(平成24年10月5日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、租税特別措置法(平成21年法律第13号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第65条の8《特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例》第1項の規定による特例(以下「買換特例」という。)を適用し、特別勘定への繰入額として経理した金額を損金の額に算入したところ、原処分庁が、請求人が提出した確定申告書には買換特例の適用要件である財務省令で定める書類の添付がないことから、買換特例の適用はないとして原処分を行ったのに対し、請求人が、記載内容に不備はあるものの、当該確定申告書に「特定の資産の譲渡に伴う特別勘定を設けた場合の取得予定資産の明細書」を添付しているから、買換特例の適用がないとして行われた原処分は違法であるとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成19年12月1日から平成20年11月30日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に、所得金額を○○○○円及び納付すべき税額を○○○○円と記載して、法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成23年6月29日付で、所得金額を○○○○円及び納付すべき税額を○○○○円とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)並びに過少申告加算税の額を○○○○円とする賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として平成23年8月22日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年10月21日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成23年11月21日に審査請求をした。

(3) 関係法令の要旨

 別紙のとおり

(4) 基礎事実

 以下の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成12年8月11日に、a県b市d町○−○所在の土地(以下「本件土地」という。)及び同所在地にある鉄骨鉄筋コンクリート鉄骨造陸屋根地下1階付4階建の建物(以下「本件建物」という。)を売買により取得した。
ロ a県知事は、平成17年○月○日に、都市再開発法第11条《認可》第1項の規定に基づき、e地区市街地再開発組合(以下「本件再開発組合」という。)の設立を認可し、同日、本件再開発組合が成立した。
 なお、本件再開発組合が施行する第一種市街地再開発事業の施行地区の区域には、本件土地の所在地が含まれており、本件土地の所有者である請求人は、本件再開発組合の設立に先立ち、本件再開発組合の設立に同意する旨を記載した同意書をe地区市街地再開発準備組合事務局に提出していた。
 また、請求人は、当該同意書を提出するに当たり、同事務局から、要旨次の確認事項が記載された平成17年○月○日付の「念書」と題する書面の交付を受けていた。
(イ) 本件再開発組合設立認可後、本件再開発組合は、権利変換期日までの間に、請求人の営業継続のため、D社所有の土地(a県b市c町○−○)を確保するよう最大限の努力を行う。
(ロ) 万が一、上記(イ)の土地の確保ができない場合でも、本件再開発組合は、近隣で請求人の条件にかなった物件を手当てする。
(ハ) 現在の建物の利用状況等を踏まえ、本件再開発組合は、事務所、倉庫及び居宅として利用可能な規模の建物を手当てする。
(ニ) その他移転に伴って発生する動産移転費用や休業等による損失などに対して適正な補償(通常損失補償)を行う。
(ホ) 必要となる補償内容とその金額については、本件再開発組合設立後に専門家による詳細な調査を実施し、請求人と協議の上、決定(補償契約)する。
ハ 請求人は、本件再開発組合が施行するe地区第一種市街地再開発事業の事業計画において権利変換の対象とされた本件土地及び本件建物について、都市再開発法第71条《権利変換を希望しない旨の申出等》第1項の規定に基づき、権利の変換を希望せず、本件土地については金銭の給付を希望する旨、本件建物については移転を希望する旨を申し出ることを内容とする平成18年6月27日付の「金銭給付等希望申請書」を本件再開発組合に提出した。
ニ 本件再開発組合は、e地区第一種市街地再開発事業の権利変換計画について、平成19年3月○日にa県知事の認可を受け、同年4月3日に、請求人に対し、本件土地については権利変換期日に権利を失う旨、権利変換期日は平成19年4月○日である旨、本件土地については建築施設の部分(市街地再開発事業によって建築される建築物の一部及び当該建築物の存する敷地の共有持分をいう。)は与えられない旨及び失われる本件土地の価額は○○○○円である旨の権利変換処分(以下「本件権利変換処分」という。)に係る通知をした。
