総則

課税処分と徴収処分との関係

  1. 課税処分と徴収処分との関係
  2. 課税処分と第二次納税義務の告知(1件)
  3. 申告と徴収処分

確定した主たる納税義務の無効は第二次納税義務の納付告知の効力に影響を及ぼすものであり、第二次納税義務者は本来の納税義務者と同様の立場で確定した主たる納税義務の無効を主張して本来の納税義務者の申告自体を争うことができるが、請求人が主張する主たる納税義務は、客観的に明白かつ重大な錯誤があったとは認められず、無効ではないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分及び不動産の差押処分・棄却)

令和7年6月16日裁決

《ポイント》
 本事例は、第二次納税義務者が本来の納税義務者と同様の立場で確定した主たる納税義務の無効を争うことができ、申告書の記載内容の過誤の是正については、客観的に明白かつ重大で錯誤がある場合に認められるとしたものである。

《要旨》
 請求人は、原処分庁が行った国税徴収法第36条《実質課税額等の第二次納税義務》に基づく第二次納税義務の納付告知処分に対し、主たる納税者(本件滞納者)の法人税等の各期限後申告(本件各期限後申告)は、本件滞納者が、所有していた不動産(本件各不動産)から生じた賃料や不動産売却益が自らに帰属するとした、調査担当職員の誤った指導などによる錯誤に基づいてしたのである旨、本件各期限後申告に係る事業年度において、本件滞納者は実質的に廃業状態にあり、そして、本件各不動産の所有権の登記名義は本件滞納者から請求人にしており、本件各不動産から生ずる賃料は請求人に帰属することから、本件滞納者に対する課税は、実質所得者課税の原則の適用を誤っており、錯誤が客観的に明白かつ重大である旨、また、本件滞納者が本件各期限後申告をしたことは、法定の方法以外にその是正を許さないならば、納税義務者の利益を著しく害すると認められる「特段の事情がある場合」に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件各期限後申告は、不動産の賃料の帰属について、その事情を最も認識している本件滞納者が行ったものであり、本件滞納者は、本件各期限後申告に係る更正の請求をせず、本件各期限後申告に係る重加算税の各賦課決定処分に対する不服申立てもしていない。そして、請求人は、本件各期限後申告が本件滞納者の錯誤に基づいてしたものであることを裏付ける具体的な証拠を提出していない等の事実関係を併せ考えると、本件各期限後申告をした時点において、本件滞納者が本件各不動産から生じた賃料や不動産売却益の帰属主体であるとして、実質所得者課税の原則に基づき本件各期限後申告をしたものと推認され、その推認を覆す事情は見当たらないことから、本件各期限後申告は、客観的に明白かつ重大な錯誤は認められず、無効ではない。

《参照条文等》
 国税徴収法第36条
 民法第95条

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和50年8月27日第二小法廷判決(民集29巻7号1226頁)
 最高裁昭和40年9月10日第二小法廷判決(民集19巻6号1512頁)
 最高裁昭和45年3月26日第一小法廷判決(民集24巻3号 151頁)
 最高裁昭和39年10月22日第一小法廷判決(民集18巻8号1762頁)
 最高裁平成18年1月19日第一小法廷判決(民集60巻1号 65頁)

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