不服審査

異議申立ての手続

  1. 国税に関する法律に基づく処分(国税還付金の振込通知)
  2. 請求の利益
  3. 不服申立てと国税の徴収
  4. 異議申立ての前置、手続(6件)
  5. 不服申立期間(異議申立期間の不遵守)
  6. 調査審理の範囲
  7. 裁決の拘束力

督促後に納税地の異動があった場合の異議申立ては当該督促をした税務署長に対してなすべきであるとした事例

裁決事例集 No.35 - 6頁

 督促についての異議申立ては、当該処分後に納税地の異動があった場合においても、当該督促をした税務署長に対してしなければならず、当該税務署長に対してなされていない本件異議申立ては不適法であるから、本件審査請求も不適法である。

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滞納処分があったことを知った日は原処分庁の主張する日より後であるから異議申立期間を徒過していないとした事例

裁決事例集 No.45 - 65頁

 原処分庁は、滞納処分があったことを請求人が知った日は、納税者が請求人に対し納税資金の金策を依頼した日であると主張するが、金策の依頼をした事実は認められるものの、この事実をもって滞納処分を知らしめたことにはならない。
 そうすると、原処分庁の担当職員が請求人と面接し不服申立ての教示をした事実からみて、その面接日の2、3日前に納税者からの連絡により滞納処分があったことを知ったとする請求人の答述を採用するのが相当であるから、その日から2月以内になされた異議申立ては期間を徒過していない。

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請求人の異議申立ては、不服申立期間の経過後になされた不適法なものであるから、国税通則法第75条第3項の規定により、本件審査請求も不適法であるとした事例

裁決事例集 No.56 - 92頁

 請求人は、原処分庁に提出した異議申立ては、国税通則法第77条第1項に定める不服申立期間を経過しているが、同条第4項ただし書で定める正当な理由に該当する旨主張する。
 しかしながら、請求人は、平成6年10月16日に原処分に係る通知を受けていることが認められ、当該処分に係る通知を受けた日の翌日から起算して2月を経過する日(平成6年12月16日)が、処分のあった日の翌日から起算して1年を経過する日(平成7年10月16日)以前に到来していることからすると、国税通則法第77条第4項の規定が適用される余地はなく、本件の異議申立てが適法なものと認められる不服申立期間は、「天災その他やむを得ない理由」がない限り、同条第1項の定めにより、当該処分に係る通知を受けた日の翌日から起算して2月を経過する日である平成6年12月16日までとなる。
 国税通則法第77条第3項に規定する「天災その他やむを得ない理由」とは、不服申立人が不服申立てをしようとしても、その責に帰することができない事由により不服申立てをすることが不可能であると客観的に認められるような事情が存する場合をいうと解されているところ、請求人の主張する事情は、それに当たらない。

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請求人が不在の場合に請求人の勤務先へ郵便物が転送されるように手続をしていた場合、請求人が原処分に係る通知を受けた日は、原処分に係る通知書が請求人の勤務先に配達された日となり、その翌日から2か月を経過した日にした異議申立ては法定の不服申立期間を経過した後にされたものであるとした事例

裁決事例集 No.64 - 122頁

 請求人は、平成14年4月26日から休暇中であり、原処分のあったことを知った日は休暇明けの同年5月7日であるから、同年7月5日にした本件異議申立ては法定の不服申立期限までにされている旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第77条第1項に規定する「処分に係る通知を受けた」とは、社会通念上、通知を了知できると認められる客観的状態に置かれることをいうと解され、郵便による場合には、郵便物が名あて人の住所等に配達されることがこれに当たると解される。
 したがって、請求人が原処分に係る通知を受けた日は、本件通知書が請求人の勤務先に配達された日となり、原処分に対する異議申立てに係る法定の不服申立期間は、その翌日から起算して2月以内である同年6月26日までとなるから、本件異議申立ては、法定の不服申立期間を経過した後にされたものということになる。

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無申告加算税を賦課決定すべきところ誤って過少申告加算税を賦課したため、これを零円とする変更決定処分をした後、改めて無申告加算税の賦課決定処分を行った場合に、変更決定前の過少申告加算税の賦課決定処分について異議申立てがされているときには、無申告加算税の賦課決定処分について異議申立てをせずに審査請求をすることができる「正当な理由」があるとした事例

裁決事例集 No.76 - 60頁

 請求人は、異議審理庁の担当職員による異議申立ての補正要求に従い、平成17年分の贈与税に係る無申告加算税の賦課決定処分に該当する箇所に丸を付し、異議申立ての補正をしたことが認められ、本件審査請求の前置である異議申立ての当初の段階から本件決定処分に基づく加算税の賦課決定処分に不服があることが明らかで、当該補正の時点において、第1次賦課決定処分に対する異議申立ては適法に行われたものと認めるのが相当である。原処分庁は、第1次賦課決定処分の加算税の表記に係る瑕疵の是正を図るべく、請求人に対し当該加算税の額を零円とする変更決定をし、第1次賦課決定処分を取り消した上、新たに加算税の額を第1次賦課決定処分のそれと同額とする第2次賦課決定処分を形式的には別個の処分として請求人に課したが、その実質は、「過少申告」から「無申告」への表記変更を行ったものにすぎず、先行の第1次賦課決定処分と後行の第2次賦課決定処分とは事実上同視できるものといえるものであり、争点が共通することは明らかで、その証拠資料の共通性及び判断の斉一性という観点からして、請求人において異議申立てをする必要がないと判断してもやむを得ない面があるといえる。さらに、原処分庁の一連の手続により、請求人には第1次賦課決定処分という不服申立ての対象がなくなる一方、原処分庁が新たに第2次賦課決定処分を課したものの、請求人はこれに対する異議申立てをしなかったことから、結果として本件第2次賦課決定処分に対する審査請求が異議申立前置手続を欠くに至ったもので、かかる結果に至ったのには、原処分庁の行為等がその一因となっているものということができる。以上のとおり、第2次賦課決定処分に対する審査請求については、請求人が異議申立てをせず直接審査請求をしてきたとしても、実質的には異議申立てをしていたのであるから、改めて異議申立てを前置させる必要はなく、原処分庁の行為等がかかる事態を生じさせた一因となっていることからすれば、国税通則法第75条第4項第3号に規定する「正当な理由があるとき」に該当すると解するのが相当であり、原処分庁の主張を採用することはできない。

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「却下」の異議決定を誤りとし、適法な異議申立ての決定があったものとして、審査請求を適法であるとした事例

平成25年9月3日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人の異議申立て(本件異議申立て)は異議申立書(本件異議申立書)の記載不備を期限までに補正しなかったため、不適法であるとして却下の決定(本件却下決定)を行っていることから、請求人は国税通則法(通則法)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第3項に基づき審査請求をすることはできず、請求人の審査請求(本件審査請求)は不適法なものとして却下されるべきである旨主張する。
 しかしながら、本件異議申立書の記載不備は、原処分庁が職権で補正事項を補正しなければならなかった軽微なものであるし、また、本件異議申立ては、原処分庁の行った債権の差押処分があった日の翌日から起算して1年を経過した後になされているが、通則法第77条《不服申立期間》第4項ただし書の「正当な理由」があると認められることから、本件却下決定は違法であり、本件審査請求は適法な異議申立てを経たものである。

《参照条文等》
 国税通則法第75条、第77条

《参考判決・裁決》
 福島地裁昭和29年12月6日判決(行集5巻12号2831頁)

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