ホ 本件再開発組合は、都市再開発法第91条《補償金等》第1項の規定に基づき、本件土地に係る補償金○○○○円(以下「本件土地補償金」という。)を請求人に対し支払わなければならないところ、本件土地に根抵当権が設定されていたことから、同法第92条《補償金等の供託》第4項の規定に基づき、請求人に対する支払に代えて、平成19年4月○日に、請求人を被供託者として当該補償金の額に相当する金額をE法務局へ供託した。
ヘ 本件再開発組合は、都市再開発法第96条《土地の明渡し》第1項の規定に基づき、請求人に対して、平成19年4月25日付で、明渡しの期限を平成19年5月31日として、本件土地及び本件建物の明渡しを求める明渡処分(以下「本件明渡処分」という。)に係る通知をした。
ト 本件再開発組合は、請求人に支払うべき都市再開発法第97条《土地の明渡しに伴う損失補償》第1項に規定する土地の明渡し等に伴う損失の補償の額(以下「移転補償金等」という。)について、同条第2項の規定に従い、請求人と協議を進めたが、その協議が整わなかったことから、同条第3項の規定に基づき、移転補償金等を次に掲げる金額の合計額○○○○円(以下「本件移転補償金等」という。)とすることを定め、平成19年6月21日付で、請求人に対し、本件移転補償金等を支払う旨通知するとともに、本件移転補償金等の受領方法について同年6月30日を期限として回答を求め、同日までに連絡がない場合には、受領を拒否したものとしてE法務局に供託する旨を併せて通知した。
(イ) 建物移転 ○○○○円
(ロ) 移転雑費(移転に伴う法令手続費用等) ○○○○円
(ハ) その他(建物解体費用) ○○○○円
チ 本件再開発組合は、上記トの期限を経過しても、請求人から受領方法についての回答がなかったことから、平成19年8月2日に、都市再開発法第97条第5項により準用される同法第92条の規定により、請求人を被供託者として、本件移転補償金等に相当する金額○○○○円をE法務局へ供託した。
リ 請求人は、平成19年5月29日に、a県知事に対し、上記ロの「念書」と題する書面に記載された確認事項の内容を本件再開発組合が履行していないとして、本件再開発組合が行った本件権利変換処分及び本件明渡処分の取消しを求める各審査請求をした。
ヌ a県知事は、上記リの各審査請求について、平成19年11月○日付でいずれも棄却の裁決をした。
ル 本件再開発組合は、平成19年12月12日に、F地方裁判所に対して、請求人に本件土地の明渡しを求める仮処分命令の申立てをした。
ヲ 請求人は、平成19年12月25日に、上記ヌの各裁決に不服があるとして、本件権利変換処分及び本件明渡処分の取消しを求め、国土交通大臣に対しそれぞれ再審査請求をした。
ワ 平成20年1月28日に、請求人、本件建物の賃借人であるG社及び利害関係人であるH社(以下、これら3社を併せて「請求人ら」という。)と本件再開発組合との間で、要旨次のとおりの和解が成立した。
(イ) 請求人は、本件再開発組合に対し、本件建物を収去して本件土地を明け渡す義務があることを認める。
(ロ) 本件再開発組合は、請求人に対し、本件土地の明渡しを平成20年3月31日まで猶予し、請求人は、同日までに、下記(ニ)の和解金の残金○○○○円の支払を受けるのと引換えに、本件建物を収去して、本件再開発組合に本件土地を明け渡す。
(ハ) 請求人が本件建物の滅失登記に必要な書類を添えて本件再開発組合に本件土地を明け渡したときは、本件再開発組合は、請求人に対し、上記(ロ)の本件建物の収去義務を免除する。この場合、請求人は、本件再開発組合に対し、本件建物の収去費用として○○○○円の支払義務があることを認め、これを平成20年3月31日までに本件再開発組合に支払う。
(ニ) 本件再開発組合は、請求人らに対し、和解金として、平成20年2月4日までに○○○○円を、平成20年3月31日までに○○○○円を支払う。
(ホ) 本件再開発組合は、上記ルの仮処分命令の申立てを取り下げ、請求人は、上記ヲの各再審査請求を取り下げる。
カ 請求人は、平成20年1月30日に、上記チの供託金○○○○円の還付を受け、また、同年2月12日に、上記ホの供託金○○○○円の還付を受けた。
ヨ 請求人は、平成20年3月31日に、本件建物を収去せずに本件土地を本件再開発組合に明け渡した。なお、本件再開発組合は、請求人に支払義務が生じた上記ワの(ハ)の本件建物の収去費用○○○○円を、請求人らに支払う和解金の額と相殺した。
タ 請求人は、本件土地補償金、本件移転補償金等及び上記ワの(ニ)の和解金のうち請求人が受ける○○○○円に関し、それぞれ次の仕訳を行い、固定資産売却益として計上された○○○○円(貸方に固定資産売却益として計上した○○○○円と○○○○円の合計額から借方に固定資産売却益として計上した○○○○円と○○○○円の合計額を控除した金額)及びその他特別利益として計上された○○○○円(貸方にその他特別利益として計上した○○○○円と○○○○円の合計額から借方にその他特別利益として計上した○○○○円を控除した金額)を、本件事業年度の益金の額に算入した。

