納付義務の確定

納税申告

  1. 納付すべき税額の確定方式
  2. 納税申告(9件)
  3. 更正の請求
  4. 更正又は決定

関与税理士が無断で作成、提出した確定申告書は無効である旨の主張を退けた事例

裁決事例集 No.19 - 1頁

 請求人は、確定申告書につき関与税理士が無断で作成し、提出したものであると主張するが、[1]当該関与税理士は、請求人から法人設立以来引き続き各事業年度の決算書及び法人税申告書の作成等を委任されている者であること、[2]当該関与税理士は、代表者に対し、当該確定申告書及びその申告書に係る決算書について説明し、一応納得させた上で、当該確定申告書を提出していること、[3]当該関与税理士は、当該確定申告書を提出した月の顧問料及び決算報酬を受領していること、[4]当該確定申告書に係る税額の全部を納付していること及び[5]更正の請求に際し、当該確定申告書について、特に虚偽の申告である旨の主張をしていないこと等の事実から、当該確定申告書は、請求人の意思に基づいて提出したものと認めるのが相当である。

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納税者の妻が提出した修正申告書は適法であるとした事例

裁決事例集 No.32 - 1頁

 請求人は帳簿の記帳及び決算、預貯金の管理等の経理事務を長年にわたって妻に委任しており、経理事務には関与していないので、所得税調査に基づく修正申告のしょうようの際、調査担当者からの在宅要請にもかかわらず、請求人は、事業所得の計算根基については私よりむしろ妻の方が熟知しており、妻に話をしてほしい旨を言って外出し、その場に同席せず、妻も私が話を聞く旨申し立てた。
 そこで、調査担当者は、調査した結果を妻に十分説明して修正申告書の提出方のしょうようを行ったところ、妻はそれに応じて署名押印し修正申告書を提出している。
 これらの事実を総合判断すると、修正申告書は、妻が提出したものであるが、妻は請求人の経理及び税務上の全般の事務の処理について請求人から任されている者であって、請求人に代わって作成、提出したものと認められるから、当該修正申告書を無効とする理由はなく、請求人の主張には理由がない。

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租税特別措置法第35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受ける旨の確定申告書を提出した者が、その後に、住宅取得等特別控除の適用を受けるため、居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けない旨の修正申告書を提出することは認められないとした事例

裁決事例集 No.50 - 13頁

 請求人は、租税特別措置法第35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除を適用して確定申告書を提出したのは錯誤に基づくものであり、当該特別控除の適用を受けないこととした修正申告書は国税通則法第19条により適法であるから、翌年分の住宅取得等特別控除の適用を認めるべきである旨主張するが、請求人の居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受ける旨記載した確定申告書は、当該特別控除の適用要件を具備した適法なものであるから、その後において、修正申告書によってその適用を受けない旨に変更することはできず、当該確定申告書の提出に錯誤は認められないから、翌年分については、租税特別措置法第41条第6項の規定により住宅取得等特別控除の適用はない。

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本件修正申告書は、請求人がその内容を十分認識して提出したものであり無効ではないとした事例

裁決事例集 No.62 - 1頁

 請求人は、本件修正申告書は、原処分庁の度重なるしょうようによって、本件工事が個人的取引であると認識しつつも、請求人の無知によって誤って提出したものであるから無効である旨主張する。
 しかしながら、本件工事に係る請求人の前代表者は本件調査に立ち会っており、また、修正申告のしょうようの際、原処分庁は現代表者と前代表者が同席しているところで、本件工事に係る売上及び原価が計上漏れとなっていることを指摘している事実が認められる。
 さらに、本件修正申告書は調査終了後相当期間経過した日後に提出されていることから、請求人において十分に検討の上提出したものと認められる。
 以上のとおり、請求人は、本件工事に係る売上及び原価が請求人に帰属することを十分認識して本件修正申告書を提出したものと認めるのが相当であり、本件修正申告書を提出したことについて明白かつ重大な錯誤があるとは認められないから、本件修正申告書は無効ではない。

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本件修正申告書は、原処分庁があらかじめ用意した修正申告書に押印を強要され、わずか30分程度の間に提出したもので、任意の意思に基づくものではない旨の請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.65 - 1頁

