(平成24年5月8日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、機械工具の卸売業(以下「本件事業」という。)及び農業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)の所得税並びに消費税及び地方消費税(以下、消費税及び地方消費税を併せて「消費税等」という。)について、本件事業に係る売上金額の計上漏れがあり、また、基準期間の課税売上高が5,000万円を超えることから、簡易課税制度の適用を受けることができないなどとして、各更正処分及び重加算税等の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該各更正処分の一部及び当該各賦課決定処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 請求人は、平成17年分ないし平成20年分の所得税の各修正申告に係る重加算税の各賦課決定処分、平成17年分ないし平成20年分の所得税並びに平成19年1月1日から平成19年12月31日まで、平成20年1月1日から平成20年12月31日まで及び平成21年1月1日から平成21年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成19年課税期間」、「平成20年課税期間」、「平成21年課税期間」といい、併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等の各更正処分(平成23年4月14日付でされた異議決定により、平成17年分、平成19年分及び平成20年分並びに平成19年課税期間の各更正処分については、その一部が取り消された後のもの。以下同じ。)、平成17年分ないし平成20年分の所得税及び平成18年1月1日から平成18年12月31日までの課税期間(以下「平成18年課税期間」という。)ないし平成20年課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分(平成23年4月14日付でされた異議決定により、平成17年分、平成19年分及び平成20年分の各賦課決定処分については、その一部が取り消された後のもの並びに平成19年課税期間及び平成20年課税期間の各賦課決定処分については、その一部の過少申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの。以下同じ。)を不服として、平成23年5月11日に審査請求をしているが、この審査請求に至る経緯は、別表1の「確定申告」欄から「異議決定1」欄まで及び別表2の「確定申告」欄から「異議決定」欄までのとおりである。
 その後、原処分庁が、平成23年6月7日付で、平成21年分(以下、平成17年分ないし平成20年分と併せて「本件各年分」という。)の所得税及び平成21年課税期間の消費税等の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分を行ったので、請求人は、同年8月4日に、これらを不服として異議申立てをしたところ、所得税については、同年10月3日付の異議決定を経た後、同月20日に、請求人がこれを不服として審査請求をしたので、当審判所は、国税通則法(以下「通則法」という。)第104条《併合審理等》第1項の規定により、当該審査請求を併合して審理し、消費税等については、異議審理庁が、同法第90条《他の審査請求に伴うみなす審査請求》第1項の規定により、同年8月12日に、当該異議申立てに係る異議申立書を当審判所に送付し、その旨請求人に対し通知したので、当該異議申立ては、同条第3項の規定により、同日に審査請求がされたものとみなされるから、当審判所は、同法第104条第1項の規定により、これを併合して審理する。