年月日 借方 貸方 摘要
20.1.30 普通預金 ○○○○円 固定資産売却益 ○○○○円 建物対価補償金
20.1.30 普通預金 ○○○○円 その他特別利益 ○○○○円 移転補償金
20.2.12 普通預金 ○○○○円 固定資産売却益 ○○○○円 土地対価補償金
20.3.31 固定資産売却益 ○○○○円 建物 ○○○○円 建物簿価
20.3.31 固定資産売却益 ○○○○円 土地 ○○○○円 土地簿価
20.7.31 未収入金 ○○○○円 その他特別利益 ○○○○円 G社(和解金)
20.7.31 その他特別利益 ○○○○円 未収入金 ○○○○円 G社(建物解体費相殺)

レ 請求人は、上記タの固定資産売却益に計上した金額に相当する○○○○円を特別損失(勘定科目は特別勘定繰入額)として計上し、本件事業年度の損金の額に算入した。
 なお、本件事業年度の法人税の確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)には、繰入限度額を○○○○円と記載した「別表13(4)(収用換地等に伴い取得した資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書)」(以下「申告書別表13(4)」という。)が添付されているとともに、繰入限度額を○○○○円と記載した「別表13(5)(特定の資産の買換えにより取得した資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書)」(以下「申告書別表13(5)」という。)並びに別表1及び別表2のとおり記載した「特定の資産の譲渡に伴う特別勘定を設けた場合の取得予定資産の明細書」(以下「本件取得予定資産明細書」という。)が添付されていた。
ソ 原処分庁は、本件確定申告書に買換特例の適用要件である措置法第65条の8第16項の規定により読み替えられた同法第65条の7《特定の資産の買換えの場合の課税の特例》第5項に規定する「取得をする見込みである資産につき財務省令で定める事項を記載した書類」(以下「適用要件書類」という。)の添付がないとして本件更正処分をしたところ、請求人は、本件確定申告書には本件取得予定資産明細書を添付しているから、買換特例の適用があり、申告書別表13(5)に記載した繰入限度額に相当する金額は損金の額に算入されるとして審査請求をした。
 なお、請求人は、上記レのとおり、本件確定申告書に、申告書別表13(5)の他、措置法第64条の2《収用等に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例》第1項の規定の適用を受ける場合に使用する申告書別表13(4)の添付も行っているが、本件土地補償金が、同項の規定の適用がある同法第64条《収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例》第1項第3号の2の補償金に該当しない(同法第64条の2第1項の規定の適用がない)ことについては、請求人と原処分庁との間に争いはない。

(5) 争点

 請求人が本件確定申告書に添付した本件取得予定資産明細書は、買換特例の適用が受けられる適用要件書類と認められるか否か。

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2 主張

(1) 原処分庁

 措置法第65条の8第16項の規定により読み替えられた同法第65条の7第5項の規定によれば、買換特例を適用する場合には、適用要件書類を確定申告書等に添付することが要件とされており、この適用要件書類は、租税特別措置法施行規則(平成23年財務省令第35号による改正前のもの。)第22条の7《特定の資産の買換えの場合等の課税の特例》第14項各号に掲げる事項を記載した書類をいうものと規定されているところ、請求人が本件確定申告書に添付した本件取得予定資産明細書には、「取得をする見込みである資産の構造及び取得予定年月日」及び「取得をする見込みである建物に係る規模」の記載がなく、また、「取得をする見込みである資産の所在地」についても「○○圏等の都市開発区域内」と記載されているだけであることからすれば、本件取得予定資産明細書は適用要件書類とは認められない。
 したがって、本件確定申告書には適用要件書類の添付がないのであるから、請求人に買換特例の適用はなく、本件更正処分は適法である。

