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調査の範囲、方法
国税査察官の調査は、国税通則法第27条の「国税局の当該職員の調査」に該当しないとした事例
裁決事例集 No.3 - 1頁
国税通則法第27条にいう当該職員の調査とは、特定の国税につき調査権限を与えられている職員の調査をいうのであり、現行制度上これに該当する職員としては、国税庁及び各国税局に置かれる国税調査官のみであるから、国税査察官の調査は、同条にいう「国税局の当該職員の調査」には該当しない。
昭和46年8月9日裁決
国税犯則取締法に基づく調査に違法性はなく、この調査により収集した資料を基礎とした課税処分は適法であるとした事例
裁決事例集 No.39 - 2頁
課税処分の適否は、客観的な課税標準等の額が原処分において認定した額を上回るか否かにあること、また、行政手続において証拠能力の制限規定が設けられていないこと等に照らすと、仮に原処分の認定根拠とした資料の収集過程に違法があったとしても、その違法が刑罰法規に抵触するなど、著しい違法性を有する場合はともかく、そうでない場合には課税処分を取り消す必要はないと解すべきであるところ、本件資料は、収税官吏が裁判官の許可状を得て行った国税犯則取締法に基づく強制調査により収集したものであって、その強制調査に当たって行ったガラス戸の破壊や警察官の立合い・援助等の行為は、同法に基づく臨検・捜索・差押に際しての正当な行為であると認められ、その他当該収税官吏の行為が著しい違法性を有するとする証拠は認められない。
平成2年6月14日裁決
請求人に対する決定処分は、違法な調査に基づいて行われたものではないとした事例(平成21年分所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分並びに平成25年分所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成28年5月20日裁決)
《ポイント》
本事例は、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越しのみを求めるための申告書を提出できる期限は、その申告書を提出することができる日から5年を経過する日までとした申告指導等に誤りはないとしたものである。
《要旨》
請求人は、原処分庁の行った平成21年分の所得税の決定処分(本件決定処分)は、国税通則法(通則法)第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に規定する調査結果の説明を口頭で行っていないなど、調査終了の際の手続が不十分であること、
平成20年分の所得税につき、少なくとも法定申告期限から7年間は期限後申告が可能であったにもかかわらず、原処分庁が請求人に対して、法定申告期限から5年間が期限後申告書を提出できる期限であるとの指導(本件申告指導)をし、請求人は、不当な本件申告指導により、平成20年分の所得税の期限後申告書の提出を制限され、結果、平成21年分の所得税において、前年分の先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除が不可能な状態を強いられ、その後に本件決定処分がなされたという事情があることから、通則法第25条《決定》に基づく適法な調査によるものとはいえず、取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、上記の主張について、本件における調査手続には、課税処分を取り消すべき違法な点はなく、また、上記
の主張について、請求人の平成20年分の所得税の期限後申告書は、その申告書を提出できる日から5年を経過する日が提出できる期限であると解されるところ、本件申告指導を行った時点において、既に当該期限を経過していたのであるから、本件申告指導により平成20年分の期限後申告を行う権利を制限されたとする請求人の主張はその前提を欠く。したがって、本件決定処分は、通則法第25条に規定する「調査」に基づいて適法に行われたものであり、取り消すべき違法はない。
《参照条文等》
租税特別措置法第41条の15
《参考判決・裁決》
富山地裁平成19年3月14日判決(税資257号順号10655)
名古屋高裁金沢支部平成19年9月12日判決(税資257号順号10773)
水戸地裁平成21年2月17日判決(税資259号順号11142)
平成28年5月20日裁決