(3) 関係法令の要旨

イ 通則法
(イ) 第65条《過少申告加算税》
 第1項は、期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があったときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき通則法第35条第2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定し、また、第2項は、第1項の規定に該当する場合において、同項に規定する納付すべき税額がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と500,000円とのいずれか多い金額を超えるときは、同項の過少申告加算税の額は、同項の規定に関わらず、同項の規定により計算した金額に、当該超える部分に相当する税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする旨規定している。
(ロ) 第68条《重加算税》
 第1項は、通則法第65条第1項の規定に該当する場合(同条第5項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
ロ 所得税法第37条《必要経費》
 第1項は、その年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、事業所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする旨規定している。
ハ 消費税法
(イ) 第30条《仕入れに係る消費税額の控除》
 第1項は、事業者が、国内において行う課税仕入れについては、課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨(以下、当該控除を「仕入税額控除」という。)、また、第7項は、事業者が当該課税期間の仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合を除き、保存がない課税仕入れの税額については、仕入税額控除は適用しない旨、さらに、第8項第1号は、第7項に規定する帳簿とは、「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」、「課税仕入れを行った年月日」、「課税仕入れに係る資産又は役務の内容」及び「課税仕入れに係る支払対価の額」が記載されているものをいう旨、それぞれ規定している(以下、第8項第1号に規定する記載要件を「仕入税額控除帳簿記載要件」という。)。
(ロ) 第58条《帳簿の備付け等》
 本条は、事業者は、政令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれにその行った資産の譲渡等又は課税仕入れに関する事項を記録し、かつ、当該帳簿を保存しなければならない旨規定している。
(ハ) 第62条《当該職員の質問検査権》
 第1項は、事業者の納税地を所轄する税務署の当該職員は、消費税に関する調査について必要があるときは、同項第1号に掲げる者に質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる旨規定し、同号では、納税義務がある者を規定している。
ニ 消費税法施行令第50条《課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の保存期間等》
 第1項は、仕入税額控除の適用を受けようとする事業者は、消費税法第30条第7項に規定する帳簿及び請求書等を整理し、当該帳簿についてはその閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日、当該請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、これを納税地又はその取引に係る事務所等の所在地に保存しなければならない旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても認められる事実及び証拠によって容易に認められる事実である。
イ 請求人の事業内容
 請求人は、本件各年分において、本件事業のほか農業を営んでいる。
ロ 消費税簡易課税制度選択届出書の提出状況等
 請求人は、平成17年9月15日に、原処分庁に対し、簡易課税制度の適用を受けるため、適用開始課税期間を平成17年1月1日から平成17年12月31日まで、当該課税期間の基準期間を平成15年1月1日から平成15年12月31日まで、当該基準期間の課税売上高を○○○○円、事業内容を小売業及び農業と記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出したが、その後、簡易課税制度の適用を取りやめる旨の「消費税簡易課税選択不適用届出書」を提出していない。
ハ 本件事業に係る各収支内訳書の記載内容等
 請求人は、本件各年分の所得税について、それぞれ、本件事業に係る収支内訳書を確定申告書に添付して提出している。なお、当該各収支内訳書の記載内容等は、別表3のとおりであり、売上金額及び仕入金額の取引先ごとの内訳は記載されていない。
ニ 平成22年11月15日及び同月17日にされた所得税の各修正申告の内容
 請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査(以下「本件調査」という。)による、本件各年分において本件事業に係る売上金額の一部が総収入金額に算入されていないという指摘に基づき、本件各年分の総収入金額にそれぞれ当該各年分の総収入金額の計上漏れの金額を加算したものの、平成21年分については、現金で支払った仕入金額を必要経費に算入しておらず、平成17年分ないし平成20年分についても、必要経費に算入していない領収証等のない現金仕入れ(以下「本件各現金仕入れ」という。)があり、本件各現金仕入れの金額を考慮すると、当該各年分の調査後の総収入金額に、平成21年分の調査後の仕入金額に基づき請求人が算出した売上原価率81.72パーセントを乗じて算定した仕入金額が必要経費に算入されるべきであるとして、本件各年分の本件事業に係る所得金額を再計算して、本件各年分の所得税の各修正申告をした(以下「本件各修正申告」という。)
ホ 平成17年分ないし平成20年分の所得税の各更正処分(以下「本件所得税各更正処分1」という。)及び平成18年課税期間及び本件各課税期間の消費税等の各更正処分(以下「本件消費税等各更正処分1」という。)の内容
(イ) 所得税
 原処分庁は、平成17年分ないし平成20年分の所得税について、請求人から提出された仕入れに係る請求書等及び請求人名義の預金口座からの振込額から実額により仕入金額を算定して、当該実額により算定した仕入金額の計上漏れを売上原価として必要経費に算入し、請求人が当該各年分の所得税の確定申告の際に本件事業に係る必要経費に算入した売上原価以外の各必要経費の額については、いずれも妥当であったと判断したほか、借入金利子割引料が算入されていなかったとしてこれを加えて、当該各年分の必要経費の額を算定して本件所得税各更正処分1を行った。
(ロ) 消費税等
 原処分庁は、平成18年課税期間及び本件各課税期間における上記ニの総収入金額の計上漏れが課税標準額に計上されておらず、また、平成18年課税期間においては、本件事業に係る課税売上高が農業を含めた全体の課税売上高の75パーセント以上を占めており、本件事業が卸売業であることから、簡易課税制度のみなし仕入率は第1種事業に適用される90パーセントが採用されるべきであるとし、また、本件各課税期間においては、本件各課税期間の基準期間の各課税売上高がいずれも5,000万円を超えることから、簡易課税制度の適用を受けることができず、さらに、請求人は消費税法第30条第7項に規定する帳簿及び請求書等の保存をしていないので、本件各課税期間の仕入税額控除は認められないこととなり、本件各課税期間の仕入税額控除の額は零円となるとして、本件消費税等各更正処分1を行った。
ヘ 本件各修正申告のうち平成17年分ないし平成20年分の所得税の修正申告に係る重加算税の各賦課決定処分(以下「本件所得税各賦課決定処分1」という。)、本件所得税各更正処分1に係る重加算税の各賦課決定処分(以下「本件所得税各賦課決定処分2」という。)及び平成18年課税期間ないし平成20年課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分(以下「本件消費税等各賦課決定処分1」という。)の内容
 原処分庁は、平成17年分ないし平成20年分の各修正申告における上記ニの総収入金額の計上漏れは、いずれも通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するとして、本件所得税各賦課決定処分1を行い、また、平成18年課税期間ないし平成20年課税期間の消費税等の各更正処分における課税売上高の計上漏れ並びに帳簿及び請求書等の保存がなかったため仕入税額控除の額が零円となったことにより、請求人が過少申告となったことは、いずれも通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するとして、本件消費税等各賦課決定処分1を行った。
 そして、原処分庁は、平成17年分ないし平成20年分の所得税の各修正申告における本件各現金仕入れの売上原価としての必要経費への算入は、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するとして、本件所得税各賦課決定処分2を行った。
ト 平成23年4月14日付の異議決定により一部取り消された内容
(イ) 所得税
 異議審理庁は、異議申立てに係る調査の結果、平成17年分、平成19年分及び平成20年分の各更正処分に係る売上金額及び仕入金額の一部につき期間損益の計算に誤りがあったとして、当該各更正処分の一部を取り消し、これに伴い、当該各年分の重加算税の各賦課決定処分の一部を取り消した。
(ロ) 消費税等
 異議審理庁は、平成19年課税期間の課税標準額の一部の計算に誤りがあったとして、当該課税期間の消費税等の更正処分の一部を取り消し、これに伴い、平成19年課税期間の重加算税の賦課決定処分の一部を取り消した。また、平成19年課税期間及び平成20年課税期間の簡易課税制度の適用を受けることができなくなったことに基づき、仕入税額控除の額が減少した部分については、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装には該当しないとして、過少申告加算税相当額を超える部分につき当該各課税期間の重加算税の各賦課決定処分の一部を取り消した。
チ 平成23年6月7日付でされた平成21年分の所得税の更正処分(以下「本件所得税更正処分2」という。)及び平成21年課税期間の消費税等の更正処分(以下「本件消費税等更正処分2」という。)の内容
 原処分庁は、異議審理庁が把握した平成21年分の仕入金額に計上された取引先に係る売上金額が計上されていない事実に基づき、本件調査担当職員による再調査の結果、平成21年分の所得税の修正申告において計上されていない本件事業に係る売上金額が総収入金額に算入されていなかったとして、本件所得税更正処分2を行い、また、総収入金額に計上されていなかった上記売上金額は、課税標準額にも計上されていなかったとして、本件消費税等更正処分2を行った。
リ 本件所得税更正処分2に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件所得税各賦課決定処分3」という。)及び本件消費税等更正処分2に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件消費税等各賦課決定処分2」という。)の内容
 原処分庁は、上記チの再調査の結果、元々過少申告加算税の基礎とされていた平成21年分の本件事業に係る総収入金額に、更に計上漏れがあり、この計上漏れによって請求人が過少申告となった部分は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすとして、本件所得税各賦課決定処分3を行い、また、当該総収入金額は課税取引に該当し、元々過少申告加算税の基礎とされていた本件事業に係る課税標準額に、更に計上漏れがあり、請求人が過少申告となった部分は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすとして、本件消費税等各賦課決定処分2を行った(以下、上記ニの本件各修正申告における本件事業に係る総収入金額の計上漏れ、上記ホの本件所得税各更正処分1における本件事業に係る必要経費の過大計上及び本件消費税等各更正処分1における本件事業に係る課税標準額の計上漏れ、上記チの本件所得税更正処分2及び本件消費税等更正処分2における本件事業に係る総収入金額及び課税標準額の計上漏れを、併せて「本件計上漏れ等」という。)。

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2 争点

(1) 争点1 請求人が主張する算入漏れであった本件各現金仕入れその他の費用は、本件各年分の本件事業に係る必要経費に該当するか否か。
(2) 争点2 本件計上漏れ等は、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するか否か。
(3) 争点3 本件各課税期間の仕入税額控除に係る帳簿等の保存はあったか否か。

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3 主張

(1) 争点1 請求人が主張する算入漏れであった本件各現金仕入れその他の費用は、本件各年分の本件事業に係る必要経費に該当するか否か。

請求人 原処分庁
 算入漏れであった本件各現金仕入れその他の費用は、次のとおり、本件各年分の本件事業に係る必要経費に該当するから、本件各年分における事業所得に係る必要経費の額は、別表4の「請求人主張額」欄のとおりとなる。  請求人が主張する算入漏れであった本件各現金仕入れその他の費用は、次のとおり、本件各年分の本件事業に係る必要経費に該当しないから、本件各年分における事業所得に係る必要経費の額は、別表4の「原処分庁主張額」欄のとおり、原処分の額と同額となる。
イ 仕入金額
イ 仕入金額
(イ) 本件各現金仕入れ
 本件各年分の本件事業に係る仕入金額は、預金口座からの振込みによる仕入れ以外に別表5の各仕入先から仕入れた本件各現金仕入れがあり、その合計金額は別表4の「本件各現金仕入れ」欄の「請求人主張額」欄のとおりである。本件各現金仕入れがあることは、請求人と同規模、同業者の売上総利益率からみても、請求人の売上総利益率が高いことから明らかである。
(イ) 本件各現金仕入れ
 請求人は、本件各現金仕入れについて、領収証のない現金による仕入れがあることを主張するのみであり、仕入先等の具体的な説明及び資料の提示をしないので、本件各現金仕入れは必要経費に算入できない。
(ロ) 本件各現金仕入れ以外の仕入れ
 本件各現金仕入れ以外の仕入れのうち、別表6に記載の各仕入先の仕入金額に誤りがあり、誤りがある各仕入先の仕入金額の正しい金額を合計すると、別表4の「請求人が原処分庁主張額に誤りがあるとする仕入先」欄の「請求人主張額」欄のとおりとなる。
(ロ) 本件各現金仕入れ以外の仕入れ
 誤りがあるとする本件各現金仕入れ以外の仕入金額については、その算出根拠が不明である。
ロ 仕入金額以外の費用
 仕入金額以外の費用について、確定申告の際に必要経費に算入漏れがあるため、本件各年分における事業所得の仕入金額以外の必要経費の額に誤りがあり、誤りがある必要経費の正しい金額は、別表4の「租税公課」欄ないし「雑費」欄の「請求人主張額」欄のとおりとなる。
ロ 仕入金額以外の費用
 請求人が主張する算入漏れであった仕入金額以外の費用の額は、その算出根拠が不明であり、本件各年分における事業所得の仕入金額以外の必要経費の額について、原処分の額に誤りはない。

