所得税法の特例

寄附金特別控除

  1. 不動産所得及び事業所得等の特例
  2. 譲渡所得の特例
  3. 株式等に係る譲渡所得等の特例
  4. 住宅借入金(取得)等特別控除
  5. 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  6. 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
  7. タックスヘイブン対策税制
  8. 寄附金特別控除(1件)

請求人が証券会社から受領した金員の所得税法上の所得区分は雑所得に該当し、また、請求人が支出した寄附金について税額控除規定と所得控除規定との部分的な選択適用は認められないとした事例(平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分・棄却・平成30年10月1日裁決)

平成30年10月1日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が証券会社から受領した金員は役務の対価としての性質を有するから、その所得税法上の所得区分は一時所得ではなく雑所得に該当し、また、請求人が支出した公益社団法人等に対する寄附金については、その一部を税額控除の対象とし、その一部を所得控除の対象とすることはできないとしたものである。

《要旨》
 請求人は、証券会社から受領した金員(証券会社が国債の購入者に現金を提供するというキャンペーン(本件キャンペーン)の景品として提供したもの。本件収入)について、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものとして、一時所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件収入は、偶発的に発生したものではなく、請求人が一定期間内に個人向け国債を証券会社から購入し、その後、当該証券会社の口座を一定期間維持するなど、本件キャンペーンが適用される所定の要件が満たされた結果、請求人に交付されたものであるから、役務の対価としての性質を有するものと認められ、所得税法第34条《一時所得》第1項に規定する「労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」には該当せず、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも該当しないものとして、雑所得に該当する。
 また、請求人は、租税特別措置法第41条の18の3《公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除》第1項の規定(本件税額控除規定)は、所得税法第78条《寄附金控除》第1項の規定(本件寄附金控除規定)の適用を受けるものを除いたものをその対象としていることから、請求人が支出した寄附金のうち、本件寄附金控除規定の適用を受ける寄附金は本件税額控除規定に規定する税額控除対象寄附金には当たらない旨主張する。
 しかしながら、個人がある年中に支出した本件税額控除規定第1号及び第2号の規定に該当する特定寄附金のうちから任意のものについて本件寄附金控除規定を適用し、その他の寄附金に本件税額控除規定を適用することはできないというべきであるところ、請求人は、その支出した一方の寄附金について本件税額控除規定を適用したものの他方については本件寄附金控除規定を適用し、租税特別措置法第41条の18の3第2項に規定する申告手続が行われていない。したがって、本件税額控除規定の適用を受けることはできない。

《参照条文等》
 所得税法第34条、第35条、第78条
 租税特別措置法第41条の18の3

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