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税額の計算

配偶者に対する相続税額の軽減

  1. 相続税の税額計算
    1. 相続税の総額
    2. 各相続人等の相続税額の計算
    3. 配偶者に対する相続税額の軽減(4件)
    4. 外国税額控除

遺産分割がなされていない場合であっても、配偶者が金融機関から払戻しを受けた法定相続分相当の預金は、配偶者にかかる相続額の軽減の適用上、「分割された財産」として更正の請求の対象となるとされた事例

裁決事例集 No.59 - 282頁

 相続税法第19条の2第2項は、「分割されていない財産」は配偶者の税額軽減の対象に含めない旨規定しており、また、同法第32条6号は、この「分割されていない財産」が「分割された場合」には、更正の請求ができる旨規定している。「分割されていない財産」を税額軽減の対象としていないのは、配偶者が実際に取得した財産に限りその対象とする趣旨と解され、このことから、この「分割されていない財産」には、配偶者が特定遺贈を受けた財産等、既に配偶者が実際に取得しており、分割の対象とならない財産は含まれない(軽減の対象となる)ものと解されている。
 ところで、最高裁判決(昭和29年4月8日第1小法廷判決、昭和30年5月31日第3小法廷判決)によれば、相続財産中に可分債権があるときは、その債権は法律上当然に分割され(分割の対象とならない)、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとされているが、他方、家庭裁判所における遺産分割審判においては、遺産全体の分割を円滑に行う等の事情から相続人全員が合意した場合には、可分債権であっても、遺産分割の対象としている取扱いが定着しているものと認められる。そうすると、可分債権であることをもって分割の対象とならないとみることは相当でなく、配偶者が現実に取得していない段階では、相続税法第19条の2第2項に規定する「分割されていない財産」に含まれ、税額軽減の対象とはならないと解するのが相当である。
 しかし、預金債権についてみた場合、分割がなされない場合であっても、配偶者がその法定相続分相当について金融機関に払戻請求を行い、実際に払戻しを受けたときには、配偶者はその金員を実効支配をするに至っていることから、その払戻しを受けた預金は、「分割されていない財産」から除外され、税額軽減の対象になると解するのが相当である。
 同様に、更正の請求においても、払戻しを受けた法定相続分相当については、「分割された財産」に該当するものとして、更正の請求の対象になると解するのが相当である。

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配偶者の税額軽減に係る承認申請の却下処分を適法とした事例

裁決事例集 No.62 - 343頁

 請求人は、配偶者に対する相続税額の軽減の特例の適用を受けるため提出した「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請」(以下「本件承認申請」という。)を却下する旨の処分(以下「本件却下処分」という。)は違法である旨主張するが、本件承認申請は、申請期限を徒過して提出されているは明らかであり、また、申告期限内に申請書の提出がなかった場合に税務署長の裁量により申請を認めることができる旨を定めた法令の規定もないことから、本件却下処分は適法であるといわざるを得ない。

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申告されなかった相続人名義の預金等について、被相続人の財産であるとの明確な認識はなかったことなどから、相続税法第19条の2第5項に規定する「隠ぺい仮装行為」はないとした事例

平成23年11月25日裁決

《要旨》
 原処分庁は、被相続人の配偶者である請求人Fが相続税の申告をするに際し、相続人名義の預金等(本件預金等)を相続財産に含めずに過少申告したことについて、請求人Fには、相続税法第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》第5項に規定する隠ぺい仮装行為がある旨主張する。
 しかしながら、相続税法第19条の2第5項の趣旨が、相続税の申告に当たり、相続財産につき隠ぺい仮装という不正手段を用いていた場合には、その相続財産に係る相続税については、配偶者といえども他の相続人と同様に相続税を負担することとなることによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な課税の実現を確保しようとするところにあると解されることからすると、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、同項に規定する隠ぺい仮装行為の要件が満たされると解すべきであるところ、本件の場合、請求人Fは、本件預金等が被相続人に帰属するものであることを相続税の法定申告期限までに明確に認識していたとまでは認められず、また、相続税の調査の際、調査担当者に対して虚偽答弁を行ったと評価できる事実もないことからすると、請求人Fにおいて、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたということはできない。

《参照条文等》
 相続税法第19条の2第5項

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相続人である配偶者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたとは認められず、相続税法第19条の2第5項に規定する隠ぺい仮装行為はなかったとした事例

平成24年4月24日裁決

《要旨》
 原処分庁は、被相続人の配偶者である請求人が、被相続人の財産を原資とする多額の請求人名義の有価証券等が存在し、それが相続財産であることを熟知しながら、関与税理士にそれを伝えず、同税理士に過少な申告額を記載した申告書を作成させ提出していることから、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたといえ、当該請求人の行為は相続税法第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》第5項に規定する隠ぺい仮装行為に当たる旨主張する。
 しかしながら、相続税法第19条の2第5項が、適正な申告を確保し、課税の公平を図るため、納税義務者が過少申告をするについて隠ぺい仮装行為による事実に基づく金額までもが配偶者の税額軽減措置の適用を受けるのは不合理であるとの趣旨から設けられたものであることからすれば、相続又は遺贈により財産を取得した者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、その意図に基づく過少申告をした場合には、同項の適用要件が満たされるものと解される。本件の場合、請求人において、請求人名義の有価証券等が明らかに被相続人に帰属する相続財産であると認識していたとまで認めるに足りる証拠はない上、請求人は、関与税理士から相続人名義に係る残高証明書等の資料の提出依頼を受けておらず、また、調査時において調査担当職員に対し、請求人名義の有価証券等に関する資料の一部を自主的に提出していることからすれば、相続財産を過少に申告するという確定的な意図を有していたと認めることはできない。したがって、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたということはできず、相続税法第19条の2第5項に規定する隠ぺい仮装行為があったとは認められない。

《参照条文等》
 相続税法第19条の2第5項

《参考判決・裁決》
 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
 平成23年5月11日裁決(裁決事例集No.83)
 平成23年9月27日裁決(裁決事例集No.84)

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