(2) 争点2 本件計上漏れ等は、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するか否か。

原処分庁 請求人
 次のとおり、本件計上漏れ等は、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当する。  次のとおり、本件計上漏れ等は、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当しない。
イ 所得税
 請求人には、次のとおり、真実の事業所得の金額を隠ぺいしたところに基づき確定申告書を提出していたことが認められ、当該各行為は、通則法第68条第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装」したことに該当する。
(イ) 本件各年分における売上げの全てについて納品書を作成した上、売上集計表を作成しているが、所得税の税額を過少に申告する目的で、一部の納品書については、売上集計表を作成する際、当該売上集計表に計上せず、また、意図的な集計除外をした。
(ロ) 確定申告の際に、売上集計表に基づかず、売上金額を除外するとともに、利益率を調整するため、それに見合う仕入金額についても除外した。
(ハ) 作成した売上集計表は、確定申告が終わった都度、破棄した。
イ 所得税
 売上集計表を作成したのは請求人の妻であり、請求人は売上集計表の作成には関わっておらず、また、売上代金の大部分は、請求人名義の預金口座に振込入金してもらうことで取引の事績を明らかにし、また、本件調査において、保存のある資料は全て提出しており、保存のない原始記録については、単に保存状況が悪かっただけで意図的に破棄したものではない。
ロ 消費税等
 平成18年課税期間及び本件各課税期間の消費税等についても、上記イと同様、その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき確定申告書を提出していることが認められる。
ロ 消費税等
 平成18年課税期間及び本件各課税期間の消費税等についても、上記イと同様、隠ぺい又は仮装の事実はない。

(3) 争点3 本件各課税期間の仕入税額控除に係る帳簿等の保存はあったか否か。

原処分庁 請求人
 次のとおり、本件各課税期間の仕入税額控除に係る帳簿等の保存はないと認められることから、本件各課税期間の仕入税額控除は認められない。
イ 平成19年課税期間
 本件調査担当職員が平成22年8月31日、同年9月1日、同月6日、同月9日及び同月16日に、請求人に対して、帳簿書類の提示を求めたが、請求人から帳簿の提示はなかった。したがって、平成19年課税期間において、消費税法第30条第7項に規定する帳簿の保存はないと認められる。
ロ 平成20年課税期間及び平成21年課税期間
 消費税法第30条第1項に規定する仕入税額控除の適用に当たっては、課税仕入れ等の控除に係る帳簿及び請求書等を保存していることが必要であり、かつ、当該帳簿には、まる1課税仕入れの相手方の氏名又は名称、まる2課税仕入れを行った年月日、まる3課税仕入れに係る資産又は役務の内容及びまる4第1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額が記載されている必要がある。
 しかしながら、請求人が本件調査担当職員に提示した資料のうち、必要経費に係る帳簿と認められるのは、平成20年分の各月の仕入先ごとの仕入金額を記載した「振込状況」と題する書面(以下、各月の仕入先ごとの仕入金額を記載したそれぞれの書面を「各月仕入集計表」といい、平成20年分の12枚の各月仕入集計表を併せて、「平成20年分の各月仕入集計表」という。)及び2009年(平成21年)1月から同年12月までの間の売上金額及び必要経費の項目別の月別及び年間の合計額が記載された「年間集計表」と題する書面(以下「本件21年分集計表」という。)であるところ、これらの帳簿はいずれも上記まる1ないしまる4の事項が記載されていないことから、仕入税額控除の要件を具備する帳簿であるとは認められない。
 本件調査の際に、本件調査担当職員から平成19年課税期間及び平成21年課税期間の各月仕入集計表の提示を求められておらず、当該各月仕入集計表は、単に請求書等を入れた封筒には入っていなかっただけであり、本件調査の際には保存されていた。
 また、仕入税額控除を受けるための要件は、消費税法第30条第7項の規定に基づく「帳簿及び請求書等の保存」であるところ、帳簿に記載する具体的方法は、個々の商品について詳細に記載することまでは求めておらず、1か月分をまとめた取引金額を記載して請求書等と一緒に保存しておけば足りるものであり、請求人は、本件各課税期間において、各月仕入集計表を作成、保存しており、当該各月仕入集計表には仕入商品の内容については記載していないが、月別に仕入先及び仕入金額を記載していることから当該各月仕入集計表は同条第8項に規定する帳簿に該当し、また、当該各月仕入集計表と共に請求書等を月別にまとめて封筒に入れて保存していることから、当該各月仕入集計表に記載があり、請求書等の保存がある部分について、仕入税額控除の適用が認められるべきである。

