(平22.10.12裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、売買により取得したマンションについて、所有権移転登記を行うに当たり、建物の登録免許税の課税標準の計算上、同マンションの団地共用部分(建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)第67条《団地共用部分》第1項に規定する団地共用部分をいう。以下同じ。)の価額を含めずに専有部分のみの価額により申請したところ、原処分庁が、当該団地共用部分の価額も登録免許税の課税標準に含まれるとして、登録免許税の課税標準及び税額の認定処分をしたことから、請求人が、登録免許税は登記等を契機として課される租税であるところ、当該団地共用部分については所有権の移転登記を行い得ないから課税標準には含まれないとして、当該処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成22年2月18日、P市Q町○−○の土地(以下「本件土地」という。)の上に存するマンション(以下「本件マンション」という。)の3階に存する区分所有建物(別紙1物件目録1の建物をいい、以下「本件建物」という。)及びその敷地権(別紙1物件目録1の敷地権をいい、以下「本件敷地権」という。)を取得し、同日付で売買を原因とする所有権移転登記(以下「本件登記」という。)を申請した。
ロ 請求人は、上記イの申請の際、登録免許税の課税標準(課税価格)について、本件敷地権の価額を○○○○円、本件建物の価額を○○○○円とし、本件敷地権の登録免許税の額○○○○円、本件建物の登録免許税の額○○○○円の合計額○○○○円の収入印紙を本件登記の申請書にちょう付した。
ハ 原処分庁は、これに対し、平成22年2月22日、本件登記の申請を調査し、本件敷地権の課税標準を別表の2のとおり○○○○円、本件建物の課税標準を別表の3のとおり団地共用部分も含めた○○○○円とし、登録免許税は、本件敷地権の登録免許税の額○○○○円、本件建物の登録免許税の額○○○○円の合計額○○○○円とする認定処分(以下「本件認定処分」という。)をし、登録免許税の不足額○○○○円を納付するよう補正指示した。
ニ 請求人は、平成22年2月22日、登録免許税の差額○○○○円に相当する収入印紙を原処分庁に送付し、原処分庁は、同月23日、登記簿に本件登記に係る事項を記録した。
ホ 請求人は、本件認定処分を不服として、平成22年3月11日に審査請求をした。

(3) 基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 本件マンションは、平成元年7月○日に新築され、別紙1物件目録の2ないし10の各建物については、同日、団地共用部分とする団地規約が定められ、同年8月○日にその旨の登記が行われた(以下「本件団地共用部分」という。)。
 なお、請求人の本件団地共用部分の持分割合は○○○分の○○○である。
ロ 本件マンションのうち本件建物及び本件団地共用部分に係る地方税法第341条第9号に規定する固定資産課税台帳に登録された平成21年度の不動産の価格は、別表の1の「評価額」欄のとおりである。

(4) 関係法令の要旨

 別紙2のとおりである。

(5) 争点

 登録免許税法第10条第1項に規定する「登記の時における不動産の価額」の不動産の範囲について(本件登記における本件建物の登録免許税の課税標準の計算上、本件団地共用部分の請求人の持分割合に応じた価額が含まれるか否か。)

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2 主張

(1) 原処分庁

 一団地内の附属施設である建物は、区分所有法第30条第1項の規約により団地共用部分にすることができる(区分所有法第67条第1項)。この団地共用部分とされた建物は、これを共用する区分所有者全員の共有となり(区分所有法第11条第1項)、その共有持分は、専有部分の処分に従い、原則として専有部分と分離して処分することはできない(区分所有法第67条第3項、第15条)。
 そして、団地共用部分には民法第177条の規定は適用されず(区分所有法第67条第3項、第11条第3項)、団地共用部分である旨の登記がされている場合、同団地内の区分建物の専有部分を取得した者は、専有部分についての移転登記をすることによって団地共用部分の持分についても登記を受けることと同一の効果を得ることになるから、専有部分についての所有権の移転登記の登録免許税を算定するに当たっては団地共用部分についても課税対象にする必要がある。
 そして、本件マンションは、区分所有法第1条に該当する区分建物であるところ、本件マンションの区分所有者は、団地共用部分を定める団地の規約を設定した旨の登記を経由したから、本件建物についての所有権の移転登記の登録免許税を算定するに当たって、本件団地共用部分の請求人の持分割合に応じた価額は課税対象に含まれる。

(2) 請求人

 登録免許税は、一定の登記等を契機として課される租税であり(登録免許税法第2条)、一定の登記等が行われない限り、同税が課されることはない。
 本件においては、本件建物の所有権移転登記は行われているが、本件団地共用部分については、表示登記はあるものの、所有権移転登記は行われていないから、法令上の根拠なくして、本件団地共用部分を登録免許税の課税標準に含めた本件認定処分は違法である。

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3 判断

(1) 登録免許税は、各種の登記、登録等を担税力の間接的表現として捉え、登記、登録を課税の対象とするものであり、不動産登記についていえば、不動産の登記を受けることにより第三者に対する対抗力を備え、それにより権利が保護される等の利益を受けることにかんがみ、その背後にある担税力に着目して課税するものである。

(2) 本件団地共用部分は、上記1の(3)のイのとおり、団地共用部分とする規約が定められ、その旨の登記が行われているから、対抗要件を備えている(区分所有法第67条第1項)。
 そして、本件団地共用部分については、団地建物所有者の共有に属し(区分所有法第67条第3項、第11条)、また、専有部分を処分する場合、その処分の効果は、本件団地共用部分にも及ぶ(区分所有法第67条第3項、第15条)。
 そして、本件団地共用部分については、民法第177条の規定は適用されず、団地共用部分である旨の登記がなされれば、その共有持分について登記をする必要がないから(区分所有法第67条第3項、第11条、第15条)、本件建物の所有権移転登記により、本件団地共用部分についても規約による持分割合につき対抗力を有し、財産権保護の利益を享受することとなる。
 そうすると、本件登記は、本件団地共用部分の持分の移転についての登記と同様の法的効果を生じさせるものであるから、本件登記における登録免許税法第10条第1項に規定する「登記の時における不動産の価額」の不動産には、本件団地共用部分の請求人の持分が含まれると認められ、このことは、上記(1)のとおり、登録免許税は、不動産の登記を受けることにより第三者に対する対抗力を備え、それにより権利が保護される等の利益を受けることにかんがみ、その背後にある担税力に着目して課税するものであるという趣旨からしても相当であると認められる。
 したがって、本件建物の登録免許税の課税標準の計算上、本件団地共用部分の請求人の持分割合に応じた価額が含まれる。

(3) この点、請求人は、所有権移転登記を行い得ない本件団地共用部分に対して、法令上の根拠なくして登録免許税を課すべく認定した本件認定処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、上記(2)のとおり、本件建物につき所有権移転登記が行われれば、本件団地共用部分も対抗要件を具備するものであるから、本件建物の所有権移転登記を行うことによって、登録免許税の課税要件は充足することになる。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

(4) 以上の結果、本件登記の申請に係る登録免許税の課税標準及び税額は本件認定処分と同額となるから、本件認定処分は適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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