別紙6

当事者双方の主張

1 争点1 税務代理権限のある税理士を介さず修正申告をしょうようした後になされた本件各更正処分等は違法なものであるか否か。
原処分庁 請求人ら
 本件調査担当職員は、修正申告のしょうように先立って、R税理士に事前連絡したところ、R税理士は請求人らの税務代理権限がなくなったので、請求人らに直接連絡してほしい旨申し出た。本件調査担当職員は、当該申出を受け、請求人らに対しそれぞれ連絡した上で相続財産の申告漏れがある等指摘し、修正申告をしょうようしたものであり、税務代理権限のある税理士に連絡することなく、修正申告のしょうようを行っても、これをもって本件各更正処分等が違法となるものではない。  原処分庁は、請求人らには税理士法第2条第1項第1号に規定する税務代理権限を有するR税理士がおり、請求人らはR税理士を解任しておらず、R税理士から請求人らに対して、解任の申出がないにもかかわらず、原処分庁は税務代理委任契約の効力等について確認もせず、R税理士ではなく請求人らに対し、本件相続に係る修正申告書を作成した上、直接、修正申告をしょうようしたことは、同号及び同法第30条の規定に違反又は同規定の趣旨に反する著しく不当なものであり、このような行為に基づきされた本件各更正処分等は違法である。
2 争点2 本件各定期預金は、本件相続に係る相続税の課税財産に当たるか否か。
原処分庁 請求人ら
 次の理由から、本件各定期預金は、本件被相続人の死亡により効力を生ずる贈与(死因贈与)によって、名義人である請求人らがそれぞれ取得したものと認められるので、相続税の課税財産となる。  次の理由から、本件各定期預金は、本件被相続人から生前中に請求人らに贈与されたものであり、相続税の課税財産に該当しない。なお、この贈与には何ら停止条件は付されていない。
(1) 死因贈与による取得
 本件各定期預金は、相続税の納税に使うことを目的とし、他のことに使うことのないよう本件被相続人が請求人Gに対して指示し、請求人Gが本件被相続人の当該指示を他の請求人らに伝えた上で預け入れられていると認められることから、本件被相続人が請求人らに対し、本件被相続人が亡くなった際に請求人らが使用することができる旨の条件を付した上で贈与した死因贈与により請求人らが取得したものである。
(1) 本件被相続人の贈与の意思表示
イ 平成10年各定期預金
 本件被相続人は、本件被相続人の妻Tの100日の法事を行った平成10年8月1日に、請求人らのうち請求人Nを除く請求人ら5人に対し、1人当たり1,000,000円ずつ、預金を贈与する旨の意思表示をした。
ロ 平成15年各定期預金及び平成16年各定期預金
 本件被相続人は、本件被相続人が請求人ら及びその家族全員を自宅に招いて会食をした平成15年8月13日に、請求人らに対し、平成15年及び平成16年にそれぞれ1人当たり各1,100,000円ずつ、預金を贈与する旨の意思表示をした。
(2) 本件被相続人の贈与の履行
 本件各定期預金は、本件被相続人から請求人らに対して贈与する意思表示が行われており、請求人らも本件被相続人から贈与があることを承知していたものの、請求人らに対し、本件各定期預金に係る各届出印鑑については交付がなく、本件各定期預金の一部については証書の交付もなく、請求人らが本件各定期預金を自由に運用したり処分できる状態にないため、本件各定期預金の預入れ及び証書の交付のみをもって、本件被相続人の生前中に贈与が履行されたものとはいえない。
(2) 請求人らの贈与の受諾
 上記(1)の本件被相続人の贈与の意思表示があった時に、請求人らは一堂に会しており、請求人らは当該意思表示に対して拒まず、「どうも」といった応答をして贈与を受諾した。
(3) 本件被相続人の贈与の履行
イ 請求人G及び請求人Nの各名義の定期預金
 本件各定期預金のうち、請求人G及び請求人Nの各名義の定期預金については、当該各定期預金の預入れの都度、当該各定期預金の証書を本件被相続人から請求人G及び請求人Nに手渡すことによって履行された。
ロ 請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金
 本件各定期預金のうち、請求人Kの名義の各定期預金については、平成16年1月末ころ、当該各定期預金の証書を本件被相続人からまとめて請求人Kに、また、請求人Lの名義の各定期預金については、同時期に当該各定期預金の証書を本件被相続人からまとめて請求人Lの妻を通じて請求人Lに、それぞれ手渡すことによって履行された。
ハ 請求人J及び請求人Mの各名義の定期預金
 本件各定期預金のうち、請求人J及び請求人Mの各名義の定期預金については、当該各定期預金の預入れの都度、当該各定期預金の証書を本件被相続人から請求人Gに手渡すことによって履行された。なお、請求人J及び請求人Mは、そのことを請求人Gから知らされており、請求人Gに当該各定期預金の証書を預けていたものである。
3 争点3 本件修正申告は無効であるか否か。
請求人J 原処分庁
 原処分庁は、税法に不知な請求人Jに修正申告の必要性を説明しないまま、原処分庁が一方的に作成した課税要件を満たしていない修正申告書を提示して、あたかもその提出が必要であるがごとく誤認を与え、死因贈与の事実がないにもかかわらず、死因贈与があったかのごとく欺いて、贈与により取得した本件各定期預金が相続財産であると錯誤に陥れたものであるから、本件修正申告は無効である。  請求人らは、本件各定期預金を死因贈与により取得したものであり、本件調査担当職員は、請求人Jに対し、本件各定期預金を相続税の課税財産として計上する必要がある旨説明した上で、修正申告をしょうようしたところ、請求人Jが署名押印して提出したものであり、本件修正申告の内容を理解していたものと認められるから、本件修正申告は無効となるものではない。

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