収入金額

不動産所得

  1. 資産の譲渡
  2. 収入すべき時期
  3. 収入金額の計算
    1. 配当所得
    2. 不動産所得(5件)
    3. 事業所得
    4. 給与所得
    5. 譲渡所得
    6. 一時所得
    7. 雑所得

土地賃貸借契約の存否の争いに関する慰謝料名義の金員について、その実質は、貸地の権利金であると認定した事例

裁決事例集 No.25 - 11頁

 土地賃貸借契約の存否に係る裁判上の和解により請求人が受け取った慰謝料名義の金員は、賃借人が第一審で全面敗訴するなどしてきたにもかかわらず、賃貸人たる請求人が和解に応じて再び賃貸借契約を許諾したことから慰謝料名義としたもので、請求人がその契約に応諾をしなければ、取得できなかったものであるから、その実質は、貸地の権利金であると認められる。

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不動産の賃貸借契約に係る保証金のうち、契約解除に伴い返還を要しないこととされた金額は、不動産所得の収入金額であり、臨時所得に該当するとした事例

裁決事例集 No.27 - 63頁

 不動産の賃貸借契約に係る保証金のうち、当該契約の解除に伴い返還を要しないこととされた金額は、今後の家賃減収及び設備等の遊休陳腐化によって生ずる損失等を補てんするものであり、その実質は所得税法施行令第94条第1項第2号にいう不動産所得を生ずべき業務に係る収益補償類似のものであって、不動産所得の収入金額に該当するとともに、当該返還を要しないこととされた金額は、当該契約に基づく賃貸料月額とその契約解除後新たに締結した賃貸借契約に基づく賃貸料月額との差額の3年分以上であること等から、臨時所得に該当する。

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遅延損害金債務の債務免除益について、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当しないとして、所得税基本通達36−17《債務免除益の特例》は適用されないとした事例

裁決事例集 No.73 - 127頁

 所得税基本通達36−17にいう「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、単に債務超過の状態にあるだけでは足りず、債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても、調達ができないと認められる場合をいうものと解される。
 これを本件についてみると、請求人は、債務免除の前後において安定的な賃貸収入を稼得し、上記借入金の弁済に充てており、しかも同借入金以外の債務についても、債務免除の前後において弁済をしていた。そして、請求人の収入から借入金の返済額その他の支出額を控除した請求人の生活費として消費可能な所得は、総務省の家計調査における一世帯当たりの年間消費支出を上回っていることなどからすれば、債務免除の時点において、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないとは認められない。
 さらに、請求人の資産・負債の状況についてみても、請求人は、主要な資産である自宅及び賃貸用不動産を処分することなく保有しており、また、上記の請求人の支払能力からすれば、債務全額について弁済が不可能となるほどの著しい債務超過があったとはいえないから、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当するとは認められない。

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請求人が敷金を返還した事実は認められないから、当該敷金相当額は請求人の不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべきである旨の原処分庁の主張を排斥した事例

平成27年11月4日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人が賃貸物件の賃借人から受け取った敷金(本件敷金)を返還した事実は認められないこと等から、本件敷金相当額は請求人の不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべきものである旨主張する。
 しかしながら、本件敷金について、賃借人は、賃貸物件の賃料を滞納して請求人からその明渡し等を求められ、1賃貸借契約を合意解除すること、2所定の期限までに物件を明け渡すこと、3明渡し後の残置動産の処分には異議を申し立てないこと等を主な内容とし、他に何らの債権債務がないことを相互に確認する旨のいわゆる清算条項が付された和解に応じ、これにより請求人の賃借人に対する敷金返還債務は存在しないことが確認されているところ、当該和解の内容を考慮すると、本件敷金は、実質的には全て賃借人が負担すべき賃料、賃料相当損害金その他賃借人が負担すべき費用に充てられたものと認めることができ、本件敷金について、請求人に経済的利益はないから、総収入金額に算入すべきとはいえない。

《参照条文等》
 所得税法第26条、第36条

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請求人と同人が代表である法人との間で締結された請求人所有の土地の賃貸借契約について、契約書に記載された契約期間後まで契約書記載の賃料収入が維持されていたとは認められないとした事例

令和2年4月21日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人と同人が代表である法人との間で締結された請求人所有の土地の賃貸借契約について、当該契約に係る契約書に記載された契約期間後まで当該契約書記載の賃料収入が維持されていたとは認められず、請求人主張額の賃料収入があったと認めるのが相当であり、他方でこれを上回る賃料収入があったことを認めるに足る証拠はないとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人が同人が代表取締役である法人(本件法人)と過去に請求人所有の土地(本件土地)に係る賃貸借契約(本件契約)を締結し、本件契約に係る契約書に記載された契約期間(本件契約期間)後、本件法人が、本件土地を別法人に転貸する旨の契約を締結して賃料収入を得ていたことからすると、請求人と本件法人は本件契約を更新していたと推認することができるとして、請求人は、本件契約期間後も本件契約に定める賃料の金額を本件法人から賃料収入として得ていた旨主張する。
 しかしながら、本件契約期間後の期間における契約書等の客観的証拠はなく、本件契約期間後の期間における契約が、賃料も含めて本件契約の条件と同一内容で更新されたものであったと認めることはできない一方、請求人は本件法人から得た本件土地の賃料収入について、その具体的金額等を当審判所に対し証拠として提出していることからすると、少なくとも同金額の賃料収入があったと認めるのが相当であり、他方で、これを上回る賃料収入があったことを認めるに足る証拠はない。

《参照条文等》
 所得税法第36条第1項
 所得税法第150条第1項第1号
 消費税法第6条第1項

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁)
 最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)

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