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4 判断

(1) 争点1(請求人が主張する算入漏れであった本件各現金仕入れその他の費用は、本件各年分の本件事業に係る必要経費に該当するか否か。)について

イ 法令解釈
 所得税法第37条第1項によれば、事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、その年における事業所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他事業所得を生ずべき業務について生じた費用の額であるところ、課税標準である各種所得の証明責任は原則として課税庁の側にあると解すべきであり、事業所得の金額が総収入金額から必要経費を控除する方法により算出されることに照らせば、収入金額についてはもちろん、原則として必要経費についても課税庁側に証明責任があると解されるが、申告納税制度の下における納税者は、税法の定めるところに従った正しい申告をする義務を負うとともに、税務調査に際しては、その所得金額認定の基となる取引の実態を最もよく知るものとして、資料を提示し説明する義務を負っていると解すべきであること、所得税法が、事業所得を生ずる納税者に記帳義務や帳簿・証ひょう書類等の保存義務(青色申告者につき同法第148条、同法施行規則第56条、第57条、第63条、事業所得等を生ずべき事業を行う一定範囲の白色申告者につき同法第231条の2、同法施行規則第101条から第103条まで)を課していること、必要経費が納税者にとって有利な事実であり、その証ひょう書類を取得して保存し、帳簿に計上することが極めて容易であることからすれば、上記の各義務を負担する納税者が、税務署長が合理的と認められる方法により把握した必要経費以外の必要経費が帳簿外に存在すると主張する場合には、当該納税者においてその存在及び価額を具体的に立証する必要があると解するのが相当である。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料、異議調査関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件調査担当職員に提示された本件事業に係る必要経費に関する資料及びその記載内容
A 本件調査担当職員に提示された本件事業に係る必要経費に関する資料は、保存されていたQ信用金庫○○支店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○)の預金通帳(以下「本件預金通帳」という。)及び請求書等以外には、当該必要経費に関する請求書等が入れられていた袋の中に入っていたまる1平成20年分の各月仕入集計表(下記(ハ)のAの各月仕入集計表と同じものである。)、まる2本件21年分集計表だけであった。
B 各月仕入集計表は、本件預金通帳に係る口座から振込みにより支払われた仕入金額がそれぞれ仕入先ごとに記載されたものであり、本件21年分集計表に記載された仕入金額は、その内訳として月別の仕入金額が記載されており、その月別の仕入金額と下記(ハ)のAの平成21年分の各月仕入集計表に記載された当該各月の仕入金額の合計金額とを照合すると、本件21年分集計表に記載された仕入金額は、別表7のとおり、1月、4月及び5月は平成21年分の各月仕入集計表に記載された当該各月の金額と一致し、それ以外の各月の金額は平成21年分の各月仕入集計表に記載された当該各月の金額と一致していないもののいずれも大きな金額の差異は認められないことから、主に本件預金通帳に係る口座からの振込みによる仕入金額であると推認され、年間の合計金額は平成21年分の各月仕入集計表の合計金額を下回り、かつ、平成21年分の所得税の確定申告書に添付された収支内訳書に記載された仕入金額を下回る。
C 本件21年分集計表に記載された仕入金額以外の各金額は、平成21年分の所得税の確定申告書に添付された収支内訳書に記載された仕入金額以外の各金額と一致するもの(売上収入、租税公課、荷造運賃、水道光熱費、旅費交通費、車両費、通信費及び接待交際費の各項目)、収支内訳書に記載された各金額を下回るもの(修繕費、消耗品費及び減価償却費)、上回るもの(損害保険料及び雑費)及び収支内訳書に記載がないもの(研究費及び医療費)があり、収支内訳書に記載された金額を上回るもの及び記載がないもの(損害保険料、雑費、研究費及び医療費)について、その理由が明らかとなる資料はない。
D 本件預金通帳に係る口座からの出金のうちに、振込みによる仕入れ以外の仕入れであることが明らかとなる出金はない。
(ロ) 請求人の当審判所に対する答述内容
A 請求人は、収支内訳書の記載に当たっては、売上金額及び仕入金額の計算を頭の中で行い、売上金額を適当に減額した上で、利益率が毎年同じくらいになるように仕入金額を減算し、また、仕入金額以外の費用については、段ボール箱に1年分の請求書等を入れて保管し、これらを科目別に集計していた。
B 本件事業に係る仕入れについては、基本的には仕入先からの請求書及び納品書があり、月別にまとめて封筒に入れて保存していた。なお、現金仕入れについては、領収証のないものがあり、量販店からの仕入れは領収証が発行されても保存がないものがある。また、倒産品や横流し品などの通称バッタ商品と呼ばれる商品は、領収証がないことを承知で現金で仕入れていた。領収証等の保存がない仕入れについては、今となっては証明する書類等を入手することはできない。
(ハ) 本件各現金仕入れの金額及び請求人が原処分庁主張額に誤りがあるとする仕入金額の請求人による立証内容等
A 請求人が当審判所に対し提出した、平成19年1月分から平成21年12月分までの各月仕入集計表(以下「本件各月仕入集計表」という。)の写しには、各月の仕入先ごとの仕入金額が記載されている。
 なお、本件各月仕入集計表に記載された金額を各年分別に合計した金額は、平成19年分ないし平成21年分の所得税の各確定申告書に添付された各収支内訳書に記載された金額とは一致せず、平成21年分が収支内訳書に記載された金額を下回り、平成19年分及び平成20年分がこれを上回るものの、本件各月仕入集計表に記載された仕入先は本件預金通帳及び請求書等に係る仕入先以外になく、本件預金通帳及び請求書等に基づき各年分別に集計した金額を下回る。
B 別表5の本件各現金仕入れの各金額について、請求人は、当審判所に対し、これを裏付ける資料を提出していない。
C 別表5の本件各現金仕入れの仕入先及び金額と上記(イ)のAの請求書等に係る仕入先及び金額は、いずれも一致しない。
D 別表6の各仕入先は、いずれも本件預金通帳及び請求書等に係る仕入先の中に含まれており、同表の各年分の「請求人主張額」欄の「合計」欄の金額は、本件預金通帳及び請求書等に係る金額を各年分別に合計した金額を上回る。
