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資産損失
関係会社の資金繰りの用に供するため担保に提供した株式が回収不能となった場合に、当該回収不能相当額を、他の株式の譲渡に係る雑所得の収入金額から控除したりあるいは必要経費に算入したりすることはできないとした事例
裁決事例集 No.41 - 145頁
請求人は、担保に提供した株式が担保流れとなった時点で、[1]株式の譲渡があったとみて所得税法第64条第1項の規定を適用し、当該回収不能相当額を他の株式の譲渡に係る雑所得の収入金額から控除するか、[2]貸付けに係る株式に損失が生じたとみて同法第51条第4項の規定を適用し、当該損失相当額を他の株式の譲渡に係る雑所得の必要経費に算入すべきであると主張するが、請求人は、本件株式を、当時利害関係を有していた請求人に立場上、資金繰り上の担保に供するため、関係会社に預けていたものであって、株式を譲渡したり貸し付けたりした事実は認められないから、請求人の主張は前提そのものを誤っており、当該回収不能相当額あるいは当該損失相当額を他の株式の譲渡に係る雑所得の収入金額から控除したり、あるいは必要経費に算入したりすることは認められない。
平成3年5月28日裁決
上場株式が株式としての価値を失ったことによる損失は事業所得又は雑所得の必要経費に算入することができるとした事例
《ポイント》
本事例は、いわゆる一般口座で保管していた上場株式が株式としての価値を失ったことによる損失の金額は、当該上場株式を含む株式の譲渡による所得が事業所得又は雑所得に該当する場合には、当該事業所得又は雑所得の計算上、必要経費に算入できるとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人の所有していた民事再生法の規定による再生計画に基づき平成21年中に無償で消滅した株式(本件株式)の取得金額は、譲渡所得の金額の計算上、取得費として控除できない旨主張する。
しかしながら、所得税法においては、株式が株式としての価値を失ったことにより損失が生じた場合、その株式が事業所得の基因となるものであるときは、所得税法第37条《必要経費》第1項の規定に基づき、売上原価の計算を通じて自動的にその株式の取得価額相当額がその損失の発生した年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入され、また、その株式が雑所得の基因となるものであるときは、所得税法第51条《資産損失の必要経費算入》第4項の規定に基づき雑所得の金額を限度として、その株式の取得価額相当額が資産損失としてその損失が発生した年分の雑所得の金額の計算上必要経費に算入され、その株式が譲渡所得の基因となるものであるときは、その損失は所得金額の計算上考慮されないところ、請求人の上場株式等の譲渡による所得は、事業所得又は雑所得と認められることから、本件株式が株式としての価値を失ったことによる損失の金額は、平成21年分の株式等の譲渡による事業所得又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入できることになる。
《参考条文》
所得税法第33条第2項第1号、第37条第1項、第51条第4項