(2) 請求人

 本件確定申告書に添付した本件取得予定資産明細書の記載内容には、一部記載漏れがあるものの、本件確定申告書を提出する段階では取得予定資産の具体的な物件の特定ができないため、やむを得ずこのような記載となったものである。適用要件書類は、確定申告段階における取得予定資産について、いつ、どこに、どのような物件等を予定しているかを求めているものであり、本件取得予定資産明細書に記載した資産と実際の取得資産とが相違しても、買換特例の適用上何ら影響を与えるものではないから、本件取得予定資産明細書の記載内容の一部に記載漏れがあったとしても、適用要件書類の添付がないということにはならない。
 そうすると、本件確定申告書には適用要件書類が添付されており、買換特例の適用は受けられるから、本件更正処分は違法である。

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3 判断

 請求人が本件土地補償金及び本件移転補償金等の収益計上時期を本件事業年度としたことについては、請求人と原処分庁との間に争いはないところであるが、本件においては、本件権利変換処分が本件事業年度前の平成19年4月○日に行われていることから、争点に関する審理に先立ち、本件土地補償金及び本件移転補償金等の収益計上時期について検討する。

(1) 本件土地補償金及び本件移転補償金等の収益計上時期について

イ 法令解釈
 法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第2項は、各事業年度の益金の額に算入すべき金額は、資産の販売等に係る当該事業年度の収益の額とする旨規定し、同条第4項は、当該事業年度の収益の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨規定している。そして、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準によれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する事業年度の益金の額に算入すべきものと解される。
 ところで、都市再開発法第87条《権利変換期日における権利の変換》第1項、第91条第1項、第96条第1項、同条第3項、第97条第1項及び同条第3項の各規定によれば、都市再開発法に定める権利変換処分(権利変換期日において権利を失い、かつ、当該権利に対応して、施設建築敷地等が与えられないものに限る。このイにおいて同じ。)が行われた場合には、施行者は、権利変換期日までに施行地区内の土地を有する者に対して補償金を支払う義務を負い、また、施行者が定めた明渡しの期限までに当該土地及び当該土地にある物件に関し権利を有する者に対して移転補償金等を支払う義務を負う一方で、当該土地は権利変換期日において新たに所有者となるべき者に帰属するとともに、当該土地又は当該土地にある物件を占有している者は、施行者が定めた明渡しの期限までに施行者に土地若しくは物件を引渡し又は物件を移転する義務を負うことになる。そうすると、権利変換処分を受けた施行地区内の土地及び当該土地にある物件を有する者においては、土地に対する補償金については権利変換期日に、移転補償金等については土地及び当該土地にある物件の明渡しの期限(明渡しの義務が生じることとなる日)に、それぞれ収入すべき権利が確定したものと解するのが相当である。
ロ 当てはめ
 本件土地補償金及び本件移転補償金等は、本件再開発組合が行った都市再開発法に定める権利変換処分に伴って本件再開発組合から支払われたものであるところ、上記1の(4)のニのとおり、本件権利変換処分に係る権利変換期日は平成19年4月○日であるから、同日に本件土地補償金について収入すべき権利が確定したというべきであり、また、上記1の(4)のヘのとおり、本件土地及び本件建物の明渡しの期限は平成19年5月31日とされていたものの、同チのとおり、同日までに本件再開発組合から本件移転補償金等が支払われず、平成19年8月2日に本件再開発組合によって供託の方法により支払われていることから、都市再開発法第96条第3項ただし書の規定により、同日に請求人に本件土地及び本件建物の明渡しの義務が生じることとなるので、同日に本件移転補償金等について収入すべき権利が確定したというべきである。
 そうすると、本件土地補償金及び本件移転補償金等は、いずれも平成18年12月1日から平成19年11月30日までの事業年度(以下「平成19年11月期」という。)において、収入すべき権利が確定したものであるから、平成19年11月期の益金の額に算入すべきである。
ハ 原処分庁が当審判所に回答した理由について
 原処分庁は、当審判所に対し、まる1請求人と本件再開発組合との間に本件権利変換処分及び本件明渡処分に関して争いがあり、その後の和解において本件土地の明渡しが平成20年3月31日まで猶予されていること、まる2請求人が本件土地補償金及び本件移転補償金等の支払を現実に受けた日は本件事業年度であること、まる3本件土地及び本件建物の支配が本件再開発組合に現実に移転した日は本件事業年度であることから、本件土地補償金及び本件移転補償金等は、本件事業年度の益金の額に算入される旨回答した。
 しかしながら、本件権利変換処分は、権限ある機関によって取り消されるまでは効力を有するものであり、請求人がa県知事に対する審査請求及び再審査請求により本件権利変換処分の取消しを求め、又は請求人と本件再開発組合との和解により、本件土地の明渡しの日が平成20年3月31日まで猶予されたとしても、それによって本件権利変換処分の効果に変動が生じるものではないから、上記ロの収入すべき権利が確定した日が変わるものではない。
 また、請求人が本件土地補償金及び本件移転補償金等の金銭を実際に収受したのは供託金の還付を受けた本件事業年度であるが、上記イ及びロのとおり、本件土地補償金の収入すべき権利は権利変換期日に確定したこと、及び本件移転補償金等の収入すべき権利は、本件再開発組合によって本件移転補償金等が支払われた日(本件土地及び本件建物の明渡しの義務が生じた日)に確定しており、このことは、本件移転補償金等が供託されている場合においても変わりはないことからすれば、いずれも平成19年11月期に収入すべき権利が確定したというべきであり、法人税法はその収入すべき権利が確定したときの属する事業年度の益金の額に算入する旨規定しているのであるから、供託金の還付の手続を行った日(実際の金銭の収受日)が収益計上時期となるものではない。
 以上のとおりであるから、原処分庁の理由はいずれも採用できない。

