差押え

不動産の差押え

  1. 財産差押えの通則
  2. 各種財産に対する差押え
    1. 差押財産の選択
    2. 役員報酬の差押え
    3. 共済金支払請求権の差押え
    4. 不動産の差押え(3件)
    5. 無体財産権の差押え
    6. 延納担保財産の差押え
    7. 債権の差押え

中間省略登記の合意があっても、中間取得者に代位して原処分庁がした移転登記及び差押登記は適法であるとした事例

裁決事例集 No.12 - 47頁

 滞納者である請求人は本件田地等をAから取得し、それをBに譲渡したが、農地売買契約公正証書によれば、AはBの請求により仮登記に応ずる旨が規定されており、請求人とA、Bとの間に中間省略登記の合意が成立していることがうかがわれるが、中間省略登記の合意が成立している場合の中間者の登記請求権及び中間者の債権者による代位登記については、中間者は当然に登記請求権を失わず、中間者の債権者による代位登記は許されると解されているから、債権者たる原処分庁が請求人に代位してAから所有権移転登記承諾書の交付を受けて、停止条件付所有権移転仮登記を法務局出張所に嘱託の上、それについて差押処分を行ったことは適法である。

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中小企業を倒産させないことが国の方針であるとしても、租税の徴収手続において、中小企業の倒産を防止するためにその手続を制限する法令上の定めがない以上、これを裁量判断の基礎とすることができないとした事例

裁決事例集 No.77 - 593頁

 請求人は、本件差押処分は、中小企業を倒産させないとする国の方針と異なり不当な処分であると主張する。
 しかしながら、中小企業を倒産させないことが国の方針であるとしても、その方針に基づき、いかなる場合に差押処分ができないとするかについての法令の定めはなく、また、法は、納税者の権利及び利益の保護並びに生計及び事業の維持の観点から、滞納処分を一定の範囲で制限しているのであるから、滞納処分を制限した法令の定めに反しない差押処分を違法ということはできず、加えて、租税の徴収手続において、中小企業の倒産を防止するためにその手続を制限する法令の定めがない段階で、中小企業を倒産させないという観点のみから、法律に基づいて課された租税を裁量で徴収しないことは、かえって租税負担の公平を阻害することになり、さらに、差押処分によって、事業の継続が困難となる事実上の影響が反射的に生ずるとしても、その影響を考慮して差押処分をしないこととした場合には、国税債権を確実に徴収するために、徴収職員に対して早期に滞納者の財産を保全することを求めた国税徴収法第47条第1項第1号の趣旨が没却されることになる。そうすると、租税の徴収手続において、法令上の根拠のない中小企業の倒産を防止するという要素を裁量判断の基礎とすることはできないというべきである。

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宗教法人が所有し、主に葬儀会場及び法要会場等として使用されている建物の敷地が差押禁止財産に当たらないとした事例

裁決事例集 No.78 - 536頁

 宗教法人である請求人は、本件各土地は、宗教法人法第83条に規定する礼拝の用に供する建物の敷地に当たるから、差し押さえることができない旨主張する。
 しかしながら、本件各土地は、主に葬儀会場及び法要会場等として使用されている本件建物と一体として使用されていると認められるところ、たとえこれらが同法に規定する境内地に当たるとしても、仏像、位牌、神体、仏具、神具等で現に信仰又は礼拝の対象となっているものとは異なり、寺院の本堂、庫裏などと同様に、礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物とは認められないから、国税徴収法第75条第1項第7号に規定する「その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物」には当たらず、また、その他の差押禁止財産にも当たらない。さらに、宗教法人法第83条は、私法上の金銭債権に関する規定であるところ、国税債権は私法上の金銭債権ではないから、同条の規定は、本件差押処分には適用されない。

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