別紙

当事者の主張

(1)争点1 借地権の設定に伴う利益の発生時期
原処分庁 請求人
 本件土地の賃貸借契約の締結日以前に、EとY社との間でY社が本件土地を使用することについて口頭による合意があったことは窺われるものの、賃貸借契約は、具体的な賃貸期間、賃料、賃貸面積等に係る合意があって成立するものと認められるから使用に関する合意のみをもって、本件土地の賃貸借契約が成立したものとは認められず、本件土地に係る借地権(以下「本件借地権」という。)の設定の時期は、本件土地の賃貸借契約の締結日である平成13年5月24日であると認められるから本件決定処分は適法である。  本件借地権の設定に伴う利益の発生時期は、以下の理由により、平成12年以前であるから、本件決定処分は違法である。
イ 農地法第5条は、農地転用の手続等を規定したもので、その届出は農地法の制約を解除するためのものであり、その受理通知は農地をその記載した用途に使用することができるという承認にすぎないものである。
 したがって、農地転用の届出の日が本件借地権を取得した日とは認められない。
イ 農地の贈与による財産取得の時期は、相続税法基本通達(昭和34年1月28日付直資10(例規))1の3・1の4共−10《農地等の贈与による財産取得の時期》に定められており、農地法第3条《農地又は採草放牧地の権利移動の制限》第1項及び同法第5条第1項の規定による許可を受けなければならない農地は、当該許可があった日又は当該届出の効力が生じた日後に贈与があったと認められる場合を除き、当該許可があった日又は当該届出の効力が生じた日によるものとする旨の定めがあり、この定めによれば、農地転用の届出日である平成12年3月6日が本件借地権の設定の時期である。
ロ 本件土地に係る農業委員会への農地法第5条の申請においては賃貸借権の設定であること及び無償返還の届出書が提出されていないことから、口頭契約時から賃貸借契約を締結する認識があったことは明らかである。
 そうすると、Y社が平成12年4月11日以前に本件土地についての使用貸借を行っていたとは認められない。
 なお、原処分は、賃貸借契約によって確定した賃料が相当地代に満たない地代であること及び無償返還の届出書の提出がないことから課税が生じたものであり、賃貸借契約の確定前にY社が本件土地を使用したとしても、何ら原処分に影響するものではない。
ロ 仮に本件借地権の設定の時期が、農地転用の届出の日でないとしても、法人税基本通達(昭和44年5月1日付直審(法)25国税庁長官通達)2−1−14《固定資産の譲渡による収益の帰属の時期》では、固定資産の引渡しがあった日が借地権の設定があった日と定めており、固定資産の引渡しがあった日とは相手方が使用収益できることとなった日であることから、本件の場合、本件土地に共同住宅の建設を請け負ったH社所有の工事写真によると、平成12年4月11日には本件土地の造成工事は完成しており、遅くとも同日以前に、Y社が本件土地を占有していたことから、同日以前に本件借地権の設定があったと認められる。
 また、本件土地に係る開発許可及び農地転用許可には、土地所有者であるEの同意が必要であり、その際、使用承諾書を同人より徴しており、その時点で同人がY社に対し、口頭により土地の使用を許可していると認められる。そこには土地の使用貸借契約が成立しており、法人税基本通達13−1−7《権利金の認定見合わせ》によると使用貸借により土地の貸借を開始した場合にも無償返還の届出書の提出がない場合は、権利金の認定課税を行うこととしているから、本件土地を造成工事のために使用開始した時点で本件借地権の設定があったと認められ、その日は、遅くとも平成12年4月11日以前である。
(2)争点2 経済的利益の額の算定方法の適否
原処分庁 請求人
 課税対象の基礎となった本件借地権は、請求人が取得したものではなく、Y社が取得したものであり、同社の出資の価額の増加に基づき、同社の社員である請求人が受けた経済的利益に対して贈与税を課税するもので、その評価については、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56、直審(資)17国税庁長官通達(平成14年課評2−2による改正前のもの。)。以下「評価通達」という。)178《取引相場のない株式の評価上の区分》以下に定められており、その定めに基づき算定している。
 本件においては、Y社が評価通達185《純資産価額》に定められている資産(借地権)を課税時期前3年以内に取得していることから、その価額については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとされている。
 原処分庁は、課税対象とした本件借地権の評価について評価通達を使用せずR県の基準地価額から比準した価額で評価している。
 しかしながら、本件借地権の贈与は単純贈与であるから、平成元年3月29日付長官通達直評5、直資2−204「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」で定めるような負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等ではないため、評価通達によって評価すべきである。
(3)争点3 調査手続の違法性の存否
原処分庁 請求人
 決定処分は、税務署長が納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合に、その調査により当該申告書に係る課税標準等又は税額等を決定するものであり、原処分庁は、原処分に係る調査を行っており、原処分の手続に暇疵はない。  原処分庁は、贈与税の代理権限を持たない関与税理士に対し、申告のしょうようをしていること及び請求人に対し何ら説明をせずに本件決定処分をしていることから、贈与税の申告のしょうようを行っていないこととなり、調査手続に瑕疵があり、原処分は取り消されるべきである。

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