であるP15は、○○である旨答述するが、P15が、○○を受けたのは、○○であり、○○を確認できる証拠もないことから、平成23年分において○○には該当せず、原処分庁が認定したとおり○○に該当することから、平成23年分の所得控除の合計額は所得税の決定処分の金額と同額になる。
     一方、当審判所の調査の結果によれば、平成20年分について、原処分庁が所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第2条第1項第34号の2に規定する控除対象扶養親族に該当するとした請求人の子であるP16及びP15については相当と認められるところ、請求人の母であるP17も、同号に規定する控除対象扶養親族に該当することが認められることから、扶養控除の額は、1,140,000円となる。
     また、平成24年分について、別表19−3記載のY社に対する支出は、上記(3)のロの(ロ)のGの(C)のとおり事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできないが、所得税法第78条《寄附金控除》第2項第3号に該当するものであるから、当該支出については寄附金控除の適用が認められ、その額は、寄附金の額50,000円から、同条第1項の規定に基づいて2,000円を控除した48,000円となる。
     そうすると、本件各年分の所得控除の合計額は、別表22の各「審判所認定額」欄の13欄のとおり、平成20年分が2,170,000円、平成21年分が1,790,000円、平成22年分が2,470,180円、平成23年分が1,030,000円、平成24年分が2,554,857円、平成25年分が2,617,063円、平成26年分が1,510,000円となる。
  • 二 納付すべき税額について
     本件各年分の納付すべき税額は、次のとおりとなる。
    • (イ) 課税総所得金額及びこれに対する税額
       本件各年分の課税総所得金額は、上記ロの本件各年分の総所得金額から上記ハの本件各年分の所得控除の合計額を控除した金額について、通則法第118条《国税の課税標準の端数計算等》第1項の規定に基づいて1,000円未満の端数を切り捨てた後の金額であり、別表22の各「審判所認定額」欄の14欄のとおり、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円、平成26年分が○○○○円となる。
       そして、本件各年分の課税総所得金額に対する税額は、上記各金額に所得税法第89条《税率》(平成25年法律第5号による改正前のもの)の規定を適用して計算した金額で、別表22の各「審判所認定額」欄の15欄のとおり、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円、平成26年分が○○○○円となる。
    • (ロ) 復興特別所得税
       復興財源確保法第9条《課税の対象》、同法第12条《個人に係る復興特別所得税の課税標準》及び同法第13条《個人に係る復興特別所得税の税率》の規定に基づき、平成25年から平成49年までの各年分の所得税に係る基準所得税額(上記(イ)の税額)に100分の2.1の税率を乗じて計算した金額が復興特別所得税として課されるため、該当する平成25年分及び平成26年分の復興特別所得税の金額を計算すると、別表22の各「審判所認定額」欄の16欄のとおり、平成25年分が○○○○円、平成26年分が○○○○円となる。
    • (ハ) 源泉徴収税額
       原処分庁は、請求人の平成24年分及び平成25年分のf社から支給された給与所得に係る源泉徴収税額が、別表22の各「原処分庁主張額」欄の17欄のとおり、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円と認定しているところ、請求人はそれを争わず、当審判所の調査の結果によっても相当と認められる。
       したがって、平成24年分及び平成25年分の源泉徴収税額は、当該各年分の所得税又は所得税等の決定処分に係る源泉徴収税額と同額となる。
    • (ニ) 納付すべき税額
       本件各年分の納付すべき税額は、上記(イ)の各金額(平成24年分については上記(イ)の金額から上記(ハ)の金額を控除した金額、平成25年分については上記(イ)の金額に上記(ロ)の金額を加算し上記(ハ)の金額を控除した金額、平成26年分については、上記(イ)の金額に上記(ロ)の金額を加算した金額)について、通則法第119条《国税の確定金額の端数計算等》第1項の規定に基づいて100円未満の端数を切り捨てた後の金額であり、別表22の各「審判所認定額」欄の18欄のとおり、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円、平成26年分が○○○○円となる。
  • ホ まとめ
    • (イ) 平成20年分及び平成21年分の所得税の各決定処分
       上記1の(3)のルの(ロ)とおり、平成20年分及び平成21年分の所得税の各決定処分は、平成27年9月30日付で行われているところ、通則法第70条第4項の規定から、原処分庁は、平成20年分及び平成21年分の所得税については、請求人が偽りその他不正の行為により全部又は一部の所得税を免れていない限り、同日において決定処分をすることはできない。
       そこで、この点について検討するに、上記(5)のとおり、平成20年分及び平成21年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当すること、上記ニの(ニ)のとおり平成20年分及び平成21年分の納付すべき税額は、それぞれ○○○○円、○○○○円であるのに対し、請求人は当該各年分の所得税の確定申告書を提出していないことからすると、請求人は、平成20年分及び平成21年分の所得税について、偽りその他不正の行為により全部の税額を免れていたということができる。
       したがって、原処分庁は、本件所得税等各決定処分が行われた平成27年9月30日の時点で、平成20年分及び平成21年分の所得税の各決定処分を行うことができる。
    • (ロ) 結論
       そして、上記ニの(ニ)で算定した本件各年分の納付すべき税額は、いずれも本件所得税等各決定処分のそれを下回るから、本件所得税等各決定処分は、いずれもその一部を別紙1から別紙7までの「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(7) 本件所得税等各賦課決定処分について