(ニ) 請求人が原処分庁主張額に誤りがあるとする別表4の仕入金額以外の費用の額の請求人による立証内容
A 別表4の誤りがあるとする仕入金額以外の費用の額について、請求人は、当審判所に対し、次のBに述べる別表8に記載した領収証等以外に、これを裏付ける資料を提出していない。
B 請求人は、別表8の仕入金額以外の費用を裏付ける領収証等として、平成17年分の仕入金額以外の費用の領収証等並びに平成18年分のL社からの領収証・口座振替のお知らせ及びM社からの事前案内書兼領収証を提出しているが、これらを当審判所が必要経費の項目ごとに振り分けた結果は、同表のとおりであり、平成17年分の荷造運賃、接待交際費、消耗品費及び車両費並びに平成18年分の通信費は、いずれも確定申告の金額を超えておらず、平成17年分の通信費は、確定申告の金額を超えているものの、いずれも請求人又は請求人の親族の電話料金であり、当該金額の中に、事業に従事していない親族の電話料金が含まれているなど、家事費又は家事関連費との区分が行われていない。
ハ 本件への当てはめ
 請求人は、算入漏れであった本件各現金仕入れその他の費用が必要経費に該当する旨主張するものの、請求人は上記ロの(ロ)のA及び別表3の「利益率」欄で認められるとおり、本件各年分の所得税の確定申告の際に、売上金額を適当に減額した上で、利益率がおおむね10パーセント前後となるよう仕入金額を調整していたことや同(ニ)のBのとおり家事費や家事関連費の区分も行われていないことが認められる。
 これに対し、原処分庁は、前記1の(4)のホの(イ)のとおり、請求人から提出された仕入れに係る請求書等及び本件預金通帳に係る口座からの振込額から実額により仕入金額を算定し、当該実額により算定した仕入金額の計上漏れを売上原価として必要経費に算入しており、一方、請求人が本件各年分の所得税の確定申告の際に本件事業に係る必要経費に算入した売上原価以外の各必要経費の額については、いずれも妥当であったと判断したほか、借入金利子割引料が算入されていなかったとしてこれを加えて、本件各年分の必要経費の額を算定しており、本件所得税各更正処分1及び本件所得税更正処分2において原処分庁が認定した必要経費の内容及び金額は合理的であると認められる。
 そうすると、上記イによれば、請求人は、原処分庁が認定した必要経費以外の必要経費が帳簿外に存在すると主張する場合には、その具体的内容を明らかにし、これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければ、これを必要経費に算入することができないというべきである。
 そこで、本件各年分の本件事業に係る必要経費の額について、以下検討する。
(イ) 売上原価
 原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、請求人が必要経費に算入されるとした仕入金額のうち、原処分庁が必要経費への算入を認めなかった仕入金額は、仕入先等の具体的な説明及び資料の提示をしなかった別表5の本件各現金仕入れの金額並びに請求人が原処分庁主張額に誤りがあるとする別表6の仕入金額と認められ、それらの金額を検証した結果は、次のA及びBのとおりであるから、本件各年分の本件事業に係る仕入金額は、別表9の「合計」欄のとおり、平成17年分が43,667,765円、平成18年分が66,918,072円、平成19年分が71,236,622円、平成20年分が62,834,582円、平成21年分が37,360,170円となる。
A 別表5の本件各現金仕入れの取引先及び金額
 請求人は、前記3の(1)の「請求人」欄のイの(イ)のとおり、本件各現金仕入れがあることは、請求人と同規模、同業者の売上総利益率からみても、請求人の売上総利益率が高いことから明らかである旨主張する。
 しかしながら、上記ロの(イ)のB及びD並びに(ハ)のA及びDのとおり、請求人が本件調査担当職員及び当審判所に対し提示又は提出した、仕入れに関する本件預金通帳、本件各月仕入集計表及び本件21年分集計表からは、振込みによる仕入れ以外である本件各現金仕入れを確認することはできず、請求人が主張する本件各現金仕入れの有無それ自体明らかでない。
 また、上記ロの(ハ)のとおり、請求人は、本件各現金仕入れについて、その存在及び価額を具体的に明らかにしていないということができる。
 以上によれば、本件各現金仕入れの金額を必要経費に算入することはできない。
B 請求人が原処分庁主張額に誤りがあるとする別表6の仕入金額
 請求人が原処分庁主張額に誤りがあるとする別表6の「請求人主張額」欄の仕入金額は、当審判所の調査の結果によれば、別表6の各欄の金額のとおりとなる。なお、別表6の審判所認定額が当事者双方の主張額と異なる理由は、別表9−付1のとおりである。また、別表4の「上記以外の仕入先」欄の本件各年分の仕入金額については、別表9−付2のとおり、原処分の額に誤りがあるので、同表の「審判所認定額」欄の金額が必要経費に算入される金額である。
(ロ) 売上原価以外の費用の額
 請求人は、別表4の「租税公課」欄ないし「雑費」欄の「請求人主張額」欄のとおりの額及び別表8の「経費科目」の各欄の額が必要経費に算入される旨主張するものの、租税公課ないし雑費の額について、請求人は、当審判所に対し、別表8に記載した領収証等以外に、その主張する支出を裏付ける資料を提出していない。そして、上記ロの(ニ)のとおり、別表8の各経費の支出を裏付ける領収証等は、その提出があるものの、平成17年分の荷造運賃、接待交際費、消耗品費及び車両費並びに平成18年分の通信費はいずれも確定申告書に添付された収支内訳書に記載された各金額を超えていないから、これによって、確定申告による必要経費の額に不足があることを明らかにしたことにはならず、また、平成17年分の通信費は確定申告書に添付された収支内訳書に記載された金額を超えているものの、通信費の内訳は請求人又は請求人の親族の電話の使用料金であり、当該金額の中に事業に従事していない親族の電話の使用料金が含まれているなど、家事費又は家事関連費との区分が行われておらず、その使用割合も明らかにされていないので、これにより当該電話が本件事業のみに使用されていたとは考え難い。
 そうすると、請求人は、別表4及び8の誤りがあるとする仕入金額以外の各科目の額について、その存在及び価額を具体的に明らかにしていないということができるので、別表4の「租税公課」欄ないし「雑費」欄の「請求人主張額」欄の金額が「原処分庁主張額」欄の金額を超える部分及び別表8の費用の各金額を必要経費に算入することはできない。
(ハ) まとめ
 上記(イ)及び(ロ)のとおりであるから、別表6の「審判所認定額」欄の各金額は、本件各年分の本件事業に係る必要経費と認められるが、別表4の「租税公課」欄ないし「雑費」欄の「請求人主張額」欄の金額が「原処分庁主張額」欄の金額を超える部分並びに別表5及び8の各金額は、本件各年分の本件事業に係る必要経費とは認められない。