(2) 本件事業年度の所得金額の計算について

イ 本件土地補償金及び本件移転補償金等について
 請求人は、本件土地補償金及び本件移転補償金等を本件事業年度の益金の額に算入しているが、上記(1)のロのとおり、本件土地補償金(○○○○円)及び本件移転補償金等(○○○○円)の合計額○○○○円は、平成19年11月期の益金の額に算入すべきものであり、本件事業年度の益金の額に算入すべきではないから、本件事業年度の確定申告における所得金額から減算すべきである。
ロ 原価等について
 請求人は、本件土地の帳簿価額○○○○円、本件建物の帳簿価額○○○○円、本件建物の減価償却費○○○○円及び本件建物の収去費用○○○○円の合計額○○○○円を、本件事業年度の損金の額に算入しているが、当該合計額○○○○円は、平成19年11月期の本件土地及び本件建物の帳簿価額並びに本件建物の収去費用として損金の額に算入されるものであり、本件事業年度の損金の額に算入すべきではないから、本件事業年度の確定申告における所得金額に加算すべきである。
ハ 特別勘定繰入額について
 上記イのとおり、本件土地補償金及び本件移転補償金等は、本件事業年度の益金の額に算入すべきものではないから、請求人が損金の額に算入した特別勘定繰入額○○○○円は、買換特例の適用要件を判断するまでもなく、本件事業年度の損金の額に算入されないので、本件事業年度の確定申告における所得金額に○○○○円を加算すべきである。
ニ まとめ
 以上により、本件事業年度の所得金額及び納付すべき税額を算定すると、所得金額が○○○○円、納付すべき税額が○○○○円となり、これらの金額は、確定申告における所得金額及び納付すべき税額を下回ることとなる。

(3) 本件更正処分について

 上記(2)のとおり、本件事業年度の所得金額及び納付すべき税額は、確定申告における所得金額及び納付すべき税額を下回ることとなるから、本件更正処分はその全部を取り消すべきである。

(4) 本件賦課決定処分について

 上記(3)のとおり、本件更正処分は、その全部を取り消すべきであるから、本件賦課決定処分も、その全部を取り消すべきである。

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