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相続税の課税価格の計算

遺留分減殺請求により取得した金員

  1. 分割財産に係る課税価格
    1. 代償分割
    2. 特別縁故者に対する財産分与
    3. 遺留分減殺請求により取得した金員(2件)
    4. その他
  2. 非課税財産
  3. 債務控除
  4. 相続開始前3年以内の贈与
  5. その他

遺留分減殺請求により、価額弁償金を受領した場合の相続税の課税価格に算入すべき価額は、相続税法基本通達11の2−10(2)に定める要件を充足した場合には、同(2)に定める計算方法を準用して評価することが相当であるとした事例

平成25年8月29日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人が提起した遺留分減殺請求訴訟(本件訴訟)の判決(本件確定判決)において、まる1価額弁償の対象となった不動産(本件分割対象不動産)は特定されているが、まる2価額弁償金の額は、価額弁償の時ではなく、相続開始日における本件分割対象不動産の通常の取引価額を基に決定されていることから、相続税法基本通達11の2−10《代償財産の価額》(2)の定めは適用できない旨主張する。
 しかしながら、遺留分減殺請求訴訟において、受贈者又は受遺者が遺留分権利者に対し事実審口頭弁論終結前に裁判所が定めた価額により民法第1041条《遺留分権利者に対する価額による弁償》の規定による遺留分の価額の弁償をなすべき旨の意思表示をした場合、相続税法基本通達11の2−10 (2)を準用する際に用いる上記まる2の「価額弁償の時」とは、「事実審口頭弁論終結の時」と解されるところ、本件確定判決において、本件分割対象不動産の価額につき、「この価額は、請求人提出の相続開始日を価格時点とする不動産鑑定評価書等における価額であり、現時点で、同価額と異なる証拠はないことから、同証拠により価額を認定する」旨判示されていることからすると、本件確定判決において認定された「現時点」の価額は、本件訴訟の控訴審の口頭弁論終結の時を基準日とする価額であると認められ、また、その価額は、その基準日における通常の取引価額であると認められる。そうすると、本件確定判決は、価額弁償の対象となった財産の価額弁償の時における通常の取引価額を基に価額弁償金の金額を決定しているということができるから、相続税法基本通達11の2−10(2)の定めを適用することが相当である。

《参照条文等》
 相続税法第11条の2
 民法第1036条、1041条

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和51年8月30日第二小法廷判決(民集30巻7号768頁)
 平成4年6月22日裁決(裁決事例集No.43・336頁)

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取得財産に算入する遺留分減殺請求に基づく価額弁償金につき、相続税法基本通達11の2−10《代償財産の価額》(2)に定める方法により計算すべきとした事例

令和2年8月11日裁決

《ポイント》
 本事例は、共同相続人の間で相続税の取得財産の価額に算入又は控除する遺留分減殺請求に基づく価額弁償金の金額について、相続税法基本通達11の2−10《代償財産の価額》(1)ではなく、同通達(2)に定める方法により計算すべきであると判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、遺留分減殺請求訴訟の和解(本件和解)の際に、共同相続人の間で相続税の取得財産の価額に算入又は控除する価額弁償金(本件価額弁償金)の金額について何らかの合意があったと考えるのが自然であるとして、請求人の相続税の取得財産の価額に算入する本件価額弁償金の金額は、相続税法基本通達11の2−10《代償財産の価額》(本件通達)(1)の要件を満たしており、本件通達(2)によるべきとする更正の請求は認められない旨主張する。
 しかしながら、訴訟中から申告までの間に直接やり取りをしていた訴訟代理人間において、本件価額弁償金をいくらとして申告するかについて協議がされていないことについては、同人らを含む関係者の答述が一致しており、訴訟中から申告に至るまでの経緯等に照らしても、本件価額弁償金については、その申告額を具体的に協議した事実は認められず、他に申告額についての具体的な協議の事実が認められるような事情もないことからすれば、その協議はなかったと認められるから、本件通達(1)の場合には該当しない。そして、本件価額弁償金の金額は、対象財産が特定され、かつ、本件和解時に合意された当該対象財産の通常の取引価額を基として決定されたものであるから、本件通達(2)の場合に該当するので、請求人の相続税の取得財産の価額に算入する金額は、本件通達(2)に定める方法により計算すべきである。

《参照条文等》
相続税法第11条の2
相続税法基本通達11の2-10

《参考判決・裁決》
平成25年8月29日裁決(裁決事例集92)

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