(2) 争点2(本件計上漏れ等は、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するか否か。)について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件調査担当職員に提示された本件事業に係る売上金額に関する資料及びその内容等
A 本件調査担当職員に提示された本件事業に係る売上金額に関する資料は、次のとおりである。
(A) 売上げに係る領収証の控え(平成17年3月22日から同年12月2日まで、平成19年5月21日から平成20年9月30日まで及び平成21年8月20日から平成22年3月31日まで)
(B) N社への売上げに係る請求書の控え(平成19年1月から平成22年8月まで)
(C) P社への売上げに係る請求書の控え(平成19年11月から平成22年8月まで)
(D) 平成19年分ないし平成21年分の売上げに係る納品書の控え
(E) 平成19年分ないし平成21年分の売上げに係る合計請求書の控え
(F) 平成20年分の売上集計表
(G) 本件21年分集計表
(H) 請求人名義の使用中の預金通帳(本件預金通帳他)
B 上記Aの各資料のうち、平成20年分の売上集計表の各月の「合計」欄の金額を合計すると63,452,123円となるが、請求人が確定申告において総収入金額として申告した金額は○○○○円であることから、請求人は、平成20年分の総収入金額を、平成20年分の売上集計表に基づいて申告したものとは認められず、また、本件21年分集計表は、「売上収入」欄の年間の合計金額が請求人が確定申告において総収入金額として申告した金額と一致しているものの、上記(1)のロの(イ)のB及びCのとおり、仕入金額等が平成21年分の確定申告の金額と一致しないものがあり、前記1の(4)のハのとおり、本件各年分の確定申告書に添付された各収支内訳書には売上金額の取引先ごとの内訳は記載されておらず、請求人は本件事業に係る総収入金額等の算定の根拠を明らかにしていないから、請求人が、本件21年分集計表によって、平成21年分の総収入金額を申告したのかどうかは明らかでない。一方で、本件調査担当職員は、上記Aの各資料に基づき、請求人が売上先と認めたものの金額を抽出し、本件事業に係る総収入金額を算定している。
(ロ) 本件各年分の所得税の各確定申告書の「税理士」欄の記載内容
 本件各年分の所得税の各確定申告書の「税理士」欄には、e町役場税務課長の記名押印がされている。
(ハ) 請求人の本件調査担当職員に対する申述内容
A 請求人は、毎年、確定申告前に納品書の控えを集計して売上集計表を作成し、e町役場で申告した。その際の売上金額は、売上集計表の金額ではなく、根拠のない少ない金額で申告した。
B 売上集計表は、確定申告が終わるとその都度捨てているので、平成20年分の売上集計表以外のものは残っていない。平成20年分の売上集計表の各月の「合計」欄の金額を合計すると63,452,123円となるが、請求人が確定申告において総収入金額として申告した金額は○○○○円であり、両者の金額が異なるのは、請求人が売上金額を少なくして申告していたからである。
C 請求人は、正しい金額で申告しなければいけないことは分かっていたが、正しく申告すると所得税や消費税の負担が大きくなってしまうため、少しでも税金を少なくしたかった。
D 請求人は、仕入金額について、売上金額だけごまかすと目立ってしまうため、利益率が毎年同じくらいになるようにあえて仕入金額を調整し、別途集計しメモしていた金額と違う金額で申告していた。
(ニ) 請求人の当審判所に対する答述内容
A 請求人は、平成14年8月に開業したが、開業当初から日々の記帳をしなかった。請求人は、請求人自身に経理の知識がなく、現金で買ったものは現金で払えばそれで終わりという感覚であった。また、白色申告なので税務調査があるとは夢にも思っていなかった。平成16年頃、税務署の職員が消費税制度の説明のために請求人の自宅を訪れた際、当該職員に対し、帳簿を付けていない旨伝えたところ、当該職員から、簡易課税であれば帳簿を付けなくてもよいと言われたので、白色申告は帳簿の記帳義務がないと誤解した。
B 請求人は、売上先には全て、商品を納品したときに一緒に納品書を交付し、月ごとに納品書の控えを合計して、月に1回、請求書を交付している。
C 売上代金の大部分は小切手、振込みであり、まれに手形をもらうことがあるが、全て請求人名義の普通預金口座に入金する。現金でもらう場合はほとんどないが、現金、小切手及び手形を受け取った場合にはその場で領収証を交付し、相殺の場合にも領収証を交付する。
D 請求人は、妻に事業の状況を少しでも理解してもらいたいと考えて、売上げや仕入れなどをパソコンで集計させていた時期があったが、妻が作成した売上集計表を見て売上金額を確認したことはなく、確定申告をする際の収支内訳書は、通帳記録を見て、頭の中にある利益の数字から売上げと仕入れを適当に減額して作成した。本件調査の際に提示した平成20年分の売上集計表は請求人が作成したものでなく、本件調査において本件調査担当職員が把握するまで、その存在を知らなかった。
E 請求人は、開業以来、e町役場の税務課の職員が確定申告期に近くの公民館に出向いた際に、自宅で作成した収支内訳書の下書を持参して、それを税務課の職員に見せて確定申告をした。平成14年分と平成15年分の申告のときは、事業所得の申告が初めてであったので、収支内訳書の下書と請求書及び領収証等の全ての資料を持参したが、税務課の職員は収支内訳書以外の資料を確認することもなく確定申告書を作成して受け付け、申告の際は収支内訳書があればそれでよいと言ったので、翌年からは収支内訳書以外は持参する必要がなく、それがどんな内容のものでもいいのだと思った。
F 請求人は、確定申告の際には正しい申告をするつもりでいたが、周囲に無申告者や低所得者が多く、まともな申告をすれば高額な町民税が課税されるので、その負担を回避したいと考えて事実とは異なる申告をした。
ロ 本件各修正申告において本件事業に係る総収入金額に計上漏れがあったことが、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するか否かについて
 本件各修正申告における本件事業に係る総収入金額の計上漏れの金額は、上記(1)のロの(ロ)のAのとおり、請求人が、収支内訳書の売上金額及び仕入金額の計算を頭の中で行い、売上金額を適当に減額した旨答述しているように、請求人が適当に減額した売上金額で収支内訳書を作成し、その結果算出された過少な所得金額に基づき、確定申告をした結果生じたものであることが明らかであり、当該確定申告における本件事業に係る総収入金額自体、裏付けのない架空の金額というべきである。すなわち、請求人が適当に減額した売上金額で収支内訳書を作成し、その結果算出された過少な所得金額に基づき、確定申告をしたことによって、本件各修正申告において本件事業に係る総収入金額に計上漏れがあったことは、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当すると認められる。
ハ 本件所得税各更正処分1において本件事業に係る必要経費に過大計上があったことが、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するか否かについて
 上記ロのとおり、請求人が適当に減額した売上金額で収支内訳書を作成し、その結果算出された過少な所得金額に基づき、確定申告をしたことによって、本件各修正申告において本件事業に係る総収入金額に計上漏れがあったことは、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当すると認められる以上、本件各現金仕入れの金額の計上によって減少することとなった本件各修正申告における本件事業に係る総収入金額の計上漏れの金額が、当該確定申告において隠ぺい又は仮装されたものであることに変わりはなく、本件所得税各更正処分1において否認された本件各現金仕入れの金額がこれに相当するものであることは明らかであり、上記の本件各現金仕入れの金額は、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当すると認められる。
ニ 本件消費税等各更正処分1において本件事業に係る課税標準額に計上漏れがあったことが、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するか否かについて
 上記ロのとおり、本件各修正申告において本件事業に係る総収入金額に計上漏れがあったことは、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当すると認められるのであるから、本件消費税等各更正処分1において本件事業に係る課税標準額に計上漏れがあったことは、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当すると認められる。
ホ 本件所得税更正処分2及び本件消費税等更正処分2において本件事業に係る総収入金額及び課税標準額に計上漏れがあったことが、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するか否かについて
 上記ロ及びニのとおり、本件各修正申告における本件事業に係る総収入金額の計上漏れ及び本件消費税等各更正処分1における本件事業に係る課税標準額の計上漏れは、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するというべきであるから、元々、確定申告されていなかった本件所得税更正処分2及び本件消費税等更正処分2において計上漏れとされた総収入金額及び課税標準額は、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に基づくものに該当すると認められる。
ヘ 請求人の主張の当否
 請求人は、前記3の(2)の「請求人」欄のとおり、売上集計表を作成したのは請求人の妻であり、請求人は売上集計表の作成には関わっておらず、また、売上代金の大部分は、請求人名義の預金口座に振込入金してもらうことで取引の事績を明らかにし、また、本件調査において、保存のある資料は全て提出しており、保存のない原始記録については、単に保存状況が悪かっただけで意図的に破棄したものではなく、平成18年課税期間及び本件各課税期間の消費税等についても、上記と同様、隠ぺい又は仮装の事実はない旨主張する。
 確かに、請求人は、上記イの(ハ)の申述並びに同(ニ)及び上記(1)のロの(ロ)のAの答述のとおり、上記の売上集計表とは関係のない数字で確定申告をしたとしており、事実、上記イの(イ)のBのとおり、請求人は、平成20年分の総収入金額を、平成20年分の売上集計表に基づいて申告したものとは認められない。
 しかしながら、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の有無は、確定申告において過少申告の原因となった事実に基づいて判断されるものであり、上記ロのとおり、本件各修正申告における本件事業に係る総収入金額の計上漏れの金額は、請求人が適当に減額した売上金額で収支内訳書を作成し、その結果算出された過少な所得金額に基づき、確定申告をした結果生じたものであることが明らかである。よって、請求人が売上集計表を作成していないことをもって、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の有無が判断されるものではなく、売上代金の大部分が振込入金のため預金通帳に取引の事績が記入されたとしても、あるいは、本件調査において、保存のある資料を全て提出し、保存のなかったことが意図的に破棄されたことによるものでないとしても、請求人が事実を仮装したというべきであるとの判断が左右されるものではない。また、これは、上記ニ及びホの判断においても同様である。
 したがって、請求人の上記主張には、いずれも理由がない。