上記(6)のホの(イ)のとおり、請求人は平成20年分及び平成21年分の所得税について、偽りその他不正の行為により、全部の税額を免れていたということができるから、原処分庁は、通則法第70条第4項の規定に基づき本件所得税等各賦課決定処分が行われた平成27年9月30日の時点で平成20年分及び平成21年分の所得税に係る加算税の各賦課決定処分を行うことができる。

そして、上記(4)のハのとおり、本件各年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第68条第2項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当し、請求人は、その隠ぺいし又は仮装したことに基づいて、上記1の(3)のヌの(イ)のとおり、本件各年分の所得税の各法定申告期限までに確定申告書を提出していなかったものであるから、重加算税の賦課決定の要件を満たす。

しかしながら、上記(6)のホの(ロ)のとおり、本件所得税等各決定処分は、いずれもその一部が取り消されることに伴い、本件各年分の重加算税の額の計算の基礎となる税額は、別表22の各「審判所認定額」欄の19欄のとおり、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円、平成26年分が○○○○円となるから、当該基礎となる各税額に基づき本件各年分の重加算税の額を計算すると、別表22の各「審判所認定額」欄の21欄のとおり、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円、平成22年分が○○○○円、平成23年分が○○○○円、平成24年分が○○○○円、平成25年分が○○○○円、平成26年分が○○○○円となり、これらの金額は、いずれも本件所得税等各賦課決定処分のそれを下回るから、本件所得税等各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙1から別紙7までの「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(8) 本件消費税等各決定処分の適法性について

上記(2)のロのとおり、本件各年における本件事業に係る収入金額は、全て消費税法第28条《課税標準》第1項に規定する「課税資産の譲渡等の対価」に該当し、請求人は、本件各課税期間において消費税法第5条《納税義務者》第1項に規定する消費税の納税義務者であったところ、これを前提として算定した本件各課税期間の消費税の課税標準は、別表11の「決定処分等」欄の「課税標準額」欄の各金額と同額となる。

また、請求人は、上記1の(3)のルの(イ)のとおり、本件各課税期間において本件事業に係る帳簿等を作成しておらず、本件調査時に提示できなかったことから、請求人は、消費税法第30条第7項に規定する「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当するため、同条第1項の規定の適用を受けることができず、控除対象仕入税額は認められない。

そして、本件消費税等各決定処分の納付すべき税額の計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所においても、本件各課税期間の消費税等の納付すべき税額は、本件消費税等各決定処分の納付すべき税額と同額であると認められる。

したがって、本件消費税等各決定処分は、いずれも適法である。

(9) 本件消費税等各賦課決定処分の適法性について

上記(8)のとおり、本件消費税等各決定処分は適法であり、また、上記(4)のハのとおり、請求人は、本件各課税期間の消費税等の課税標準又は納付すべき税額の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、又は仮装したことに基づいて、上記1の(3)のヌの(イ)のとおり、本件各課税期間の消費税等の各法定申告期限までに確定申告書を提出しなかったのであるから、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課決定の要件を満たす。

そして、本件消費税等各賦課決定処分の重加算税の額の計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所においても、本件各課税期間の重加算税の額は、本件消費税等各賦課決定処分における重加算税の額と同額であると認められる。

したがって、通則法第68条第2項の規定に基づいて行われた本件消費税等各賦課決定処分はいずれも適法である。

(10) 結論

原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

よって、審査請求のうち、本件所得税等各決定処分等については、いずれもその一部を取り消すが、その他は理由が無いから棄却することとする。

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