総則

実質所得者課税の原則

  1. 納付義務者
  2. 所得の帰属
    1. 実質所得者課税の原則(3件)
    2. 所得の帰属者

本店ビルの新築工事に際し、その共同事業者に支払った竣工時までの建中金利相当額は本店ビルの取得価額に算入すべきものとされた事例

裁決事例集 No.59 - 154頁

  1.  請求人は、本店ビルの新築工事に際し、財団法人H機構(以下「H機構」という。)が共同事業者として参加したのは、H機構の成立経緯等から共同事業という法律的形式をとらざるを得なかっためであり、H機構が負担した共同事業に係る分担金の経済的実質は資金融資であるから、本店ビルの建築中にH機構に対して支払った建中金利相当額は、支払利息である旨主張する。法律的形式と経済的実質とが異なるような場合には、単に当事者によって選択された法律的形式だけでなく、その経済的実質をも検討すべきことは当然であるが、当事者によって選択された法律的形式が経済的実質からみて通常採られるべき法律的形式と明らかに一致しないものであるなどの特段の事情がない限り、当事者によって選択された法律的形式は、原則として経済的実質をも表現しているものと解される。
     そこで、H機構との取引についてみると、法律的形式は、H機構が本店ビルの建築費の一部を負担して共同事業者として参加し、本店ビルの竣工後に共有持分を請求人に譲渡したものであるが、この法律的形式が経済的実質からみて通常採られるべき法律的形式と明らかに一致しないものとは認められない。そうすると、請求人には特段の事情は認められず、H機構との共同事業の法律的形式は経済的実質をも表現していると認められる。
  2.  請求人は、本店ビルの新築工事に際し、その共同事業者であるH機構が負担した共同事業に係る分担金の実質は資金融資であるから、本店ビルの建築中にH機構に対して支払った建中金利相当額は、支払利息である旨主張するが、H機構との共同事業協定書、建物延払条件付譲渡契約書等の各契約内容及びH機構の答述等を勘案するとH機構は本店ビルの建築費の一部を負担して共同事業者として事業に参加し、本店ビルの竣工後にH機構の本店ビルの共有持分を請求人に譲渡したものと認められること及び共同事業協定書等には、建中金利相当額はH機構の本店ビルの共有持分の譲渡代金の前払金であることが明記されていることから、共同事業に係る分担金は本店ビルの建築費であり、建中金利相当額は本店ビルの取得代金であると認めるのが相当である。

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不動産売買契約に基づく土地等の譲渡に係る収益が請求人に帰属しないとした事例

令和2年12月15日裁決

《ポイント》
 本事例は、土地等の譲渡に係る事業において、その主体は、請求人以外の法人であるから、その収益も当該法人に帰属するとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、売主を請求人又は請求人以外の法人(本件法人)とする土地及び地上権(本件土地等)並びに施設等(本件施設等)の売買契約(本件不動産等売買契約)に係る収益について、1所得の帰属主体は、諸要素を総合的に判断し、実質的に決定すべきであるから、そうすると、本件法人が本件不動産等売買契約に係る経費を支払っていなかったり、本件不動産等売買契約に係る代金が請求人名義の預金口座等に入金されていたなどのことから、本件不動産等売買契約に係る収益全てが請求人に帰属し、また、2本件不動産等売買契約は、本件土地等及び本件施設等の譲渡が一体となった一つの契約であるから、その収益は、その全てが引き渡された当該事業年度に計上すべきである旨主張する。
 しかしながら、1請求人及び本件法人は、本件不動産等売買契約において、それぞれの意思に従い、それぞれ別の債務を負う内容の契約を締結し、他にも本件法人の従業員が本件土地等の買収に係る業務を行っていたなどの諸事情があることからすれば、本件不動産等売買契約に係る収益の全てが請求人に帰属するわけではなく、また、2本件不動産等売買契約がそれぞれ別個の契約であると認められるところ、請求人が譲渡した土地等は、当該事業年度以前に買主へ移転登記がされ、さらに、当該事業年度中にその代金の相当部分も支払われていたなどからすると、当該移転登記の日をもって「引渡しがあった日」であると判断するのが相当である。したがって、本件不動産等売買契約に係る収益は、当該事業年度には計上されない。

《参照条文等》
 法人税法第11条、第22条第2項、第4項

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成26年1月27日判決(税資264号順号12397)
 平成30年6月28日裁決(裁決事例集No.111)

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請求人とは別の法人名義で行われた取引に係る収入は請求人に帰属するとは認められないとした事例(平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度以後の法人税の青色申告の承認の取消処分、平成24年4月1日から平成25年3月31日まで及び平成27年4月1日から平成29年3月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分並びに平成25年4月1日から平成26年3月31日まで及び平成29年4月1日から平成30年3月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平成24年4月1日から平成26年3月31日までの各課税事業年度の復興特別法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平成27年4月1日から平成29年3月31日までの各課税事業年度の地方法人税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分並びに平成29年4月1日から平成30年3月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、平成24年4月1日から平成30年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、平成25年7月から平成29年6月までの各期間分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに重加算税の各賦課決定処分・全部取消し)

令和4年1月12日裁決

《ポイント》
 本事例は、別法人の代表者及び請求人の関係者の申述の信用性を検討した上で、事業の経緯、業務の遂行状況、費用の支払状況などから、別法人名義で行われた取引に係る収入が請求人に帰属するとは認められないと判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人とは別法人(本件法人)名義で行われた土地売買取引等(本件取引)について、本件法人の代表者や請求人の関係者などの各申述から、請求人が主体となって本件取引に係る業務を遂行し、請求人の代表者が本件法人名義の預金通帳を管理し、本件法人の代表者は請求人の代表者の指示により本件法人名義の預金口座から現金を引き出し同人に渡していたのであり、請求人が本件取引に係る収益を享受していたというべきであるから、本件法人の総勘定元帳に記載された売上高(本件収入)は請求人に帰属する収益である旨主張する。
 しかしながら、本件法人の代表者や請求人の関係者などの各申述を的確に裏付ける証拠資料がなく、本件法人の代表者は後に当初の申述を全面的に否定しており、当該申述をそのまま信用することはできない。そのほかに審判所に提出された証拠資料等を精査しても、請求人が本件取引に係る業務を主体的に行った事実や請求人が本件取引に係る収益を享受した事実は認められず、本件法人の事業の経緯、本件取引に係る業務の遂行状況、当該業務に係る費用の支払状況などを総合的に判断すると、本件収入が請求人に帰属する収益であるとは認められない。

《参照条文等》
 法人税法第11条

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成22年9月15日判決(税資260号順号11512)

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