(3) 争点3(本件各課税期間の仕入税額控除に係る帳簿等の保存はあったか否か。)について

イ 法令解釈
 事業者が、仕入税額控除を行うためには、消費税法第30条第7項により、当該課税期間の仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等、すなわち、法定帳簿及び法定請求書等を保存することが要件とされているところ、当該保存が要件とされた趣旨は、資産の譲渡等が連鎖的に行われる中で、広く、かつ、薄く資産の譲渡等に課税するという消費税により適正な税収を確保するには、法定帳簿及び法定請求書等という確実な資料を保存させ、権限ある課税庁職員の必要あるときは法定帳簿及び法定請求書等を検査することが可能であるときに限り、仕入税額控除の適用ができることを明らかにしたものであり、このうち、法定帳簿については、その対象物が帳簿であること、すなわち、継続的に記帳され、日々の取引を証ひょう書類等の原始記録を基に記録されるものであることはもとより、仕入税額控除帳簿記載要件の各記載が必要であると解される。
 また、仕入税額控除の適用要件として帳簿及び請求書等の保存が求められていることからすれば、法定帳簿及び法定請求書等はそれぞれ独立して消費税法上の要件を満たし、その保存がなされている必要があると解するべきであり、したがって、例えば、ある課税仕入れについて、法定請求書等の保存があったとしても、法定記載事項を満たさない帳簿の保存しかない場合には、仕入税額控除の適用は認められないと解するのが相当である。
ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、帳簿書類の保存・記載状況について、次の事実が認められる。
 請求人は、本件事業に関する仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等として、上記(1)のロの(イ)のAのとおり、本件預金通帳、平成20年分の各月仕入集計表及び本件21年分集計表(以下、これらを併せて「本件預金通帳等」という。)並びに請求書等を、本件調査担当職員に提示しているものの、それ以外に仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等として提示したものはなく、本件預金通帳等は、課税仕入れを行った年月日、課税仕入れに係る資産又は役務の内容等が記載されておらず、仕入税額控除帳簿記載要件は満たしていない。
ハ 本件への当てはめ及び請求人の主張について
 上記イのとおり、仕入税額控除を行うためには、仕入税額控除に係る帳簿が継続的に記帳され、日々の取引を証ひょう書類等の原始記録を基に記録されるものであることはもとより、仕入税額控除帳簿記載要件の各記載が必要であると解されるところ、上記ロのとおり、本件事業に関する仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等として、本件預金通帳等及び請求書等を提示し、それ以外に仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等として提示したものはなく、請求人が本件調査担当職員に提示した本件預金通帳等は、仕入税額控除帳簿記載要件は満たしていない。また、仮に、請求人が主張するように、本件調査担当職員から平成19年課税期間及び平成21年課税期間の各月仕入集計表の提示を求められておらず、本件調査の際には保存されていたとしても、上記(1)のロの(ハ)のAのとおり、請求人が当審判所に対して提出した上記の各課税期間の各月仕入集計表には、各月の仕入先ごとの仕入金額が記載されているだけであるから、仕入税額控除帳簿記載要件を満たす法定帳簿に該当するとは認められない。
 これに対し、請求人は、前記3の(3)の「請求人」欄のとおり、帳簿に記載する具体的方法は、個々の商品について詳細に記載することまでは求めておらず、1か月分をまとめた取引金額を記載して請求書等と一緒に保存しておけば足りる旨主張するが、上記の解釈に反するものであり、請求人の独自の見解を述べるものであるから、請求人の上記主張を採用することはできない。
 以上のとおりであるから、本件各課税期間の仕入税額控除は認められない。

(4) 本件所得税各更正処分1及び本件所得税更正処分2について

イ 本件各年分の本件事業に係る所得金額
 本件各年分の本件事業に係る所得金額は、次の(イ)から(ロ)を控除した金額となり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円である。
(イ) 総収入金額
 総収入金額について、請求人及び原処分庁の双方に争いはないが、当審判所の調査の結果によれば、別表10のとおり、原処分庁主張額には誤りがあると認められるので、これを補正して総収入金額を改めて算定すると、別表11の「合計」欄のとおり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円である。
(ロ) 必要経費の額
 上記(1)のハの(ハ)のとおり、請求人が主張する別表6の「審判所認定額」欄の各金額は、本件各年分の本件事業に係る必要経費に算入することができるが、別表4の「租税公課」欄ないし「雑費」欄の「請求人主張額」欄の金額が「原処分庁主張額」欄の金額を超える部分並びに別表5及び8の各金額は、本件各年分の本件事業に係る必要経費に算入することはできず、別表4の「上記以外の仕入先」欄の仕入金額について、請求人及び原処分庁の双方に争いはないものの、当審判所の調査の結果によれば、別表9−付2のとおり誤りが認められるから、別表9のとおりとなり、事業専従者控除額はいずれも860,000円であるので、これらに基づいて必要経費の額を改めて算定すると、別表12の「必要経費の合計金額」欄及び「事業専従者控除額」欄の各金額の合計金額となり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円である。
ロ 農業所得の金額
 農業所得の金額は、いずれも請求人の申告額のとおりである。
ハ 総所得金額
 総所得金額は、上記イ及びロの合計額となり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円である。
ニ 納付すべき税額
 総所得金額は上記ハのとおりであり、所得控除の合計額は、請求人の申告額のとおり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円であるので、これらに基づき、本件各年分の所得税に係る納付すべき税額を算定すると、その金額は、別表13の「納付すべき税額」欄のとおり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円である。
ホ 結論
 本件各年分の納付すべき税額は、いずれも上記ニのとおりであり、このうち、平成17年分、平成19年分及び平成20年分の納付すべき税額は、いずれも当該各年分の更正処分の金額を下回り、平成18年分の納付すべき税額は、当該年分の更正処分の額を上回るので、本件所得税各更正処分1のうち、平成17年分、平成19年分及び平成20年分の各更正処分はいずれもその一部が取り消されるべきであるが、平成18年分の更正処分は適法であり、また、平成21年分の納付すべき税額は、本件所得税更正処分2の額を上回るので、本件所得税更正処分2も適法である。

(5) 本件所得税各賦課決定処分1、本件所得税各賦課決定処分2及び本件所得税各賦課決定処分3について

 上記(2)のロ、ハ及びホのとおり、本件各修正申告において本件事業に係る総収入金額に計上漏れがあったこと、本件所得税各更正処分1において本件事業に係る必要経費に過大計上があったこと、本件所得税更正処分2において本件事業に係る総収入金額に計上漏れがあったことは、いずれも、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当すると認められ、これら以外の事実に基づいて、請求人が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
 そして、上記(4)のホのとおり、本件所得税各更正処分1のうち、平成17年分、平成19年分及び平成20年分の各更正処分はいずれもその一部が取り消されるべきであるが、平成18年分の更正処分は適法であり、また、本件所得税更正処分2も適法である。
 以上に基づいて、本件所得税各賦課決定処分1、本件所得税各賦課決定処分2及び本件所得税各賦課決定処分3について検証した結果は、以下のとおりである。
イ 本件所得税各賦課決定処分1
 本件所得税各賦課決定処分1に係る重加算税の基礎となる税額は、本件各修正申告による納付すべき税額であり、当該税額に基づく重加算税の計算は、通則法第68条第1項の規定に従い、正しく行われている。
 したがって、本件所得税各賦課決定処分1は適法である。
ロ 本件所得税各賦課決定処分2
(イ) 平成17年分、平成19年分及び平成20年分
 平成17年分、平成19年分及び平成20年分の重加算税の基礎となる税額は、いずれもその一部が取り消されるべきであるから、これらに基づいて改めて重加算税の額を算定すると、別表14の1の「平成17年分」欄、「平成19年分」欄及び「平成20年分」欄のとおり、平成17年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円であり、当該各年分の重加算税の各賦課決定処分の額をいずれも下回る。
 したがって、本件所得税各賦課決定処分2のうち、平成17年分、平成19年分及び平成20年分の各賦課決定処分は、いずれもその一部が取り消されるべきである。
(ロ) 平成18年分
 平成18年分の重加算税の基礎となる税額は変動せず、本件所得税各更正処分1のうち平成18年分の更正処分による納付すべき税額に基づく重加算税の計算は、別表14の1の「平成18年分」欄のとおり、通則法第68条第1項の規定に従い、正しく行われている。
 したがって、本件所得税各賦課決定処分2のうち、平成18年分の賦課決定処分は適法である。
ハ 本件所得税各賦課決定処分3
 本件所得税各賦課決定処分3に係る加算税の基礎となる税額は変動せず、当該税額に基づく過少申告加算税及び重加算税の計算は、別表14の2のとおり、通則法第65条第1項及び第2項並びに第68条第1項の規定に従い、正しく行われている。
 したがって、本件所得税各賦課決定処分3は適法である。

