別紙

当事者の主張
請求人 原処分庁
 請求人が提出した本件確定申告書においては、所得税法第90条第1項の規定を適用していないが、次のとおり、当該規定の適用は、本件更正の請求において認められるべきであり、原処分庁が同項の規定の適用は認められないとして行った原処分は違法である。  請求人が提出した本件確定申告書は、次のとおり、還付金の額に相当する金額が過少であったとは認められないことから、原処分は適法である。
(1) 更正の請求は、確定申告書の誤りについて申告後に変更するための制度であり、確定申告書自体を訂正する意味を持つ。
 したがって、所得税法第90条第1項の規定の適用を求めた本件更正の請求は、確定申告書に記載した内容の訂正を求めているのであるから、本件確定申告書に同項の規定の適用を受ける旨等の記載の有無にかかわらず、本件更正の請求を認めるべきである。
(1) 更正の請求は、確定申告書に記載された課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又はその計算に誤りがあったため、その還付金の額に相当する税額が過少となっていた場合などに、納税者の側からその申告に係る税額等の変更を税務署長に対して請求するものであり、単に確定申告書自体を訂正するものではない。
 また、税法の規定上、その適用関係が確定申告書の提出時において納税者の選択にゆだねられている場合、納税者が選択した税額等の計算に誤りがなければ、上記の「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又はその計算に誤りがあった」ことには該当せず、更正の請求は認められない。
 さらに、請求人の平成17年分の総所得金額は、そのすべてが原稿料に係る所得であることから、請求人は、所得税法第90条第1項に規定する平均課税による所得税額の計算方法を選択することができたにもかかわらず、本件確定申告書には同項の規定を適用する旨の記載及び平均課税の計算明細の記載がなかったのであるから、請求人は、本件確定申告書の提出の際に同項に規定する平均課税による所得税額の計算方法を選択しなかったものと認められる。
 そうすると、請求人は、平均課税による税額計算を行わないことを確定申告書において選択したのであるから、上記のとおり更正の請求によりその適用を求めることはできない。
(2) 国税庁が作成した「所得税の更正の請求手続」案内においても、[添付書類・部数]として「取引の記録に基づき請求の理由の基礎となる事実を記載した書類を1部提出してください。なお、変動所得若しくは臨時所得のある方は『変動所得・臨時所得の平均課税の計算書』など、この請求書の請求額を計算するに当たり使用した計算明細書等(以下「平均課税の計算書」という。)がある場合は、その書類も各1部提出してください。」と記載されており、このことからも所得税法第90条第1項の規定は適用されるべきである。 (2) 国税庁が作成した「所得税の更正の請求手続」の案内では更正の請求の添付書類として平均課税の計算書が記載されているが、これは平均課税による所得税額の計算自体に誤りがあった場合に、その正しい計算の明細として平均課税の計算書を添付することとしているのであって、これをもって本件更正の請求が認められるというものではない。
(3) 本件確定申告書において所得税法第90条第1項の規定を適用しなかったのは、平成15年分及び平成16年分の所得金額の計算ができていなかったことにより、その適用の検討ができなかったためであり、このことは、同条第5項に規定する「やむを得ない事情」に該当するから同条第1項の規定は適用されるべきである。 (3) 所得税法第90条第5項に定める「やむを得ない事情」とは、災害又はそれに準ずるような自己の責めに帰することのできない客観的事情がある場合のことをいうものであり、租税に関する知識不足や誤解などの主観的事情はこれに当たらないと解されているところ、請求人が主張する事情は、上記の客観的事情には当たらないことから、同項に定める「やむを得ない事情」には該当しない。

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