 請求人は、本件各修正申告書は、原処分庁があらかじめ用意していた請求人の住所・氏名が記入された修正申告書に押印を強要され、わずか30分程度の間に提出したもので、請求人の任意の意思に基づくものではないことから、当該修正申告は無効である旨主張する。
 しかしながら、調査担当職員の答述は、各認定事実から見ても、十分信ぴょう性が認められるから、請求人が調査担当職員の強要により本件各修正申告書を提出したという事実は認められず、請求人自らが当該修正申告書に署名、押印して、それを提出したと認めるのが相当である。また、これに反する証拠も認められないことから、請求人の主張は採用できない。したがって、請求人の本件各修正申告に係る納付すべき税額は、税法上有効に確定していることが認められる。

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請求人は、確定申告に係る一連の手続について兄に包括的に委任していたというべきであり、その委任の効力は、その後の修正申告にも及ぶと解すべきであるから、当該確定申告及び当該修正申告は有効と認められるとした事例

平成22年8月23日裁決

 納税申告は、原則として納税義務者本人が申告書を提出して行うこととされているから、納税義務者以外の者が、本人の承諾なく勝手に納税義務者の申告書を作成し、提出した場合には、その納税申告は無効であると解される。もっとも、納税義務者以外の者が申告書を作成し提出した場合であっても、その者が、納税義務者から明示又は黙示に当該申告行為をする権限を与えられている場合は、その納税申告は有効であると解される。
 請求人は、あらかじめ兄が用意し所得金額等が記載された本件確定申告書に自ら署名しており、本件確定申告書には、署名欄のすぐ上に、大きく「平成9年分の所得税の確定申告書」と印刷されていること、請求人が当時20歳で、意思能力等に問題があったことを窺わせる証拠がなく、請求人は、調査担当職員に、本件確定申告書は、自身で住所と名前を記載し提出した旨を説明していること、還付金の振込先として説明した口座が、還付金が振り込まれた口座と一致していることに照らすと、請求人は、自己が署名した書類が、所得税の確定申告書であることを認識していたものと認められ、また、本件確定申告書には、還付金の受取場所(振込先)として、請求人名義の口座が記載されていたと推認することができ、請求人は、その記載も認識していたと認めることができる。そして、請求人は、これら本件確定申告書の記載内容及びこれを提出することについて、何ら異議を述べていないことなどに照らすと、請求人は、本件確定申告に係る一連の手続について、兄に包括的に委任していたというべきであり、上記委任の効力は、その後の、本件確定申告の内容を是正する手続である本件修正申告にも及ぶと解すべきである。そうすると、請求人の兄が、本件確定申告書を提出し、また、本件修正申告書に請求人の氏名等を記載して提出したとしても、本件確定申告及び本件修正申告はいずれも有効というべきである。

《参照条文等》
 国税通則法第17条第1項
 民法第99条

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共同して提出する申告書に署名した者又は記名された者に押印がない場合においては、その申告書がその提出時点において、署名した者又は記名された者の申告の意思に基づいて提出されたものと認められるか否かによって、押印のない者の申告の効力を判断すべきであるとした事例

平成22年9月14日裁決

 請求人は、請求人が法定申告期限までに申告の意思を有していたことを前提として、他の共同相続人が請求人の氏名を記名して提出した相続税の申告書(本件第1申告書)は、請求人の押印はされていないが、請求人の納税申告書としての形式的な記載要件を満たしているのであるから、請求人の申告の意思に基づく有効な申告書である旨主張する。
 しかしながら、本件第1申告書が請求人の申告書であるといい得るためには、単に請求人が申告の意思を有していたのみでは足りず、本件第1申告書が申告の意思に基づいて提出されたものであるか否かの観点から判断すべきところ、本件第1申告書を作成した税理士は、他の共同相続人の依頼に基づきこれを作成し提出したものであり、その作成に関し請求人から依頼されていないこと及び請求人が、法定申告期限内に相続税の申告ができなかった理由を記載した書面を原処分庁に提出していることなどからすれば、本件第1申告書は請求人の意思に基づいて提出されたものとはいえない。