(6) 本件消費税等各更正処分1及び本件消費税等更正処分2について

イ 本件消費税等各更正処分1
(イ) 課税標準額
 平成18年課税期間及び本件各課税期間の課税売上高は、別表15の1の「課税売上高」欄のとおり、本件各修正申告に係る本件事業及び農業の総収入金額すなわち課税売上高の合計額となり、これらに基づいて当該各課税期間の消費税の課税標準額(1,000円未満切捨て)を算定すると、同表の1の「課税標準額」欄のとおり、平成18年課税期間が○○○○円、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円である。
(ロ) 課税標準額に対する消費税額
 課税標準額に対する消費税額は、上記(イ)の課税標準額に100分の4を乗じて算定した金額となり、別表15の1の「消費税額」欄のとおり、平成18年課税期間が○○○○円、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円である。
(ハ) 仕入税額控除の額
 平成18年課税期間は、簡易課税制度の適用があり、本件事業に係る課税売上高が農業を含めた全体の課税売上高の75パーセント以上を占めており、本件事業の事業区分は原処分における事業区分どおり第1種事業(みなし仕入率90パーセント)であると認められるから、平成18年課税期間の仕入税額控除の額は、上記(ロ)の消費税額○○○○円に90パーセントを乗じた○○○○円であり、また、上記(3)のハのとおり、本件各課税期間の仕入税額控除は認められないから、本件各課税期間の仕入税額控除の額は、いずれも零円である。
(ニ) 納付すべき消費税等の額
 上記(ロ)及び(ハ)に基づき、平成18年課税期間及び本件各課税期間の納付すべき消費税等の額を改めて算定すると、別表15の1の「納付すべき消費税等の額」欄のとおり、平成18年課税期間が○○○○円、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円である。
(ホ) 結論
 平成18年課税期間及び本件各課税期間の納付すべき消費税等の額は、いずれも上記(ニ)のとおりであり、平成19年課税期間及び平成20年課税期間の各納付すべき消費税等の額は、いずれも当該各課税期間の更正処分の額を下回るから、本件消費税等各更正処分1のうち、平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等の各更正処分は、いずれもその一部が取り消されるべきであるが、平成21年課税期間の納付すべき消費税等の額は、当該課税期間の更正処分の額と同額であり、平成18年課税期間の納付すべき消費税等の額は、当該課税期間の更正処分の額を上回るので、平成18年課税期間及び平成21年課税期間の各更正処分はいずれも適法である。
ロ 本件消費税等更正処分2
(イ) 課税標準額
 平成21年課税期間の課税売上高は、別表15の2の「課税売上高」欄のとおり、本件所得税各更正処分2の平成21年分の本件事業に係る総収入金額すなわち課税売上高(上記(4)のイの(イ)のとおり、○○○○円である。)と農業に係る総収入金額すなわち課税売上高(請求人の申告額のとおり、○○○○円である。)の合計額○○○○円であり、これに基づいて当該課税期間の消費税の課税標準額(1,000円未満切捨て)を算定すると、同表の2の「課税標準額」欄のとおり、○○○○円である。
(ロ) 課税標準額に対する消費税額
 課税標準額に対する消費税額は、上記(イ)の課税標準額に100分の4を乗じて算定した金額となり、別表15の2の「消費税額」欄のとおり、○○○○円である。
(ハ) 仕入税額控除の額
 上記(3)のハのとおり、本件各課税期間の仕入税額控除は認められないから、平成21年課税期間の仕入税額控除の額は零円である。
(ニ) 納付すべき消費税等の額
 上記(ロ)及び(ハ)に基づき、平成21年課税期間の納付すべき消費税等の額を改めて算定すると、別表15の2の「納付すべき消費税等の額」欄のとおり、○○○○円である。
(ホ) 結論
 平成21年課税期間の納付すべき消費税等の額は、上記(ニ)のとおりであり、本件消費税等更正処分2の額を上回るので、本件消費税等更正処分2は適法である。

(7) 本件消費税等各賦課決定処分1及び本件消費税等各賦課決定処分2について

 上記(2)のニ及びホのとおり、本件消費税等各更正処分1及び本件消費税等更正処分2において本件事業に係る課税標準額に計上漏れがあったことは、いずれも通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当すると認められ、平成18年課税期間の確定申告における課税標準額の基礎となる金額に、課税取引に該当する農業所得の総収入金額が算入されていなかったこと、及び本件各課税期間において簡易課税制度の適用を受けることができなくなったことについて、いずれも重加算税の賦課要件を満たさないものの、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
 そして、上記(6)のイの(ホ)のとおり、本件消費税等各更正処分1のうち、平成19年課税期間及び平成20年課税期間の各更正処分はいずれもその一部が取り消されるべきであるが、平成18年課税期間及び平成21年課税期間の各更正処分は適法であり、同ロの(ホ)のとおり、本件消費税等更正処分2も適法である。
 以上に基づいて、本件消費税等各賦課決定処分1及び本件消費税等各賦課決定処分2について検証した結果は、以下のとおりである。
イ 本件消費税等各賦課決定処分1
(イ) 平成19年課税期間及び平成20年課税期間の各賦課決定処分
 平成19年課税期間及び平成20年課税期間の加算税の基礎となる各税額は、いずれもその一部が取り消されるべきであるから、これに基づいて改めて加算税の額をそれぞれ算定すると、別表16の1の「加算税の額」欄のとおり、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円であり、いずれも当該各課税期間の加算税の額を下回る。
 したがって、本件消費税等各賦課決定処分1のうち、平成19年課税期間及び平成20年課税期間の各賦課決定処分は、いずれもその一部が取り消されるべきである。
(ロ) 平成18年課税期間及び平成21年課税期間の各賦課決定処分
 平成18年課税期間及び平成21年課税期間の加算税の基礎となる各税額は、いずれも変動せず、当該各税額に基づく過少申告加算税及び重加算税の計算は、別表16の1の「平成18年課税期間」欄及び「平成21年課税期間」欄のとおり、通則法第65条第1項及び第2項、第68条第1項並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に従い、いずれも正しく行われている。
 したがって、本件消費税等各賦課決定処分1のうち、平成18年課税期間及び平成21年課税期間の各賦課決定処分は適法である。
ロ 本件消費税等各賦課決定処分2
 本件消費税等各賦課決定処分2に係る加算税の基礎となる税額は変動せず、当該税額に基づく過少申告加算税及び重加算税の計算は、別表16の2のとおり、通則法第65条第1項及び第2項、第68条第1項並びに地方税法附則第9条の4及び第9条の9第1項の規定に従い、正しく行われている。
 したがって、本件消費税等各賦課決定処分2は適法である。

(8) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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