差押え

債権の差押え

  1. 財産差押えの通則
  2. 各種財産に対する差押え
    1. 差押財産の選択
    2. 役員報酬の差押え
    3. 共済金支払請求権の差押え
    4. 不動産の差押え
    5. 無体財産権の差押え
    6. 延納担保財産の差押え
    7. 債権の差押え(2件)

利息制限法所定の制限利息を超える額の利息を支払ったことによる過払金返還請求権は、その利息を支払った時に発生し、既に発生した債権は弁済期が未到来であっても差押えの対象となること及び一身専属権であると認めることはできないとした事例

平成23年2月3日裁決

《ポイント》
 この事例は、利息制限法所定の制限利息の額を超える利息を支払ったことによる過払金返還請求権の発生時期や差押財産該当性について判断したものであり、先例となるものである。

《要旨》
 請求人は、本件の金銭消費貸借取引は、過払金充当合意のある基本契約に基づく一体の継続的取引であり、契約終了時までは過払金返還請求権は不確定な債権であって、債権の帰属も確定しないから、差押えの対象とすることができない旨主張するが、過払金返還請求権の法的性質が不当利得に基づく返還請求権である以上、過払金返還請求権が発生するのは、本件滞納者を借主、請求人を貸主とする金銭消費貸借契約に基づいて本件滞納者が利息制限法所定の制限利息を超える額の利息又は損害金を支払った時点、すなわち、各過払金発生時と解するのが相当であり、その時に本件滞納者が過払金返還請求権を取得すると解するのが相当であって、既に発生した債権は、弁済期が未到来であっても差押えの対象になるから、差押手続に違法はなく、したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 また、請求人は、過払金返還請求権は、取引終了時になって初めて行使することが可能であるところ、いつ取引を終了させるかは専ら借主たる本件滞納者の意思によるものであり、一身専属権と認められるから、差押禁止財産となる旨主張するが、過払金返還請求権は、身分法上の非財産的権利ではなく、通常の金銭債権であり、これを差し押さえることを禁止する規定はなく、同請求権の性質からこの差押えを禁止すべきとも解されないから、過払金返還請求権を一身専属権であると認めることはできず、したがって、この点に関しても請求人の主張には理由がない。

《参照条文等》
 国税徴収法第62条

《参考判決・裁決》
 最高裁平成18年1月13日第二小法廷判決(民集60巻1号1頁)

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営業譲渡契約による包括的な指名債権の移転を第三者に対抗するためには、民法第467条が規定する方法により、第三者対抗要件を具備する必要があるとした事例

平成23年5月18日裁決

《要旨》
 請求人は、原処分庁が、滞納者が第三債務者に対して債権を有するとして当該各債権(本件各債権)を差し押さえたことに対し、本件各債権は、請求人と滞納者との間の営業譲渡契約により、包括的に請求人に移転しており、このような包括的な移転については民法第467条《指名債権譲渡の対抗要件》の適用がないから、同条第2項が規定する第三者対抗要件を具備しなくても、本件各債権の移転を原処分庁に対抗することができる旨主張する。
 しかしながら、営業譲渡契約により譲受人に承継されることとなった指名債権について二重譲渡や差押えとの競合が生じることは通常の債権譲渡の場合と同様であることからすれば、営業譲渡契約による指名債権の移転を第三者に対抗するためには、民法第467条が規定する方法により第三者対抗要件を具備する必要があると解されるのであり、本件各債権の移転については、いずれも第三者対抗要件を具備していないから、請求人は、本件各債権の移転を原処分庁に対抗することはできない。

《参照条文等》
 民法第467条第2項

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