《参照条文等》
 国税通則法第124条
 相続税法第27条第5項
 相続税法施行令第7条

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調査手続の違法は修正申告の効果に影響を及ぼさないと判断した事例(1平成20年分、平成21年分及び平成24年分の所得税に係る重加算税並びに平成19年分の所得税に係る過少申告加算税並びに平21.1.1〜平21.12.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分、2平成18年分〜平成21年分、平成23年分及び平成24年分の所得税の各修正申告並びに平18.1.1〜平18.12.31及び平21.1.1〜平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各期限後申告・1棄却、2却下・平成27年3月26日裁決)

平成27年3月26日裁決

 請求人は、原処分に係る調査担当職員(本件調査担当職員)が行った調査につき、1国税通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項に規定する調査対象期間の説明並びに同法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項及び第3項に規定する調査結果の内容の説明や法的効果の教示がなかったことから調査手続に違法があったこと及び2調査対象期間の説明及び調査結果の内容の説明がなかったため、どのような内容か分からない修正申告書及び期限後申告書(本件各修正申告書等)に署名押印して修正申告及び期限後申告(本件各修正申告等)をしたものであり錯誤があったことから、本件各修正申告等は調査手続の違法又は錯誤により無効である旨主張する。
 しかしながら、そもそも調査手続の違法は、それのみを理由として修正申告及び期限後申告の有効性に影響を及ぼすものではないと解されるから、たとえ調査手続に違法があったとしてもそのことのみで修正申告及び期限後申告が無効となることはない。また、本件各修正申告書等には、請求人の署名押印がされていることから、本件各修正申告等が請求人の意思に基づいて行われたとの推定ができるところ、1修正申告書及び期限後申告書は具体的な納税義務を発生させるものであるから、内容を確認しないで署名押印をすることは通常あり得ないこと、2本件調査担当職員は調査期間中に調査対象となる税目と年分を請求人に伝えていると認められるから、請求人は調査対象期間を認識していたこと並びに3本件調査担当職員は請求人に調査結果の内容の説明を行ったと認められるから、請求人は調査結果の内容を知っていたと認められ、これらを総合すると、請求人は、税目、年分を認識した上で本件各修正申告書等に署名押印し提出したと認められるのであって、錯誤があったとは認められず、本件各修正申告等は無効とならない。

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押印が漏れている相続税の申告書について、納税申告書としての効力が認められるとした事例(平成25年1月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・全部取消し・平成27年4月1日裁決)

平成27年4月1日裁決

《ポイント》

 本事例は、納税申告書としての他の要件を具備している限り、押印がないことのみをもって納税申告書としての効力がないものとはいえないとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人が法定申告期限内に提出した相続税の申告書(本件申告書)について、請求人の押印がなく国税通則法(通則法)第124条《書類提出者の氏名及び住所の記載等》第2項の規定を充足していないこと、加えて、本件申告書の書面等から請求人の申告の意思を認めることができず本件申告書が有効なものと認められないことから、通則法第17条《期限内申告》に規定する期限内申告書には該当しない旨主張する。
 しかしながら、納税申告書の効力については、押印がない場合であっても、単なる押印漏れであることも考えられるので、納税申告書として他の要件を具備している限り、押印がないことのみをもってその効力がないものとはいえず、このような場合には、当該納税申告書が押印のない者の申告の意思に基づいて提出されたものと認められるか否かによって、その効力を判断すべきである。そして、申告の意思に基づいて提出されたものかどうかの判断に当たっては、納税申告書の作成経緯や原処分庁への納税申告書の提出状況及び納税の状況等を総合考慮すべきと考える。これを本件についてみると、1本件申告書は遺産分割協議で成立した内容を基に共同相続人の総意により作成されたものであること、2請求人は共同相続人である長女に本件申告書の原処分庁への提出を任せ、長女が現に提出したものであること、3請求人が申告納税義務を認識し相続税を納期限内に全額納付したことなどがそれぞれ認められることから、本件申告書は、請求人の意思に基づいて提出されたものと認めるのが相当である。また、本件申告書は、押印箇所を除き納税申告書としての要件を具備しているものと認められる。したがって、本件申告書に請求人の押印のないことについては、単なる押印漏れにすぎず、本件申告書の納税申告書としての効力には影響しないというべきであるから、本件申告書は、通則法第17条に規定する請求人の期限内申告書に該当する。

《参照条文等》

 国税通則法第124条
 相続税法施行規則第13条第1項

《参考判決・裁決》
 平成22年9月14日裁決(裁決事例集No.80)

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